トリガーでは己の身を呈してクロノたちを救い、ラジカル&クロスではヒロインとして物語の中核を成すサラ……。

 

年齢の変遷

悲しみの向こうに…

 


年齢の変遷

やはり最大の謎はサラが未来へいったとき、幼児化していたということだろう。ルッカに育てられたサラ……。サラが幼児化したという事実とその理由はラジカルの中で明らかになっているが、では何歳くらいまで幼児化したのだろうか?そのあたりについてもできるかぎり解明していきたいと思う。

サラがヤマネコのところに忍び込んだときは十を過ぎたばかりだという……。それまで盗賊技術をみがくのに数年かかったとして、サラは6,7歳よりも若い年齢で、ルッカのいる未来へ来たと考えられる。まあ、凍てついた炎の独白(「償いの果てに…」参照)によると、「幼児となって」セルジュの世界に落ちたため、かなり若い年齢であったと考えられる。ちなみに証拠画像だけならあるが、それも、幼児だとはわかるものの、正確な年齢は分からない。たぶん髪の生え具合からして、本当に生まれたばかり(1歳未満)ではないだろうか?

このときのサラとジャキの年齢が不明なため、正確な年齢計算をすることはほぼ不可能となっている。

レディ・ヴィラ

もう4.5年ほど前になるかの……、この館の主、ヤマネコ大君に真っ向からケンカを売った盗人がおった……。  その盗人は、やっと十をすぎたばかりの小娘じゃった

生まれ落ちたばかりのサラ。髪の生え具合からかなり幼いことがわかる。胸には例のペンダントがかかっている。

 


悲しみの向こうに…

 

自ら殻に閉じこもったサラの分身、キッド。サラが悲しみから解放され、キッドが、(ルッカ曰く)「自分の本当の名前を受け入れる準備ができた時」に2人が1つになり、本来のサラに戻れる…。

 

実の母親の命令とはいえ、ラヴォスに荷担し、結果としてジール王国を崩壊させてしまったサラ……。このときからサラの償いが始まる・・・。サラは王国の人々を自分が殺してしまったという、自責の念と深い深い悲しみを背負い、自分のしたことを呪った…。

ルッカの告白

ルッカ「今回の物語は、いつはじまったのかしら……。あなたが10年前に、ここで溺れそうになった時?それとも14年前に、ヒョウ鬼に襲われてケガしたあなたが、クロノポリスでフェイトと接触した時……?さらには、2400年の未来、タイム・クラッシュでクロノポリスが、遠い古代へ吹き飛ばされてしまった時?はるかに時をさかのぼれば、紀元前1万2千年の過去で古代魔法王国が、ラヴォスのために終わりを迎えた時……?どれも正解に近く……、また、どれも真実からは遠いわね。ほんとうのはじまりは、古代王国の崩壊の際に、次元の渦に落ちたサラ王女があなたの泣き声を聞いた時……。たしかにその時に、物語の糸はつむがれはじめたのよ。過去と未来はまじわり、世界はふたつにわかたれる……。ヒョウ鬼の毒にうなされるあなたの泣き声に導かれ、サラさんは1万年の時を超えてこの次元に接触しようとしたの。それが激しい磁気嵐を生じさせて、結果としてフェイトのシステム不良をひきおこし、幼いあなたを凍てついた炎へと導いてしまった。自らを消し去ろうとしていたサラさんは、幼いあなたの泣き声にひかれて、この時代に自分の分身を生んだのね。ふしぎな力を秘めた、古代のペンダントを、その娘にたくして……。それは、娘が生死に関わるような危険にさらされた時には、娘の時間を少しだけまきもどして、過去へ飛ばしてしまう……。そう、それがキッドよ。」

キッド「オレは、オレだ!その、サラとかいう娘とはちがうッ!!」

ルッカ「………。ええ、そうね、キッド。サラさんも、そうなることを望んでいたんだと思うわ。」

キッド「………。」

ルッカ「そして、プロジェクト・キッド。ガッシュが発案した時間制御プロジェクトは、すべてこの瞬間のためにあったの。クロノポリス設立も、タイム・クラッシュも、フェイトと龍神との戦いも……。すべてはいまここに、クロノ・クロスを手にしたあなたを立たせるために、存在したのよ。むろんキッドは、この件に関しては、何も知らない。このすべてが終わったら、キッドには10年前に飛んで、溺れてるあなたを助けてもらうことになる。それから、オパーサの浜でレナさんと一緒のあなたを、もうひとつの世界に呼んでもらうことに……。残されたチャンスは、あなたしかないわ……。サラさんが接触したあなたと、分身であるキッドに、願いをたくすしか……。セルジュ、お願い。サラさんを解放してあげて。私たちの、この星の生命の、新しい未来を教えて……。」

