これも友人Sのものですが、TRINITYが重く感じて、もっと手軽に作業に取り掛かりたいということから購入を考えた、ということらしいです。

プリセットはとても使いやすく、これを買う人が欲しがるであろう音色は、この448音色のなかに大抵網羅されているといってもいいでしょう。特にドラムなどは即戦力という触れ込みがあながち嘘とはいえない程。ローブーストはトータルにかかってしまうので、フロアで使う人ならともかく、普通のオーディオ用スピーカで聴くぶんには必要無いと思ったので私は使いませんでした。パートごとに使い分けられたら、音作りに利用できたんですけどね。

記憶音数が14,000音ということを見ても分かるとおり、もともと、あまり作り込むためのシーケンサではないので、ある程度ベタに作っておいてグルーヴクオンタイズ、というのが定石でしょう。しかし7セグメントLED6個に鍵盤キーに付いたLEDしかない割には打ち込みやすく、やろうと思えばそこそこのところまで打ち込めますが、音符より細かいドラムのロールやフラムを打ち込むのには向いていません。つまり私にはあまり向いてないってことですか。
パートセレクトの8つのキーに、ゲートタイムとベロシティを4つずつ割り当てることができて、たとえばフォルテ、メゾフォルテ、メゾピアノ、ピアノといった具合に4つの値をそれぞれ4つのキーだけですぐに設定し、その値で打ち込むことができます、そこまでならQY20と同じ(でも+、-キーで選択するのと、それぞれに対応するキーがあるのとは大違い)ですが、MC303の場合はその4つの値をユーザーがカスタマイズできるというあたり、かゆいところに手が届くといった感じです。あと、エフェクターはリバーブ、ディレイ、フランジャー、コーラスぐらいなので、取り立ててスゴいことができるわけではありません。でもディストーションぐらいはあってもよかったんじゃなかろうか、などと言い出すとコンプもEQも、とキリがないので、まあ必要十分といったところか。アルペジエーターは発音順の設定もできるし、ドラムキットにも使えるので楽しいです。ただ私の場合は曲に反映されなかったけど。

ダイアルは少し手ごたえがあって重い感じがします。くぼみがある割には、そこに指を突っ込んでグルグル回すという使い方はあまり推奨されていないようです。同様にツマミの感じも軽くなくてしっかり作ってあります。ただしツマミのレスポンスははっきりいって良くないです。回し始めてから反応が始めるまでのタイムラグがあり、そこのところだけ値が飛びます。グイッと回すぶんには気にならないといえば気になりませんが、ゆるやかにスィープさせようとするとその「飛び」は非常に耳につきます。


友人がMC303を買ったのは、その動機からすると正解でした。オモチャとしてはかなり優秀で、楽器としても、値段を考え合わせれば充分納得のいく買い物だったと思います。ただ私はほんの少し借りただけで、まだまだ使いこなすというには程遠いので、機材としてここがいい、とハッキリ言えないのが辛いところ。そういう場合文句だけが出てしまう。14セグメントのLEDが良かった(一応表示されるパラメータの名前が分かりにくい)とか、沢山あるグルーヴクオンタイズのテンプレートからひとつを選ぶより、それらしく打ち込んだ方が早くて面白いものができるんじゃないかとか、パターントラックじゃない普通のシーケンストラックが少しでもいいからあればなあとか。とはいっても、かなり売れてるっていうから満足している人もきっと大勢いるんだろうと思う。ということは相性の問題でしょうか。

(1998.05/30)