シュタイーナー思想の総合的な解説。こういう本は結構出ているようにも思うのだが、これは1954年刊行で、解説書の中でも古典的なものらしい。なんで今ごろ出るんだろう。
前半が生涯、後半が思想の説明という分け方がされている。
結構分厚いように思うが、もちろんこの程度の厚みで、シュタイナーの思想を解説するのは無理な話で、そのことは作者も折りに触れて断りを入れている。
社会論や農業論、医療などは特に、おおざっぱな入り口を見せて、ここから先は紙面がない、というようなことを言う。おおざっぱでもシュタイナー思想の一貫性や横のつながりは分かるので、逆に、シュタイナー思想の巨大さが分かることにもなる。
シュタイナー自体の引用はあんまり多くないようで、当人が自分でかみ砕いたものを書いていて筋道がたどりやすい。とはいえシュタイナー独特の、持って回ったような言い回しや硬質な文章(本を読むこと自体を一種の瞑想にするためにあんな文体だとどっかにあった・・・)を受け継いだようなところがある。これはときに、読みにくい。それとも、これは1954年の空気みたいなものか?
読んでいるとやっぱり、いろいろ発見がある。
前にわからなかったようなことや、頭を素通りしてしまったことなどが、なにか分かりかけてきたような、というようなことが結構ある。
たとえば霊学を医療に結びつけたところで、思考と感情と意思の働きの調和について述べているところ。
頭部 | 思考のセンター | 言ってみれば「上部組織」 | 特質は「休息」
(思考が活動している時、体は休息している) |
四肢 | 意思のセンター | 下部組織 | 特質は「活動」
(すべての意思は肉体の活動として表現される) |
胸部(心臓と肺) | 感情のセンター | 真ん中の組織 | 特質は休息と活動の間、つまり「リズム」
上の二つを調和させる働きを担う |
芸術の種類 | 対応する人間の構成要素 | その意味 |
建築 | 肉体 | 生まれる前に霊だった頃の記憶 |
彫刻 | エーテル体 | 生まれる前に霊だった頃の記憶 |
絵画 | アストラル体 | 眠っている時の霊体験 |
音楽 | 自我 | 死後の生の先取り |
詩 | 霊我 | 死後の生の先取り |
オイリュトミー | 生命霊 | (いまだ未開発) |
シュタイナーは思考の働きに注目している
思考の中に、霊界と、この世界すなわち五感による世界とのつながりを見出す。
つまり、思考をある方向で訓練することによって霊界へ通じる道が開かれる。
霊界への参入がなされるのだ。
どういう方向へ訓練していくかというと、この五感による世界から思考を切り離してゆく。五感から切り離された思考が確立すると、それは独自の独立した存在と成ることができ、この世界を越えはじめる。超感覚的知覚が働くためには肉体的経験から独立していなくてはいけない。
例えば、あるイメージを続けて形作ることによっていつしかそのイメージは圧倒的な存在感を放ちはじめる。これがイメージが五感から独立してきた証拠である。これが「新しい思考」として魂の知覚機関として活動しはじめるのだ。この知覚機関は臨死体験で言う「走馬灯」の「絵巻物」を捉えはじめる。これは生まれてからの内的な生活がすべて記録されているもので、回想とも違い、時間が前後もなくまとまって現れるような、そんなものである。
ここで人は、出来事は消滅した後も残るという事実を知る。時間に囚われて、未来、過去が別物だと考えている通常の状態ではこんなことに気づくことはない。今時間は未来も過去も統一され、一塊のものとして、人は「時間的存在」(時間は存在の一部)だと感じている。
これが霊界参入の第一段階であり「想像 イマジネーション」の段階である。、ここでエーテル体を発見する。
霊界参入の段階は3つに分かれていて、それぞれ
想像(イマジネーション) | エーテル体を知る | ・自分が物質の所産でないことを確信する
・自分の行なったことが事実として残っていることを知る |
霊感(インスピレーション) | アストラル体を知る | ・自分の真の中心は不死の自己であると知る
・道徳的な価値が、物質世界で言う物理法則のように必然的なものとして支配していることを知る ・このアストラル界では個人と個人の関係が重要な意味を持つと知る |
直感(インテューイション) | 霊的存在を知る | ・最高の段階の道徳的訓練が必要だと思う
・霊界の住人として霊と交流 ・霊界に自分の高次の自己があると知る |
個人機能 | 宗教、芸術、教育、発明、・・・
国家における霊的部分 この部分の回復がもっとも重要 |
経済機能 | 上と正反対 |
政治機能 | 上2つを仲介。権利の部分 |