ジャック・ラカン
Jacques Lacan (1901-1981)

年表><著作><参考文献><リンク

ラカンは愛について最も完璧に語った理論家であると思う。彼ほど精緻に、愛なるものが現実には不可能なものであることを語り尽くした人がいるでしょうか? あの有名な定式「性的関係は存在しない」という言葉は、つねに出会い損なうことを運命づけられている男と女の関係を言い表すものにほかならないのだし。もち彼は、人がそれでも愛する対象を求めずにはいられないものであることをも見事に語ってもいるのです。そこに人間の謎のすべてが凝縮されているのだから、彼が語らずにはいられないのも当然なのだけれども。

 エクリの英語全訳が出ました。これでかなりラカンも読めることができるようになるはず。つうか、セミネールの翻訳も進んでいるしね。これからこそがラカンの本格的な受容期のはずだ!

ラカン著作年表(フロイトの著作年表はこちら

1901 パリにて誕生
1931 「<吹き込まれた>手記」(『二人であることの病』)
1932 学位論文『人格との関係からみたパラノイア性精神病』(症例エメ)
1933 「様式の問題およびパラノイア性体験形式についての精神医学的考想」・「パラノイア性犯罪の動機」(『二人であることの病』)
1934 パリ精神分析協会(SPP)に加入
1936 マリエンバードでのIPA総会にて鏡像段階論を発表。原稿は紛失。「現実原則を越えて」
1938 「家族複合」(『家族複合の病理』)、個人のクリニックを開業。
1945 「論理的時間と予期される確実性の断言」
1946 「心的因果性について」
1948 「精神分析における攻撃性」(ナルシシズム
1949 チューリッヒでのIPA総会にて「<わたし>の機能を形成するものとしての鏡像段階」を発表
1950 「犯罪学における精神分析の機能についての理論的叙説」
1951 セミネール(フロイトの症例研究)の開始、「転移についての私見」
1953 SPP会長辞任&脱退、フランス精神分析協会(SFP)加入、「神経症者における神経症の個人神話または詩と真理」(C.D.U.)、「想像的なもの、象徴的なもの、現実的なもの」、「精神分析におけるパロールとランガージュの機能と領域」(いわゆるローマ講演)(以降中期)
     I『フロイトの技法論』(1953-1954)、
1954
          @「フロイトの『否定』についてのジャン・イポリットの報告への序」
    II『フロイト理論と精神分析技法における自我』 (1954-1955)
1955
      「治療型の変異について」
     A「『盗まれた手紙』についてのセミネール」
     A「フロイト的事象、または精神分析におけるフロイトへの回帰の意味」
    III『精神病』(1955-1956)
1956
     B「1956年における精神分析家の情況と精神分析家の形成」
        IV『対象の関係とフロイト的構造』(1956-1957)
1957
     「精神分析とその教育」、「無意識における文字の審級、あるいはフロイト以降の理性」
        B精神病の治療可能性の前提となるひとつの問いについて」 (1957-1958)
      V『無意識の形成物』(1957-1958)
1958
   D「ファルスのシニフィカシオン」
       「治療の指導とその能力の諸原則」
   F 「ダニエル・ラガーシュの報告についての考察」
       VI『欲望とその解釈』(1958-1959)(ハムレット)
1959
   「アーネスト・ジョーンズの思い出に−その象徴体系の理論について」
       VII『精神分析の倫理』(1959-1960)
1960
       「女性の性欲についての会議のための指導的な言葉」
「フロイトの無意識における主体の壊乱と欲望の弁証法」
「無意識の位置」
       VIII『転移(その主観的な不均衡における)』 (1960-1961)
1961
   「無意識の位置」
   「モーリス・メルロ=ポンティ」(『エピステーメー』1977年8月号)
       IX『同一化』(一なる印) (1961-1962)
1962
       「サドと共のカント」
       X『不安』 (1962-1963)
1963

