サンゴの白化現象新聞情報データベース
珊瑚の白化現象に関連する新聞記事情報

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2003年8月22日 
山木克則
 (鹿島・水域環境研究室)



調査対象期間:1997/06/04〜最新
情報源:読売新聞、毎日新聞、沖縄タイムス、南日本新聞、産經新聞など

[サンゴの白化現象以外の記事はこちらです]

<タイトル別目次>クリックすると本文へとびます
<1999>

1999/07/20 産經新聞 南の青い海「サンゴ」生き生き 白化現象から回復 沖縄
1999/07/07 読売新聞 豪の大サンゴ礁が来世紀に死滅? 海洋学者が発表
1999/07/06 読売新聞 海温上昇続けばサンゴ白化加速 グリーンピースが予測
1999/07/06 毎日新聞  「サンゴ礁、来世紀末には壊滅」??地球温暖化が続くと
1999/06/16 沖縄タイムス 来月から「マイポイント調査」 八重山サンゴ礁保全協 汚染や白化チェック
1999/06/15 沖縄タイムス サンゴ産卵、海にきらきら 順調に発育、白化から再生へ 
1999/06/09 沖縄タイムス サンゴの卵を追跡 回復過程の解明へ 東工大など研究チーム 慶良間
  から本島に漂着
1999/06/03 沖縄タイムス  月夜にサンゴの産卵ショー 座間味・白化回復、ダイバーらホッと
1999/06/03 沖縄タイムス  黒島観光 白化のサンゴ移植、再生へ
1999/04/17 沖縄タイムス  守られた白保のさんご礁 白化現象が終息、回復へ
1999/04/16 沖縄タイムス[新刊紹介] 「サンゴ礁は異状事態」 (文・土屋誠、写真・屋比久壮実、
  植田正恵、土屋誠)
1999/04/02 沖縄タイムス   [読書] 珊瑚 鈴木克美著 (法政大学出版局・3200円) 
1999/03/30 読売新聞  白化サンゴ、復活の兆し 南太平洋・パラオの海水温度が戻る
1999/03/24 読売新聞  サンゴの健康を魚の数で診断 環境庁・外郭団体が南西諸島で着手/鹿
  児島・沖縄
1999/03/05 読売新聞[眼99]海を渡る国道〈5〉白化 死滅……サンゴ無情(連載)
1999/03/05 南日本新聞   昨夏の高水温原因か、ダイバーらも落胆/桜島沖のサンゴが死滅
1999/03/04 沖縄タイムス ミスジチョウチョウウオを捜して 県内ダイバーに調査協力求める 東京の
  海中公園センター
1999/03/03 沖縄タイムス サンゴ白化現象の 生態系影響など調査 参院予算委で環境庁長官


1999/02/08 毎日新聞  あなたのニュース写真'98の年間賞・グランプリ受賞の海洋写真家
1999/01/19 沖縄タイムス 異常気象に思う 安里善好 公害防止と環境保護
1999/01/07 沖縄タイムス 亜熱帯総研 県の支援要請 垣花理事長が県に


<1998>
1998/12/30 西日本新聞  プレーバック'98<下>9月―12月―連載9月
           サンゴの白化現象が拡大(8日) 
1998/12/27 西日本新聞 白化サンゴ 暗礁内は9割死滅 奄美海洋展示館が追跡調査
          高水温のダメージ大きく
1998/12/22 読売新聞 サンゴ白化に調査費 99年度大蔵原案 九州・山口は順調にスタート
1998/12/20 沖縄タイムス 首相特別枠予算 白化調査など6億7千万円 赤土対策費を計上
1998/12/11 毎日新聞 サンゴの「白化」食い止めろ! 2800万円かけ国が調査
1998/11/30 産經新聞 沖縄・伊江島周辺海域 サンゴ白化現象、回復へ
1998/11/12 読売新聞 サンゴの白化現象 沖縄はじめ各地で被害 台風、エルニーニョ関与

1998/11/05 沖縄タイムス[社説] サンゴ白化現象 地球環境破壊を象徴する
1998/10/31 読売新聞 [編集手帳]サンゴの白化現象
1998/10/20 読売新聞 白い猛威にサンゴあわれ 南西諸島から本州南岸で白化現象
1998/10/08 沖縄タイムス 防ごうサンゴの絶滅 白化現象で研究者ら会議・那覇
1998/09/15 沖縄タイムス サンゴの白化現象は広範に ヘリで本島西海岸を調査 亜熱帯総研
1998/09/12 読売新聞 南西諸島などのサンゴ白化監視システム確立へ 日本珊瑚礁学会
1998/09/10 南日本新聞 8月下旬から激変、名瀬市・立神岩付近でサンゴの白化現象進む
1998/09/10 読売新聞 サンゴ死滅 無残な黄変 白化現象がさらに拡大/鹿児島・奄美沿岸
1998/09/06 南日本新聞 サンゴ白化現象、十島村中之島沖でも確認
1998/09/06 南日本新聞 サンゴ白化現象、桜島・古里沖でも確認/無数の穴、まるで軽石
1998/09/04 読売新聞 サンゴ白化現象、死滅の恐れ 鹿児島―沖縄の海域 高水温で共生藻"家出"
1998/05/06 毎日新聞 サンゴ栄養不足 白化現象、広範囲に??豪・グレートバリアリーフ
<1997>
1997/10/08 沖縄タイムス 台風から島を守るさんご礁
1997/06/05 沖縄タイムス 沖縄のサンゴ絶滅の危機 地球温暖化で白化現象 海洋汚染も大きな原因  WWF 被害状況を地図化
1997/06/04 読売新聞 地球温暖化をサンゴが警告 「白化現象」被害の世界地図を作成/自然保護基金 ◆沖縄周辺は「絶滅危機」

