「ガイアのためになるかどうか」という価値観でのマネーの体系

                  (1998年6月21日改訂)


昔、マネーの価値は金(GOLD)によって、裏打ちされていた。金本位制である。誰でもが欲しがる輝きを持った金は、価値の源泉として使われていた。誰でもが欲しがる輝きを「地球の環境」は持っている。「地球の環境の価値」に、経済活動での媒介役ができるような移転性を持たせれば、「環境本位制の貨幣経済」が構築できる。地球の表面を小さな区画に区分し、各区画ごとにその環境の良さを自動的に計測し、その計測値に応じて価値がリアルタイムで増減する変動相場制のマネーとする。そして、その区画に住む住人は、その区画の環境価値に対応するマネーを発行して、使えることとする。これを、「環境マネー」と呼ぶ。「環境マネー」は、資源や製品やサービス等の商品と交換して初めて、環境マネーの所有者に使用価値をもたらす。従って、環境マネーは、これまでの通貨と同じく、絶えず流通していく。そうすると、地球上のあらゆる区画の環境の価値が経済活動と直結してくる。「環境マネー」を取引の結果として入手した者にとっては、「環境マネー」に対応する地球上のその区画の環境が良くなれば、自分の財産が増加するので、その区画の環境が他の区画の環境よりも良くなる事を希望する。環境の悪い区画に対応する「環境マネー」を手に入れた者は、その区画の環境が良くなれば自分の保有する「環境マネー」の価値が向上するので、環境を良くする努力をする事になる。工業製品や農業製品の生産・販売において、その製品を廃棄する事によって環境を悪化させるような製品を、住民は高い金額では買わない。「環境マネー」を用いる事で、全ての経済活動が環境の良否との関係を問われる事になるのである。環境マネーを用いた貨幣経済では、環境保護の活動と経済成長は矛盾しなくなる。環境負荷の小さな製品は高付加価値製品である事になる。環境本位制の貨幣経済である。

「環境マネー」には、次の情報を属性情報として付随させねばならない。1)その環境マネーを発行した地球上の区画の番号,2)環境マネー発行時のその区画の環境評価値,3)その環境マネーのユニット数,4)その環境マネー発行の年月日,5)改竄防止用の暗号符号の5項目の情報である。このような属性を持つ「環境マネー」による購買力は、次の式で示される。

購買力=(取引時点での対応する区画の環境評価値)×(環境マネーのユニット数)

従って、「環境マネー」の実現には、「電子マネー」の技術が必要となってくる。そして、地球規模での環境評価値の自動計測ネットワークも必要である。現在の技術で、これは十分に可能である。

自然が一杯でも、そこに住む人の人口が少なければ、その地域に対応する環境マネーの発行額は小さくなります。生産物の量に比較して、あまり発行額を大きくすると、インフレになり、貨幣価値が下がるためです。すなわち、人口と環境評価値が関連して、その地域の発行する環境マネーを制御するので、ご懸念の点は解決する。

【環境マネー実現のための国際間の取り決めの内容】
地域pが発行する環境マネーの1単位の価値を、V(p)とします。N(p)は、地域pの環境マネーについての需要と供給のバランスで決定される要素であるとします。M(p)は、地域pの環境評価値であるとします。そうして、V(p)を次の式で定義します。

V(p)=M(p)+N(p)

地域sの発行する環境マネー1単位の価値を、V(s)としますと同様の式が成立します。


V(s)=M(s)+N(s)

そうすると、地域pの発行する環境マネー1単位は、地域sの環境マネー(V(p)/V(s))単位と等価交換されます。

環境評価値が高く、需要の多い環境マネーは、そうでない環境マネーよりも強くなります。

地域pにおいて、生産される製品やサービスの総額が、地域pの環境マネーを単位としてR(p)単位分あったとします。そうすると、地域pのGNPの国際的価値GNP(p)は、次のようになります。

GNP(p)=R(p)×V(p)

この式を変形すると、次のようになります。

GNP(p)=R(p)×(M(p)+N(p))

この式からわかる事は、地域pの環境評価値M(p)を増加させる事によっても、その地域のGNPの国際的価値は増加させられるという事です。もちろん、製品やサービスの生産を増やしてR(p)を増加させても、その地域のGNPの国際的価値は増大します。
地域p内で、地域pの環境マネーC単位の価格を設定された製品の国際的な価値C’は、次の式となります。

C’=C×(M(p)+N(p))

すなわち、環境評価値の高い地域で生産された製品の国際的な価値は高くなるという事です。輸出しようとした場合には、高い値段が付くので、地域pの輸出製品の価格競争力が低下します。逆に、地域pの環境マネーは強いので、地域pは割安に他の地域の製品を輸入できるようになります。

【環境評価値の決定方法】
地域pの環境評価値M(p)は、世界に張りめぐらした環境センサで自動計測した値をもとに、国際的な査定機関のコンピュータで自動決定すべきだと思います。環境センサとしては、ランドサット衛星も使用できるでしょうし、各地域に多数配置した土壌センサや水質センサなども使用できるでしょう。センサの出力するデータが改竄されて環境評価値に影響が出る事がないようにするためには、その地域の多数のセンサの計測値の間の相互矛盾性のチェックや、ランドサットでマクロに見た計測値との矛盾のチェックや、計測値群の全体的な傾向からみてかけ離れている計測値を示すセンサの値を採用しないなどという事ができます。


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