これに乗りたい!という大型バイクがあるわけでもないのに、私は大型二輪免許がほしい。
なぜそう思ったのかというと、やはり400ccで頭打ちの免許しかもっていないというのが、 なんとなく許せないんですね。高性能なバイクに乗る技量が、あんたには備わってませんよ と言われてるみたいで。ホントはそんなこと誰も言ってないんだけどさあ。
まあそんなわけで(どんなわけだ)、教習所卒にて普通二輪の免許を取ってから2ヶ月後の 1999年10月、私は大型二輪の免許取得を決意したのでした。教習所ではまた10万程度のお金が かかるし、必ず12時限乗らないといけないので日数もかかる。通うのも面倒だし、それなら いっそのこと試験場での一発試験の方がねえ、多分手っとり早いよ。受験料は一回4300円 だから、仮に10回受けたとしても4万ちょっとか。色々と聞くところでは、しぶとく頑張って 最悪10回も受ければさすがに受かりそうだし、よっしやってみよう。というわけで、限定解除 日記の始まり始まり~♪
第二段階の最初は、大型車の8の字取りまわしと引き起こし。実技受験に必要な事前審査を
これでかえるというものである。次は試験コースの説明。二輪技能待合室にあるコース図を
使って、確認や合図のタイミングの講義を受ける。話には聞いていたが、こんなに詳しく教え
ちゃっていいの?というくらい詳しく、そして細かく教えてくれる。
それから試験車両を使ってのコース周回。午前中はコースを覚えることに重点を置いて、確認や
一時停止は省略して4周ほど回る。最初はCB750に乗ったが、低速からの太いトルクと、ステアリングの
切れこみが激しいのにびびった。外周のカーブなどでもハンドルがググッと内側に切れこむので、それを
腕で抑えながら乗っているような感じで、これって何か間違っているよなと思う。
40分間の昼食休憩をはさみ、午後はまず課題の集中練習。4輪試験コースの方に一本橋と波状路、
そしてスラロームを設置して、何度も何度も繰り返し練習する。このとき乗ったヤマハのFZX750が、
めちゃめちゃ乗りやすいバイクだった。
課題練習の最後にはコーススラロームも走って、お次は試験コースのおさらい。教官と一緒に
コース内を歩きながら、ポイントの説明をもう1度聞く。コースの周りにある階段とかを目印にして、
ここで確認.....など非常に実践的。「安全運転講習」とは言っても、真の目的は大型二輪試験の合格、
それに尽きますと教官さえも言っていたほどだから。
コースをおさらいした後に、確認や一時停止、急制動と踏切までの全てを含んだ上でのコース周回。
千葉県の大型二輪試験車はCB750かVFR750Kなので、その両方を使って、途中で車両をかわりながら
練習する。どちらかというとCBよりVFRの方が乗りにくいようで、受験生にも人気がないようだ。
もちろん実際の試験では選べないけど。そのようにコースの予行演習を4周ほど行い、最後に
試験本番さながらの一人ずつの走行をやって、15時半に終了。この最後のときに、私は一本橋の
出口付近でエンストした。足をつかずにまたスイッチを入れて立てなおしたが、本番に向けて不安を
残してしまった。
それにしても、今回の講習では朝から夕方までミッチリと実践的な練習をやらせてくれて、昼食込みで 17000円というのは、それで合格が近づくのも考えると、意外にオトクな話であるような気がする。 年に5回しかやっていないというのがネックだが。また、受講の特典として、昼休みに実技予約受付が あった。なるべく日数をあけたくないので、翌週木曜の午前を予約。今日の感触でいけば、一本橋 で落ちるとかの変なトラブルがない限り、一回で受かるような気がする。
