2000年2月18日 川崎クラブチッタ  FMW


 客の入りが注目されたが、ソールドアウトにはならず。6000円の席は売り切れ たものの、北側ステージ席にやや空席が目立った。チッタは500人程度のキャパの 会場ながら、集客の難しい会場である。来るたびに思うのだが、盛り上がりにくい会 場で、客層がまた不思議。プロレスファンらしからぬ背広姿のおじさんが目立つ。会 社帰りにたまにはプロレスでも、って感じ。そういう客が「いやあ、面白かったねえ」 とか言いながら帰っていくのを見るのはいいものだけど。今日もしんと静まり返った 中、試合が始まった。あと、チッタに来るたびにパンチ田原一族の姿が目につくんだ けど、この会場とヤツはそういう関係があるわけ? まあ、どうでもいいことですが。


第1試合 中山香里、元川恵美 VS 田村欣子、中村由佳

 脱臼した腕に大きなガードを付けて復帰した元川。負傷前と変わることなく声をあ げながら、スピーディー に技を決めていく。ところが、試合中盤で完全に息が上がってしまったよう。元川の 苦しそうな呼吸が客席に響く。中村のボデイプレスが誤って元川の足の上に落ち、足 を押さえて苦しむ元川。今日ばかりは本当に「がんばれ!」という気持になってしま う。
 中山と元川の同時雪崩式フランケンが決まり、元川が中村をバックドロップで投げ 捨てる。対するNEO側は寝かせた元川の上に田村が中村を雪崩式ブレンバスターで投 げ落とすなんかひどい攻撃。中山が田村を押さえる間に元川がラ・マヒストラルで中 村を切って取った。
 相手に中村が入っているのなら勝って当たり前というところながら、今日の勝利に は特別な感興があった。完調には程遠いものの、元川は確実にレスラーとしてFMWの マットに帰ってきたのだ。くどめ引退以降は常にイバラの道を歩いてきたFMW女子を 今しばらく注目していこうという気持になるような試合だった。


第2試合 黒田哲広、リッキー・フジ VS ウィリー高山、ランス・ケー ド

 リッキーは今日は歌わず。チッタだといつもは歌ってくれるんだけど。黒田は静か なチッタの客を暖めようと喋りながらがんばる。狭いチッタ。「黒田!」と声援がか かれば、「おう!」と答えてくれる。「もういっちょ?」と例の足折りに走り、「に いさん、カミカゼ見たいッス!」とリッキーに要請。
 ランス・ケードはいいですね。チョーク・スラムが必殺技のようで、片手だけでリッ キーを高々と持ち上げていた。ラリアットのかわしあいから黒田がランスをフォール。 今日の中では、ちょっといまひとつな試合。

でかい相手にやりづらそうな黒田一仕事終えて良い表情です


第3試合 大矢剛功、保坂秀樹、佐々木嘉則、山崎直彦 VS 金村キンタロー、 中川浩二、邪道、外道

 30分時間切れの試合。その大半を占めていたのは山崎いじめ。場外で邪道、金村 らが山崎の背中めがけて放った椅子攻撃の熾烈さ、渾身の力が入っていたという感じ。 背中に赤いみみず腫れができる。金村に梯子で頭を殴られ、これには会場の空気も一 瞬引きかけた。その後も、かわるがわる背中への攻撃を受け続けた山崎。そんな中で もミサイルキックを連発し、初公開のムーンサルトアタックまで見せる。一年前なら 軽くフォールされていたはずが、引き分けに持ち込んだことの意味は決して小さくはない。
 狭いチッタだからこその特典とでも言おうか、金村の地声がよく会場に響き渡る。 口の方も絶好調。試合後は大矢達に向って、「踊らないんだったら、帰れ。踊るのな ら、残れ」。会場が一番湧いた瞬間かも。踊りましたよ。大矢さんに保坂。それでも、 中川は踊らないのです。踊り終った後、金村は「誰がTNR に入れると言った? 勝手に踊るな」。
(大矢)「金村、中川、邪道、外道。一緒にECWを潰すんだろう?」
(金村)「勘弁してください!」
 観客の笑いをとった後、あわてて両手で丸印を作った金村だった。

