行政ホームページ法案

                  1998年11月7日 改訂 久野


第1条(目的)
この法律は、憲法前文に規定された国民主権の原理に基づいて、1)行政事務機関を国民が主権者として評価し、直接又は間接に制御する事、2)国民の生命・財産の保護および生活の維持・向上に反する行政事務機関の活動を国民が監視する事、3)国民による政策立案を容易にする事、のためにインターネットのホームページを通じて、国民が利用し易い形態で、行政事務機関に行政情報を公開させる事を目的とする。

第2条(定義)
この法律において特に定義して用いる用語を、次の各号に示す。
(1)行政事務機関:内閣の指揮・監督下にある機関、地方自治体、およびこれらから出資を受けて運営されている機関、ならびにこれらからの人員が経営幹部の過半数を占めている機関をいう。
(2)行政情報:行政事務機関またはその職員が、行政事務機関の業務に関して、入手した情報,作成した情報,使用する情報,保管する情報をいう。
(3)行政ホームページ:行政事務機関がインターネット上に設けたホームページをいう。
(4)掲載:掲示して公開する事をいう。

第3条(情報公開法との関係)
この法律は、情報公開法の特別法である。

第4条(行政情報のデジタル化の義務)
1.行政事務機関は、全ての行政情報の書誌的事項を、この法律の資料1で定めた統一形式でデジタル情報にして、保持しなければならない。
2.行政事務機関は、全ての行政情報(この法律の資料3で特に秘密指定された行政情報を除く)を、この法律の資料2で定めた統一形式でデジタル情報にして、保持しなければならない。
3.この法律の資料3で特に秘密指定された行政情報は、国家機密として50年間はこの法律による公開の対象外とする。

第5条(行政ホームページの開設義務)
1.行政事務機関は、課レベル以上ごとに、この法律の施行の日から60日以内に、行政ホームページを開設しなければならない。
2.前項の行政ホームページは、行政事務機関の組織の階層に対応した階層構造を保持しなければならない。

第6条(行政ホームページの運営責任者)
1.行政事務機関は、課レベル以上ごとに、行政ホームページの運営責任者を設けなければならない。
2.前項の運営責任者は、当該行政ホームページの維持・管理、行政情報の公開、行政ホームページに関連した問合わせへの対応を実行しなければならない。
3.前項の運営責任者は、自己の所属する行政事務機関の行政情報のデジタル化および当該行政ホームページへの行政情報の掲載ならびに行政ホームページに関連した問合わせに関する応答について、当該行政事務機関の全ての者に絶対的な指揮・命令権を有する。

第7条(行政ホームページの条件)
1.行政ホームページには、この法律の資料4で定める情報は必ず掲載しなければならない。
2.行政ホームページには、その運営責任者の所属・官職・氏名を電子メールアドレスとともに掲載しなければならない。
3.行政情報は、行政ホームページに書誌的事項とともに検索可能に掲載しなければならない。
4.行政情報は、そのカテゴリーごとに、この法律の資料5に定める掲載準備期間と掲載継続期間に従って、行政ホームページに掲載しなければならない。
5.行政ホームページにアクセス制限をかけてはいけない。
6.行政ホームページのアクセスに課金をしてはいけない。
7.行政ホームページに掲載している行政情報について、行政事務機関は著作権および著作者人格権、ならびに2次的著作物の利用権を主張してはならない。
8.行政ホームページのアクセス速度は、行政ホームページ審査会の勧告に示された値以上を維持しなければならない。

第8条(情報開示窓口の行政ホームページ上への設置)
行政ホームページの運営責任者は、個別の行政情報の開示請求を受け付ける窓口を、行政ホームページ上に設置して、開示請求を受け付けなければならない。

第9条(行政ホームページ審査会)
1.国会は、過去20年間に行政事務機関に所属した事の無い日本国民の中から11名を、任期3年の行政ホームページ審査員に任命する。
2.行政ホームページ審査員は、会長1名を選任して、行政ホームページ審査会を構成する。
3.行政ホームページ審査会の事務および調査のために、過去20年間に行政事務機関に所属した事のない者で構成される50名の行政ホームページ調査員をおく。
4.行政ホームページ審査員は、国民からの行政ホームページについての不服や意見を受けると、行政ホームページの審査をし、改善すべき事項があれば改善勧告を発する。
5.行政ホームページ審査員は、この法律の資料1〜5の改善案を国会に提出する事ができる。