9時半から試験が開始される。まずは普通二輪の人からで、8人ほど受けるも全員不合格。この頃から やたらと緊張が高まってくる。こういう時って、早くやって終わらせたいという気持ちと、心の準備がまだ.....と いう気持ちとが入り混じって、何だか複雑な感じ。今日のコースは1コース、車両はVFR750K。目の 前の発車地点に止まっているバイクのタンクが、なぜかやたらと大きく見える。
いよいよ大型の試験が始まって、一人目の人がスタート。曲がり角の大回りが多いような気がするが、 完走して望楼に上がって行った。そして書類を持って出てきた。う~ん不合格か。やっぱり減点を重ねて いたようですな。そして二人目の人は.....まったく覚えてない(^.^;; 完走はしていなかったと 思うが、自分のことで頭が一杯だったんですな。
そしていよいよ自分の番。周囲の確認をして、VFRにまたがる。右ウインカーと確認の後慣らし走行に 出発。あれ?こんなにトルクあったっけ。クラッチレバーもやたらとでかいような気がするし、恐くて あんまりアクセルを開けられないぞこりゃ。そう思っているうちに、あっという間に慣らし終了。
「じゃあ始めます」という無線があって試験開始、右確認に合図を出して出発する。手堅く障害物を
よけて、外周を回ってから右折、信号のある交差点でまた右折してすぐ左折、クランクに入る。うう~
やっぱりクラッチが遠いな。でも低速バランスの種目は得意なので、何とかクリア。
左右を確認後に外周に出て、すぐにまたS字に入る。これは問題なし。S字を左折で出たら、信号の
交差点を右に曲がって、すぐ左で波状路である。最初の人を見たときに、何だか立ちあがり方がカッコ悪いなと思ったので、
自分はいいところを見せようと思ってスックと立ちあがる。太いトルクが恐いのであまりアクセルを
開けずに、一つ目、二つ目、三つ目、四つ目.....プスン。あ、エンジン止まった!足をつかずに
セルスイッチでまたかけなおすが、無線には「は~いスタートに戻ります」という天からの声。
ぬああ~やっちゃった。一回で合格!の夢も、この瞬間潰えたのであった(涙
講習のときには波状路なんぞ余裕と思ってたけど、いざ試験となるとうまくいかないものだ。いいところを
見せようとして、ゆっくり行きすぎたのも悪かったかな。スタートに戻って下車し、望楼に上がる。
「あそこまではだいたい良かったんだけどね、波状路ではもっとパワーかけないと、両輪がかかった
ときにエンストしちゃうよ」
はい、わかりました。前半のみで終わってしまい、今日はほとんど走れなかったのが悔しいけど、とにかく
明日午後の予約を入れて試験場を後にする。
今日は2コースで、車両は昨日と同じVFR。コースを復習しながら他の人の走りを見ると、波状路、 一本橋、スラロームの失敗が多く、完走者はあまりいないようだ。
そして自分の番。今日は2台の車両を使って走らせているので、順番の回ってくるのがやたらと早い。 慣らし走行に出発して、スタート地点に戻ると、「前の人と代わってください。すみませんね」 という無線。どうやら1台が不調なようで、それを引っ込めて1台だけでやるらしい。言われた通り車両から 降りて、前の番号の人と代わり、ヘルメットを被ったまま自分の番を待つ。
そうしたら、前の人はスラロームでパイロンに接触し割と早く戻ってきたので、また私が乗車。その人が
望楼に上がっている間に、私は2度目の慣らし走行というオイシイ話になった。
スタートに戻ると「それじゃあどうぞ」。確認と合図で出発、障害物をよけて外周を回り、
右折するまでは昨日と一緒だが、今日は外周から中に入ったら、そのまま反対側まで突っ切って、外周を
左折して一本橋に向かうのである。一本橋の前で一旦停止し、ふぅ~という深呼吸とともに肩を
落として上体の力を抜く。確認して発車、始めは勢い良く橋に乗って、後半リアブレーキで調整。
とにかく落ちないように.....と少し早めに通過した。タイムは多分9秒台前半だったと思う。そしてそのまま
スラローム。ここは引っ掛けないようにゆっくりで、それでも7秒はおそらく切れただろう。よしよし順調だぞ。
