忍法帖 出版社の表示がないのは講談社ノベルス・山田風太郎傑作忍法帖でやんす。同シリーズの解説は金井美恵子から京極夏彦までいろんな技のある人が書いているので要チェック。


『忍法流水抄』☆☆角川文庫99.11.1

「叛の忍法帖」・「おちゃちゃ忍法腹」・「近衛忍法暦」・「刑部忍法陣」・「羅妖の秀康」・よしの大好きな「慶長大食漢」・「彦左衛門忍法盥」と、安土桃山時代〜江戸時代初期を舞台にした作品集です。「刑部」がよしの的には初見かな。
怪作なのにレビューちゃんと書いてなかった「叛の忍法帖」からいきますと、どうも動きが不穏な明智光秀をめぐって、秀吉・徳川・毛利・明智の忍者が4すくみに。ねたばれにつき詳細はぶきますが、甲は乙に勝ち、乙は丙に勝ち、丙は丁に勝って丁は乙に勝つという前哨戦の後、本当に叛しちゃった本能寺の変第一報を伝えるため、4人の忍者が対決するというあたまがぐるぐるしてしまう作品でやんす。ある意味山風忍法帖の一つの極点ではあるかもお・・
初見の「刑部忍法陣」は、大谷刑部を狂言回しに関ヶ原直前の豊臣方を描いたお話。真田に嫁にいってた刑部の娘を送ってやってきました猿飛佐助と淀君とか高台院とかの内幕見物にいくという・・。ぷらーす石田三成とまぶだちだけど、家康にも評価されてて徳川VS.大阪のかたちは作りたくないと開戦避けようとしている刑部をどうやったら石田方にひきずりこんで一合戦かますか?という興味でひっぱるです。ある意味で名作『叛騎兵』の前のお話っていってもいいかもですねい。


『忍法鞘飛脚』☆☆☆角川文庫99.11.1

表題作「つばくろ試合」「濡れ仏試合」・乱歩オマージュ「伊賀の散歩者」・松平VS.田沼意次な反間苦肉「天明の隠密」・「春夢兵」・緊迫感あふれるラストがたまらん傑作「忍者枝垂七十郎」・人体切り張り系忍法「忍者死籤」とパロディーありえろあり反間苦肉ありとバラエティ豊かな短編集です。
ぢつはいまさら初見の「伊賀の散歩者」は、藤堂藩ご老公の側室おらんの方の弟歩左衛門を乱歩にあてまして、伊賀なんで芭蕉もでてきまして「一人の芭蕉の問題」「屋根裏の散歩者」『人間椅子』「赤い部屋」とタイトル通り乱歩ネタで炸裂しまくりい★と、そういう乱歩オマージュお遊びかと思っておりましたらものすごい落ちがやってきますです。驚倒しましょう。皆さま♪あたくしはアゴはずれましたですわ・・
これまた初見の「春夢兵」は、相馬大作の弟がなにやら建設しました優生学なファシズム社会を春画をつかった伊賀えろ忍法使い忍者3人組が内部崩壊させようとするお話。すべての性交が管理される社会に、いかにエロコンテンツは闘いうるか?というお話かもです。


『忍法女郎屋戦争』☆☆角川文庫99.11.1

表題作・権力ってこわいぢゃんな「忍者服部半蔵」・「忍法瞳録」・「忍法肉太鼓」「忍法阿呆宮」「忍法花盗人」・「妻の忍法帖」収録です。 表題作は、田沼息子のために公営遊廓管理することになっちゃった服部億蔵。婿養子なもんで妻におちりたたかれながら職務にまい進です。物珍しさもあって繁盛するのですが、火がきえたような吉原を関西のお大尽が支えてるうちに、所詮色とか粋とかわかりゃしねえ官営遊廓はすっかり下火に・・盛り返すべくお大尽を追求したりもする億蔵ですがあ・・というお話。
「忍法瞳録」は網膜映像系忍法。謎の網膜映像系忍法を開発したらしい志摩は十鬼組に潜入しました服部組の干潟甲兵衛は、開発者を倒しはしたものの、網膜に動画で録画する実験をしていた娘お千也を託されてしまいます。ほんで甲兵衛は十鬼組に敵討ちで殺されてしまいまして、その息子、甲之介はお千也にほのかに恋をするのですが、十鬼組から再び決闘状がまいりましてえ・・という展開。「薮の中」はいってますななお話。
「妻の忍法帖」は伊賀組の某家に婿入りした紋三郎のお話。そいや「忍者傀儡歓兵衛」も伊賀組婿養子ざんしたね。入り婿しない方が身のためなかもしんない・・
大人になってから忍法修行ってー厳しすぎるだよというわけでふてくされて恋女房お半もほったらかして浮気してええと妄想の日々です。逢引の段取りをつけていこうとしたら首領がなんかちらつくし、とうとうノイローゼ気味に・・
お半に問いただされ、妄想白状した紋三郎君、なにげにお半の介添えで忍法で浮気相手と逢引するという話になってしまいます。うそお〜と思いながらも妄想を極限まで蓄積させられて結局忍法炸裂♪けっきょく見事に忍法者の道に・・って、やだじゃんそれ・・というお話。