1999年
1999/07/20 産經新聞
南の青い海「サンゴ」生き生き 白化現象から回復 沖縄
 海水温の上昇が原因とみられる白化現象から立ち直りを見せていた沖
 縄県伊江島沖のダイオウサンゴが、白化から完全に回復していることが
 、十九日までの産経新聞の取材で確認された。
  このサンゴは伊江港から西へ船で約十分の「三角山」と呼ばれる海域
 にあり、直径約二メートル。
  昨年九月には、褐虫藻がはく離し、真っ白の状態=写真下。養分が補
 給できず死んでしまう恐れがあった。今回の調査では褐虫藻が戻り、表
 面の白い部分が無くなって全体がチョコレート色に覆われていた=同
 上。
  環境保護団体のグリーンピースは、海水温の上昇で三十年内にサンゴ
 は死滅すると警告している。沖縄県・阿嘉島臨海研究所の下池和幸研究
 員は「グリーンピースの警告が、沖縄のサンゴに当てはまるかどうかは
 っきりしないが、世界のサンゴが危機的状況にあるのは確か。沖縄周辺
 海域のサンゴが今後も順調に回復していくか、見守りたい」と話してい
 る。(写真報道局 岡本義彦)
1999/07/07 読売新聞
 豪の大サンゴ礁が来世紀に死滅? 海洋学者が発表
  【シドニー6日=結城和香子】オーストラリア大陸北東沖に伸びる大
 サンゴ礁帯、グレートバリアリーフが、来世紀中に海水温の上昇により
 死滅する可能性が高いことが六日、明らかになった。
  シドニー大の海洋科学者ゴールバーグ教授が発表した。それによる
 と、地球温暖化による海水温の上昇は今後、頻度と程度を増し、二〇三
 〇 年代には毎年発生。
  この結果、水温上昇によりサンゴが死滅する「白化現象」が発生する
 と予測されるという。同サンゴ礁帯では昨年、史上最悪の白化現象が報
 告されている。同教授は白化現象の世界的権威。
1999/07/06 読売新聞
 海温上昇続けばサンゴ白化加速 グリーンピースが予測
  国際環境保護団体「グリーンピース」は六日、地球の温暖化が進め
 ば、二〇四〇年までに、世界の多くの地域でサンゴが白く変色して死ん
 で しまう白化現象が毎年のように起きるようになると警告する調査報
 告書をまとめた。これによって観光資源、漁業資源が減少し、数千億ド
 ルの 経済的損失が生じると予測している。
  グリーンピースは、二酸化炭素などの温暖化ガスの排出で、全世界の
 平均気温が二一〇〇年には現在より2度上昇するとする「気候変動に関
 する政府間パネル(IPCC)」の予測に基づき、海水温の上昇がサン
 ゴに及ぼす影響を予測した。
1999/07/06 毎日新聞  
「サンゴ礁、来世紀末には壊滅」??地球温暖化が続くと
  地球温暖化が続くと、21世紀末には世界のほとんどの海域でサンゴ
 礁が壊滅状態になると予測した研究報告を、環境保護団体グリーンピー
 スが6日発表した。「温暖化防止のために、二酸化炭素を排出する化石
 燃料の使用を段階的にやめるべきだ」と訴えている。研究はオーストラ
 リア・シドニー大のオウブ・ホー・ゴールドバーグ教授(海洋生物学)
 に委託した。
  報告によると、海水温が平年より1?2度高い状態が続くと、サンゴ
 の色彩のもとになっている褐虫藻(かっちゅうそう)が外に逃げ出す白
 化現象が起こる。褐虫藻はサンゴに栄養と酸素を補給する役割があり、
 白化が続くと数週間でサンゴは死んでしまう。
  同教授はオーストラリアのグレートバリアリーフや仏領ポリネシア、
 ジャマイカの南海岸など過去に起きたサンゴの白化とその時の海水温を
 調べ、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が1995年
 にまとめた温暖化予測と比較した。
  その結果、21世紀末までに海水温が1?2度上昇する影響で、今後
 30?40年以内に世界のほとんどの海域でサンゴの白化現象が毎年起
 きるようになると予測した。来世紀末には壊滅状態になる可能性がある
 という。【鴨志田公男】
1999/06/16 沖縄タイムス
 来月から「マイポイント調査」 八重山サンゴ礁保全協 汚染や白化チェック
  【八重山】八重山サンゴ礁保全協議会(吉田稔代表)の総会が十五
 日、石垣市内で開かれ、赤土汚染や白化現象などサンゴをめぐる状況を
 個 人が定期的に観測する「マイポイント調査」を来月からスタートす
 ることを決めた。会員以外にも広く調査への参加を呼び掛けている。
  同会は八重山のサンゴ保全を目的に研究者や行政、ダイバーら五十二
 の団体個人で構成。従来は調査地点を固定せず、会員各自の都合に合わ
 せて適時、観測情報を収集してきた。しかし、持ち場を分担し、責任を
 持って長期的に観測した方が、効果的との指摘を受け、実施を決めた。
  調査は各自が毎回、同じポイントで行い、サンゴの種類や分布状況、
 サンゴ類を主食とするオニヒトデの数や大きさなどを所定の調査用紙に
 記入する。その他、赤土の流入や白化現象の影響なども付記する。調査
 間隔は三カ月に一回が、基本。調査結果は随時、会誌に掲載し、保全対
 策を検討する資料に使う。吉田代表は「サンゴをめぐる環境は白化現象
 など大きな岐路に立っている。今こそサンゴを愛する多くの人たちの目
 で見守る重要性が高まってきた」と話している。
  問い合わせは海中公園センター(八重山海中公園研究所内)、電話0
 9808(5)4341。(写真説明)サンゴの白化現象。汚染状況の
 観測には、個人レベルのポイント調査が威力を発揮しそうだ=1998
 年9月20日、伊平屋島
1999/06/15 沖縄タイムス
 サンゴ産卵、海にきらきら 順調に発育、白化から再生へ 
 【竹富=黒島】竹富町黒島港の北約四百メートルのサンゴ群落で三日
 夜、一斉にサンゴの産卵ショーが繰り広げられた。八重山ではこの日、
 西表島周辺でも産卵が確認され、昨年夏以降の白化現象で懸念されてい
 たサンゴの発育が、部分的とはいえ順調に進んでいることが分かり、関
 係者を安心させている。
  確認したのは、黒島のサンゴ群落を約十年間、定点観測しているダイ
 ビングショップ経営の小倉完治さん(48)。
  観測場所は約三百メートル四方に広がる黒島周辺で最も大きなサンゴ
 群落。産卵したのはテーブル状や枝状のミドリイシの種類という。
  サンゴの産卵は五月から八月にかけての満月の夜を中心に行われ、潮
 が引くのと同時に始まる。
  小倉さんによると、今回の産卵は例年より四日遅れ。午後九時四十五
 分から約一時間、無数のピンク色の粒(直径約一ミリ)が、一斉に海面
 へ向かって浮遊する神秘的なシーンが見られたという。
  小倉さんは「確認したサンゴ群落は潮の通りのよい所なので無事産卵
 できたのだろう。白化現象でサンゴが完全に死滅してしまった場所でも
 早く再生してくれることを望む」と話している。(写真説明)写真上は
 一斉に産卵するサンゴ。下は海中を浮遊するサンゴの卵=小倉さん撮影
1999/06/09 沖縄タイムス
 サンゴの卵を追跡 回復過程の解明へ 東工大など研究チーム 慶良間
  から本島に漂着
1999/06/09 沖縄タイムス    
  慶良間諸島で産まれたサンゴの卵が沖縄本島周辺に漂着し、さんご礁
 の回復に役立っていることが四日までの東京工業大などの調査で明らか
 になった。研究者らは、慶良間やチービシが本島の卵の供給源だとする
 仮説の重要な根拠として「沖縄全体のサンゴ保全が無理ならば、最低限
 ここだけは守っていく必要がある」と話している。サンゴの卵の行方を
 物理的に追跡した調査は、世界でもほとんど例がないという。
  調査は東工大のほか、郵政省沖縄電波観測所、亜熱帯総合研究所、県
 水産試験場、県衛生環境研究所、琉球大、阿嘉島臨海研究所などの共同
 研究。昨年全世界で発生し、県内のサンゴにも大きなダメージを与えた
 白化現象の要因や回復過程などを解明するため、七月まで県内で観測を
 行う。
  調査は、白化からの回復が鈍い本島周辺のさんご礁と比べ、健康なサ
 ンゴの多い慶良間やチービシでは早く回復していることに着目。赤土汚
 染などとの関連性を調べる中、阿嘉島などでサンゴの卵の移動や広がり
 の過程を探った。
  先月三十一日ごろから始まったサンゴの一斉産卵に合わせ実施。二日
 までに阿嘉島周辺で産卵を確認した三カ所にブイを浮かべ、カーナビゲ
 ーションなどに使われる人工衛星追跡システム(GPS)で行方を追っ
 た。卵はいずれも約一日半慶良間海域を回遊し、海峡の北側に出た後、
 東に向け漂流した。
  研究チームは三日、慶良間と本島の中間にあるチービシ付近まで達し
 たのを確認。ブイを回収するなど追跡を終了した。卵は潮流やこの時期
 の南風に乗り、早ければ三―四日で本島西海岸に漂着する計算になる。
  今後、四十キロ四方の海面の流れを二時間ごとに測定できる郵政省沖
 縄電波観測所のHF(海洋)レーダーを使い、流れる経路などをさらに
 詳しく解析する。
  調査した東工大助手の二瓶泰雄さんは「予想以上の結果。赤土やオニ
 ヒトデの被害で弱っている本島のさんご礁が生き返るための卵の供給源
 として、慶良間やチービシの果たしている役割が分かった」と意義を説
 明。その上で「慶良間が壊されれば、沖縄のさんご礁は再生しなくなる
 かもしれない」と保全の重要性を強調している。
  調査の背景として、阿嘉島臨海研究所が一九九一年、サンゴの一斉産
 卵に合わせてラミネート加工のはがき千枚を流し、本島への漂着を確認
 した実績がある。卵が生きているとみられる一カ月間で本部町、恩納
 村、読谷村、那覇市など本島各地から十六枚を回収した。
  同研究所の岩尾研二さんは「今回の調査は当時の実験を裏付けること
 になる。本島の環境を守るためにも、慶良間のサンゴを健康に保ってお
 かなくてはならない」と話している。(写真説明)サンゴの一斉産卵。
 調査で卵が本島に供給されていることが分かった=1日夜、座間味村・
 安慶名敷島
1999/06/03 沖縄タイムス
  月夜にサンゴの産卵ショー 座間味・白化回復、ダイバーらホッと
  月夜に繰り広げられる夏の風物詩サンゴの産卵。座間味村の安慶名敷
 島で1日夜確認された。産卵ショーは月が雲に見え隠れする中、潮が沖
 合に流れ始めた午後10時30分ごろから約30分間続いた。
  産卵したのは、枝状やテーブル状のミドリイシの種類で一斉に卵を放
 出。一帯はピンク色の粒が海面に向かって浮遊し、幻想的な雰囲気を漂
 わせた。
  昨年は異常気象のためか一斉産卵は見られなかった。また、白化でダ
 メージを受けたサンゴの産卵だけに地元ダイバーらは安心した様子で見
 守った。
  サンゴの産卵は、満月の夜を中心に8月まで行われる。(写真説明)
 次々と海中にピンク色の卵を放出するサンゴ=1日午後10時40分ご
 ろ、座間味村・安慶名敷島
1999/06/03 沖縄タイムス
  黒島観光 白化のサンゴ移植、再生へ
【竹富】白化現象によって壊滅的な打撃を受けた竹富町黒島の仲本海
 岸のサンゴを再生しようと、黒島観光組合(小倉完治組合長)はこのほ
 ど、サンゴの移植作業を実施した。
  仲本海岸は遊泳する熱帯魚の種類が多く黒島一のシュノーケリングポ
 イントといわれる。
  人工移植でサンゴの復活を促進しようと同組合が呼び掛け、五月二十
 六日、八重山海中公園研究所の許可を得て、研究所職員や観光客のダイ
 バーら八人が移植作業に参加した。
  移植されたサンゴは十センチ前後の「エダミドリイシ」で総量約三十
 キロ。こけなどを取り除いた海底の岩やくぼみの計百カ所に水中ボンド
 でサンゴを接着した。

  サンゴの移植は、組合が六年前から試験移植を実施して成果を挙げて
 いる。うまく接着すれば一年で十センチ以上成長するという。
  今年十月ごろに成育状況を観察し、成育が悪いときは冬にも移植を行
 う予定。
  小倉組合長は「一日も早くサンゴが回復し、観光客にきれいな海を見
 せてあげたい」と話している。(写真説明)海底でサンゴを移植する組
 合員ら=黒島の仲本海岸
1999/04/17 沖縄タイムス 
 守られた白保のさんご礁 白化現象が終息、回復へ
 死滅した黒っぽい藻に覆われたエダサンゴの群落のあちこちで、新し
 いサンゴが芽生えていた―。
  昨年、サンゴの白化現象が地球規模で拡大、日本でも沖縄のさんご礁
 を中心に広がった。空港建設問題をきっかけに、さんご礁の保護が世界
 的に盛り上がった石垣島の白保の海がどうなっているか、潜ってみた。
  海底の砂地にエダサンゴの死がいが散乱していたが、世界最大最古と
 いわれるアオサンゴ群落には、ほとんど白化の痕跡は見られず、果てし
 なく続く山脈のような姿を見せる。巨大な塊状ハマサンゴも一部白化し
 たものの、ほぼ回復。ミドリイシやユビエダハマサンゴに囲まれて、ウ
 スコモンサンゴは咲き誇る花びらのようだ。

