貧弱なコミュニケーションの最大の問題は、相手の気持ちや考えに対して誤った憶測をしてしまい、それがいつまでも修正されないため、ますます誤った憶測が強化されることにあると言えます他人との関係に何か具体的な問題がある場合には、コミュニケーション方法を検討してみることが役に立ちます。
以下に、コミュニケーションのチェックポイントを挙げていきます。
このような姿勢は、怒りと欲求不満につながります。実際には相手に自分の気持ちが全く伝わっていないのに、
「私の気持ちがわかっていて、なぜあの人はあんなことをするのだろう」
と腹立たしく思うというようなことが生じます。そして
「私が不機嫌そうにしているのだから相手は私が怒っていることに気づいているはずだ」
と思いこみ、何に対して腹を立てているのかを相手にはっきりと伝えないため、相手は態度を変えず、さらに怒りが増すということになります。
曖昧な表現に頼らずにメッセージを伝えようと努力している人の場合でも、自分が伝えようとしたことを相手がちゃんと理解したかどうかを確かめるのは重要な作業です。
例えば、自分が何か失敗したときにそれを見てため息をついた人がいたとしましょう。もちろん本当に「こんなつまらない失敗をして」という非難のつもりでため息をつく人もいるわけですが、そうではなく、単に疲れがたまっていたとか、それがその人のくせであるとか、そんなこともあるはずです。
また、「困ったものですね」などと言われた場合にも、本当に批判していることもあるでしょうが、冗談混じりに励ましてやろうと思っている可能性もあります。
相手が自分を批判していると考えると神経質になったりいたずらに悲観的になったりしがちですが、その前に、本当に相手は自分を批判しているのか、批判しているとしたらどの点についてであるのか、その相手の批判は誤解に基づくものではないのか、というようなことを確認すべきです。そうしないと、こちらが一方的に心を閉ざすことになり、相手から見ると「陰気な、理解しにくい人」ということになってしまいます。
しかし、そのような曖昧さが対人関係に支障をきたしているようなときには話が別です。 言葉によらないコミュニケーションよりは言葉によるコミュニケーションの方がわかりやすく、また、言葉によるコミュニケーションの中でも直接的な表現の方が間接的な表現よりもわかりやすいものです。
例えば、相手から無礼なことをされた場合、怒りの気持ちを表現するために、黙り込んだり、相手を睨み付けたり、ため息をついたりするのが非言語的コミュニケーションです。この場合、相手はそのメッセージに気づかないこともあるでしょうし、機嫌が悪そうだということには気づいても、何が原因かはわからないこともあるでしょう。自分に対して怒っているのだということに気づいたとしても、その理由を誤解する人もいるはずです。
結果として、相手はこちらの思い通りに行動を変えたり謝罪したりはしてくれず、こちら側の怒りの気持ちは募る一方でしょう。それが対人関係への諦めにつながっていくのです。
また、怒りの気持ちを言葉にしたつもりでも、それが間接的で曖昧な表現だったり、ほのめかしに過ぎないような場合は、やはり相手に気づいてもらえない可能性が高くなります。運良く怒りの感情に気づいてもらえたとしても、それが具体的に何に対するものなのか、どのようにしたら良いのかについてはわかってもらえないことが多いでしょう。
ところが、このような場合、こちらとしては怒りの気持ちを伝えたつもりになっているので、行動を変えてくれない相手への不満がさらに高まることになるのです。
自分の精神状態を左右するような重要な問題については、できるだけ直接的な言葉で話し合うのが一番です。もちろん、これには勇気がいるものです。
「こんなにはっきり言ったら相手に嫌われるに違いない」
などと不安になります。そう思うときには、その不安さもまとめて相手に伝えてしまえば良いでしょう。
あるいは、話し方をできるだけ柔らかく、相手に逃げ場を与えてあげるようなつもりですると良いでしょう。
追いつめると相手もそれだけ防衛的になり、率直に自分の間違いを認めにくくなるものです。
相手に何を期待しているのかを伝えようと努力する方がずっと誠実なことなのだということを理解するべきです。