スラの出口を左折して、十字路を通過し外周に突き当たる。周囲の確認をし、大回りしないように注意しながら 曲がって、今度はS字とクランクをクリア。この辺は特に問題なし。クランクを出たら外周から左に入り、 信号の交差点が赤だったので止まる。次は昨日涙を飲んだ波状路である。信号待ちの間、「ぞ~うさん、 ぞ~うさん、お~はなが長いのね」と口ずさんで緊張をほぐし、交差点を通過して左に曲がって、 波状路に正対して立ちあがる。昨日のこともあるし、とにかくエンストだけは避けなければ。タイムを 伸ばそうとして粘らずに、アクセルを開け気味にしたままクラッチでパワーを調整して、無事に通過する。 やった!これはいける!メリハリも何もないカッコ悪いアクセルワークだったけど、あれだけ回してれば、 とりあえずエンストはしないでしょう。
波状路のあとは外周に出て、潅木の所で左折し、見とおしの悪い交差点を通過する。1度止まって右左右、 ほんの少し出たらまた右左右。それから右合図を出して発車し、信号の交差点を右折。外周に突き当たったら また右折で、障害物をよけ、左の側道に入って坂道発進。これもとにかくエンストだけは避けたいので、多めに アクセルを開けて通過する。残すは急制動と踏み切りか。
そこで「もうほとんど受かったかも」と思ったら急制動で守ってしまい、スピードが足りなかった。 「急制動もう1度やります」と無線の声。やり直しの間にも採点は行われているので、踏み切り通過や 障害物にも注意しながらぐるっと外周を回り、また急制動に入る。再び速度不足だと試験中止だ。それだけは 避けようとメーター読みで50キロ出し、フロントブレーキをギュッと握って止まる。小型用の8メートルライン あたりで止まったので十分OK。おっし。
残すは踏み切りのみで、一時停止のとき絶対に踏み切り内に前輪が入らないように、少し前過ぎるくらいで
止まる。停止ラインに関しては、2メートル前までは減点がないのだ。だからあまりギリギリの所を狙わない
のがコツだと、講習会でそう言っていた。
踏み切り止まって右左右。1速のまま通過して、左に合図を出して外周に合流。望楼の下を通って左に入り、
スタート地点に戻って周囲確認、そして下車。手順にのっとりハンドルを左に切ると同時に、これはいけた
という感触があった。
試験官の方に軽く一礼し、ゼッケンを外すのも忘れて望楼にかけ上がる。「失礼します」と言って
部屋に入ると、「ああゼッケン外してね」とまず言われて、
「若林さん、職業は?」
「学生です」
「どこの学校?」
「東大です」
「ふーん。将来何になりたいの?」
「一応大学の教員を志望してますが.....」
「そう。オートバイは好きですか。大学でツーリングクラブとかやってるの?」
「いえ、特に。でもバイク好きの父親の影響もありまして....モゴモゴ。」
「ふーんそうですか。じゃあ下で待ってていいよ」
「ありがとうございます!」
書類も何も渡されないし、どこが良かったとも悪かったとも言われない。まるでバイトの面接でもしたような
感じだが、とにかく書類を返されていないってことは、これは多分合格なんだろう。やった!
ニヤニヤしながら望楼の階段を降りると、まだ順番を待っている受験生の人が「おめでとうございます」と 声をかけてくれた。どうもありがとうございます。喉がカラカラに乾いていて、自動販売機で缶の紅茶を買い、 一気に飲み干す。これでもう試験の緊張を味わうことがないと思うと嬉しい。
今回2回目にして合格できたのは、都内の警察主催の講習会にほとんど毎週行って練習しているのと、さらに二推の
講習で予行演習をしたのと、あとはそれらの情報を集めたということ、この3点による部分が大きいと思う。
詳しくは「合格のポイント」をどうぞ。
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