     IPAによるラカンの排除。SFPより破門される。(以降後期)
1964 フランス精神分析学派、のちのパリ・フロイト派結成。
「フロイトのTriebおよび精神分析者の欲望について」
   XI『精神分析の四基本概念(1964)
   「フロイトの欲動と精神分析家の欲望」
   XII『精神分析の核心的諸問題』(1964-65)
1965 XIII『精神分析の対象』、L「科学と真理」
1966 「哲学科学生への回答」(『エピステーメー』1977年7月号)
   『エクリ』
    XIV『幻想の論理』
1967 XV『精神分析的行為』、「パス」を提唱。
1968 XVI『大文字の他者から小文字の他者へ』
   パリ大学ヴァンセーヌ校に精神分析学部が設置される。
1969 XVII『精神分析の裏面』
1970 XVIII『見せかけではないであろうディスクールについて』
   「ラジオフォニー」(in『ディスクール』)
1971 XIX『Ou pire...』、「リチュラテール」(『ユリイカ』1986年12月号)
1972 『テレヴィジオン』
   XX『アンコール』(第六章の翻訳が『現代思想』1985年1月号)
1973 XXI『騙されない者はさまよう』
1974 XXII『R.S.I.』
1975 XXIII『サントーム』
1976 XXIV 『L'Insu que sait de l'une bevue s'aile la mourre』
1977 XXV『結論の時』
1978 XXVI『トポロジーと時間』、「パス」の挫折を表明。
1980 フロイトの大儀派を結成。
   XXVII『Dissolution』(『現代思想』1981年7月号)
   「カラカスのゼミナール」(『現代思想』1981年7月号)
1981 死亡

著作

以下『セミネール』Le Seminaire de Jacques LACAN, texte etabli par Jacques-Alain MILLER, Seuil, 1973-
26巻のセミネール……翻訳されおわるまでに560年はかかるね……

Livre I, Les Ecrits techniques de Freud, [1953-1954], Seuil, 1975.(『フロイトの技法論』(上)小出浩之ほか訳、岩波書店、1991年)
(抵抗の瞬間、想像的なものの局所論、心理学の彼岸、ミカエル・バリントの袋小路、転移におけるパロール)
臨床への問いから「否定」と「排除」の発見へ。いきなり核心。ローマ講演の解説としても読めるしね。

Livre II, Le Moi dans la theorie de Freud et dans la technique de la psychanalyse, [1954-1955], Seuil, 1978.(『フロイト理論と精神分析技法における自我』(上)小出浩之ほか訳、岩波書店、1998年)
(快感原則の彼岸、反復、心的装置についてのフロイトのシェーマ、象徴的なもの)
「彼岸」の読解は有名な「手紙」の論文へと結実する。

Livre III, Les Psychoses, [1955-1956], Seuil, 1981. (『精神病』(上・下)小出浩之ほか訳、岩波書店、1987年) (The Psychoses 1955-1956 (Seminar of Jacques Lacan, Bk. 3, trans. by Russell Grigg, W W Norton & Co Inc, 1997
(序論・精神病の主題と構造・シニフィアンとシニフィエ・穴の周囲)
想像界の役割の新たな知見は神経症者と精神病者の区別からなされる。「排除」の練り上げ。

Livre IV, La Relation d'objet , [1956-1957], Seuil, 1994. EUR 30()(『対象の関係』)
英訳が出ます。三と十一巻以外のセミネールの邦訳は、 英訳が出てからされているので、日本語で次に出るのはこれかも。前年の講義を引き継いで、ファルスの役割を探求する。

Cette mère inassouvie, insatisfaite, autour de laquelle se construit toute la montée de l'enfant dans le chemin du narcissisme, c'est quelqu'un de réel, elle est là, et comme tous les êtres inassouvis, elle cherche ce qu'elle va dévorer, quaerens quem devoret. Ce que l'enfant lui-même a trouvé autrefois pour écraser son inassouvissement symbolique, il le retrouve possiblement devant lui comme une gueule ouverte. [...] Voilà le grand danger que nous révèlent ses fantasmes, être dévoré. [...] il nous
donne la forme essentielle sous laquelle se présente la phobie. Nous rencontrons cela dans les craintes du petit Hans. [...] Avec le support de ce que je viens de vous apporter aujourd'hui, vous verrez mieux les relations de la phobie et de la perversion. [...] J'irai jusqu'à dire que
le cas du petit Hans, vous l'interpréterez mieux que Freud n'a pu le faire. (Extrait du chapitre XI) La castration, ce n'est pas pour rien qu'on s'est aperçu, de façon ténébreuse, qu'elle avait tout autant de rapport avec la mère qu'avec le père. La castration maternelle - nous le voyons dans la description de la situation primitive - implique pour l'enfant la possibilité de la
dévoration et de la morsure. Il y a antériorité de la castration maternelle, et la castration paternelle en est un substitut. (Extrait du chapitre XXI) (Dans le cas du petit Hans) la transformation qui s'avérera décisive [est] celle de la morsure en dévissage de la baignoire. D'ici à là, le rapport des personnages change du tout au tout. Ce n'est pas pareil, que de mordre goulûment la mère, appréhension de sa signification naturelle, voire de craindre en retour cette fameuse morsure qu'incarne le cheval - ou de dévisser la mère, de la déboulonner, de la mobiliser dans cette affaire, de faire qu'elle entre elle aussi dans l'ensemble du système, et, pour la première fois, comme un élément mobile et, du même coup, équivalent aux autres. (Extrait du chapitre XXIII)