  白化現象は海水温の異常な上昇が主な原因と考えられているが、絶え
 ず新鮮な海水が流れ込む白保の海の特殊な地形がサンゴを守ったようだ
 。
  地元で活動している世界自然保護基金日本委員会の小林孝さんは「今
 のところ白化現象は終息し、着実に回復に向かっている」と断言する。
 さんご礁をはぐくむ海の環境がしっかりと保全されていれば、被害を最
 小限に食い止めることができ、回復への道のりも遠くはないだろう。
 i 写真説明)世界最大最古といわれるアオサンゴの群落は白保の海の象
 微だ=石垣市白保、水深1メートル
1999/04/16 沖縄タイムス
[新刊紹介] 「サンゴ礁は異状事態」 (文・土屋誠、写真・屋比久壮実、
  植田正恵、土屋誠)
 琉球大学でサンゴを専門とする教授や卒業生らが、サンゴを通して地
 球規模の環境保護を訴える。カラー写真をふんだんに使い、サンゴ礁生
 態系が周囲の生態系、つまり森林や河川の生態系と三位一体の関係にあ
 ることを説明。世界各地で起こる異常気象による自然災害の多発、サン
 ゴの白化現象などを挙げ、「サンゴ礁は地球全体から見れば一つの小さ
 なシステムであるが、そこで観察される現象は地球全体を考えるさいの
 極めて大きな手助けになる」と主張している。(沖縄マリン出版・16
 00円)(写真説明)「サンゴ礁は異状事態」
1999/04/02 沖縄タイムス
   [読書] 珊瑚 鈴木克美著 (法政大学出版局・3200円) 
 著者はサンゴを「宝石サンゴ」「岩石サンゴ」「化石サンゴ」に分け
 て述べている。「岩石サンゴ」とは造礁サンゴのことで、現代われわれ
 にもっとも関心のあるサンゴだが、実をいえば、さんご礁がわが国でこ
 れほど一般的になったのは、ここ二十年ぐらいのことにすぎない。とこ
 ろが、「桃太郎」が鬼が島から積んで帰る宝物は「金、銀、珊瑚(さん
 ご)、綾錦」であり、このおとぎ話の成立した平安時代にはサンゴはす
 でに宝石だったのだ。だから、文化史的に言えば当然ながら、「宝石サ
 ンゴ」に多くのページがさかれている。
  宝石サンゴはヨーロッパでは旧石器時代の遺跡から発見されている。
 ギリシャ神話、旧約聖書、ローマ時代のプリニウスの博物記からはじま
 り、オスカー・ワイルドの「サロメ」の台詞(せりふ)、シェークスピ
 アの「テンペスト」に表れるサンゴなどサンゴにまつわる話は尽きない
 。
  さてわが日本では、正倉院御物の中のペルシャ風礼冠には赤いサンゴ
 の管玉(くだたま)と丸玉がつけられている。このサンゴは地中海産の
 べニサンゴだといわれている。当時はシルクロード交易の栄えた盛唐の
 時代だから、べニサンゴがシルクロードを経て、はるばるアジア東端の
 日本にやってきてもおかしくはない。
  かつてカトマンズで宝石屋をひやかしたとき、地元の人がよく買う赤
 いネックレスのサンゴがどこからきたかと尋ねたところ、「これは山サ
 ンゴというのだ」という返事だった。しかし、山から赤い宝石サンゴが
 採れるはずはない。この本によれば、地中海のべニサンゴがシルクロー
 ドを運ばれてきたものだ。チベット人はサンゴが大好きで高価に取り引
 きされている、というマルコポーロの報告も引いてある。アジアのサン
 ゴ文化史とシルクロードは切り離すことができない。
  驚いたり感心したりしているうちに読み終わってしまうという不思議
 な本だ。というわけで、「サンゴの古今東西故事来歴物語」とでも呼ん
 でおこう。(木崎甲子郎・琉球大学名誉教授)(写真説明)鈴木克美著
 珊瑚(法政大学出版局・3200円)
1999/03/30 読売新聞 
  白化サンゴ、復活の兆し 南太平洋・パラオの海水温度が戻る
   二年前から世界的に広がったサンゴの白化現象で被害が深刻だった南
 太平洋・パラオ共和国近海のサンゴが復活の兆しを見せている。海水温
 度が通常に戻ったためとみられ、一時は約70%まで白化したダイオウ
 サンゴの表面にサンゴと共生して栄養を補給している褐虫藻(かっちゅ
 うそう)が付着、褐色がよみがえり、生命力の強さを見せている=写
 真、大久保忠司撮影。
  地元ダイバーの話では、平年よりも海水温が二、三度も高かった昨夏
 には、ほぼ半分に白化が見られた。その後、海水温度の低下とともに回
 復が進んでおり、現地のダイビングガイドの辻真吾さん(30)は「自
 然が治癒してくれるのを祈っている」。
1999/03/24 読売新聞
  サンゴの健康を魚の数で診断 環境庁・外郭団体が南西諸島で着手/鹿
  児島・沖縄
   サンゴ礁に住むミスジチョウチョウウオ=写真、板垣雄弼さん提供=
 の生息数を確認し、サンゴの変化を調べる「全国サンゴ礁健全度調査」
 が今月から南西諸島海域で始まった。環境庁の外郭団体、財団法人・海
 中公園センター(東京都港区)の主催で、全国規模のサンゴ礁の実態調
 査は、環境庁が一九九〇年に行って以来、九年ぶり。
  昨夏、海水温上昇によるサンゴ白化現象が発生したことなどから計
 画。ミスジチョウチョウウオは体長約十二センチで、サンゴ礁では最も
 よ く見られる熱帯魚。鮮やかな黄色でダイバーが観察しやすく、サン
 ゴのポリプ(軟体部)を食べるため、数の変化でサンゴの健全度を推測
 でき る。
  対象海域は鹿児島県・奄美大島から沖縄県八重山列島にかけて。ダイ
 バーが分速二十五メートルほどで泳ぎながら、幅約三メートルを約十分
 間観察し、確認できたミスジチョウチョウウオの数やサンゴの形状、海
 底を覆う割合などを記録する。
  一般ダイバーに調査への参加を呼び掛けており、センターの藤原秀一
 主任研究員は「サンゴ礁を守るための第一歩として、今年は基礎的なデ
 ータを得て、来年以降の継続調査に役立てたい」と話している。八月ま
 でで、問い合わせはセンター(03・3459・4605)へ。
1999/03/05 読売新聞
[眼99]海を渡る国道〈5〉白化 死滅……サンゴ無情(連載)
  「昔は、鯨が打ち上げられることもあった」と聞いた。竜郷町の湾
 口、くじら浜。沖は透明度が高く、夏が近付くとともに、ダイビングの
 初 心者向けスポットとして人気がある。
  昨年夏、直径二メートルを超えるテーブルサンゴなどに異変があっ
 た。白化し、やがて茶に変色していく。
  白化は、エルニーニョ現象とのかかわりが指摘される。海水温の上昇
 を嫌ってサンゴの体内に共生する生物が抜け出し、石灰質の骨格の中で
 暮らす軟体部が死んでしまう。サンゴは、やがて波に洗われて崩れてい
 く。生から死へ。自然界の無情なドラマが展開された。
  被害は沖縄県から鹿児島県本土にまで及んだ。くじら浜沖のサンゴ
 は、十数年前のオニヒトデ被害から復活してきただけに地元のショック
 は 大きかった。
  その海を、カラフルな熱帯魚たちが泳ぎ回る。「異常気象が続いた
 ら、いずれこの魚たちにも……」。不安は去らない。
   
  写真=死滅し藻がつくテーブルサンゴ群(上)と、昨年9月撮影の白
 化したサンゴ(右)(奄美大島の竜郷湾で)
1999/03/05 南日本新聞
   昨夏の高水温原因か、ダイバーらも落胆/桜島沖のサンゴが死滅
  鹿児島郡桜島町の袴腰沖で死滅したサンゴの一種トゲトサカは赤、ピ
 ンクなど色鮮やかで、袴腰沖一帯はダイバーの間で「鹿児島湾の花畑」
 として人気があった。ダイバーらによると、昨年夏の終わりごろからト
 ゲトサカがしおれたようになり、十月ごろには大部分が死滅したという
 。(1面参照)
  鹿児島湾に潜って、魚の写真を十年以上撮り続けているかごしま水族
 館の出羽慎一さん(29)は、昨年十月に袴腰沖のトゲトサカの異変に
 気づいた。「初めは盗掘かと思ったが、調べてみると下の方に死がいが
 厚さ三、四十センチも積もっていた。五十メートル四方ぐらいに生息し
 ていたと思うが、残っているのはほんのわずか」と話す。
  二十年ほど前から現場に潜っている鹿児島市坂元町のダイビングショ
 ップ経営、鳥越林さん(48)によると、袴腰沖ではサンゴのほかにエ
 イやクロイシダイも見られ、県外からもダイバーが毎年訪れるという。
 「中でもトゲトサカは一番の目玉。先月久しぶりに潜り、場所を間違え
 たかと思ったほど」とショックを隠さない。
  鹿児島大学理学部の塚原潤三教授(生命化学)は「原因として考えら
 れるのはまず昨年の夏に続いた高水温。トゲトサカは他のサンゴのよう
 に褐虫藻と共生していないため白化を免れ、被害は見えなかった。が、
 実際は影響を受け、時間をおいて変化が現れたのではないか」と話して
 いる。 
1999/03/04 沖縄タイムス
 ミスジチョウチョウウオを捜して 県内ダイバーに調査協力求める 
東京の海中公園センター
   ダイバーの皆さん、ミスジチョウチョウウオを捜して―。白化や赤土
 汚染などが懸念されている沖縄のさんご礁の保全に役立てようと、財団
 法人海中公園センター(東京都)は三月から一般のダイバーに調査への
 協力を求めるユニークな呼び掛けを始めた。
  調査範囲は南西諸島の奄美以南で、沖縄は県内全域が対象。サンゴを
 えさにしているミスジチョウチョウウオの数を記録する調査法で、サン
 ゴの健全度を測り、保全活動の指標とする。
  調査するダイバーは、水深十メートルより浅い場所で十分間観察。ミ
 スジチョウチョウウオのほか、オニヒトデの有無、生きているサンゴが
 海底を覆う割合(被度)などを記録し、調査票で報告する。赤土汚染の
 状況など気付いたことを記入する欄も設けられている。
  協力できるダイバーは同センター、電話03(3459)4605ま
 で。(写真説明)10分間に観察した数を記録するミスジチョウチョウ
 ウオ(撮影・大方洋二)
1999/03/03 沖縄タイムス
サンゴ白化現象の 生態系影響など調査 参院予算委で環境庁長官
 【東京】真鍋賢二環境庁長官は二日の参院予算委員会で、沖縄近海で
 見られるサンゴの白化現象が生態系に及ぼす影響や保全に取り組んでい
 く意向を表明した。同庁が所管する環境基本計画調査費約千九百万円を
 活用し、昨年夏に沖縄近海で発生したサンゴ白化のモニタリング調査な
 どを進めていく考えだ。照屋寛徳議員(社民・護憲)の質問に答えた。
  長官は来年度以降の取り組みとして「石垣市に設立する予定のさんご
 礁研究モニタリングセンターを中心にサンゴの回復状況について情報の
 収集、提供に努めていきたい」と述べ、さんご礁の保全について継続的
 に取り組んでいく認識を示した。

