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転職失敗記その21

プライバシーを知らない

社長は、わざわざ私の敬語をそのまま返した。いやみたっぷりに。
「ええ。ごらんになりました!

やばい。冷汗が流れた。
社長の言っているのは、管理職と事務職の人を除いた社員 だけの、メーリングリストのことである。
そもそもそれを私が作ったきっかけは、どこのパソコンのソフト をバージョンアップしましたとか、プラグインを入れました、 などというメールが全社員あてのメーリングリストに 流れていたため、 実務レベルの人達だけにそういうものは伝えればいいだろうと 思ったからだ。 決して社長に言えないことを言う場にするつもりは なかった。
だが、せっかくメールが使えるようになったのだから、 こういう場を通して、社長の目におびえず、 自由に意見を言える場があればいい、という思いはあった。それで社員間の意志の統一ができて、社長に対抗する力が生まれたら…というささやかな希望もあった。そういうわけで、社長には内緒のアドレスだったわけである。

別に、あからさまな社長の悪口が流れていたわけではない。
そこは皆、大人だから常識がある。
「また◎◎の仕事やりなおしです。
Nさん、何度ももうしわけない。
誰のせいだと思ってるんだ、社長!」

とか、
「またあのじじいが訳のわからないことを言ってますが、
もう一度怒りだす前に○○の提出よろしく …」

という程度である。
ほとんどの話題は社長に関係なかったし、たんなるざっくばらんに 意見を言ったり、業務連絡をしたりする場として、使われていた。
だが、それでも、社長の逆鱗に触れるには十分だったのだろう。

…こいつ、人のメールを見たのか。他人のメールを見るなんて、 最低のマナー違反だろう?怒りで身体が震えた。でも今、社長にそんなことを言っても無駄だ。
私は、このメーリングリストは実務的な 連絡をするために作成した、と社長に説明した。
「じゃぁ、あんたなぜそれを俺に言わないんだ」
「…」
言葉に詰まった。
だって、 もし、話していたら、社長はそんなメーリングリストの 作成を認めるわけがないよ。
「俺のことを、…どうのこうの言っているメールがあって、非常にびっくりした。 こういうことが蔭で流れているのは、非常に気分の悪いことです」

私はこのときどう反論したのかよく覚えていない。
常に社長の監視下になければいけない わけではなく、自由に意見を言える場もあっていいと思う。 メールなどは社内でそのように活用されるべきであり…等、 しどろもどろだった。情けなかった。
「わかりました。そういう経緯なら。で、このアドレスは(メーリングリストのことだ)あんたが、作ったのか」
「はい」
「あんたの作ったサーバーは、Linuxっていうのか?
俺は全然使えないわけだ。 だから何が起こっても俺にはわからない。今回みたいなことがあってもね。
やっぱり、そういうサーバは、だめだな。Linuxなんていうのは」

ようやく社長との話が終った私は、心底ぐったりした。
私は、 「ああ、やっぱりまずかった。社長に知らせずメーリングリストを 作るなんで、非常識だったかもしれない」 と、頭をかかえていた。 たしかに、私にも非はある。
だがよくよく考えると、そもそも他人のメールを覗くのは悪いことだ。 社長は、他人の電子メールさえも自分の目を光らせたいから、他人のメールを読むような行動をとったのだろう。
いくら給料貰っている社員だからって、そこまで支配されていいわけがないじゃないか!プライバシーという言葉を、彼は知らない。
だいたい、社員からそういう風に言われていることを知って、私を怒るなんて、怒りの方向が間違っている。自分が嫌われていることを知ったら、すこしは自分の行動を見直したらどうなのだろう。

残念なことに、他人のメールを上司がチェックする ソフトが世の中には出回っている。 でも私はこういう行為は個人のプライバシーを踏みにじる最低のことだと思っている。
なんでも、こういうソフトでは、キーワードに「飲み会」などを指定して、 メールを見ることができる。引っ掛かったメールの送信者の人事に、利用するのだそうだ。
あくまで私の私見だけど、 メールを活用して飲み会の連絡を取れるくらいの方が、 メール一通満足に書けない(html添付ファイルつける、半角カナ使う、etc...) オヤジたちより、仕事では使えるにきまっていると思うのだが。
メールの覗き見とは、例えていうなら、 会社の至るところに盗聴機をかけ、給湯室やトイレ、喫煙室などの会話をすべて録音するような、 人に来た手紙を全部開けてチェックするような、そんな感じの行為だ。
そんな会社にいたい人がいるだろうか。 少なくとも、私はいたくない。

今回の出来事で、私はかなり社長に嫌われたようだ。
でも、我慢しよう。
あと数週間で私はいなくなる、E社から開放されるんだ!

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