奇跡の意味

 

奇跡とはいったい何なのだろうか?この頃、ふとそんなことを考えてしまう。
何気ない日常。何気ない会話。何気ない仕草。そのどれもが、本当なら無い物だったのに。ここに存在していなかったはずなのに。
「祐一さ〜〜ん」
そう、本当ならこうやって呼びかけてくれる事は無かったのだ。

「栞、遅いぞ」
今日は日曜日。栞にせがまれて、映画に行くことになったのだ。何でも、面白かったドラマが映画化するらしいので、一緒に見に行くことになったのだ。ちなみに、俺は全く知らないドラマだ。栞に誘われたのが水曜日だったので、見る機会がなかった。毎週月曜日にやるらしい。
「すいません。お弁当作ってたら遅くなっちゃいました」
そう言って少しバツの悪そうに笑いながら、手に持った包みを見せる。
(・・・また、こんなに作ってきたのか?)
はっきり言って、常人の食べれる量ではない。普通の弁当箱の二倍はありそうな四角い弁当箱が・・・高さから見て、三箱はある。
「栞・・・作ってきてくれるのはうれしいんだがな」
俺は至極まじめな声で言った。
「はい?」
「何度も言ってるように、もう少し量を押さえられないか?」
「押さえてますよ?まだまだ入れたいお料理があったんですけど、入りきらないのであきらめました」
「・・・どれくらい押さえたんだ?」
「えっと・・・だいたい、半分くらいにしました」
「・・・」
(これで半分・・・?)
栞の言うことが本当だったら、最初作ってきた頃より、レパートリィが増えてることになる。まあ、それはそれで別に問題ないんだが・・・。
「栞・・・頼むから、この半分に押さえてくれ。俺、体重が5キロも増えてたぞ?」
「大丈夫です。それは幸せ太りですから」
(・・・そーゆー問題じゃないんだが)
ちなみに、実際は3キロだ。多少サバを読んで諦めさせようと思ったんだが・・・甘かったか。
「さっ、祐一さん、行きましょう。映画、始まっちゃいます」
栞はそう言うと俺の手をつかんで歩き出す。
(・・・栞の手、あったかいな)
確かに栞が生きていることを実感できる。温かい手、かげりのない笑顔・・・それは、たった一つの奇跡が俺に与えてくれた最高の贈り物だった。だが、ふと思う。奇跡とはいったい何なのだろうかと。

「はぁ」
映画館から出てくるなり栞は盛大にため息をついた。
「どうした?便秘か?」
「わっ、違いますよ。感動の余韻を楽しんでたんです〜」
栞は、なぜか真っ赤になりながら反論する。
「なんだ、てっきり便秘に悩まされてるのかと思った」
その仕草があまりにもかわいいので、俺はついついふざけてしまう。
「もう、そんな事言う人嫌いです」
案の定、そう言って、栞はそっぽを向いてしまう。
(でも、それもまたかわいいんだよなぁ〜)
「祐一さん、顔がにやけてますよ?」
「そっ、そんなこと無いぞ」
どうやら、顔に出てしまったらしい。慌てて顔を引き締める。
「さて、腹も減ったし、昼飯でも食うか」
俺は誤魔化すために、そう切り出した。
「あっ、はい。たくさん食べてくださいね」
・・・どうやら、墓穴を掘ってしまったらしい。

