訃報をきいて「あーそういえばそーいう人もいたよね」と検索してみた本読みに、この際スッポリはまっていただきましょうという企画。
ほんっとに多彩な作品書いている人なので、忍法帖・推理小説・明治物と最低３つはつまんでいただきたいっす。
「初心者向き」「山風愛好家でなくてもそれなりに」「現時点でたぶん入手しやすい」を基準に絞れるだけ絞ってみました。
タイトルをクリックするとアマゾンに飛びます。思わずアフィリエイトも登録しちまいましたよ…。あ、ここは配送料が１回240円、5000円以上発注すると無料だったのですが、9/11より国内配送無料になりました。
レビューは多すぎてしっちゃかめっちゃかになったままですが、今回はとにかくわかりやすさを目指して、面白いor重要！な順に並べてみました。人によって違うかもですがでもー。ま、ほんと高打率の人なんで、初心者がいきなりマニア向けのもの買わなきゃ外れにくいとわ思いますが。『悪霊の群』『天狗岬殺人事件』あたりはマニア向けです。
アマゾンの入手可能リストでいくと、『魔天忍法帖』と『御用侠』はちょっとなあ……。『忍法忠臣蔵』もおもろいことはおもろいのですが、主人公のキャラがちと。あと昭和１９年分の日記の『戦中派虫けら日記―滅失への青春 』は暗くてしょっぱなコレだとツラいので、『戦中派不戦日記』にはまってからがお勧め。『神曲崩壊』はいろんな死に様てんこもり妄想小説なんですが、あんまりおもろない……。
しかし、『忍法封印いま破る』とか『銀河忍法帖』とか『叛旗兵』とか山風の中では傑作多すぎてＢクラスだけど凡百の作家なら代表作レベルの作品すぐ買えるようにしておいてほしいものだわ（ぶつぶつぶつ）。ていうか、このへんは古本屋でみつけたら即買い推奨。
2001.8.1
魔界転生(上)―山田風太郎忍法帖〈6〉 ★★★★★
文庫 (1999/04/01) 講談社 価格（税別）： ￥752
魔界転生(下)―山田風太郎忍法帖〈７〉
文庫 (1999/04/01) 講談社 価格（税別）： ￥752
いわずとしれた一番有名な作ですね。映画化漫画化何度もされています。
南海の龍・徳川頼宣にとりついて徳川転覆を狙うキリシタンの残党＋超絶忍法でよみがえり、魔人と化した名剣士十人、ゆきがかりで犠牲になった忠臣たちの遺児を護りつつ、柳生十兵衛大活躍というお話。
十兵衛様らぶ！キリシタンくノ一のお品がかっこよすぎ（くー）！バカな柳生十人衆のバカっぷりがたまらん！対決シーンが毎回スゴすぎ（和歌山城が一番すき♪）！魔人マジこええよ！忍法のキレもよか！この余韻深いラストはなんだっ！……てなかんじでキリがありませんが、要は山風コンボ256連発ってかんじです。ぴよぴよぴよぴよ（ぴよっている…）
ちなみに映画とか漫画とかのイメージはなるべく捨てていただきたいっす。天草四郎？あーそいえばそんなのいたっけなア…（冷）
くノ一忍法帖―山田風太郎忍法帖〈5〉 ★★★★★
文庫 (1999/03/01) 講談社 価格（税別）： ￥571
よしのフェイバリット忍法帖です。『魔界転生』は自分の中では「忍法帖」でなくて「十兵衛様（愛）」というジャンル（なんじゃそれ）だったりして。
お話は、豊臣滅亡後秀頼の子をはらんだくノ一たちが、旦那殺されてマジぎれの千姫や豊臣方の武将の妾・丸橋（この人も妊婦）と共に、家康が放った忍者の皆さまと死闘を繰り広げるというもの。
わったしはすんごおおおい好きなんですが、人によってはグロすぎとか引いちゃう場合も。まあなにかと濃いいんですがね、たしかに。でもすんごい練り込まれたプロットに、忍法のキレのよさ、可憐な千姫に強力無双な丸橋とかキャラの立ち方とかひっじょーにバランスがよく、忍法帖のひとつの極点になってるとおもうですよう。鬼畜度も極点に近いですがー。
たぶん昔のブームの時、若かりしオトーサンたちは赤面しつつどきどきしつつ読んでいたと思うのですが、こーゆー時代ですから、男女の間での性的な視線の非対称性とかにムカついている淑女にこそ是非お勧めしたい作。そのへんの詳細はこちら。
柳生忍法帖(上)―山田風太郎忍法帖〈9〉 ★★★★☆
文庫 (1999/06/01) 講談社 価格（税別）： ￥714
柳生忍法帖(下)―山田風太郎忍法帖〈10〉
文庫 (1999/06/01) 講談社 価格（税別）： ￥714
十兵衛物の第一弾、いろぼけサイコパス大名（違）加藤明成によって父や夫を惨殺された堀一族の女達に、柳生十兵衛＋沢庵和尚＆弟子のみなさんが助力してあだ討ちというお話。