  また、一九六〇年代から七〇年にかけて嘉手納基地内にPCB(ポリ
 塩化ビフェニール)が投棄されたとされる問題に関しては「米側の環境
 専門家チームが実施した調査結果も見ながら、関係当局および県とも連
 携しながら適切に取り組んでいきたい」と語った。
  野呂田芳成防衛庁長官は、沖縄の米軍基地問題について「米軍の施設
 や区域が多く存在することによって沖縄の開発振興、発展を制約し、生
 活や経済活動を圧迫していることは認識している。このような事態を解
 消するためSACO(日米特別行動委員会)を着実に実施することが県
 民の負担を軽くすることになる」と語った。基地が集中する理由に関し
 ては地理的な優位性を強調した。
1999/02/08 毎日新聞
あなたのニュース写真'98の年間賞・グランプリ受賞の海洋写真家
 <いのうえ・しんやさん、大阪府河内長野市出身。写真集は「ゆかい
 な魚 大集合」(講談社・96年)など。愛称きんどん。27歳>
  ◇潜っていると、いやな心が海に溶け出す
  この人の撮る沖縄の海はいつもやさしいのに、受賞したサンゴ白化現
 象の写真は不気味。死滅したサンゴの上を泳ぐ白い水着の女性が救いだ
 ったけれど。水中写真家の中村征夫(いくお)さんが「心が揺さぶられ
 た。すばらしい完成度とニュース性」と手放しでほめた。
  1カ月のオーストラリア取材から帰ったばかり。「びっくりでした。
 やったーと。ネーチャー写真コンテストなどで賞をもらっていますが、
 最近出してませんでしたから」。日焼けした顔をほころばせ、折り目正
 しい受け答え。
  「白化現象はあっという間に広がりました。サンゴが全滅してしま
 う、それを多くの人に知らせたかった」。前日ボートを出して撮影ポイ
 ン トを決め、狙いすまして撮った。海中ではフィルム交換ができず毎
 回、真剣勝負である。
  小学生のとき耳が聞こえにくくなり会話が不自由。思春期には悩ん
 だ。海に潜るのが好きで琉球大学海洋学科へ。ダイビング部で沖縄の海
 と 人に囲まれて暮らすうち悩みは消えた。「潜っていると自分のいや
 な心が海に溶け出す。そんなとき海の優しさや強さを分けてもらってる
 と感 じます。海で写真を撮るのは、海の優しさと強さを少しでも自分
 の中にとどめておこうとしているからかな」
  卒業後も水納(みんな)島、与那国島、久米島でアルバイトをしなが
 ら写真を撮っている。今は大阪の実家を拠点に海外取材中。今後の抱負
 を聞いたら、「海の生き物を撮りに行くのですが、つい、それ以外の何
 かを求めてしまう。接するものを素直に受けとめられるようになりたい
 」と。哲学的な答えだった。
  <文 編集委員・佐竹通男/写真 写真部・北田研索>
1999/01/19 沖縄タイムス
異常気象に思う 安里善好 「経済優先」の人災だ 公害防止と環境保護
  人類が自然環境を乱し、経済優先で排気ガスや大気汚染を排出し続け
 た「しっぺ返し」に、昨年は自然界が悲鳴を上げた。ついに異常気象と
 なって世界各地で、牙(きば)をむき出して猛威を振るい表面化した。
  アメリカでは異常なほど竜巻が発生して、多くの人たちが痛ましい災
 害に遭っている。また、ヨーロッパやアジアでも、異常気象だと思われ
 る自然界の異変は、各地に集中豪雨を降らせ大洪水となって、犠牲者を
 伴う災害を引き起こした。
  お隣の韓国や中国でも歴史に残る豪雨で大河が氾濫(はんらん)、相
 当な犠牲者を出す大混乱に遭っている。
  日本国内でも犠牲者を含む無惨な洪水災害を被った。
  昨年十二月二十六日の本紙夕刊の記事に、地球の温暖化によるさまざ
 まな弊害が解説付きで報じられた。そのシナリオは「気候変動に関する
 政府間パネル(IPCC)が、今年四月にまとめる特別報告書の概要と
 はいえ、二十一世紀末までの温度上昇が三度近くになるとの予報をして
 いる。
  地球温暖化の予測はショッキングな内容であった。その公害防止対策
 を急ぎ、自然保護対策を一層強化すべきである。
  各国の政府間に世界環境問題対策会議等々があるように記憶する。し
 かし、連日のように自然破壊、環境問題、産業廃棄物処理等々が危機と
 して、マスコミで報じられている。
  その防止対策はないのか、規制はできないのか疑問である。今、自然
 保護や環境問題は、一人ひとりが真剣になって考えるべきテーマである
 。
  正月二日、何気なく見た衛星放送のテレビ番組に、アフリカ、ケニア
 での世界子供会議の模様が紹介されていた。小学五、六年生ぐらいの各
 国の男女生徒のようであった。日本の子供たちも数人参加していた。世
 界の環境問題に関する話し合いのようであった。
  子どもたちは政治家に負けぬ口調で、人間の暮らしと自然保護の大切
 さを述べていた。木を切らないこと、地球の未来はみんなの未来であり
 、地球を守る「隊」の未来は任せて―などと叫び、またケニアの同世代
 のストリートチルドレンたちと触れ合って、リサイクルの重要性も主張
 していた。
  二十一世紀を担う子供たちも真剣に、大人社会の矛盾を鋭い視点から
 指摘していた。
  各国が保護規制なく、山林や自然環境を破壊し経済発展だけを先行し
 て、環境汚染を続けるならば、ますます温暖化は加速するであろう。
  その結果、台風は減り海流がよどみ海水温度が上昇して、サンゴの白
 化現象という深刻な事態を引き起こしている。
  この異常な気象環境と地球温暖化を世界各国が危機として実感し、ア
 マゾンの先住民やアイヌの方々の指摘に耳を傾けて反省し、生命が存在
 する素晴らしい地球を二十一世紀の未来っ子たちに託すのが、現世人類
 の義務だと心得る。(浦添市安波茶一ノ二〇ノ一九=投稿)(写真説明
 )安里善好
1999/01/07 沖縄タイムス
亜熱帯総研 県の支援要請 垣花理事長が県に
  亜熱帯総合研究所の垣花秀武理事長は六日、県庁に石川秀雄副知事を
 訪ね、同研究所への県の支援を要請した。
  要請では、山里清所長から概要や研究内容の紹介があり、来年度もサ
 ンゴの白化現象などの調査を実施していくとの説明があった。垣花理事
 長は「亜熱帯研究所の果たす役割は大きく、小さな研修施設だが、国際
 的にも通用するし、若い研究者も育っている」と話した。
  石川副知事は「県としても亜熱帯の研究は重要と考える。協力を続け
 たい」と答えた。


1998年
1998/05/06 毎日新聞
サンゴ栄養不足 白化現象、広範囲に??豪・グレートバリアリーフ
◇水温上昇、藻育たず??グリーンピース調査
巨大なサンゴ礁で有名なオーストラリアのグレートバリアリーフで、
サンゴが死滅する白化現象が深刻になっていることが6日、国際環境保
護団体「グリーンピース」が発表した調査報告で明らかになった=写
真・グリーンピース提供、ロイター。
 今年3月、グレートバリアリーフの南に位置するヘロン島一帯のサン
ゴの80%に白化現象がみられたため、グリーンピースが4月、サザン
クロス大学の研究者を派遣して調査した。
その結果、3月に白化現象が確認されたサンゴの10?40%が白化
した状態のまま残っており、10?20%はここ1?2カ月で死滅した
ことが分かった。
 サンゴの多くは体内にすむ単細胞の藻が光合成でつくった栄養分を吸
収している。しかし、水が汚れたり、水温が上昇すると、藻が十分生息
できなくなり、栄養不足になったサンゴは白化し、やがて死滅する。
 グリーンピースは「地球温暖化による海水温の上昇が原因。温室効果
ガスの排出削減にいますぐ取り組む必要がある」と話している。【高野
 聡】 
1998/09/04 読売新聞
サンゴ白化現象、死滅の恐れ 鹿児島―沖縄の海域 高水温で共生藻
"家出"
  サンゴが白く変色する白化現象が、鹿児島県沿岸から沖縄県の先島諸
 島までの海域で広範囲に発生している。猛暑などで平年より水温の高い
 状態が続き、体内に共生している養分供給役の褐虫藻(かっちゅうそ
 う)が出ていったためとみられている。専門家の話では、今回の現象は
 規 模、範囲とも過去最悪で、国内だけでなく南太平洋やインド洋にま
 で広がっているといい、このままではサンゴが死滅して、サンゴ礁の生
 態系 にも影響が及ぶと心配されている。
  鹿児島県・奄美大島の竜郷湾くじら浜沖では、水深四、五メートルの
 海底を埋め尽くすテーブルサンゴやエダサンゴが、本来の緑色や褐色が
 抜けて真っ白になっている。その様子は、近くの高台からも白くはっき
 りと見て取れる。
  地元のダイバー窪島修さん(40)によると、八月中旬から白化し始
 め、下旬になって一気に全域に広がった。「約十年前のオニヒトデの大
 被害からようやく復活し、やっとテーブルサンゴが二メートルまで成長
 したのに」と窪島さんは残念がる。
  白化しているのは、各地とも水深二―十メートルの浅い所が主で、水
 温が三十度前後と例年より一―二度高い。いつもの年であれば台風が海
 水をかくはんし、水温の上昇を抑えるが、今年はまだ台風の接近がな
 い。
  沖縄県本部町の琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底実験所の中野義
 勝文部技官(サンゴ生物学)によると、白化現象は海水汚染や高い水温
 が続くと起きる。サンゴと共生藻が共生を"解除"する理由ははっきり
 とは分かっていないが、一九八〇年代にも数度、沖縄で報告例がある。
 白化現象が四十日程度続くと50%のサンゴが死滅する可能性もあると
 いう。
  中野さんは、「地球規模の環境変化と関係がありそう。南西諸島では
 これから海水温が下がり始めるが、どれだけ生き残れるか心配だ」と話
 している。
       