第10条(行政ホームページに関する不服申し立て)
1.日本国民は誰でも、行政ホームページが第7条の規定に違反しているとの不服を行政ホームページ審査会に申し立てる事ができる。
2.前項の不服申立ての手続きは、この法律の資料6に定める。

第11条(罰則)
行政ホームページが第7条の規定に違反した場合には、当該行政ホームページの運営責任者は、その違反の内容に応じて、この法律の資料7に定めた内容に従って処罰されるものとする。


資料1:  行政情報の書誌的事項

@ 行政情報の表題
A 作成責任者の所属・官職・氏名
B 保管責任者の所属・官職・氏名
C 作成年月日
D 保管期間
E その行政情報の本体部分のデジタル化の有無
F その行政情報を非公開とする場合の根拠符号
G その行政情報を検索するためのキーワード群
H その行政情報に付与された管理番号
I その行政情報に関連する他の既登録の行政情報の管理番号のリスト
J その行政情報の保管場所(デジタルデータ化されている場合はURL,デジタルデータ化されていない場合は保管場所を示す符号)
注)上記のURLの表示をクリックすると、その行政情報の本体にアクセスが可能である事も必須条件である。
K 上記の@〜Jまでのデータに基づいて生成されたチェック符号


資料2  行政情報の形式

@ HTML形式のドキュメントとする。
A 関連文書にはハイパーリンクを張ったものとする。


資料3  秘密指定された情報のリスト

@ 国防・外交情報

A 行政機関内部の人事規則、慣行に関する情報

B 制定法によって特に開示が免除されている一定の情報

C 営業上の秘密(トレード・シークレット)や、第三者から得られたもので、秘匿権が認められ、または秘密に属する商業上または金融上の情報

D 行政機関との訴訟で、行政機関以外の当事者が法律により利用することができない行政機関相互間または行政機関内部の覚書もしくは書簡類の情報

E 開示することによって、個人のプライバシーに対する明らかに不当な侵害になる、人事ないしは医療、あるいはこれに類する書類の情報

F 法執行手続きを妨害すると合理的に予期されうる場合、個人のプライバシーに対する不当な侵害になると合理的に予期されうる場合、その他一定の法執行の目的で収集された記録や情報

G 金融機関の規制監督に関連する一定の情報


資料4  必ず掲載しなければならない情報

@ その行政事務機関の業務に関係する法律、省令、規則、通達などの各種の規定の全文。
A その行政事務機関の各課以上の部門について、各部門ごとの仕事の内容と目標。
B その行政事務機関の組織。
C その行政事務機関の予算および決算の全ての情報。
D その行政事務機関に関する行政情報について、各行政情報ごとに書誌的事項を記載した行政情報のリスト。
E その行政事務機関が補助金を与えた相手方の名称と、その補助事業の内容。
F その行政事務機関の全職員の官職、氏名を記載したリスト。
G その行政事務機関が会計検査院によって検査された時の検査記録。


資料5  掲載準備期間
@ その行政事務機関の業務に関係する法律、省令、規則、通達などの各種の規定の全文:行政事務機関の業務に関係する法律、省令、規則、通達などの各種の規定の制定の日から7日以内または、本法律の施行の日から1ヶ月以内。

A その行政事務機関の各課以上の部門について、各部門ごとの仕事の内容と目標:各年度の始めの日から2週間以内、ただし年度の途中で仕事の内容や目標が変更された場合には、その変更の日から7日以内または本法律の施行の日から1ヶ月以内。

B その行政事務機関の組織:組織変更があった場合には、組織変更の日から7日以内、または本法律の施行の日から1ヶ月以内。

C その行政事務機関の予算および決算の全ての情報:予算および決算の確定の日から7日以内又は本法律の施行の日から1ヶ月以内。

D その行政事務機関に関する行政情報について、各行政情報ごとに書誌的事項を記載した行政情報のリスト:本法律の施行の日前に存在している行政情報に関しては本法律の施行の日から6ヶ月以内、本法律の施行後に発生した行政情報については、その行政情報の発生の日から7日以内とする。ただし、本資料5の他の条項で準備期間が定められている情報については、その条項による。

E その行政事務機関が補助金を与えた相手方の名称と、その補助事業の内容:
補助金を与えた日から7日以内又は本法律の施行の日から1ヶ月以内。

F その行政事務機関の全職員の官職、氏名を記載したリスト:人事異動の日から7日以内、又は本法律の施行の日から1ヶ月以内。

G その行政事務機関が会計検査院によって検査された時の検査記録:
検査記録が当該行政事務機関に渡された日から7日以内、又は本法律の施行の日から1ヶ月以内。