個人的には戦うおねいさん萌えなので、『魔界転生』もいいけどこっちもかなり好き。同好の士は是非。
忍法八犬伝―山田風太郎忍法帖〈4〉 ★★★★☆
文庫 (1999/02/01) 講談社 価格（税別）： ￥714
徳川の最初のころ、大リストラ時代によりによって竹千代君（三代将軍家光）に献上する予定の家宝の八犬士の珠を服部伊賀組にぱちられてしまい、八犬士の子孫であるじいさんたちはしわ腹かっさばいてしまって、まじヤバな里見家。やむなく大久保家から嫁いできた村雨姫は、行方不明のじいさんたちの息子たちを捜しに江戸へ一人旅立つのですが……てなお話。
途中のスラップスティックぶりとかほんと面白いのですが、これで彼の作品の中では、だいたい中の上くらいの作だっちゅーのが恐ろしすぎるぜ山風……
風来忍法帖―山田風太郎忍法帖〈11〉 ★★★★☆
文庫 (1999/07/01) 講談社 価格（税別）： ￥914
山風ではそーいえば珍しい気もする、城攻防戦がメインの作品です。
天下統一間近の秀吉に抗して、忍（おし）の城を守る人妻だけど処女な麻也姫、で、城攻防戦のあいだに麻也姫に惚れてる香具師たち、邪悪テイストただよう風魔組の忍者３匹に、フェロモンこすぎな香具師をおっかけてきた元風魔組のくノ一たちが三つどもえでもうしっちゃかめっちゃか。
麻也姫の可憐さと城攻防の面白さ、香具師の風俗もおもろい。
伊賀忍法帖―山田風太郎忍法帖〈3〉★★★★☆
文庫 (1999/01/01) 講談社 価格（税別）： ￥619
悪役に松永弾正登板の作。若き日の利休とか柳生新左衛門（石舟斎）も登場します。弾正の手先の根来忍法坊主の中に切られた身体を胴でも首でもつないでしまうブラックジャックがいたばっかりに（笑）、弾正に捕まった伊賀忍者笛吹城太郎の妻・篝火、弾正のえろえろ妾・漁火、弾正の主家である三好家の右京大夫がごちゃまぜに（謎）。個人的には漁火萌え。
忍法剣士伝 ★★★☆☆
文庫 (1986/07/01) 角川書店 価格（税別）： ￥700
系統としては、『魔界転生』の１０番勝負の発想に近いものがあるんですが、邪恋忍者によって、男を狂わせる忍法をかけられてしまった北畠家の姫君をめぐり、武蔵や十兵衛様のパパ世代にあたる剣豪たちがひたすら対決！な作です。
邪恋忍者に対する主人公＋姫君の清らかさが際立つ作。どろどろなのに後味さわやかという山風の持ち味がよく出ています。
甲賀忍法帖―山田風太郎忍法帖〈1〉 ★★☆☆☆
文庫 (1998/12/01) 講談社 価格（税別）： ￥590
記念すべき史上初の忍法帖っす。コレ発表された時点では「くノ一」という言葉は全然知られていなかったのですが、この作他の忍法帖大ヒットでいきなり一般名詞になったというエピソードも。ここからすべては始まった！
警視庁草紙〈上〉
文庫 (1994/03/01) 河出書房新社 価格（税別）： ￥874
警視庁草紙〈下〉 ★★★★★
文庫 (1994/03/01) 河出書房新社 価格（税別）： ￥874
９月にNHKでドラマ化されます明治物の代表作。「明治」ちゅーても生きてるヒトはみんな江戸人なわけで、そのへんの移り変わりやらひとびとの交差を縦横無尽に描き出す山風明治史（ていうか、この深さはもう歴史哲学の域にはいってるよ）。とかいいながら、この面白さはやっぱ山風。推理味も結構愉しめます。限りなく叙情的でありながらおっそろしいラストシーンに震撼せよ。
八犬伝〈上〉
文庫 (1986/03/01) 朝日新聞社 価格（税別）： ￥680
八犬伝〈下〉 ★★★★★
文庫 (1986/03/01) 朝日新聞社 価格（税別）： ￥720
八犬伝のダイジェスト（虚の世界）と、それを書いている馬琴の人生（実の世界）を交えつつ、山風独自のリアリティ論になってる傑作。
本読んで泣いたこととかほとんどないんですが、実の世界がぼろぼろに崩壊しながらも馬琴＋お路が八犬伝を書ききるラストシーンはヤラレましたですよっていうか、スゴすぎっす。今読んだら号泣だな自分…。山風自身の作品に対するスタンスを馬琴に重ねながら書いているかんじがかなりあります。
理屈な話は、大昔、にせ山風論で論じてみたので、詳しい話が気になる方はこちらへ
婆沙羅 ★★★☆☆
文庫 (1993/09/01) 講談社 価格（税別）： ￥419