  写真上=水深4メートルの海底に広がる白く変色したミドリイシ科の
 テーブルサンゴ群
  写真下=高台に上ると、広範囲に白化したサンゴ群が見えた(3日、
 鹿児島県竜郷町のくじら浜で)=いずれも中山浩次撮影
     
                      ◇
 <サンゴと共生藻> サンゴは触手を使って動物プランクトンなどを捕
 食するが、栄養の大部分は、体内に共生している褐虫藻が光合成で作り
 出す有機物に頼っている。サンゴ自体の骨格は石灰質で白色だが、共生
 藻の色で緑や黄色、褐色などに見える。
1998/09/06 南日本新聞
サンゴ白化現象、桜島・古里沖でも確認/無数の穴、まるで軽石
  種子島西岸、鹿屋市高須海岸沖などで見つかったサンゴの白化現象
 が、桜島近くの海でも発生していることが、南日本新聞社の調べで五日
 ま でに分かった。現場の海に潜ったところ、海底には白骨化したサン
 ゴが点在し、荒涼とした風景が広がっていた。(社会部・児島慈子)
  白化が発生していたのは鹿児島市古里町の避難港から約三十メートル
 沖合の水深三―五メートルほどの浅瀬。避難港から西へ泳いでいくと、
 白っぽい塊が点在しているのが目に入ってきた。透明度は約三メートル
 で、水中は浮遊物が多い。近づいてみると白化したサンゴだった。
  白化していたのは、シカの角のような形をしていることから、"シカ
 ヅノサンゴ"と呼ばれるミドリイシ属のサンゴ。横に細い枝を広げてお
 り、直径三、四十センチのものから一メートルを超えるものまでさまざ
 まな大きさのサンゴが、褐色や赤色のサンゴに交じって白く変色してい
 る。全体が白化したものや上部だけが白くなったものなどがあり、白化
 は浅瀬にいくほどすすんでいる。白化した部分を二、三十センチの至近
 距離で見ると、ポリープがあったと思われる無数の穴がある。白化した
 枝はまるで軽石で作った骨のようだ。
  一帯は桜島周辺では有数のサンゴの生息地。鹿児島大学名誉教授の平
 田國雄さん(細胞学)によると、錦江湾には約五十種類のサンゴが生息
 しており、その中でミドリイシ属が八割強を占めるという。
  鹿児島大学水産学部の四宮明彦助教授によると、サンゴは単細胞の藻
 類である褐虫藻と共生している。褐虫藻によって彩られており、水温が
 上がったことで変化に弱い褐虫藻がサンゴから逃げだし、白色化につな
 がっているのではないかと考えられるという。「サンゴは魚と異なり、
 どこにも逃げられない。褐虫藻がいなくなったサンゴは漂泊されたよう
 になり、まさに白骨だけが残る」と話す。
  避難港周辺で潜っているダイバーによると、今夏は水温が高く「お湯
 につかっているようだった」という。ダイバーらは「高水温が続けば、
 かなりの広範囲でサンゴの生息が危機に見舞われるのではないか」と白
 化の広がりを懸念している。
南日本新聞 1998/09/06
サンゴ白化現象、十島村中之島沖でも確認
  鹿児島郡十島村の中之島でも五日、同島南西の船倉、寄木集落沖で白
 化現象を起こしているサンゴが見つかった。海中が白く見えるのを不審
 に思った田中博幸中之島支所長(45)が調査、岸から沖へ向かって約
 百メートル、幅約一キロにわたり、白色に変色したサンゴを発見したと
 いう。
  同島近海は豊富なサンゴと高い透明度で知られ、年間約千人のダイバ
 ーが訪れる。田中支所長は「白化が回復しなければ、ダイバーの減少に
 つながるのでは」と危ぐしている。 
1998/09/10 読売新聞
サンゴ死滅 無残な黄変 白化現象がさらに拡大/鹿児島・奄美沿岸
  鹿児島県から沖縄県にかけての広い海域で、水温上昇などが原因とみ
 られるサンゴの白化現象が起きるなか、鹿児島県・奄美大島沿岸では白
 化したサンゴの表面に海中を漂っている藻類が付着、黄変してしまう現
 象が、十日までに新たに確認された。藻類が付着するのは、サンゴに共
 生している養分供給役の褐虫藻(かっちゅうそう)が抜け出してしまう
 白化現象が四十日間ほど続き、その結果、サンゴが死んでしまったため
 とみられており、専門家らは白化に続く黄変現象の拡大に心配を募らせ
 ている。
  サンゴの黄変現象が確認されたのは、名瀬市の大浜海浜公園の沿岸。
 干潮時、浅瀬をのぞくと、白くなったサンゴの中に、黄色や茶色っぽく
 見える部分があることが分かる。
  奄美海洋展示館職員で、サンゴを観察している興克樹さんによると、
 同公園付近では八月末ごろから藻の付着が徐々に広がり、周辺に生息す
 るサンゴの約三割が死滅したという。今月に入って、海水温は八月より
 下がったものの依然三十度近く、興さんは「これからも死滅するサンゴ
 が増えそうだ」とみる。
  専門家によると、サンゴは生きている時、骨格の表面の無数の穴に生
 息するサンゴの個体(ポリプ)同士が粘膜でつながって、骨格全体を覆
 っている。それが、白化が四十日ほど続くと、50%のサンゴは栄養不
 足から死んでしまって骨格がむき出しになり、各種の藻が付着しやすく
 なる。藻が絡み付いて黄変したサンゴは、ついには骨格までも崩れてい
 くという。
  沖縄県本部町の瀬底島にある琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底実
 験所で、サンゴの生態について研究している文部技官の中野義勝さんに
 よると、同島の周辺ではサンゴの70%が白化現象で死滅し、藻の付着
 が見られるようになった。しかし、潮通しの良い同島北部では、九月に
 入って褐虫藻が徐々に戻り始めている所もあるという。
  中野さんは、「サンゴに褐虫藻が戻るかどうかは、場所や今後の水温
 の変化などにもよる。白化現象が起きた海では、他の水中生物も環境の
 変化からストレスを受け、水産資源全体にゆっくりと影響が広がる恐れ
 がある」と指摘している。
  