Livre V, Les Formations de l'inconscient, [1957-1958]. Paris, Seuil, 1998.(『無意識の形成物』)
「機知」の読解など。「無意識はランガージュのように構造化されている」「父性隠喩」

Livre VI, Le Désir et son interprétation, [],
去勢と欲望。「彼は自分が死んでいることに気づかなかった」の夢。ハムレット(法)の読解は主体と享楽との関係を明らかにする。

Livre VII, L'Ethique de la psychanalyse, [1959-1960], Seuil, 1986.(『精神分析の倫理』 (上・下)小出浩之、鈴木國文、保科正章、菅原誠一訳、岩波書店、2002年
「心理学草稿」の読解は「Ding」の発見をもたらす。ソフォクレスの「アンチゴネー」(至高善)

Livre VIII, Le Transfert, [1960-1961], Seuil, 1991.(『転移』)
(プラトン『饗宴』の注解、欲望の対象と去勢の弁証法、オイディプス神話の今日、大文字のIと小文字のa)
ついに転移を主題に。転移のパラドックスは分析家の欲望へと問いを進める。クローデルのクーフォンテーヌ三部作。

Livre IX, [1961-1962], (同一化)その次はこれがでるね。
論理学、数学の大規模な導入。 主体はシニフィアンの連鎖に従う形式だとする定式は行き詰まり、問いは不安へ。

Livre X, L'Angoisse, [1962-1963], Seuil, 2004. (不安)その次はこれかも。
大文字の他者とは何か。「不安は大他者の感覚である」。 『謎の男トマ』。享楽の呼び声としての不安は主体の単独性をあらわに。ついに出ましたね。

Livre XI, Les Quatre concepts fondamentaux de la psychanalyse, [1964], Seuil, 1973.  (『精神分析の四基本概念』小出浩之ほか訳、岩波書店、2000
四基本概念とは無意識、転移、反復、欲動。それまでのラカン理論の集大成。 こういう本にどれだけ若い頃に出会えるかが人生を決めるのだ。

Livre XII, [1965-1966](精神分析の核心的諸問題)さらにその次はこれか。

Livre XVI,[1968-1969](『大文字の他者から小文字の他者へ』)
「四つの言説」と「性別化」の定式化。論理学の大きな導入は精神分析を超越論化。

Livre XVII, L'Envers de la psychanalyse, [1969-1970], Seuil, 1991.  (『精神分析の裏面』)
 

Livre XX, Encore, [1972-1973], Seuil, 1975. On Feminine Sexuality the Limits of Love and Knowledge: The Seminar of Jacques Lacan, Book XX Encore 1972-1973, trans. by Bruce Fink, W W Norton & Co Inc, 1998)(『アンコール』)
女性と愛について。「女性の本質は存在しない」。セミネールの中でも完成度高し。

Livre XXI, [1973], (騙されない者はさまよう)ここらへんはまだまだでないだろう。

Livre XXII, R.S.I.,  [1974],もうこうなったら海賊版で読むしかない。

Livre XXIII, [1975], (サントーム)フランスではおおっぴらに本屋で売られているらしい。

Livre XXIV, L'Insu que sait de l'une bevue s'aile la mourre, [1976],


『二人であることの病い パラノイアと言語』宮本忠雄・関忠盛訳、朝日出版社、1984.
初期ラカン。学位論文の抜粋もある。

De la psychose paranoiaque dans ses rapports avec la personnalite, Seuil, 1975.(『人格との関係からみたパラノイア性精神病』宮本忠雄・関忠盛訳、朝日出版社、1987
ラカンの学位論文。

