Japanese, after me :-)
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SON OF THE BOTCH
3月28日
『倍人-BAIJIN-』第2話(改題しました)
-2-
洋子の持っていた合い鍵で、取りあえず部屋には入ることができた。狭い台所をすり抜け、ベッドに腰掛ける。と、メキメキと金属のひしゃげる音がし、ダイエーで買った安いパイプベッドはぐにゃりと潰れてしまった。
「あはは。あんたいったい何キロあんのよ。」
「知らねえよ。たぶん200キロとかじゃねえの。」
「あははは。なんでそんなんなっちゃったかね。」
ゲラゲラ笑う洋子をうらめしげに睨む。
「テレビでなんかやってねーかな。」
「あんた以外にもおっきくなっちゃった人がいるかもって事?ネットで調べてみようか」
洋子がカバンからノート型のコンピュータを取りだした。起動音が鳴る。
「ちょっと待ってね。」
僕はテーブルの上のリモコンをつまみあげ、テレビのスウィッチを入れようとしたが、いかんせん小さすぎて、いや、僕が大きすぎて、上手くボタンを押すことが出来ない。
「なんだよくそっ。くそっ。」
「あはははは。おっきいおさるさんみたい。」
「ああもう。」
「押してあげるわよ。どれ?このボタン?」
ブン、という音とともにテレビモニタが画像を結び始める。
諌早湾の水門、芸能人の離婚問題、ドラマ。野球。世はこともなげに進んでいるようだ。
「マスコミは遅いからねー。こっちのほうが速いと思う。」
『2ちゃんねる』のニュース速報板に洋子がスレッドを立てた。
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[3:52]★★★彼氏が突然デカくなったYO★★★ ■▲▼ 1 名前: 名無しさん23 投稿日: 2001/03/23(火) 15:52
なんか彼氏が巨大化してるんですけど。みんなはどうよ。
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「あ、身長何メートルくらいかな。」
「んー。」
「ちょっと待って。」
洋子がカバンから裁縫用のメジャーを取りだした。
「なんでもあるんだな。ドラえもんかよ。」
スモールライトがあれば簡単なのに。
「ちょっと横になって。そっとよ。」
6畳の部屋にゆっくりと体を横たえる。部屋のどこかからミシミシと音がする。足の先が台所の方まではみ出している。
「こうやってみるとホントに大きいわね。アハハ。」
僕の目には小さくなってしまった洋子がメジャーをめいっぱい広げる。
「ここまで2メーター。」
ヘソの辺りを指で押さえ、そこからまたメジャーを伸ばす。
「2の、1.6。3メートル60センチ。アハハハハ。3.6メートル!」
以前の僕の身長は1.79メートルだったから、約2倍になっている事になる。
バスでの妄想が現実になってしまったのだろうか。だとしたらなんてバカな事を考えてしまったんだろう。ウィルス?いや、500円玉や鍵まで巨大化した理由にはならない。
もはや野球ボール程度にしか見えない洋子の頭がこちらを見つめる。
「あ、レスどうかな。」
ブラウザをリロードした。
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[3:32]★★★彼氏が突然デカくなったYO★★★ ■▲▼ 1 名前: 名無しさん23 投稿日: 2001/03/23(火) 15:52
なんか彼氏が巨大化してるんですけど。みんなはどうよ。
2 名前:名無しさん23投稿日:2001/03/23(金) 15:59
虚根自慢?そりゃあよかったね。
3 名前:名無しさん23投稿日:2001/03/23(金) 16:01
板違い。終了。
4 名前:名無しさん23投稿日:2001/03/23(金) 16:03
〜〜〜〜〜〜〜〜〜終了〜〜〜〜〜〜〜〜〜
5 名前:名無しさん23投稿日:2001/03/23(金) 16:04
まじだって!うちも姉貴さっき帰ってきて、でかくなってんだよ!
なんだあれ!6 名前:名無しさん23投稿日:2001/03/23(金) 16:05
┌─────────┐
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│ キチガイ警報!!│
│ |
└―――──――――┘
ヽ(´ー`)ノ
( へ)
く-------------------------------------------------------
「ここで臨時ニュースをお送りします。」
テレビで安売り情報がどうだとか言っていたアナウンサーが急に神妙な面持ちで、画面の中から切り出した。
「都内でなにか騒ぎが起こっているようです。現場の中島さん、取りあえずそちらに渡します。」
「はい、こちら現場の渋谷駅前です。さきほど突然現れた巨大な、その、巨大な人間がですね。その巨大な人間を警官が取り囲み、駅前は混乱状態に陥っている模様です、あ、今その巨大な男、いや、あれは女性ですね!こちらに向かっています!カメラカメラ!」
「あの、巨大な、というのは一体・・・」
109を背景に今風のファッションに身を包んだ大きな影がモニタに映し出された。
「ちょっとこれなにぃ〜。マジかんべんしてよお〜」
地響きを立てて、巨大なコギャルが警官とやじ馬をけ散らして走る。
<<続く>>
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