  写真=白化現象が一段と進み、藻が付着して黄色や茶色に変わってし
 まったサンゴ(9日午後3時、鹿児島県名瀬市の大浜海浜公園で)=村
 岡経世撮影
1998/09/10 南日本新聞
8月下旬から激変、名瀬市・立神岩付近でサンゴの白化現象進む
  鹿児島県本土から奄美、沖縄周辺海域などで確認されているサンゴの
 白化現象が、奄美大島・名瀬湾の立神岩付近では八月中旬からの二十日
 ほどの間に急速に進んでいたことが、分かった。八月十六日には正常に
 見えていたテーブルサンゴが、九月六日には大半が真っ白に変化してい
 た。
  白化現象は海水温度が三〇度を超えると、植物プランクトンを供給す
 る褐虫藻が逃げ出し、サンゴが栄養失調になって発生する。
  名瀬市の映像会社クリエイション奄美(大野睦夫社長)が撮影したサ
 ンゴは群落のはずれにあり、大きさは一メートル弱。当初八月十六日に
 撮影した際には、異常に気付かなかったという。今月六日に確認したと
 ころ、かさ状になった部分などで白化現象が進行している様子が分かっ
 た。周囲の群落でも白色が目立っている。
  名瀬市の大浜海浜公園でサンゴの定点観測を始めた奄美海洋展示館も
 「サンゴの白化現象が急速に進んだ可能性がある」と指摘。ダイバーら
 によると、奄美大島一帯で水深二十メートル付近でも海水温度が三〇度
 近くあるという。大野社長は「台風がこないことには、水温が下がらな
 いのでどうにもならない」と話している。
98/09/12 読売新聞
南西諸島などのサンゴ白化監視システム確立へ 日本珊瑚礁学会
  南西諸島などでサンゴが白化現象により死滅の危機にひんしている問
 題で、日本珊瑚礁学会(事務局・東京)が全国規模でのサンゴ観測シス
 テムの確立に乗り出した。これまでは、各地で研究者が個別に観測する
 だけで、データの集約がなかった。十一月に東京で開催される学会で正
 式に提唱し、来春からの観測開始を目指す。
  システム作りを提案したのは、琉球大熱帯生物圏研究センター瀬底実
 験所(沖縄県本部町)の技官で、サンゴ生物学専攻の中野義勝さん。研
 究家間のネットワークを組織して白化現象などの監視システムを確立
 し、インターネット上にホームページを開くなど情報の提供も図る。
1998/09/15 沖縄タイムス
サンゴの白化現象は広範に ヘリで本島西海岸を調査 亜熱帯総研
  サンゴの白化現象について亜熱帯総合研究所は十一日、本島西海岸で
 ヘリコプターによる初めての調査をし、被害が一カ所でなく広い範囲に
 点在していることをあらためて確認した。同研究所では「危機的な状
 況。離島も含む県全体に拡大している恐れがある」として、今後注意深
 く 監視していく必要性を強調している。
  調査は恩納村の沿岸上空から名護湾にかけて実施。ほぼ全域で無数の
 白く変色したサンゴが見られた。特に恩納村屋嘉田や部瀬名岬、名護市
 の21世紀の森ビーチなどの沖で被害が大きく、リーフ全体が白化した
 場所もあったという。
  地球温暖化に伴う海水温の上昇などが原因とされ、世界的な異常気象
 の中、オーストラリアなど各地で被害が続出。サンゴの色彩のもとにな
 っている褐虫藻が体外に放出されるために起こり、そのままの状態が続
 くと栄養補給ができなくなったサンゴは死んでしまう。
  同研究所は被害拡大の理由について「温暖化に加えて今年は台風がほ
 とんど来なかったため海がかくはんされず、さらに水温が上昇した」と
 指摘。「人工衛星のデータなども使い、県内全域で継続的にモニタリン
 グしていく必要がある」と危機感を強めている。
  環境庁も来年、石垣市に開設予定の「サンゴ礁研究モニタリングセン
 ター」を拠点に調査を始める方針を示している。(写真説明)海水温度
 上昇が原因か、サンゴの白化現像が進む県内のさんご礁=10日午後3
 時、宜野湾マリーナ沖合
1998/10/08 沖縄タイムス
防ごうサンゴの絶滅 白化現象で研究者ら会議・那覇
  南西諸島から九州南部を中心とする海域でサンゴの白化現象が広がっ
 ている問題について話し合うサンゴ礁白化問題関係会議(主催・亜熱帯
 総合研究所)が七日、那覇市内の自治会館で開かれた。県内外から研究
 者や自治体関係者ら約二十人が参加、白化現象の原因を分析し、さんご
 礁の絶滅防止に向けた各機関の連携を確認した。
  参加者の報告では、今年は平年に比べ海水温が高く、その影響で同現
 象が県内各地の近海から奄美大島、種子島、九州地方にまで及び、サン
 ゴが死滅する危機的状況が広がっているという。亜熱帯総合研究所の山
 里清所長は各研究機関などが持つ情報を集約し、対応を協議できるネッ
 トワークづくりの必要性を訴え、県や団体の枠を超えた関係者の連携を
 進めることを提言した。
  琉球大学の熱帯生物圏研究センターの中野義勝技官は「(同現象は)
 これまでもしばしば見られたが、今回は広範囲にわたり、白化しにくい
 種類にまで被害が及んでいる。沖縄本島周辺の礁池ではほとんど死滅し
 たと思う。過去の事例では回復までに十年かかるといわれる」と壊滅的
 状況を説明した。
  海水温上昇以外の原因の究明や白化現象から回復したサンゴの生殖能
 力のチェックなど、今後の調査研究課題についても検討した。
  また、中野さんは「残り少ないサンゴにオニヒトデの被害が及ぶこと
 も十分考えられ、これまで以上の対策が求められる」とサンゴ保全に向
 けた取り組みの重要性を話した。
  同現象は、海水温の上昇などによってサンゴに共生する褐虫藻(かっ
 ちゅうそう)が抜け、サンゴの石灰質が現れ白くなるもので、長引くと
 サンゴが死滅するといわれる。(写真説明)本島沿岸で広がるサンゴの
 白化現象。海面下の白っぽい部分が白化したサンゴ=9月12日、本部
 町(亜熱帯総合研究所提供)
1998/10/20 読売新聞 
白い猛威にサンゴあわれ 南西諸島から本州南岸で白化現象
   サンゴ礁の「白化現象」がこの夏、南西諸島から本州南岸にかけて、
 猛威を振るった。三重大人文学部の目崎茂和教授(環境学)は、世界有
 数のサンゴ礁群落として知られる石垣島・白保の被害状況を調査、サン
 ゴの状態を撮影した=写真=。「海水温や塩分濃度の上昇が原因だが、
 これほど激しい白化現象が見られたのは、20年間で初めて」と、目崎
 教授は語る。
  白化現象は、海水温が通常の生息温度よりも高くなったため、サンゴ
 と共生している褐虫藻が抜け出す現象。褐虫藻は「サンゴ色」の色素と
 もなっており、抜け出したサンゴは白く変色し、やがて栄養状態が悪く
 なって死滅する。
  白保でも8月初旬から白化現象が観察され始め、中旬過ぎには水温の
 高い水深3―5メートルの浅い海域を中心に、白く変色するサンゴが増
 えつづけた。しかし9月下旬に南西諸島周辺に台風が来襲、水温が低下
 したため、白化現象の広がりは食い止められたという。
  「日本さんご礁学会」は昨年発足したばかりだが、東京で11月、第
 1回総会を開く。全国の専門家のデータを持ち寄り、今後の研究方針な
 ど話し合う。「大規模な白化現象が、温暖化に関係するのかなど、サン
 ゴの生態をいろいろな視点から解明する」と目崎教授は話している。
1998/10/31 読売新聞
[編集手帳]サンゴの白化現象
  三百年ほど前まで、ほとんどの人がサンゴは植物と考えていたそう
 だ。賛成したくなるが、いや、イソギンチャクと同様、腔腸(こうちょ
 う )動物の一種と教えられて、不思議な気がする◆宝飾に珍重される
 アカサンゴなどとは別に、造礁サンゴがある。この仲間は、褐虫藻(か
 っち ゅうそう)と呼ばれる単細胞の藻が体内にいて、共生していると
 言うから、さらに不思議だ◆藻の光合成で栄養を補給、成長を手助けさ
 れてい ると、日本自然保護協会の中井達郎さんから伺った。不思議は
 まだある。なぜか褐虫藻が体内から抜け出して、サンゴが白くなる。そ
 れが「白 化現象」だ◆世界各地のサンゴ礁で報告され、今夏、ついに
 沖縄など日本近海の広い範囲で起こった。海水温の異常上昇、地球温暖
 化の影響と 見る学者が少なくないという◆もしそうなら、温暖化が生
 物に顕著な影響を与えた事例となる。さらにサンゴ礁の生態を多角的に
 究めようと、 自然科学、人文・社会科学の研究者ら約二百人による日
 本サンゴ礁学会が結成された◆「初めて知るサンゴ礁の神秘」をテーマ
 に、学会主催の 公開シンポジウムが十一月三日午後、東京・早稲田大
 学井深大記念ホールで開かれる。海中で白くなったサンゴが死滅してい
 く。不思議という より、それは不気味な光景だ。
1998/11/05 沖縄タイムス
[社説] サンゴ白化現象 地球環境破壊を象徴する
  本部町の瀬底島では、さんご礁の形成に重要なミドリイシサンゴ類の
 サンゴが、九五%以上も死滅していた。
  沖縄県や鹿児島県沖で進んでいるサンゴの白化に関する緊急報告会を
 持った日本サンゴ礁学会での琉球大学熱帯生物圏研究センターの中野義
 勝技官らによる報告である。
  石垣島のコモンサンゴやミドリイシサンゴの類も、七五?一〇〇%の
 白化が東京大理学部の調査で確認されている。
  サンゴの白化現象は、八月に県全域と鹿児島県の奄美地方、種子島で
 漁協関係者やダイバーによって確認された。
  その後、亜熱帯総合研究所が、ヘリコプターで恩納村の沿岸から名護
 湾にかけて調査したところ、被害が一カ所でなく広い範囲に点在してい
 ることが分かった。特に恩納村屋嘉田や部瀬名岬、名護市の21世紀の
 森ビーチ沖などの被害が大きく「危機的な状況で、離島も含む県全体に
 拡大している恐れがある」と警鐘していた。

