Vol. 1: "January"−過去と未来を見つめる両面神−

 January, February, March, April…中学校の英語の時間に,呪文のように唱えて覚えた月の名前。これで英語が嫌いになった人も多いのではないでしょうか。そこには,「何でJanuaryが”1月”なの?」という疑問を持つことさえ許されない雰囲気がありました。万一そんなことを英語の先生に質問しようものなら,「そんなことばかり考えるからおまえは英語ができんのだ。丸暗記だ。丸暗記。」と言われかねません。

 その先生は,単語1つ1つにもそれなりの由来があるということをご存じなのに,そんなこと高校入試には関係ないから「丸暗記」と片づけていたのでしょうか? それとも,そんなこと全くご存じなく,それを生徒に悟られまいとするために強がりを言っていたのでしょうか。いずれにしても,困ったことです。

 確かに,初期の英語学習においては,理屈抜きで体で覚える,いわば行動主義的な考え方は有効でしょう。でも,都合のいいときだけ行動主義を全面に出しておいて,発音や文法指導ではドリルそっちのけで理屈ばかり教える,というのではまずいでしょう。

 話がそれましたが,確かに月の名前というのは,初学者の単語学習のうえでは困難なものの1つで,今までにも様々な方法が実践されてきています。「じゃあね,と年を越したらJanuary」式の語呂合わせもその1つで,面白いのだけど,いわば子供だましで,ませた中学生相手に効果があるかは疑問です。

 Januaryは,ローマ神話の中で出てくる双面神のJanus(ラテン語発音では”ヤヌス”に由来します。「ヤヌスの鏡」という小説が昔あったので,おなじみかもしれません。

 双面神というのは,前と後ろの両方に顔がついているお化けのようなもので,門の番人といわれています。1月は,新しい年を迎える月。古い年から新しい年への変わり目にある門の前に立ち,2つの顔で,去りゆく年と新しくやってくる年の両方を見据えると考えれば,まさに1年の初めの月にぴったりの役柄でしょう。

 ちなみに,Janusを英語式に発音すれば”ジェイナス”になります。ローカルな話題で恐縮ですが,昔,名古屋駅前に,ワープロと英会話が同時進行で学べるという,(当時としては)画期的な学校があり,その学校の名前が,まさにその「ジェイナス」でした。本当の由来は私も知りませんが,ワープロとパソコンという2つのものに同時に目を向けるという意味では,双面神Janusはぴったりだったと思います。

 しかし,最近になって,ワープロ・英会話に加えてパソコンか何かが加わったので,「ジェイナス」の本義が薄れ(たためかどうか知りませんが),ごくありふれた名前に変更されてしまったのは残念です。もっとも,文学専攻の同級生が教えてくださったのですが,双面神Janusは,前後左右の4つの顔を持つという説もあるそうです。ということは,もしその学校が,ワープロ・パソコン・英会話に加えて1つ何かコースを増設した暁にはジェイナスという名前に戻しても意義があるのでは? そんなことありえないでしょうけどね。

 Januaryに限らず,月の名前には面白い秘密がいろいろとあります。次回,さらに詳しく探検していきましょう。アップロードは3月1日前後の予定です。お楽しみに!

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