『忍法行雲抄』☆☆☆角川文庫99.11.1

首が生えてくる系忍法(汗)「忍者明智十兵衛」・本能寺の信長+時間遡行系果心幻法炸裂「忍法死のうは一定」・秀吉へのルサンチマンな忍者軍団の悲劇「忍者石川五右衛門」・謎の精虫忍法(汗)炸裂「虫の忍法帖」、そして「忍法関ヶ原」「忍者本多佐渡守」とまた戦国時代〜江戸初期短編集。そいやならびも時代順になってますな。


『忍法破倭兵状』☆☆☆角川文庫99.11.1

表題作に「甲賀南蛮寺領」・豊臣秀次+時間遡行系果心幻法炸裂「忍法おだまき」・ 「忍法ガラシヤの棺」・切支丹迫害前夜の長崎で熱狂的な切支丹を堕落させるべく暗躍する忍者あーんどくノ一な「忍法天草灘」・スウィフト@日本な「ガリヴァー忍法島」・お庭番出身者がなぜかアメリカに派遣される使節団に!というわけでアメリカでなにげに繰り出される忍法のかずかず!(笑)な「お庭番地球を回る」でございます。なんつーか日本の忍者に外人とか切支丹でてくるってー系を集めたかんじでしょうか。
初見の「甲賀南蛮寺領」は信長に南蛮寺領に指定されちまった甲賀郷士の人々。一応恭順しますが、わてらをなめとんのかーとばかりにゲリラ戦を展開します。しかし領土確保してもえもえの南蛮寺側もただもんじゃあありませんで最新兵器投入で応戦。とうとう甲賀側は降伏して首領を差し出すことになりやすが、タダぢゃ転びやしないですよ、というお話。


『くノ一紅騎兵』☆☆☆角川文庫99.4.5

講談社の新書判で同タイトルの短編集もありますですが、こっちはよしの好みの傑作「忍法聖千姫」はいってる〜♪
収録作品は他に「倒の忍法帖」「くノ一地獄変」に、忍法帖短編の中でも一二を争う大傑作「捧げつつ試合」「忍法幻羅吊り」「忍法穴一つ」とハズレなしの構成です。 初見の「倒の忍法帖」はもはや魔人入ってる結城秀康ネタ。優生学的政策断行するは、気にくわないやつは無手無刀で相手すると挑発高札たてるわな秀康に危機感もった家康は伊賀組に秀康をくノ一でとろかすか、どうしてもだめなら暗殺することを命じます。しかしタコ壺だったりするくノ一の技も無刀な境地の秀康に跳ね返されて逆に廃人化されてしまい、暗殺者たちも速攻自滅・・くノ一達の色の師匠・雪ノ外記は忍法全然知らない貞淑な妻に忍法倒蓮華(むーん、嫁入り前に身に付けたい忍法ではある・・)を仕込んでかけむかいますが・・というお話。秀康ネタといえばえろ&超絶忍法という山風お約束の一本。


