おちゃのバックルーム(5)


パパンがパン!
 「誰が殺したクックロビン〜」……なんて言ってたのは15年以上も前の話。「魔夜 峰央」先生の代表作「パタリロ」のアニメでこの「クックロビン音頭」がその筋で流行ったのも今となっては「何もかも皆懐かしい……(沖田艦長)」。「あの顔姿どう見ても〜 潰れアンマン まっしらけ〜」……じゃなくてさ(笑)。今回のお話は「パン」。ンにも色々ありまして、
 あんパンとジャムパンが喧嘩して
 サンドイッチ挟まりぺっしゃんこ
 渦巻きパンが目を回し
 ドーナツ転げてこんころりん
 フランスパンのお父さんに叱られて
 みんなが一緒に泣き出して
 食パンのお母さんに甘えちゃってさ
 ふわふわのおっぱいに触っちゃったよ〜
と言うくらいたくさんあります(^^;。分かるかな?分かんねぇだろうなぁ、このネタ(笑)。ちなみに「パン屋のケンちゃん」の主題歌です。あ……また話が逸れた(^-^;。
  ある日の朝、一人の親父が店に入ってきておもむろにパン売場を物色しはじめました。食パンを無造作に掴んでは横の方へ投げ「おい! 今日の日付の出せや」と言いやがりました。
 何をしてるのかと思えば売場に置いてある食パンで、製造日の一番新しいのを探してたらしいのです。希望に沿わない食パンを鷲掴みで潰してよそへ放り投げて……。
 「申し訳ございません、本日朝入荷したものはそこにあるだけなんです」とむかつきを押さえながら答えたのですが……「嘘言うな! 昨日のしかないじゃないか」と更にケチを付けてきます。「ヤマザキパン」の搬送トラックは朝方6時頃来るのですが、その時間に搬入されるパンは前日に作ったパンが回ってきます。これは店によって違いますが、私が居たところはどうやら昼頃にその日の日付のパンが回ってきてたようです。「ヤマザキパン」の夜勤で作ったパンが、どうやら昼頃回ってくるそうなのですが、逆に言えば朝一で入ってくるパンは、前日の夕方ないしは深夜に作られたパンであると推測されるわけです。
 で、その様なことを説明してなんとか納得させようとしたのですが、全然納得せず「隠してないで出せよ! 新しいの隠して古いのばかり置きやがって」と怒鳴る始末。ちなみに台詞は本来広島弁と言う世界標準語だったのですが、分かり難いように日本標準語に合わせました(笑)。
 入荷される食パンの形態には2種類あって、既にパン会社でスライスされ袋詰めの状態で入ってくるものと、客の希望に合わせてスライスする為に1本丸ごと入ってくる「1本ものパターンがありました。実は店でスライスすれば日付は誤魔化せるのですが(笑)、あいにく「一本もの」が無いのでそうもいかず、とにかく「そこにあるだけです」と言い続けました。
 すると「あほんだらがぁ」と吐き捨てて帰って行きました。パジャマ姿で入ってきたこの親父、今まで見たことが無かったのですが「いったいどこの親父だろう?」と思いながらオーナーが出てくるのを待ちました。
 それからしばらくしてオーナーが出てきてその旨報告したら……怒られました(^^;。そりゃそうだよなぁ……食パンが全滅だったんだもん(笑)。当時は確か安いほうから130円、150円、170円と3種類あったと思います。それぞれ5斤づつくらい有ったのですが全てぱぁ。「なんで弁償させなかった?」とお叱りを受けましたが、そんなこと言える状態では無かったんだよなぁ……。他にお客さんが居て接客もこなさなければいけなかったし。
 オーナーの奥さんのおかげでどうにかオーナーも仕方なかったと納得してくれたのですが……被害が出たのは事実。常連客でも無いので「次に来たときに弁償を」と言うわけにもいかず困ってたのですが……翌日も来ました(笑)。
 そんでもってやっぱり同じ事をしました(笑)。今度は流石に好き勝手されるわけにもいかないので、「オーナー呼び出しベル」を押して「すいません、昨日も言いましたようにこの時間には本日製造されたものは入りません。」と説明するも、やはり聞き入れません。侮d方がないので、「申し訳有りませんがその様に商品を乱暴に扱われますと、潰れてしまい売り物になりませんのでご遠慮下さい。それと昨日潰された商品と合わせて弁償していただ……」と台詞を最後まで言わないうちに、「なんじゃぁ! 新しいの隠してるのが悪いんだろうが!!」と、もはや「キ印」と言うか「Out of the base(基地外)」丸出しな逆ギレ状態。
 こりゃ殴られるかもなぁ……と思ってるうちにオーナー登場(笑)。店とオーナーの住居が同じなのでオーナーはすぐ出て来れます。怒鳴り始めた男と私……他のお客さんの視線を集め「お〜ほっほっほ、皆が私に注目しているわ!! あたしがヒロインよぉ!!」……とは思いはしませんでしたが(笑)。
 オーナーは私が説明しかけて途中で遮られたことを、男がわめき散らすために度々中断されながら説明したのですが、そのおっさん元々が馬鹿なので興奮したら益々抑えが効きません。結局「警察で話しましょうか?」とオーナーが言ったところでどうにか収まりました。実際「警察」と言う単語が出ても逆らってはいたのですが、何を言ってもオーナーが「警察できっちり話を付けましょう」と言い続けておとなしくなりました。
 おとなしくなってから再度パンの搬送の件、弁償の件を話して結局パン代を貰って警察には突き出さずに終わりました。まぁ、パン代だけでおっさんも突き出されたくは無いよな(笑)。
 パンの代金を受け取ってパンを渡そうとしたら「要らない」とのこと。「迷惑かけたからお金だけ払います。物は受けとらない」との事なのですが……潰れたパンを置いていかれてもなぁ(笑)。それに金を払った以上はおっさんのもんだし。
 そのおっさんはその後来ませんでした。来れないよなぁ……店員だけでなく常連客にまで見せ物になってるんだもん。ふつうの神経じゃ来れないと思う。それにしてもなんでこんなに製造日にこだわったのか。親か祖父母の遺言で「古いパンは食うな」とかでも言われたか(笑)。
 あ、ちなみに潰れた上に引き取られせもせず、売り物にならなかったはずの食パンは……中華まんの加温湿器の中で暖められふっくらさを取り戻し、新しい日付の袋に詰められて売られ、結局倍の儲けになったなんて「子分親分 やな気分(仮名)」の名誉の為にも、口が裂けても言えない(爆笑)。だから書いてる(^^;。(お)

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