「くっ、苦しい〜〜〜」
俺は芝生の上に寝ころんでいた。
「お粗末様でした」
あれから、噴水のある公園に来て、昼飯を食べた。はっきり言って、辛い。なんとか、全部食べきったが、しばらくは動けそうもない。味は文句無い。回を重ねるごとに腕を上げてるようだ。しかし、この量だけは何とかしてほしい・・・。
「栞・・・また腕を上げたな」
素直な感想を言う。
「ありがとうございます」
栞は、満面の笑顔で返事をした。
「しかしだな・・・俺、しばらく動けんぞ?」
「じゃあ、しばらく休憩しましょう。日差しが暖かくて気持ちいいですから」
「そーだな」
とゆーか、そうしてもらわないと困る。
そよかぜが気持ちいい。木々のざわめきや、鳥のさえずり、かすかに匂う花の匂い。暖かくなってきて、そろそろ本格的に春が来ることを実感できる。
(栞と春を迎えられるんだな・・・)
そう思うと、自然と心が温かくなるような気がする。誰よりも好きな、誰よりも大切な人と過ごすことが出来る・・・それが、こんなにも嬉しいものだとは知らなかった。
「祐一さん」
物思いに耽っていると、栞が声をかけてきた。
「ん?」
「もうすぐ・・・春なんですね」
「ああ」
何となく、栞の言いたいことが分かった。たぶん、俺と同じ事を考えているんだろう。
「冬が・・・終わるんですね」
「ああ」
そう、冬が終わって、春が来る。季節だけでなく、栞の心にも。
「この頃・・・ふと、思うんです。奇跡ってなんなんだろう、って。私は、奇跡は起こらないから奇跡って言うんだって、思ってました。本当なら、私は今ここにはいないはずだったんです。でも・・・私はここにいます」
俺は、何となく、分かった。栞は、不安なんだって。自分が今ここにいることが奇跡なのはたぶん、自分でも分かってると思う。
でも、奇跡を否定してた自分になぜ、奇跡が起こったのか。それが分からないから、不安なんだろう。俺は、奇跡だの何だのと言うものがどんな物かなんて実際は分からない。でも、俺は栞にかけるべき言葉を自然と言うことが出来る。
「奇跡ってのはさ、強さなんじゃないかな?」
「えっ?」
思いがけない俺の言葉に、栞はとまどった顔と声で聞き返した。
俺は起きあがり、栞の瞳を見て真剣に言葉をつないだ。
「奇跡ってのは思いの強さじゃないのかな?純粋な生きたいって言う、栞の想いが奇跡を起こしたんだよ。いや、奇跡って言葉じゃなくてもいい。幸運でも、偶然でも何でもいい。とにかく、栞の本当の想いが栞をこの世界に留め、今栞がここにいるんだ。それは、自分の力で勝ち取った物だ。だから、俺は奇跡ってのは強さだと思う」
「祐一さん・・・」
俺はそっと、栞の唇に触れた。
栞の存在を確かめるように。
栞の温もりを離さないために。
栞の強さに感謝するように。
栞の想いに答えるために。


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どもー。初めまして〜〜〜。守護雷帝でっす!!いかかがしたでしょうか?SS処女作<奇跡の意味>。
ほのぼの系で仕上げてます。たぶん・・・(笑)。しかし・・・なんなんだろう?この作品。意味不明な箇所ばっか・・・(笑)。む〜〜、精進せねば。つーことで、まあ、大目に見てください(爆)。
自分の中では、栞ちゃん(守護雷帝は栞ちゃん萌えです)のシナリオを終わらせた時点(だいたい、発売から二週間ぐらい)で、SSを書きたいなぁ〜、とは思ってたんですが、なぜかずるずると引き延ばしてしまい、こんな時期になってしまいました(笑)。
構想段階から、奇跡について書きたいとは思ってたんです。
今回のコンセプトとしては、「奇跡を否定していた栞ちゃんがそう簡単に奇跡を受け入れられるだろうか?」と言う疑問から書いた物です。実際には1人だと無理だと思うんですよ。だから、祐一に不安を取り除かせよう、と思ったんです。
時間的には栞ちゃんEND後から公園で似顔絵を書く前までの間ってとこですかね。最後の部分は確か春だったんで(←実は、パソコンのスペックが合わず、画面切り替えが遅いので、あんまやってない。だって、一画面切りかわるまでにマンガが5ページ以上読めちゃうんだもん。現在、パソコン買い換えを計画中)。
実は、次の作品の構想はありません(笑)。まだまだ、他の方々とは比べ物になりませんので、構想を練ることすら放棄してます(爆)。お叱りのメールなどをいただければ幸いです。それでは!またの機会にお目にかかれることを願いつつお別れしましょう。ごっきげんよーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!

作成日 10/30  著者 守護雷帝  メールアドレス korai@pop16.odn.ne.jp

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