Oscar Peterson

with
bassist:
Niels-Henning Orsted Pedersen
drummer: Martin Drew
guitarist: Ulf Wakenius

Sat. Aug. 23rd. 2003, 8:00pm   @YOSHI'S at Jack London Square


8時開演、途中30分の休憩を挟んで2部構成で進んだ。

90年代は体を壊した為に演奏活動をほとんど休止していたと知って、 今年78才になる巨匠がどんな演奏を聴かせてくれるのか、期待していいものかどうか、複雑な胸のうち。

ステージに照明が当てられ、まずはイギリス人ドラマーが登場し、紹介される間短い演奏をして、 それにデンマーク人ベーシストが加わり、そしてスウェーデン人のギタリストが加わる。 それぞれがうまい。「上手だなあ」の一言に尽きる。
3人で良い雰囲気を作り上げたところで、聴衆が待ちに待ったピーターソン氏が大きな体で現れ、ゆっくり少しずつピアノに近付いた。 病気と高齢の為なのか歩行が困難そうに見えたが、ピアノの前に座った途端、姿勢はシャキっとなりさすがだ。

演奏が始まった。指が回らず音も出てこなくて、「ああ、やっぱり昔のようには行かないんだなあ」とちょっとがっかり。 二曲目も、じれったくなるほど指が動いてない。このままで2時間はつら過ぎる。

ところが、最初の2曲がウォーミングアップだったかのように、3曲目からは指だって滑らかに素早く動き、 音が活き活きしてきてライブハウス全体の雰囲気がガラッと変わった。 テンポの速い曲では、技術を駆使して聴衆をひき込むし、 ゆっくりで静かな曲は、深い情感がこちらの胸の中まで入り込み、私なんぞはその都度うるうるしてしまった。 これが年輪を重ねた巨匠の音というものなのだろう。

ギターとピアノが絡んだり、競争するようにアドリブを披露しあったりする曲が多かったが、 ギタリストも最高の技術をもっている奏者で、速い動きにもかかわらず指が弦の上を動く時の雑音がない。 ピシッとしたピッチも気持ちがよく、このギター演奏にも最初から最後まで惹きこまれた。
一回だけソロがあったドラムも、ギターと交互にアドリブを聴かせたベースも上手だ。 それぞれが個性があり、なおかつ同等の技術がある時に最高のセッションになるんだろう。



演奏後、楽屋に行ってサインをもらう機会に恵まれた。 ああっ、車椅子に乗っている。 ピアノの前にスッと背筋を伸ばして座るステージ上の姿と、楽屋で車椅子に座り太い声で話す姿…。 二つとも現在のオスカー・ピーターソンだ。 心に残る素晴らしい演奏を聴き、更に彼と言葉を交わすことが出来て、これ以上の喜びはない。行ってよかった。



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