『家族複合』宮本忠雄・関忠盛訳、哲学書房、1986
『フランス百科事典』のために書かれたもの。鏡像段階論の概要がうかがえる。

Ecrits, Seuil, 1966 (Le Livre de Poche 1999). (『エクリ』全三巻、宮本忠雄ほか訳、弘文堂、1972-1981.The Language of the Self : The Function of Language in Psychoanalysis, translated with notes and commentary by Anthony Wilden, Johns Hopkins University Press, 1997←ローマ公演の英訳と、それについての詳細な解説つき) (Écrits: a Selection, translated by Bruce Fink in collaboration with Heloise Fink and Russell Grigg, W W Norton & Co Inc, 2002)(Ecrits, translated by Alan Sheridan, Routledge, an imprint of Taylor & Francis Books Lt, 2001(1977)←これは、英訳ではもっとも早く出されたラカンの翻訳。原文のややこしいところはけっこう思い切って省略しつつ訳しているが、まあまあ妥当な訳かな。) (Jacques Lacan, Feminine Sexuality,  ed. by Juliet Mitchell, Jacqueline Rose, W W Norton & Co, 1982
  和訳は拙劣 なんてものではない。一文ごとに誤訳があるというレベル。こんなものが翻訳に関しては良心深い日本で出ているというのは、きっと何らかの陰謀の仕業としか思えない。ラカンを普及させまいとする一派がわざとこんな訳を出させて、ラカン理解に致命的な打撃を与えようとしたのに違いない。竹内、佐々木、高橋、宮本の順に悪い。ローマ講演には優秀な英訳 (The Language of the Self)があるし、ほかに英訳もいくつかあるので、それを参照しながら読むのが吉と思われる。
「精神病の治療可能性の前提となるひとつの問いについて
「ダニエル・ラガーシュの報告についての考察」ファルスの機能をあらゆる治療において重要と見なす「ファルスの意味作用」など重要な論文がそろう。

Jacques Lacan, Ecrits: The First Complete Edition In English, tra. by Bruce Fink, W W Norton & Co Inc, 2006
 ついに出ました。『エクリ』の英語全訳。しかもかなりいい訳らしい。日本語で読むよりはぜひこちらをどうぞ。きっと、ストレイチーの英訳版フロイト全集なんかと訳語が対応していたりするか、そのへんのことも註に書いているはずなので、持っておくとかなり便利なのでは。これを機会に日本語訳も改訂されないかなあ。ま、無理だろうけど。

Autres écrits, Paris, Éditions du Seuil, 2001

『ディスクール』佐々木孝次・市村卓彦共訳、弘文堂、1985.(絶版)

『テレヴィジオン』藤田博史・片山文保訳、青土社、1992.

Lacan and the subject of language, edited by Ellie Ragland-Sullivan and Mark Bracher, Routledge, 1991.

Jacques Lacan, Des noms-du-père, Seuil, 2005


参考文献

事典><伝記><入門><概説><テーマ><臨床><応用発展

<事典>

ラプランシュ&ポンタリス『精神分析用語辞典』、みすず書房、1977

コフマン編『フロイト&ラカン事典』、弘文堂、1997
  事典は精神分析の理論理解には欠かせない。ないとちっとも分からないはず。この事典はやたら詳しいが、書き手が独自の視点から記述しようとしているために難解にはなっている 。下のと比べると大項目主義だが、丁寧に記述されているのは確かで信頼できる。翻訳はひどいので、きちんと確かめる必要がある。下と併用すべし。

シェママ編『精神分析事典』 (改訂版)弘文堂、2002.03.
  手に入りやすい入門用。引用の訳は悪いが説明は簡潔でわかりやすい。ラプランシュ&ポンタリスのに代わって必携ものかもしれない。項目も多いし、何より日本の事典には少ない思考と問いかけの後が見られる。これがなければ精神分析事典なんて読む意味がないもんね。
 と、思っていたら改訂版が出た! 1998年に改訂版がでていたらしい。大改訂で量は二倍になって、項目も増え、解説もより詳しくなってるみたい。前の版を読み飽きちゃった人もきっと満足できるとのお告げである。 いろいろと批判はあるが、こういうのがなければ複雑な精神分析の概念に分け入っていくことはかなり困難だ。


<伝記>

クレマン『ジャック・ラカンの生涯と伝記』青土社、1982

ルディネスコ『ジャック・ラカン伝』藤野邦夫訳、河出書房新社、2001


<ラカン入門なんてありえません>

新宮一成『ラカンの精神分析』講談社現代新書、1995
論理的時間や主体の発生、四つのディスクールなどについて詳しい。この人の本格的な解説書も読むべし!