  白化はサンゴに共生している褐虫藻(かっちゅうそう)が離れて、サ
 ンゴが白くなる現象である。サンゴは褐虫藻の光合成により栄養の大半
 を補給しているため、白化が一週間から一カ月程度続くと栄養失調で死
 滅する。主な原因として、台風が少なく海水がかくはんされなかったた
 め、海水温が例年より高い状態が続いたことが指摘されている。
  オーストラリア沿岸の世界最大のさんご礁地帯「グレートバリアリー
 フ」など世界各地でも白化被害が確認され、米国の海洋大気局は「今世
 紀最大のエルニーニョ現象が原因」と発表しており、地球温暖化と密接
 に関係しているのだ。目に見える形での地球環境破壊と言っていいだろ
 う。
  インド・西太平洋地域で生息する造礁サンゴの種類は、八十属で約七
 百種とされている。その中で石垣島周辺には六十九属二百四十二種が分
 布すると言われている。
  透明度の高い海中で育ち、鮮やかな色を誇るサンゴが、色彩のもとで
 ある有色植物プランクトンを体外に放出して白くなり死滅する。琉大熱
 帯生物圏研究センターの酒井一彦助教授(海洋生態学)によるとキクメ
 イシやハマサンゴなど環境悪化に強いサンゴでも、白化現象がかなり見
 られるという。
  サンゴをすみかにする魚やカニ、エビ類などの生態系にも影響が出て
 おり、これだけ悪化が進んでいるのに一般の人々は、危機感を感じてい
 ないとの指摘もある。サンゴの危機は、開発などによる赤土汚染に見舞
 われ、オニヒトデの異常繁殖による食害被害もあった。 私たちは、海
 のありがたさや大切さを身近に感じてきたはずだ。
  美しいサンゴは科学研究、経済利用、文化的多様な価値を持ってい
 る。その価値観を認識したい。それがサンゴを危機的状況から救う第一
 歩 である。
1998/11/12 読売新聞
サンゴの白化現象 沖縄はじめ各地で被害 台風、エルニーニョ関与
  褐色、グリーン、ピンクなど豊かに海を彩るサンゴが白く変色し、死
 んでしまう白化現象がこの夏、沖縄をはじめとする日本近海で大規模に
 広がった。海のオアシスと呼ばれる貴重な生態系を形作り、観光資源や
 二酸化炭素の吸収源としても重要なサンゴ礁に何が起きたのか。今月初
 めに都内で開かれた日本サンゴ礁学会での緊急発表などを基に、白化現
 象の実態に迫った。(阿部文彦)
  「1980年代から沖縄周辺で白化現象が報告されているが、今回ほ
 ど深刻な事態は初めてだ」「飛行機からもサンゴ礁が白くなっているの
 がわかるなんて」。日本サンゴ礁学会が緊急に開いた討論会では、専門
 家から次々と被害の実情に懸念の声が上がった。
  水産庁中央水産研究所の藤岡義三主任研究官が、石垣島周辺で9月に
 行った調査によると、水深1―2メートルの浅瀬では、生息数の多いコ
 ユビミドリイシなどがすべて白化していたほか、水深20メートルの比
 較的深い水域に住み、過去に白化した例が報告されていない、エダセン
 ベイサンゴも2割近くが白化していた。
  白化現象は、サンゴの細胞内に共生する褐虫藻(かっちゅうそう)と
 呼ばれる藻の一種が、高温や塩分濃度の異常などが原因で、抜け出すた
 めに起きる。褐虫藻は、サンゴが出す二酸化炭素を利用して光合成を行
 うが、同時にサンゴにも脂質などの栄養を与える。このため、褐虫藻が
 いなくなり、白い骨格が見えるようになったサンゴは、飢餓状態に陥っ
 てしまうのだ。
  1か月程度で褐虫藻が戻れば、白化したサンゴは生き返る。しかし、
 7月下旬から始まった今回の白化現象は期間が2か月以上に及び、回復
 しないまま死滅したサンゴも目立った。「白化したサンゴの6割近くが
 死滅した種類もある」と藤岡主任研究官は指摘する。
  どんな環境変化が起きたのだろう。まずあげられるのが、沖縄周辺海
 域の異常な高水温だ。サンゴは通常30度以上の水温で白化するとされ
 る。琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底実験所の中野義勝技官らの観
 測によると、長雨が続いた7月下旬を除くと、沖縄周辺の表面水温は2
 8―30度と92年から97年までの6年間の平均値を1―2度上回っ
 た。通常は28度以下に保たれる水深20メートルの海底でも、8月に
 は30度を超える日が続き、白化現象がサンゴの生息域全体に広がった
 理由が裏付けられた。
  原因は台風だ。沖縄周辺で夏場にほぼ月に1度の割合で来襲する台風
 は海水をかく乱するとともに、日照をさえぎり、海水温を下げるクーラ
 ーの役割を果たす。しかし、今年は10月まで本格的な台風が近海を通
 過せず、高水温を招いた。
  今世紀最大級とされるエルニーニョ現象との関係も指摘されている。
 東太平洋の熱帯海域が高水温になるエルニーニョが起きた年には、世界
 各地で大規模な白化現象が報告されているためだ。実際、昨年暮れから
 今年にかけて、オーストラリア、カリブ海などで大規模な白化現象が報
 告された。いずれも高水温が直接の原因だが、そのメカニズムは地域に
 よって様々だ。沖縄周辺の場合、「今夏に台風が少なかったのは、5月
 下旬に終了したエルニーニョの影響が残り、西太平洋の大気循環に異常
 をきたしたため」と、気象研究所海洋研究部の北村佳照第一研究室長は
 説明する。
  サンゴの成長は遅く、回復まで数年から10年以上かかる。サンゴ礁
 学会では、サンゴと共生関係にあるサンゴガニが姿を消すなど、生態系
 に変化が起きつつある状況が早くも報告された。
  サンゴ礁は地球温暖化との関係でも注目されている。二酸化炭素の吸
 収源として期待されるほか、気候変動の"警報装置"として役立つとみ
 られるからだ。今回の白化現象が温暖化の先触れなのかどうかは不明だ
 が、「もし、来世紀に温暖化が進めば、気候変動が激しい沿岸部に住む
 サンゴへの影響は大きく、絶滅の危機にさらされるだろう」と東京大学
 大学院理学系研究科の茅根創・助教授は警告している。
  
  図=世界のサンゴ白化
  図=沖縄・瀬底の海水温変化
  
  写真=水深4メートルの海底に広がる白く変色したミドリイシ科のテ
 ーブルサンゴ群(鹿児島県竜郷町)
1998/11/30 産經新聞
沖縄・伊江島周辺海域 サンゴ白化現象、回復へ
 今年の夏から沖縄県周辺海域に広がったサンゴの白化現象が一部で回
復に向かいつつあることが三十日までに、水中撮影で確認された=写真
 。
 白化現象は、サンゴに有機物を供給して共生する褐虫藻(かっちゅう
 そう)がサンゴから離れ、白色に脱色してしまう現象。
  海水温の上昇が原因とみられ、白化が長く続くと、サンゴは栄養不足
 になって死んでしまう。
  沖縄県北部の伊江島では八月初旬からこの現象が現れ、九月になると
 周辺のサンゴのほとんどが真っ白になった。サンゴの密生地では海上か
 らでも白く見えるほどで、死んだサンゴはこげ茶色の藻に覆われ、元の
 姿に戻らなかった。ところが十月中旬以降、まだ白さを残していたサン
 ゴに褐虫藻が戻り、回復への兆しが見え始めた。産経新聞が水中カメラ
 で確認したところ、全体が真っ白だった直径約二メートルのダイオウサ
 ンゴが、表面積の二〇%ほどを残して褐虫藻に覆われ、元の茶色に戻っ
 ていた。
  サンゴの観察を続けている亜熱帯総合研究所(那覇市、山里清所長)
 は、辛うじて生き残ったサンゴが再生過程に入ったとみているが、年内
 にもダイバーや漁業関係者を対象にアンケートを実施、引き続き原因究
 明を続けたいとしている。(写真報道局 岡本義彦、大山文兄)
1998/12/11 毎日新聞 
サンゴの「白化」食い止めろ! 2800万円かけ国が調査
  サンゴが植物プランクトンを放出して白くなる「白化」現象を食い止
 めるため、国が緊急に調査研究に取り組むことになった。10日開かれ
 た科学技術会議の政策委員会で決まったもので、今年度の科学技術振興
 調整費約2800万円を充て、来年2月から2カ月間、沖縄・慶良間列
 島の阿嘉島周辺で白化の分布状況や海水温を調べ、エルニーニョ現象な
 どとの関連を明らかにする。
  今夏は日本でもサンゴの大規模な白化現象が広い範囲で報告され、場
 所によっては9割が白化しているサンゴ礁もある。白化によって栄養不
 足となったサンゴが死滅する場合もある。海水温の上昇が原因とみら
 れ、エルニーニョ現象などが関係するとされるが、詳しいメカニズムは
 分 かっていない。
  調査はダイバーが潜ったり、航空機で広範囲にわたる画像を撮影して
 白化の分布状況を調べる。【松村由利子】
1998/12/20 沖縄タイムス
首相特別枠予算 白化調査など6億7千万円 赤土対策費を計上
  【東京】一九九九年度予算案で情報や物流、環境分野へ重点的に予算
 配分するため、小渕恵三首相が内訳を決める三特別枠(合計四千億円分
 )が十九日まとまった。沖縄開発庁分として「赤土等流出対策推進」、
 「さんご礁の白化現象調査研究」の新規二事業と、継続の「行政情報シ
 ステム基盤整備」「節水・省資源型教育施設整備」「高度先端的な情
 報・技術教育推進」、合わせて五事業、計六億七千三百万円が計上され
 た 。また、広域物流拠点形成として那覇空港・港・自動車道を一体的
 に整備する事業も昨年同様、特別枠に盛り込まれた。
  赤土流出対策(六千六百万円)は開発庁として初の本格的な取り組み
 となる。人工衛星で海や河口に流出した赤土のたい積状況をモニタリン
 グし、海洋汚染の実態調査を行う。流出源の一つである農地に植生帯を
 設置、流出を防ぐ栽培方法の実証実験を実施する。また、河川流域の住
 民と工事施工者らの共同対策を促す啓もう活動も展開する。さんご礁の
 白化現象調査(六千八百万円)は、死滅が懸念される白化現象の実態調
 査、発生のメカニズムなど原因究明を目指す。
  「赤土」「さんご礁白化」の対策事業は八月の概算要求後に追加要求
 していた。
  このほかの予算配分は、開発庁本庁と現地の沖縄開発総合事務局を通
 信で結ぶ「行政情報システム基盤整備」に三億七千五百万円、学校で雨
 水利用を進める「節水・省資源型教育施設整備」に三千九百万円、専門
 学校でバイオテクノロジーやエレクトロニクスなどの実験・実習施設を
 整備する「高度先端的な情報・技術教育推進」に一億二千五百万円とな
 った。
1998/12/22 読売新聞
サンゴ白化に調査費 99年度大蔵原案 九州・山口は順調にスタート
二十一日に内示された九九年度政府予算の大蔵原案で、九州・山口県
 関係では、鹿児島ルートを含む整備新幹線に対し、今年度当初比2・3
 %増の千六百三十四億円(事業費ベース)が内示されるなどおおむね順
 調な滑り出しとなった。
  JR熊本駅周辺の連続立体交差事業は、着工に向けた都市計画決定手
 続きなどの準備作業に入る。また、JR長崎駅周辺の同事業には、初め
 て調査費が盛り込まれた。
  今年度大幅に見直されたダム関係も、用地補償や本体工事に入ってい
 る事業に関しては、軒並み増額された。
  沖縄、鹿児島県の周辺海域で発生したサンゴの白化現象について、沖
 縄を中心に実態を調査、原因究明を始める。「国際サンゴ礁研究・モニ
 タリングセンター整備費」千八百万円も認められた。アジア地域のサン
 ゴ保全の拠点となる「国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター」は来
 年、石垣市に完成する見通し。
  今年度末で期限切れとなる鹿児島県奄美諸島を対象とする奄美群島振
 興開発特別措置法は、法延長を前提にした振興開発関係予算がほぼ認め
 られ、事実上延長される見通しとなった。
  国土庁は四百二十二億六千百万円を要求。大蔵原案では四百七億千九
 百万円が計上された。九九年の通常国会に改正法案を提出、その後、五
 年間の振興開発計画をまとめることになる。(本文記事1面)
1998/12/27 西日本新聞
白化サンゴ 暗礁内は9割死滅 奄美海洋展示館が追跡調査 高水温
  のダメージ大きく
  南西諸島を中心に今夏、サンゴの「白化現象」が異常に多く見られた
 が、白化したサンゴは十二月に入っても回復せず、リーフ(暗礁)内で
 は九〇パーセントが死滅していることが、奄美海洋展示館(鹿児島県名
 瀬市)の追跡調査で分かった。白化現象は海水温の上昇が原因とみられ
 ているが、サンゴの受けたダメージの大きさがあらためて示された。
  海洋展示館は、大部分のサンゴに白化現象がみられた八月下旬以降、
 十二月中旬までの約四カ月間に、名瀬市大浜海岸の沖合約百三十メート
 ルまでのリーフ内側とリーフ外側のサンゴを一カ月ごとに潜水して調査。
  その結果、水深十メートル以上のリーフ外側ではサンゴの五〇パーセ
 ントが回復し、緑や青、赤紫色などの正常な色に戻っていたが、水深五
 メートル以内のリーフ内では、ミドリイシの仲間の枝状サンゴを中心に
 九〇パーセントが死滅し、茶色や黒色に変色していた。
  白化現象は、海水温の上昇によって、サンゴと共生し栄養をサンゴに
 供給する単細胞植物「褐虫藻」が生息できなくなって、色が白く変わる
 現象。褐虫藻が戻れば、サンゴは回復するといわれる。
  調査したリーフ内の水温は八月に三〇度を超えていたが、九月以降は
 毎月平均で約二ずつ低下。十二月はほぼ平年並みの二二―二三度になっ
 ている。リーフ外側はさらに約二度低い。海洋展示館は「リーフ内側の
 浅い場所のサンゴは水温が下がっても回復できないほどのダメージを受
 けた」とみている。
  同館は「来年五月ごろ、サンゴの産卵が始まる。サンゴ礁が再生する
 過程も観察したい」と、今後も調査を続ける。十二月までの観測結果は、
 近く環境庁の外郭団体・海中公園センター(東京都港区)の研究誌に掲
 載される。
1998/12/30 西日本新聞    
プレーバック'98<下>9月―12月―連載
9月 サンゴの白化現象が拡大(8日) 
 サンゴが白くなって死に至る「白化現象」が、沖縄から奄美群島、種子島
 に至る南西諸島海域で広範囲に発生し、熊本県天草沖まで広がっ
 ていることが分かった。海水温の上昇で、サンゴと共生し栄養をサンゴ
 に供給する単細胞植物が生息できなくなったためとみられた。