耐えまくる山崎大矢が踊っても、中川は踊らない


セミファイナル ミスター雁之助、フライングキッド市原 VS 冬木弘道、井 上京子

 真FMW再結成ですね。この組み合わせで、誰が負けることになるか、これほどわか りやすい話はない。だからと言って、それがつまらないということではないはず。男・ 市原と女・京子。驚くべきことに、横幅だけでなく、タッパでも京子の方が大きいよ うに見えるのだが。
 序盤は雁之助が大暴れ。京子のラリアットにマットに這わされたものの、京子を客 席に投げ込み、「ブタ女、死ね!」と踏み付ける。女性に暴力を振るっている時の雁 之助はなぜこれほど魅力的なのだろう。しかし、あれほど思いきり椅子の中に飛び込 んでゆく京子もリスペクト。他の女子レスラーにできることではない。京子ほど各所 で嫌われている女子レスラーも珍しいが、男子マットに上がるにあたって相当の覚悟 を決めてきているように感じられた。
 (予想されたことながら)市原が捕まる展開に。京子が市原に吊り天井。冬木のパ ワーボムも受け、市原はピンチの連続。京子にやられる市原の姿、いい味というか、 たまらないものがあります。連れは「今日のMVPは市原だ!」と断言していたくらい。 カットに入った雁之助はラリアットで軽く京子を吹っ飛ばし、パワーボムで叩き付け、 そこへ市原がムーンサルトで飛んだものの、京子に見舞った急所蹴りは効かず。
「あたしにはないんだよ!」
 逆に、京子の急所蹴りを受けると、最後は京子のパワーボムで市原が3カウントを 聞いた。市原もまた「女に負けた男」になってしまったのだ。
 冬木のマイク。
「ミスター雁之助。後楽園で負けたら、ミス雁之助になれ」
 雁之助は結婚しているから、ミセス雁之助じゃないかな。

京子を叩きつける雁之助男の顔をツブしたパワーボム


メインイベント H VS ボールズ・マホーニー

H、大流血コーナーからプランチャ

 しばしば思うことながら、H(ハヤブサ)のシングルマッチは客の静かな試合が多 い。98年4月横浜文体での雁之助戦、11月の同所での冬木戦などいずれも名勝負 だったが、会場の反応は序盤は静まり返っており、最後の最後あたりでようやく観客 も声を出し始めたような雰囲気だったはず。Hの試合は基本的に淡白な味わいである。 そして、私はそういうHのさっぱり目な試合が好きだ。会場の一体感を神経症的に追 い求めるような試合だけが名勝負ではないはず。これはいろんな方が言っているのを よく聞くが、会場がひとつになりにくく、観客それぞれが勝手にそれぞれの熱心さで 見ているようなFMWの会場の雰囲気が自分には居心地が良い。それはヤジが飛び交う インディーの会場とも別のものである。
 Hとボールズ・マホーニーのシングルマッチだけでも今日の6千円の価値がある。 マホーニーはかつてはECWのジョバーだったものの、体格に見合わない動きの軽さと プロレスのうまさ、またサンドマンらの離脱という幸運も手伝ってECWの中で急激に メインストリームへ上がってきた選手。早くもFMWの常連外人として定着しそうな存 在感である。パイプ椅子を持って入場したマホーニー。対してHが持参したのは乗馬 用のムチ? 序盤は完全なマホーニーのペース。重量感ある技でHを責め立て、フォー クを持ち出すと、Hは大流血だ。この会場で流血戦が見れるとは。ベタ過ぎる言い回 しながら、まさに出血大サービス。
 Hはコーナーポストからのプランチャ。さらに場外の机に寝かせたマホーニー目が けて入り口側のステージから飛ぶ。またもフォークを持ち出したマホーニーだが、H は急所攻撃でこれを奪い、嬉しそうに笑いながらフォーク攻撃。ワルブサ入っていま す。これでマホーニーも流血。さら にHが机の切れ端でぶっ叩き、パイプ椅子で座麺抜きも見せると、マホーニーは「ファッ クユー!」。
 試合が大詰めにさしかかると、冬木と京子が乱入。Hに連続串刺しラリアットを見 舞う。ところが冬木のラリアットがマホーニーを誤爆。雁之助が冬木を足止めする間 に、Hが掌打、Hエッジからファイヤーバードスプラッシュでマホーニーを押さえた。 マホーニーはもう一回だというようなアピール。Hは「冬木、京子ちゃん、後楽園で 負けたら丸坊主になる君たちのために俺と雁之助がカリスマ床屋になってあげるよ! お楽しみは(以下略)」と締めた。
 非常に面白い試合だった。見にきた人のほとんどは大満足だったはず。

凶器を手に嬉しそうなHフィニッシュのファイヤーバード


天気読み   WRESTL E