『忍法陽炎抄』☆☆角川文庫99.1.30

久々に角川文庫ゲットしました。350円。しかも美本だうれしいな〜。カバー表紙は車兵五郎の兵五郎と鉄藤次が対決している場面、裏は向坂甚内と桐姫です。
収録作品は「忍者 向坂甚内」「忍者 車兵五郎」「怪談 厠鬼」、「大いなる伊賀者」、「忍者 梟無左衛門」、「淫の忍法帖」、「忍法とりかえばや」、「『甲子夜話』の忍者」です。
初見の「大いなる伊賀者」は割と山風作品でちらほらでてくる相馬大作事件ネタ。まったりと下斗米兵之進と師の平山子龍の交流が描かれ、そうこうするうちに下斗米は相馬大作の名で津軽公を狙撃して失敗。みんな忘れていたけど実は伊賀組同心だった平山のもとに下斗米を逮捕するよう密命が下ってしまいます。結局平山は下斗米をとらえますが、津軽公に幻怪無比な忍法で復讐を・・・
タイトルに見覚えがあるんだけど完全に忘れていた「淫の忍法帖」はかなり陰惨なお話。世継ぎがいないのに藩主がどーも子種がつきてしまった有明藩。家老と殿様共謀で、正室側室に藩内で藩主の血を引いていて精力旺盛そうな独身男五人に種付けをさせることになります。世継ぎそっくりの子が同時期に生まれちゃやばいので、種付けの条件として最低10ヶ月はほかの女としちゃいかん!ということになり、忍者のからすき直八が五人の監視任務につくことになります。けど、仕事に取り掛かる前に誰でも好きな女と交合してよし、といわれた五人は、期せずして門番の娘・お志摩を指名しますが、それって直八のいいなずけだよ・・・(とほほ)
凄惨な目に遭ったお志摩は発狂、いったんは忍者としていいなずけをいけにえにすることを拒めなかった直八はお志摩に自害を促して自分も死のうと思ったものの、発狂しているお志摩を殺すわけにもいかず、五人の男達にえろえろ忍法で復讐をはじめますです、というお話。
レビュー書いてなかった「忍法とりかえばや」はきりはり系忍法炸裂アンラッキーおちの作。伊賀組の茨木丈馬は首領の娘・お七をひそかに狙っているのですが、お七の婿選びに平均点は高いものの飛び抜けた資質がないということで失格(涙)。かわって人体の突出部の交換を研究している朝国甲太夫の研究をつぐために、甲大夫の未亡人お眩の婿となります。
ところで婿選びは決着がつかず、岩殿藩隠密ご用の成果で決まることに。丈馬は甲大夫の研究の実験を口実にくっついていき、他の候補者の「飛び抜けた資質」を奪ってわが物にしようとしますです、というお話。嫁入り前の娘が書くことじゃーありませんが、そんなに殿方って大きい小さいが気になるものかしらんとよくわかんない作です。まあ山風の忍法帖そのものが男性女性で読み方がかなりずれてるもんかもだけど。


『忍法落花抄』☆☆(角川文庫)98.9.22

「忍者仁木弾正」、「忍者玉虫内膳」、「忍者傀儡歓兵衛」「忍者枯葉塔九郎」、「忍者帷子万助」、「忍者野晒銀四郎」、「忍者撫子甚五郎」、「『今昔物語集』の忍者」収録です。いちおー未読のものはないはずだったのですが、あんまし御紹介してなかったのを御紹介いたしますです。
「忍者撫子甚五郎」は関ヶ原合戦の直前に、裏切るんだか裏切らないんだかわからん西軍総大将宇喜多秀家の心中を探るべく、服部半蔵は、父の友であった西軍方の忍者波ノ平法眼と談合し、忍法史上空前絶後の敵味方共同物見を提案します。己が勝つと信じた側に走れと命ぜられたけれど、それをそのまま果たすわけはない伊賀波ノ平合わせて四名の忍者の虚々実々反間苦肉の緊張感あふれる逸品。
「忍者玉虫内膳」は元禄やりたいほうだい五代将軍綱吉時代のお話。綱吉に婚約者や妻を奪われた直参武士たちがなぜか恨み状をくわえて怪死すること17人。あまりの怪事に柳沢吉保はお小人衆組頭の娘お葉を大奥にあげ、配下でお葉に惚れている伊賀は鍔隠れ谷帰りの稲富小三郎&玉虫内膳に囮となるよう命じます。その命令に抵抗した稲富を討ち果たした玉虫は、魔の手をうまく自分の身に引きつけますが・・・というお話。
文庫カバー表紙の絵は、例によって佐伯俊男の手による玉虫内膳の姿になっておりますが、内膳は意のままに身体の一部を殺し、手で走るとか足で刀をつかんで戦うとかゆー、身体を意のままに制御するという意味では忍法の基本ちゃー基本だけど地味な名無しの忍法使いなもんで、手を撃ち落とされた若い武士が足袋はだしの足で刀を構えている図柄になっています。なんか、ヘン・・・


