はじめに言っておきます。これも友人Sのものです。SはQY10やQY20でのシステム(一応、この2台を接続したことはあった、やはり実用的ではなかった)を拡張するために、次なる機材を求めたのでした。AKAIのS01の購入も考え、店員に尋ねたそうですが、S01にはQYでは力不足だと言われ、買ってきたのがTG300。その店員が言ったこと自体は的外れだったと思いますが、結果的には良い選択であったろうと思います。とにかく一度、主流であるPCM音源方式のエディットに触れておくには頃合でしたし、事実、後々有利になったわけです。

なんといっても真っ先に飛びついたのがレゾナンスとカットオフ。とにかくレゾナンスは、ベースといわずキックといわずスネアといわずかけまくっていました。そのなかでもパッドにかけたレゾナンスはやはりキレイの一言で、LFOで揺らすとそれはそれは気持ちがよいのでした。

それからパンの設定にランダムというのがあって、とくにオートパンなどのエフェクターを使用せずとも(厳密にいうと効果は異なりますが)、音が飛び散ってなかなか楽しい機能です。

ちなみに、せっかくダイアルがあるのだから、それを使ってカットオフをコントロールしたい、というひとのために言っておきますと、そういう場合、エディット画面のカットオフのパラメータをいじっても、発音中の変更が音に反映されない(つまりその変更は次の発音時になってからでないと適応されない。サスティンのない音だったらあまり目立たないけど)ので、音色のセットアップをする画面(ポルタメントの設定などができるモードのこと)のカットオフをダイアルで増減するとよいでしょう。こうすると発音中にリアルタイムでフィルターが開閉できます。

TG300にはマルチエフェクターも3系統(リバーブ、コーラス、バリエーション)搭載されていて、音色プログラムからそれぞれにセンドレベルが設定でき、なおかつエフェクターからエフェクターへのセンドもついてました。エフェクトプログラムも一通りのものは網羅されています。リバーブなどはさすがにデジタル臭くて自然な響きとはいえませんが、そういうリバーブこそ、金属系の音にギラギラとかけるべきでしょう、敢えて。あと、ディストーションの低音が欠けがちなところも、すこし残念ですが、これはドラムにではなく、クワイヤ等にかけるといい割れ具合でした。フランジャーなどは結構キツめにもかけられて、やはり金物にかけるとエグくてよかったと記憶しています。そういえばコンプもついてました。あのころは使い方がよく分からなかったので、ただ音がでかくなるエフェクターなんかな、と思っていました。
あと細かいところでは、LFOをキーオン時にリセットしないように設定できたところが好きでした。とりわけ珍しい機能でもないのですが、これを設定すると、ひとつのLFOにそのプログラムの音が全部シンクすることになり、音の表情(特にアタック部分)にバラツキがでていい感じです。

TG300は音色のエディットパラメータに階層構造がなく、ひとつの大きいエディットモードのなかをカーソルキーのみ(もちろんキーリピート機能はついています)で渡り歩くわけですが、そのときは先入観も何もなかったので、まるでカテゴライズされてないパラメータ群を見ても別にどうということはありませんでした。カテゴリーに慣れたひとだったら煩わしいと感じるかもしれませんが。
それからドラムのエディットに関しては少し問題があって、ドラムキットにある音色の一部しかエディット可能なウェーブフォームに明け渡されていないので、それ以外のドラム音色をいじりたいとなると、いきおいドラムキットをまとめてエディットするか、エフェクトをかけるぐらいしかないわけです。たしかドラムキットの音色ごとにエディットもできたような気もしますが、なんかワケあってストアできなかった、と曖昧に記憶してます。それでほとんどドラムキットはパーカッションの類いにしか使わず、スネア、キック、ハットあたりはエディット可能なドラム音色を元に作った音で、他のノーマルボイスと同様に扱いました。

あと、オーディオイン(ピンプラグ)がついているので、ミキサーがなくとももう一台は楽器がつなげます。DTMユーザーには便利でしょう。

今そのころの曲を聴いてみると、なんだろう、結構ローがしっかりしたキックが出ている。コンプか、フィルターを閉じてレゾナンスを効かせたか、たまにフランジャーもかけたしな、どうしたのか忘れた。悪くない音源だったってことかなぁ。

(1998.05/29)