凍てついた炎の独白

その娘の力のために、王国は滅んだ。おおいなる、時の渦にのみこまれて。娘は、消え去ることを望んだ。自分自身の 過去も未来も否定して、ただ暗黒に飲 まれることだけを求めた。さかまく、時の渦のなかで……。自分のしたことを憎み、見たこと聞いたことを拒み、生まれて来たことすら呪って……。しかし石は、娘に生きることを望んだ。娘の時間を逆行させ、記憶をバラバラにときほぐし、今一度やりなおすチャン スを与えたのだ。娘の持っていた石には、その力と意志があったから……。娘は、 この時代に落ちた。記憶をなくした幼児となって……。

このときサラが望んだ「暗黒という殻に閉じこもった自分」が時を喰らうものの中に閉じ込められていたサラなのであろう。そして、全てを忘れたサラ (キッド)が、閉じ込めていた記憶(時を喰らうものの中のサラ)を取り戻すには、悲しい過去から逃げずに、それを受け入れることと、過去に犯した責任の償いが必要であったのだろう…。

現世に生まれ落ちたサラ(キッド)を見つけるルッカ。例のペンダントが光っている…。このペンダントが、この2人を引き寄せ合ったのだろう……。それともこの2人が出会うことは既に運命だったのだろうか……。

レディ・ヴィラ

わたしは、負けた人間はキライじゃないよ。だれだって、常に勝ちつづけられるわけじゃなし。運命の女神だって、時にゃ人の子にしてやられて、歴史の歯車をくるわすもんさ。ただ、自分の負けを認めなかったり、負けたままで終わるのを良しとしちまうようなヤツはキライだね

第1考察

キッドはサラの娘か?

「それは、娘が生死に関わるような危険にさらされた時には、娘の時間を少しだけまきもどして、過去へ飛ばしてしまう……。そう、それがキッドよ。」

ここで、キッドのことをサラのといっているが、この「」とは「この時代に自分の分身を生んだ」、「分身であるキッドに、願いをたくすしか……。」 といった言葉どおり、本当の娘ではなく、あくまで分身であり、「もう1人の幼児化した自分」として、便宜上「」と呼んでいるのだろう。

考えてみればもっともな話である。そもそも、サラは結婚していないし、魔神器の暴走の時点から、時空の流れのなかで、相手の男性を見つけ、その子供を宿し、出産するのは不可能である。やはり、ここは自分の分身と考えるのが一番だろう。例えていうならピッコロとマジュニアの関係である。(うわっ、変な例えあげちゃったΣ( ̄□ ̄;))


第2考察

サラのキッドに対する行動

サラがキッド(もう1人の自分)に対して持たせたペンダントの説明、「娘が生死に関わるような危険にさらされた時には、娘の時間を少しだけまきもどして、過去へ飛ばしてしまう……。」 なぜサラはこんなことをしたのだろうか?ただ、危険から身を守らせるだけではなさそうだ。高レベルの術者であるサラのことだ、危険から身を守るだけなら、記憶をなくさずとも、傷を回復できるアクセサリーを作れそうなものだ。だが、わざわざ、キッドの記憶をなくさせている。これは、もう1人の自分は、傷つけあうことにより生じる憎しみや悲しみに呪縛されないで欲しいという、サラの願いではないだろうか。ここでもサラは、憎しみや悲しみを正面から受け止めようとせず、記憶をなくすことによって逃避している。

<記憶をなくすことについてはサラとキッド参照


第3考察

サラの望み

キッド「オレは、オレだ!その、サラとかいう娘とはちがうッ!!」

ルッカ「………。ええ、そうね、キッド。サラさんも、そうなることを望んでいたんだと思うわ。」

サラは、もう1人の自分(キッド)には、悲しみに囚われることなく、自分と違った生き方をして欲しいと願ったのだろう。その想いの結果が、キッドの正反対な性格であり、嫌な記憶をなくすペンダントだったのだろう。

だが、キッドサラの分身であり、キッドサラ、2人で1つなのである。キッドサラの「もうひとつの自分」であったならば、サラ自身も、「もうひとつの自分」である。キッドだけ悲しみを忘れても、サラが解放されない限り、本来の(2人が融合した)サラは救われないし、キッドも真の幸福を手にすることはできないだろう。その証拠に、キッドは意識下に、“無へ帰りたいという、強い衝動”を持っていて、いくら、うわべだけ悲しみをなくしても、心の中に本当の平和は訪れない。それゆえ、ルッカやマールもサラの解放を願ったのだろう。

この言葉はキッドに投げかけられたものであり、過去から逃げてばかりいないで、きちんと向き合えという忠告であろう。

アカシア龍騎士団の老人をみて…

ギル「自分の認めたくない現実から、我が身を守るためにつくる盾みたいなものだ。背を向けて逃げ出したくなるような、あまりに悲惨な事件を見るなり、経験するなり、したのだろう……。心の中に自分だけの別の世界をつくり、そこに逃げ込んで、外の世界の一切を拒絶してしまうのだ……。」