『忍法関ヶ原』☆☆(文芸春秋文庫)98.9.12

実家の郊外型巨大書店でゲットしたものの、既に御紹介したポケット文春の同タイトルの短編集の改版です。新ネタゲットかと一瞬思ったのに、ショックだ(泣)ポケット文春もってなかったからよいけどね・・・レベル高いし・・・
というわけで簡単な内容とかはそちらを御参照いただくとして、割とこの短編集は忍法帖エッセンスが濃いかなという気もむりやりしてきたです。表題作の忍法に代表される個人の武術から鉄砲技術に代表される集団戦への転換というテーマ、言い換えれば敗戦体験を背景にした技術が歴史を書き換えるという認識は『海鳴り忍法帖』でも顕在化しとりますが、さまざまな作品の通奏低音として流れておったりするです。ほんで「忍法小塚ッ原」の一つの忍法を土台にさまざまな条件で展開していく実験君なノリは、『忍びの卍』『笑い陰陽師』など多くの忍法帖の面白さを支える屋台骨になっております。「忍法甲州路」の三人の催眠系忍法兄弟.vs三つの催眠破り剣術という主題は、ある現象をわけわからん方向に変奏し展開していく山風忍法帖作法の典型ともいえるかもです。
読んでおもろく、山風固めて体系的に読んでいくには座標軸にもなるかもしんないお役立ちな一冊です。


『かげろう忍法帖』☆☆(講談社 山田風太郎忍法全集)98.4.19

「忍者明智十兵衛」「忍者石川五右衛門」「忍者向坂甚内」「忍者撫子甚五郎」「忍者本多佐渡守」「忍者服部半蔵」+随筆「『今昔物語集』の忍者」と、戦国時代末期〜江戸初期を舞台にした忍法物です。
よしの未読の「忍者向坂甚内」は、三甚内そろい踏みなお話。家康の命で江戸に頻発する怪異な強盗を追う服部半蔵は、古着屋の鳶沢甚内と遊女屋の庄司甚内がその手引きにかかわっていると踏んでとらまえますが、その黒幕の泥棒な向坂甚内は人体の穴を縫って完全に塞いでしまう忍法紅蜘蛛の使い手。三甚内は北条家再興を願って遺子桐姫を守りつつ資金稼ぎに泥棒をしていたのですが、鳶沢庄司はもはや徳川の威は揺るがぬものとして仕官に色気を出すものの、向坂は服しません。徳川家に取り込もうとしていた半蔵もキレて、女陰恐怖症の向坂を罠にかけるために、完全無菌純潔培養に育て上げられた桐姫に色事をみせつけ発情させて罠としますが・・・というお話。
随筆「『今昔物語集』の忍者」は「今昔」に忍法帖のアイデアがあるんでわないと人に言われてひっくりかえしてみた山風がみつけた忍法帖的エピソードの紹介です。旅の宿を借りた国司の妻に夜ばいをかけていちゃいちゃしていたら、気がついたら男根なくなってしまい、あまりのことに家来も忍んでいかせてみたらやっぱり家来もなくなってしまい、混迷したまま宿を出立してみたら、後から男根をまとめて届けられたというお話でたしかに忍法帖的かもです。