ナシオ『精神分析 7つのキーワード』新曜社、1990(絶版)
去勢、ファルス、ナルシシズム、昇華、同一化、超自我、排除についてフロイトとラカンの考えを順に解説している、平易な入門書。参考文献表などが充実していて、基礎を学ぶのにとても便利。

ナシオ『ラカン理論 5つのレッスン』、三元社、1995年。(絶版)
「二大概念―無意識と享楽」「無意識」「対象αという概念」「幻想」「身体」講演 無意識の主体という概念

福原泰平『ラカン』講談社、1998
とてもよい解説書。まずはこれを読むべし。しかし解説書を読むより原典を丹念に読んでいった方が結局は理解の近道であるのだが。

原 和之『ラカン 哲学空間のエクソダス』講談社選書メチエ、2002年。
セミネールの議論をたどった入門書らしいです。


<読むシリーズ>

Qu'en dira-t-on?: Une lecture du livre XII du "Séminaire de Jacques Lacan" (3 mai 2000) de Stoïan Stoïanoff-Nénoff

Suzanne Barnard, Bruce Fink, Reading Seminar XX: Lacan's Major Work on Love, Knowledge, and Feminine Sexuality, State Univ of New York Pr (Suny Series in Psychoanalysis and Culture), 2002

Roberto Harari, Lacan's Seminar on Anxiety: An Introduction (The Lacanian Clinical Field), Other Pr Llc, 2001

Richard Feldstein, Reading Seminar XI: Lacan's Four Fundamental Concepts of Psychoanalysis : Including the First English Translation of "Position of the Unconscious" (s), State Univ of New York Pr, 1995


<ラカンの概説なんて意味ないかも……>

アンリ・エー編『無意識』、大橋博司監訳、金剛出版、1986-87
 第二巻のラプランシュとルクレールの発表は彼らがラカン理論をもとにして発表したもの。ラカンの発言も記録されている。

アニカ・ルフレ=ルメール『ジャック・ラカン入門』誠信書房、1983(絶版)
 この本の第二章で、上のラプランシュらの論文を検討し、批判している。序はラカンで、ラプランシュらに激怒している。翻訳はよい。

ベンヴェヌート&ケネディ『ラカンの仕事』青土社、1994
年代順の解説書。『エクリ』の論文や『アンコール』でのラカンの女性論など。

マリーニ『ラカン 思想・生涯・作品』新曜社、1989(絶版)
ラカンの仕事の年代順解説。概要を知るのに便利。

新宮 一成『夢と構造―フロイトからラカンへの隠された道」弘文堂(1988/03/01)

新宮一成『無意識の病理学―クラインとラカン』金剛出版、1989

新宮一成『意味の彼方へ―ラカンの治療学』金剛出版、1996

シュナイダーマン『ラカンの<死>』誠信書房、1985

ジェーン・ギャロップ『ラカンを読む』岩波書店、2000(新装版)
著者一流の皮肉で英語のラカン関係の論文をおちょくっている。『エクリ』読解としてそこそこ面白い。

ショシャーナ・フェルマン『ラカンと洞察の冒険』、誠信書房、1990
ポーとオイディプスなどに沿ってセミネールを分かりやすく解説。

フィリップ・ジュリアン『ラカン、フロイトへの回帰―ラカン入門』向井雅明訳、誠信書房、2002
 ラカンの理論を年代順に追いかけて一貫性をもったものとして考察したもの。訳が悪いらしい。

向井雅明『ラカン対ラカン』金剛出版、1988
セミネール7巻や11巻。駄目っぽい。

小笠原晋也『ジャック・ラカンの書―その説明のひとつの試み』
訳語が変だけど、日本人の書いたラカン解説本としてはまだ一級品。この著者は恋人を殺害したらしい。

佐々木 孝次『ラカンの世界』弘文堂、1984年。
歴史的遺物。

鈴木 瑞実『悲劇の解読―ラカンの死を越えて』岩波書店、1994
似非ラカン派。

赤間 啓之『ユートピアのラカン』青土社、1995

赤間 啓之『ラカンもしくは小説の視線』弘文堂、1988
理解は正確。応用はマニアックかも。

若森栄樹『精神分析の空間 ラカンの分析理論』弘文堂、1988(絶版)
セミネール11巻など。

小出浩之ほか『ラカンと精神分析の基本問題』弘文堂、1993

ミケル ボルク=ヤコブセン『ラカンの思想―現代フランス思想入門』池田清訳、法政大学出版局、1999年
ラカンへの哲学的反論としては最もまっとうらしい。ヘーゲルとの思想関連を追っている。


<テーマ>

石澤誠一『翻訳としての人間 フロイト=ラカン精神分析の視座』平凡社、1996
東浩紀の『存在論的、郵便的』がフロイトについてかなり依拠していたのがこれだね。

十川幸司『精神分析への抵抗――ジャック・ラカンの経験と論理』、青土社、2000
批評空間にも連載中だね。気鋭!