なんだかギルの言葉に、言いようのない悲しみみたいなものが感じとられて、ボクは思わずギルを見上げた。ギルの瞳は、なぜかキッドを見ていた……。その横顔だけを、見つめていた……。

ここでのジャキ(ギル)の言葉も、そのままサラ(キッド)に向けられている。認めたくない現実過去の過ち)から逃げるなと、サラに投げかけているのだろう…。

サラを止めるツクヨミのセリフ

待てッ!!そいつに手を出すな!サラ、あんたのなかには無に帰りたいという、強い衝動がある。破滅のさか道をひとりで転がり落ちてくのは、あんたの勝手だ。でもそれに、セルジュや他のみんなを巻き込むのは、やめにしてくれ。

サラとしての記憶はなくしているとしても、「無に帰りたい衝動」が深層心理の奥底にあったのだろう。このときはまだ、サラ(キッド)は過去から逃避しようとしている…。

 

サラについての最終考察

 

母親である女王は変わってしまった。

ラヴォスの強大な力に魅了されてしまった…。

そして、魔神器を作り、サラにその制御を強制する…。

絶対の存在である女王に逆らう術はなかった……。

その点からいえば、サラのしたことには情状酌量の余地があるだろう。

だが、サラは純粋すぎた……。

自分の祖国に対して犯した罪の重さに耐えられなかった……。

自分のしてしまったことに自責の念を抱き、この世から自分の存在が消えることを望んだ……。

殻に閉じこもり永遠の闇へと還ることを望んだ……。

しかし、時のたまごはサラを生かした…。

時のたまごは、死ぬことではなく、生きることで償いを求めたのだ……。

サラの殻はサラ自身の手によって砕かれなければならない。それを教唆したのが時のたまご…。

そもそも時のたまごも、グランドリオンも、凍てついた炎も、絶対悪ではないようだ…

ただ、それを使う者の精神の弱さが、強大なその力に魅了されてしまうだけ…。

人と龍、ラヴォスと星、異なるもの同士が生存を賭けて争うのは自然の摂理である。

ラヴォスが星を滅ぼそうとしたように、星も龍を使って、ラヴォスと、その力を得て進化した異端児……人を滅ぼそうとした…。

しかし、それではダメだとサラは悟った。

ただ違う種を絶滅させるだけでは何も変わらないと悟った。

より高みを夢みて、再生した星の塔を見ながら……。

 

「その結果おこることも自分自身でひきうけなきゃならない。」

この言葉は、過去の自分自身に言ったのであろう……。

過去の責任から逃避していてはダメだということを自分に言い聞かせる…。

そしてサラは、“運命”が滅びた後の世界を切り開くために……。

過去の闇に囚われた自分自身を助け出すために……。

あらゆる生命のなかに溢れる、クロノクロスのメロディとハーモニィを奏でる…。

サラの憎しみと悲しみを、生命の“うた”で癒す…。

本来の自分を取り戻した先に待っていたのは…

新しい未来と

仲間との別離だった

 

星の塔・再生を目にして…

キッド「あれが、星の塔の本来の姿か。みんな同じなんだ。より高く、より遠くを夢みてる……。」

「ここまでくれば、もう後は時喰いを倒すだけです。時喰いをこの星から消してしまえば、すべては終わり……。きっとなにもかも、元通りになるはずです。」

キッド「ちがうな。運命は、死んだ。もう後戻りはできない。これから先、人は、自分の道を自分で選び、その結果おこることも自分自身でひきうけなきゃならない。それに“違うもの”同士で、傷つけあい、殺し合ってるだけじゃ、いつまでたっても何も変わらない。なんの解決にもならないんだ。いいか、本当に重要なのは、これからだ。ヤツを倒せるかどうかなんて、問題じゃないんだよ。オレたちの戦い方いかんでは、なにか、ひどく大切なものの得られるチャンスが、永久に失われてしまうもしれない……。どう戦うか、が問われてるのさ、オレたちは。」

 

サラは、自分でしたことは自分自身で責任をもって引き受けなければならないことを悟った。ジール崩壊以来、心を閉ざし、逃げていた現実や責任にたいして、正面から受け止めることを決心したのだ。
時を喰らうものから解放されるもう1人のサラ。過去に囚われたサラと、過去を忘れたサラとの融合は、過去を受け入れた上で、過去の憎しみと悲しみから解放され、未来を歩もうとする決意の結果であると同時に、クロノクロスの奏でるハーモニーにより全生命を癒し、希望の未来を生み出したことによって責任を果たし、長年の呪縛から解放されたことをあらわしているのであろう…。
解放されたサラと1つになったサラ(キッド)は、自分の記憶を取り戻し、本来のサラへと戻る…。もう憎しみや悲しみに囚われることもないだろう…。サラは新しい未来へと歩んでいく…。セルジュへの想いを胸に秘めたまま……