■ブランドに買われる日本■
AERA 00.10.16
東京・港区南青山五丁目の一角で、この夏、四階建ての建物が取り壊された。建物の名は、さくら銀行「青山クラブ」。日本経済がバブルに踊っていた1987年に建てられ、行員がパーティーを開いたり、仕事の打ち上げをしたりするのに使う厚生施設だった。さくら銀行は、昨年、経営健全化計画をまとめ、保養所や寮などの整理・閉鎖を進める方針を打ち出した。その一環として、昨年九月、約1000平方メートルあるこの土地を建物ごと売った。買ったのは、イタリアのスーパーブランド「プラダ」。今回買った港区南青山の一帯に、「ミュウミュウブティック青山」など直営の路面店を相次いでオープンした。バブル経済の崩壊後、下がったとはいえ、依然として高価な東京の一等地で、経営改善を迫られてる日本の銀行が遊休地を売り払う。その土地を、不況知らずの海外スーパーブランドが買う。
ブランドによる土地売買劇は、ここだけではない。土地を買って店を開く「本格進出」の先陣を切ったのは、エルメスだ。97年初め、セイコーが銀座五丁目の土地約600平方メートルを売りに出すという話を、エルメス・ジャポンの斉藤峰明社長(48)は聞いた。セイコーは腕時計の消費が伸び悩むなか、業績が低迷していた。連結の売上高は今年三月期で2762億円で、毎年約一割ずつ売り上げてが落ちている。銀座のど真ん中にあるまとまった土地は「大きな買い物」だが、自社ビルを建てるのが念願だった。エルメスはすぐに、所有権移転の仮登録をして、翌98年1月、借金せずに現金一括払いで買った。「昔から探していた恋人に出会った感じ。土地の購入はすぐに決断しました」と斉藤社長はいう。
マックスマーラは昨年六月、エルメスの近くの銀座五丁目に130平方メートルの土地を買った。ここは、バブル経済のころ消費者金融のレイクが、海外で買い付けた絵画を展示する画廊として使っていた場所だ。しかし「もう画廊で儲かる時代は終わった」として、売却先を探していた。マックスマーラジャパンの松見充康専務はこう話す。「銀座は年間20億円の市場だと思っている。そう考えれば、土地も償却はそれほど難しくない。私達のような成長中のブランドにとっては、銀座の真ん中に自前の店を構えることで認知度がアップすることも考えれば、安い買い物だ」
その年の九月にプラダとさくら銀行の契約が成立。次に、ルイ・ヴィトンが続いた。渋谷区神宮前五丁目の土地は、もともと、歌手で実業家の千昌夫さんが経営していたアベインターナショナルの所有だった。多額の債務を抱えたアベ社の倒産後、借地権など権利関係が複雑に残っていた土地を買わないか、と持ちかけられたが、そのときは断った。が、今年春先になって、権利関係をきれいにしいて建物を取り壊した更地を三井不動産が提示した。エルメス同様、キャッシュで一括払いした。ルイ・ヴィトン・ジャパンの秦郷次郎社長は土地を買ったことについてこう語った。「安い買い物をしたな、と満足しています」ある大手不動産会社が集めた情報によると、プラダは約60億円、エルメスは100億円弱、ヴィトンは40億円弱を支払ったという。土地の相場価格は、政府が発表する路線価の1.3倍程度といわれる。しかし、不動産関係者の間では、ブランドが絡んだ土地の売買価格は相場よりずっと高くなるというのが常識だ。路線価の二倍程度にとどまらず、四倍に達したケースもあったという。関係者はこう言う。「破格の高値がついて笑いが止まらない会社も多いはずです」。
ブランドの狙う土地は、金持ちが集まる銀座、オシャレなイメージがある青山界隈だけだ。この辺りの土地売買は、売りたい側が値段を示すという商売ではなく、公共事業のように「入札方式」がとられるケースが多い。不動産関係者によると、銀座、青山辺りの入札に参加する企業は、大半が外資系ブランド。ヴィトンやグッチ、プラダなどは常連だという。ヴィトンの秦社長はこう話す。「私達も何度か落札に失敗しました。市場の秩序を無視したような入札価格を聞いたこともある。土地購入を希望する会社の顔ぶれを見せ、ライバル心をあおって値を吊り上げようとしているのか、と感じることもありました」
テナントの貸し借りでも同じようなことがあるようだ。表参道に面した港区北青山三丁目の明治生命ビルは、昔社員向けも厚生施設だった。土地を有効活用しようと、ビル建設を始めたが、何の応募もしていないのに、約70社が入居を希望した。貸店舗は地上13階のうち、一階部分約770平方メートル。青山辺りで、久しぶりのまとまった土地だった。明治生命側は、集客力や支払い能力、入居時のイメージなどをもとに事前審査して四社に絞った。残ったのは外資系ブランドばかりだった。四社に対し、賃料などの入居条件、入居後の店鋪デザインを出してもらう「コンペ方式」をとった。昨年三月に完成した一階には、グッチが店を開いた。明治生命側は説明する。「多くの申し込み者に対して、公平性や透明性を高めるため、コンペ方式を採用することもある。このビルについては、デザインも含め、総合的に判断したもので、賃料だけで決めているわけではない」