室町時代の婆佐羅大名、佐々木道誉の生涯を通じて、鎌倉時代から義満までを描いた構想壮大、でも軽く読めるのが不思議な本。室町時代のどろどろ政治ぶりを描いた『室町少年倶楽部』とか、若き信長・謙信・『室町お伽草紙』とかもいいっていうかそっちの方がいい人の方が多いだろという確かな予感がありますが、なぜか好き（笑）
眼中の悪魔 本格篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈1〉 ★★★★★
文庫 (2001/03/01) 光文社 価格（税別）： ￥857
ずーっと心理の話なのに、なぜか数学的に明快な印象の女性のマゾヒスムとサディズムが反転しながらあらわになってゆく「虚像淫楽」ほかに連作短編『誰にも出来る殺人』搭載の、こんなに入ってこの値段でいいんすか？とびびってしまうデフレ山風。
十三角関係 名探偵篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈2〉★★★★★
文庫 (2001/03/01) 光文社 価格（税別）： ￥857
唯一の推理長編、『十三角関係』他、名探偵茨木歓喜物です。『十三角関係』については一回腰据えて論じたいと思いつつ早五年……近日中になんとかいたしまふ（汗）
妖異金瓶梅―山田風太郎傑作大全〈1〉
文庫 (1996/04/01) 廣済堂出版 価格（税別）： ￥686
推理小説読みならマストゲットな作品。「金瓶梅」の世界を舞台に、つぎつぎ起こる殺人事件やら怪事件やら。
単純にトリックの整合性やひねりで評価する方向で推理小説として読んじゃダメっす。空前絶後の名犯人に拝跪しませう。最後２話の強烈な疾走感は何度読んでもアドレナリンでまくりっす。詳細（ねたばれてんこもり）はこちらへ
戦中派不戦日記 ★★★★★
文庫 (1985/08/01) 講談社 価格（税別）： ￥762
日記でこんなに面白くていいんですか？って作。昭和２０年の日記を、ほぼ無編集でまとめたものです。空襲で焼け出されるわ、病気するわ、疎開先で可憐きわまりない奥様に出会うわ、自分のスタンス捨ててまで友と熱くトークするわ、そしてもちろん日本は敗けるわと大変な１年間。青春です。
「フィクションがそもそもだめ～」という方にもお勧めの一冊。年配の方へのプレゼントにもいっかもね…
個人的には、５月２９日～３０日の奥様と初めて会った時の記述と、３月１０日の最後に登場するおばはんのとこが印象深く。
身内が病気して、かんなり死線さまよってたときに、ぢっとかみしめたりした一冊。
人間臨終図巻〈1〉徳間文庫★★★★★
文庫 (2001/03/01) 徳間書店 価格（税別）： ￥724
人間臨終図巻〈2〉徳間文庫
文庫 (2001/04/01) 徳間書店 価格（税別）： ￥724
人間臨終図巻〈3〉徳間文庫
文庫 (2001/05/01) 徳間書店 価格（税別）： ￥724
死んだ年齢別に、各界の有名人の死に様をまとめた怪作。一家に一冊。てかこーゆーの、山風でなきゃ思いつかないよね…
一気に読むと、なにか意識が茫漠としてしまいます。どんなにえらくても死ぬときゃ死ぬし、どー死ぬかはもう、誰にもどーにもできんのだとつくづくしみじみ。
腹をくくらにゃやってらんない時にお勧め。あと、誕生日になったら、自分の年で死んだ人たちの人生をチェックするのも吉。成人のお祝いにもいっかもね…
戦中派天才老人・山田風太郎
関川 夏央 (著) 文庫 (1998/12/01) 筑摩書房 価格（税別）： ￥700
数あるインタビューの中で、一番まとまってるっていうか定評のある一冊です。
山風本人にも興味がわいたら、是非。
死言状
山田 風太郎 (著) 文庫 (1998/01/01) 角川書店
おちゃめなオヤジっぷり満載のエッセイ集。個人的にはえれえ料理うまいらしい夫人のお料理がちょこっとだけだけど言及されているのがポイント。てきとーに再現してみたりしましたが、「チーズの肉トロ」うまいっす。
山田風太郎―風太郎千年史
新保 博久 (編集) 大型本 (1999/07/01) マガジンハウス 価格（税別）： ￥1,500
舞台が設定されている時代順に短編を集めました本です。単行本未収録作だけでなく、学習雑誌に投稿した小説まで掲載したお宝アイテム。それだけにマニア度高い……
はまっちまったらおさえとくのもいいかな？
とりあえずはこんなもんですかね？ 「俺的にはコレ推奨」とかありましたら掲示板にヨロ。