藤田博史『精神病の構造 シニフィアンの精神病理学』、青土社、1995
チャート式読解。

加藤敏『構造論的精神病理学』弘文堂、1995

<臨床>

ドルト『少年ドミニクの場合』平凡社

小出浩之『シニフィアンの病い』岩波書店、1986

小出浩之編『ラカンと臨床問題』弘文堂、1990

<フェミニズム&社会学系>

ジェーン・ギャロップ『娘の誘惑―フェミニズムと精神分析』渡部桃子訳、勁草書房、2000
(『精神分析とフェミニズム』、ファルスの大きさ、レディーズ・マン、『アンコール』をアンコール、父の誘惑、生意気な質問、流離う/常軌を逸した欲望のエクリチュール、ファルスを持つ母、ドラの鍵)書評はここ。


<応用発展?>

スラヴォイ・ジジェク『斜めから見る―大衆文化を通してラカン理論へ 』青土社、鈴木晶訳、1995年。

スラヴォイ・ジジェク『ヒッチコックによるラカン : 映画的欲望の経済(エコノミー) 』露崎俊和 ほか、トレヴィル
  うーん、今はこの本、手に入りにくいようですね。なので、原書の情報を記しておきます。

Everything You Always Wanted to Know About Lacan (But Were Afraid to Ask Hitchcock),

スラヴォイ・ジジェク『汝の症候を楽しめ ハリウッドvsラカン』筑摩書房、鈴木晶訳、2001
 やっぱりジジェク、それでもジジェク。映画の楽しい解説書として読んでます。改訂版には末尾に「リアリティはつねに複数である』のはなぜか」というのが加わったが、日本語訳は古い版から訳しているので、そこは訳されていない。原書は下。浅田彰のレヴューはここ

Enjoy Your Symptom!: Jacques Lacan in Hollywood and Out,

コプチェック『わたしの欲望を読みなさい』青土社、

デリダ「フロイトとエクリチュールの舞台」、『エクリチュールと差異』下

D&G『アンチ・オイディプス』


リンク

bibliographie Lacan ラカンの文献案内。セミネールなど。

Ecole Lacanienne de Psychanalyse (ELP)(精神分析ラカン派)なんとラカンのセミネールの記録が読める!!

Société psychanalytique de Paris (SPP) (パリ精神分析協会)フランスにおける最初の精神分析団体。

Fédération Européenne de PsychanalyseFEPヨローッパ精神分析連盟?

(フランス精神分析連盟)

Ecole de la Cause freudienne (ECF)(フロイトの大儀派)ラカン派。ミレールによる。

Association Mondiale de Psychanalyse (AMP) (世界精神分析協会)92年結成。ラカン派。

SEMINAIRES PSYCHANALYTIQUES DE PARIS(パリ精神分析セミナー)ラカンの弟子だったナシオが創った協会。生態発生学のルネ・トムやフランソワーズ・ドルトなどが名を連ねる。

The European School of PsychoanalysisESPこれもラカン派らしい。

World Association of Psychoanalysis (WAP)これもラカン派。

日本ラカン協会にはラカン研究邦語文献目録がある。

原和之さんのページpour lire Lacan: Appareils critiques des textes lacaniens には、ラカン関係のコアな文献の案内があります。

ラカン読書会ではセミネールの二巻の読書会のレポートがあります。

中野研究室にはラカン派精神分析文献案内がある。 なんとこのページにもリンクされています。

村のホームページにはラカンの鏡像段階論についての解説があります。

かのフロイト郵便でも、ラカンを読む、というコーナーがあるぞよ。

川崎惣一の研究室には、ああなんとしたこと、ラカンの私的な翻訳がありますよ……

Lacanian Linksには使えなさそうなラカン関係のリストがある。

Les Mathèmes de Lacanにはラカン用語の索引がある。どう使うのかは謎。


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