地価は、その時々の取引実績が影響するとされる。こうしたブランドの取引が、バブル時代の「狂乱地価」の引き金になりやしないか。大手不動産会社は、「ブランドのように高い金を払える企業はめったにないから、こうした高値取引が今後の土地取引に大きな影響は与えないだろう」と冷静だ。しかし、銀座で老舗の飲食店を営む男性(70)は言う。「ついこの間、大家から賃料の値上げをさりげなく言われた。ブランドが高値で借りているせいだって、近所では言っている」
周囲が「高い買い物ではないか」と言っても、そんな大金を安いと思えるエネルギーが、いまのブランドにはある。エルメスは昨年、地域別の売り上げシェアで、創業以来ずっとトップだったフランスを、日本が抜いた(日本が25.9%、フランスは24.5%)。日本法人の年商は昨年、278億4000万円で、前年より13%増えた。人員カットのリストラ風が日本列島を吹き荒れるのに逆行して、ヴィトン・ジャパンは販売スタッフの社員化を進めている。今年に入って、すでに約250人を採用して社員数は約1200人になった。来年も320人を新規採用する。そんなことが出来るのも商売が絶好調だからだ。世界の3分の1を売り上げる日本法人の売り上げ高は、今年1〜8月で643億円。前年の二割増だ。マックスマーラも今年7月期の年間売り上げは168億円。一割ぐらいずつ伸びている。プラダは売り上げなどについて公表していないが、業界関係者はこう見る。「出店のペースから見て、相当儲かっている」
そこまで大枚をはたいて、土地ごと買っていくブランドはどんな損得勘定をしているのだろうか。一番目の理由は「家賃の節約」だ。デパートに店を出すと、一般的に、定額家賃のほかに、利益の2〜3割を支払わなければならない。だから、売れれば売れるほど家賃は高くなる。64年に、銀座・並木通りにエルメスやグッチを揃え、常にブランド品を先取りしてきた「サン・モトヤマ」の茂登山長市郎会長(78)は、「有名ブランドになれば、デパートの看板が持つ信頼性ももういらなくなる。彼らのことだから、綿密に計算したうえ、土地を買った方が儲かる、と判断したんでしょう」 当事者たちが強調する理由は「思い通りの店つくり」だ。エルメスの新ビルは、店鋪以外に、他目的のイベントスペース、バックなどを修理する職人が数人在駐したアトリエなどを設ける。斉藤社長はいう。「本来、店というのは、作り手と使い手が出会う場所。店を、モノを売るだけじゃなく、その商品の背景や文化も感じられる場所にしたい」 ヴィトンが2002年春オープンを目指すビルの名は「ルイ・ヴィトン館」。美術館も設ける予定で、店鋪以外の付加価値をつけようとする方向は、エルメスと同じだ。秦社長は言う。「テナントはそのスペースに合わせた店にしかならないが、土地から買って建物の設計をすると思い通りの店づくりができる」
矢野経済研究所の上級研究員、池内伸さん(40)は、ブランドが土地を買って自社ビルを建てることについて、こう説明する。「外資系ブランドは投資という面では、かなり細かい計算をしてくる。その彼らが、今の日本の土地水準なら「買ったほうが得だ」と判断したんでしょう。結果的に、日本企業を助ける資金の一部になるし、土地購入で税金も払うことになるから、日本経済の立ち直りに貢献しているという見方もできる。また、新たなビル建設は、重要性が高まる一方の日本市場で新しい消費を呼び起こそうとする仕掛けという面もある」
来年春のエルメスビル完成を皮切りに、ヴィトン、プラダの「自社ビル兼店鋪」が続々とお目見えする。エルメスの斉藤社長と、ヴィトンの秦社長は自信たっぷりに話す。「普通の建物じゃないですよ(斉藤社長)」、「これぞ、ヴィトンという店にします(秦社長)」
まだ土地を取得していない外資系ブランドはたくさん残っている。業界関係者の間ではこう囁かれている。「次はグッチだ」 独自色を強めた海外ブランドのしのぎ合いは、21世紀の幕開けと共に、新しいステージに入る。
HIRO@管理者のボヤキ 日本人ってブランド大好きだもんねぇー(笑)。特にルイ・ヴィトンは! もぉー『ネコも杓子もルイ・ヴィトン』状態でしょうぉ。ヴィトンのモノグラムの財布は誰でも持ってます、たとえジャージ着たオニーチャンでも(笑)。ホント、頭にタオル巻いた兄ちゃんでも財布はモノグラムのヴィトンだからねぇー(苦笑)。不思議不思議。高校生がモノグラムのヴィトンの財布持ってるだなんて、全然珍しいことじゃないっす。確かにね、いいらしいじゃないですか、モノグラムの財布。あれ、表皮はビニールでしょ? だからマックのポテト食って油まみれの手で持っても大丈夫(笑)。皮じゃないし、手入れもラク。ヴィトンだし、「こりゃー押さえとけぇー」ぐらいのモノなのでしょう、多分(謎)。ある統計によると、日本人のヴィトン製品所有率は36%を超える、というデータもあるそうな。じゃ、このページでもやってみましょうじゃあーりませんか(笑)。みなさん、結構持ってるでしょぉー(笑)。じゃね、バック関連で○個、小物関係で○個、ッてな感じで掲示板に書いてくれると嬉しいデス。モノグラムに限らず、統べてのヴィトン製品ですからねぇー。ベルニ、ダミエ、タイガなども含めますよ。ちなみに、ワタクシはバック関連は0個、小物関連は、タイガの手帳を持ってるので1個デス。さ、みなさん、どのくらい、ヴィトン製品持ってますかー?? (んー、なんか文章とあまり関係ないボヤキだな・笑)