1997年
1997/06/04 読売新聞
地球温暖化をサンゴが警告 「白化現象」被害の世界地図を作成/
自然保護基金 ◆沖縄周辺は「絶滅危機」
  多くの生物が生息し、海の"熱帯雨林"と言われるサンゴ礁が白くな
 って死滅する「白化現象」などの被害状況が一目で分かる世界地図を、
 世界自然保護基金(WWF、本部・スイス)が四日までに作成した。絶
 滅の危機にひんしている程度で四段階に色分け、日本では沖縄・石垣島
 を含む南西諸島のサンゴ礁が「絶滅危機」に分類されている。白化現象
 は、対策が進んでいない地球温暖化の証拠ともみられ、京都市で十二月
 に開かれる気候変動枠組み条約締約国会議でも注目されそうだ。
  WWFがオーストラリアのサンゴ研究者に被害状況の研究を委託。こ
 の報告書をもとに被害の大きい順に「決定的な絶滅危機」「絶滅危機」
 「危急」「低危険」と区分けし、それぞれ赤、オレンジ、緑、青色で地
 図に示した。
  最悪レベルの「決定的な絶滅危機」とされたのは、ガラパゴス諸島な
 ど東太平洋のサンゴ礁。「絶滅危機」の範囲は、南西諸島のほか、カリ
 ブ海、南シナ海、インド洋に広がる。南太平洋などは「危急」、オース
 トラリアのグレートバリアリーフは「低危険」。
  WWF日本委員会によると、水質汚染や沿岸開発で相当のダメージを
 被っているサンゴ礁は、温暖化による水温の上昇などの気候変動の影響
 も加わって世界全体の十分の一がすでに絶滅。さらに気候変動がなくて
 も今後二十年以内に全体の三分の一が消滅すると予測している。
  「白化現象」は温暖化の影響を顕著に示す証拠ともみられ、水温の過
 上昇などの影響により、サンゴの鮮やかな色を作り出す微生物が失われ
 、サンゴが真っ白になって死に至る現象。世界各地で見られるが、特に
 中南米の沿岸やガラパゴス諸島などで頻繁に起きているとしている。
  WWF日本委員会では「サンゴ礁の被害状況の地図は、温暖化キャン
 ペーンの一環として作成した。報告書の要約と地図を入れた冊子は英語
 版と日本語版があり、無料で配布している」と話している。問い合わせ
 は同委員会(03・3769・1711)。
  東京大理学部の茅根創・助教授の話「サンゴは、水温上昇や水の汚れ
 などのストレスがかかると、サンゴの中に共生する藻が放出され、骨格
 が透けて白く見える。藻の放出から一週間ぐらいで、藻から有機物を得
 て生育していたサンゴは死滅してしまう。こうした白化被害が、世界各
 地に広がっている。沖縄では地球温暖化との関連性を追究する研究が進
 んでいる」    
1997/06/05 沖縄タイムス
沖縄のサンゴ 絶滅の危機 地球温暖化で白化現象 海洋汚染も大きな
原因  WWF 被害状況を地図化
  沖縄のサンゴ礁が絶滅危機―。世界自然保護基金(WWF)は五日ま
 でにサンゴ礁の被害状況が分かる世界地図を作製。多様な海洋生物の生
 活の場となっている世界のサンゴ礁が地球温暖化によって絶滅の危機に
 ひんしていると訴えている。地図によると沖縄周辺のサンゴ礁は「絶滅
 危機」にあるとされ、関係者からは早急な環境保全対策の確立を望む声
 が上がっている。
  「サンゴ地図」はWWFがオーストラリアの研究者に被害状況の研究
 を委託し、それを基に被害の状況が大きい順に区分けして地図に示した
 もの。これによると沖縄のある南西諸島は二番目に危険度の高い「絶滅
 危機」にランクされた。
  最も危険度の高い「決定的な絶滅危機」はガラパゴス諸島やコロンビ
 アなどの東太平洋地域。カリブ海、南シナ海などは「絶滅危機」。南太
 平洋などは「危急」、グレートバリアリーフで知られるオーストラリア
 は「低危険」となっている。
  サンゴは数百から数千の微生物(ポリプ)が集まってできているが、
 水温の上昇などが進むと表面の微生物が抜け出し白くなって死滅する
 u 白化現象」が起こるという。地球の温暖化との関連性が、研究者や環
 境保護団体から指摘されている。
  WWFによれば世界全体のサンゴ礁の十分の一は完全に破壊されてい
 る。また気候変動が起こらなかった場合でも、二十年以内には三分の一
 が死滅すると予測。温暖化が進む地球環境へ警告を発している。
  白保の海を守る会代表の米盛裕二琉大名誉教授は「これまで赤土流失
 や埋め立てなど開発による被害がいわれてきた。温暖化によるサンゴの
 破壊が事実だとすれば、地球全体の環境破壊が進んでいるということだ
 ろう」と懸念を示した。
  WWFは「日本、米国などの先進諸国は二酸化炭素の排出量を大幅に
 削減すべき。各個人も無駄なエネルギー消費や、自家用車の使用を控え
 るなどの努力を行ってほしい」と呼び掛けている。WWFではこの地図
 が掲載された報告書を配布している。問い合わせは、WWFジャパン、
 電話03(3769)1711。
  熱帯生物研究センター・中野義勝文部技官の話 地球温暖化で世界中
 の海水の平均水温が一―二度上がればサンゴの大部分が死滅するのは確
 かだが、むしろ世界のサンゴ礁にダメージを与えている原因の多くは開
 発による埋め立て、赤土などによる水質の汚染。こちらの対策を立てる
 ことがサンゴ保全を図る上で急務だ。
1997/10/08 沖縄タイムス    
台風から島を守るさんご礁
【石垣】台風から島を守るさんご礁―。沖縄全域を暴風域に巻き込ん
 だ台風13号(八月中旬)で、石垣島北側のさんご礁が広範囲にわたり
 損傷していることが、地元ダイバーの調査で分かった。強い波の繰り返
 しを受け、被害が出たとみられている。ダイバーは「サンゴは自然の防
 波堤として人間の生活を守っていることを多くの人に知ってほしい」
 と、サンゴの重要性と生態の解明を訴えている。
  損傷が見られたサンゴは石垣島北側のリーフ内一帯。直線距離にして
 約三十五キロにもわたっている。地元でダイビングショップを経営する
 佐伯信雄さん(50)が、台風13号が通り過ぎた八月下旬ごろから、
 同海域に潜ったところ、テーブル状サンゴの枝が至る所で折れ落ち、一
 部は白化現象を起こしていた。水深二十メートルの場所でも確認され
 た。
  佐伯さんは台風13号の規模が大きかったことや、通常の進路と異な
 り、宮古島と石垣島の北方を南西方向から北西に抜けたため、島の北側
 のさんご礁だけ被害を受けたのではないか、とみている。「沖縄はさん
 ご礁に囲まれているが、県民のほとんどはさんご礁が高潮から島を守っ
 ていることを知らない」と指摘する。 専門家の間では、台風によるサ
 ンゴへの被害はまだ十分な研究が進んでいない。琉大理学部の日高道雄
 教授は「カリブ海や豪州では報告例があるが、県内では聞いたことがな
 い。ただ、強い波の衝撃によるものと考えられる」という。白化現象に
 ついても因果関係を断定することはできていないという。
  名桜大学の山里清教授(さんご礁生物学)は「久米島で岩ごと打ち上
 げられたケースがある。干潮時と台風が重なれば、被害は十分にあり得
 る。沖縄は全域がさんご礁で囲まれており、天然の防波堤の役目をして
 いる」と話している。また、赤土など海洋汚染に比べ自然被害は回復が
 早いとしている。
  沖縄の海は世界的にも有数のサンゴ群落を有し、ダイバーらの注目を
 集めているが、生態についてはなぞが多い。佐伯さんは「価値ある財産
 を守るためにも細かい調査を積み重ね、みんなで共有できる知識を持ち
 たい」と呼び掛けている。(写真説明)台風の荒波を受けて周りが割れ
たサンゴが至る所で見られた=8月31日、石垣島崎枝





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