その4 コンピュータで、絵が描ける!

 だいぶ社内ネットワークも活用され、社内ニュースグループにもいろいろ 書き込みがされるようになった頃。
  私がかつて漫画家を目指していてデビューもしたことを、そのニュースグループでばらされちゃう事件?がありました。 私としては、あまり気分のいいことではなかったのですが、 それを見た開発部の人から、仕事が舞い込んだのです!
「絵が得意なんだって?画面のデザイン、してくれないかなあ」それはある子供向けのアプリケーション。可愛いキャラクターが画面 を 駆け回る、子供が喜んで使いそうな画面にしたいとのこと。石田課長の許可も出たのでひきうけることにしました。

 当時の私はPhotoShopやらIllustratorなんて知りません。 Windows3.1付属のペイントブラシで、マウスを使って、描きました。 あんな不便な物をよく使ったと思います。自分の部署にWindowsが 入っていなかったので、このときはWindowsも覚えることができました。 そしてこれが、始めての「お仕事でパソコンで絵を描く」体験。そういえば、学生のとき「Z's Staff」というソフトで落書き程度に描いたことはありましたが。
「コンピュータで絵を描くのって、なんて自由で楽しいことなんだろう!」たかがペイントブラシで、私はそう実感しました。
  嬉しいことに、私の作成した画像やキャラクターは非常に好評で、売り上げにも貢献できました。
  さらに嬉しいことに、開発部の部長が「うちの課に来ないか」と声をかけてきました。ところがカオリさんに相談すると、「駄 目よ!あの部長の下で働かされると死ぬよ。人使いがあらいし、みんな移りたがってる。逃げた方がいい!システム4課の斉藤さんだって『あの部にいくなら辞めます!』ってごねて4課にいるんだから」と有り難い忠告。結局移ることもなく、私はあいかわらずソフトのサポートの仕事にもどりました。

 そのころから私は、マルチの部屋によく遊びに行っていました。一ノ瀬さんを悪く言う同僚とお昼を食べるのは気分が悪かったので、お昼休みの度にマルチに来ました。最新の技術動向に関する雑誌もあったし、新しいマシンやソフトをみることができたし、凄く楽しかった。マルチに移りたいという気持ちも高まります。さて、そこで出会ったソフトウェアが「PhotoFinish」。今思うと全然機能としては物足りないですが、ペイントブラシの延長の感覚で使えて、ある程度細かい絵も描けて、色もたくさん使えて、非常に魅力的でした。このソフトに出会って私はさらにCGに目覚めたわけです。 もう、お昼も食わずに、描いた、描いた。
 それともう一つ。当時のマルチには、他の部署には絶対ないものがありました。
それは、たった一台だけのMacintoshです!
T社の子会社ですから、社内にはT社以外のパソコンが存在してはいけない筈。でもマルチメディアのキーワードには当然画像や音声も入ってくるわけで、そのへんの得意なMacintoshの購入が許されたのでした。T社社内では前例のないことです。
  私は、Macintoshに出会って初めてパソコンが欲しいと思いました。可愛い、親しみの持てる、使ってみたくなるインタフェース。(くり返しますがWindows3.1の頃です)そして、ようやく、CGというものはMacで主に作られていて、作るためにはPhotoShopやIllustratorなどが使われているらしいことがわかりました。DTPという言葉も初めて知りました。

 そこで早速、マルチにあるMacで絵を描いてみようと思うのが自然の成りゆき。Macを使っている一ノ瀬さんがお昼を食べているあいだ、出張しているあいまを見計らって、やってみました。
 しかし…残念ながら、私には難しすぎました。PhotoShopもIllustratorも、ペイントブラシの延長には程遠く、目的も全然ちがいます。同じ絵を描くソフトなら同じような感覚で使えるでしょう、と思って、マニュアルなしで触ろうとおもったのが間違い。さっぱり、わからない。使い方も、helpを見てもチンプンカンプン。しかも爆弾がでたりして、一ノ瀬さんの編集中のデータを壊してしまったり、などの失敗もしてしまいました。只でさえ怖い一ノ瀬さんなのに…。私、マルチに来たいと思っているのに、一ノ瀬さんに嫌われちゃまずい。

 やはり、自分のパソコンが欲しい。買うなら絶対にMacだ!そう思った私は、ボーナス+貯金をはたいて、発売になったばかりのPowerMacを買いました。一式、60万はしましたかね。 さぁ、自分のMacも手に入ったことだし、勉強するぞ!と思ったら、今度は仕事が忙しくなってしまいました。このころから、私のT社時代の、一番辛い時期が始まるのです…

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