『くノ一死ににゆく』☆☆☆(講談社 風太郎忍法帖)98.4.19

「捧げつつ試合」、「濡れ仏試合」、相手に背を向けて戦う剣客の信じがたい弱点「逆艪試合」、「膜試合」、「かまきり試合」、人肉とろかし伊賀対人肉ふくらまし甲賀「麺棒試合」、「つばくろ試合」、くノ一が結城秀康の男根の謎をさぐる「模牌試合」と、「逆艪」の除いてくノ一てんこもり集です。忍法帖好きなら是非ゲットしたい味の濃さ
未読の「捧げつつ試合」は、緊迫感あふれる佳作でやんす。沼田藩内情偵察のために潜入した甲賀大八+布目万右衛門とおふう兄妹。しかし途中でバレてしまい、おふうは瀕死の主人大八に婚約者の元に届けるよう忍法はぐれ雁で切り離した男根を託されます。しかしこの男根、しかるべきところに入れれば妊娠させることができるというものの、女の肌で暖め続けないと死んでしまうというので、沼田藩手飼いの忍者に追撃されようと、おふうは左手で握りしめたまま離すことができません。大八に恋をするおふうの心理、追撃する敵との戦い、凄惨な結末、くノ一物の白眉といえましょう。
「濡れ仏試合」は、うっかり五代将軍綱吉に目をつけられた小野家の娘お志麻をめぐるお話。狷介なのは血統か、柳沢吉保に養女としてお志麻をよこせといわれて断った小野次郎右衛門は、弟子の忍者十六夜孫六にお志麻を守るよう依頼します。ところが孫六は吉保から腹いせにお志麻に女を肉欲の鬼に変える忍法濡れ仏を使うよう命じられます。進退きわまった孫六は、命を果たしたことにし、かつ小野の意地を立てるには、お志麻に「肉欲の鬼」のまねを吉保の前でしてもらい、かつ後で処女であることを医師に証明させる他ないとしてお志麻に「肉欲の鬼」の型を学んでもらいますが・・・というお話。
「膜試合」は、八代将軍吉宗の頃のお話。服部八方斎(汗)は大岡越前に、伊賀組の娘と嫁入り前にねこそぎ交合するのはなぜかと問われて、処女膜を素材として術をかけた処女と交合すれば相手の男が尿道を塞がれて悶死する忍法膜封印のためと答え、乱倫な股の役得ねらいか、真実忍法のためか、試しに八方斎の娘お貞にかけて一人殺してみてくれと言われてしまいます。しょーがないので前からお貞をほしがっていた配下の瓦半九郎・神坂外記に話をふると、二人ともお貞と交合して死にたいとの答え。結局決闘してどちらが忍法膜封印で死ぬかを決めることになりますが、神坂が陰謀めぐらしたばっかりに事態はあらぬ方へ転がっていく、とほほ系忍法帖。
「かまきり試合」は、豊後の剣術道場の娘おゆかと浪人有馬作兵衛の恋、江戸の三味線の師匠お蓮と浪人文殊弥八郎の色が描かれます。しかし作兵衛と弥八郎は伊賀の忍者。交合すれば息が毒と変わって男を殺してしまう美女・お遊と交合するべく鍔がくれの谷に帰っていきますです。いかんともしがたい宿命がたんたんと描かれる佳作。
「つばくろ試合」は尾張柳生の兵介&明から来て武術や文化を伝えまくりの陳元賢(『忍法剣士伝』の武蔵パパ・『魔界転生』の関口柔心参照)という異色な取りあわせのお話。日本兵の救援を求めてきた鄭成功の妹・春燕は回生の秘法をもっていることを武器に、三代将軍家光との謁見を要求します。しかし松平智慧伊豆としては、偽物なら防がなければならないし、本物なら反対論者の刺客から守らなきゃならないと、尾張柳生の兵介&陳元賢に依頼します。ところが春燕は由井正雪が成功と計って立てた囮で、ねらいは家光の緩慢な暗殺&台湾救援を口実に紀伊徳川家の頼宣に大軍を準備させてクーデターというところにありますです。そして春燕を試そうとする二人に襲い掛かる根来組忍者たち。十分に長編として成り立つネタを放り込んだ濃い一編です。


『忍法関ヶ原』☆☆(ポケット文春)98.4.19

「忍法関ヶ原」、切支丹切り崩しを狙うえろえろ忍法炸裂「忍法天草灘」、催眠忍法炸裂の名作「忍法甲州路」、首すげ替え忍法で混迷深まる「忍法小塚ッ原」収録でございます。
よしの未読の「忍法関ヶ原」は、石田三成治下の鉄砲鍛冶最新テクノロジー集団国友村を徳川方につけるべく潜入する伊賀組の皆さんのお話。蝿の塊を使って人数動きを錯覚させる忍法(たぶん一番臭い忍法だね、こりゃ)&水分ナシナシ系忍法を使って潜入しようとしたらば三成手飼いの甲賀にしてやられ、ようやく村の外で国友村の技術者に接触して入り込むものの、そこからが大難続き(汗)。いずれもあくの強い鉄砲鍛冶達にいいようにされ、どうにか大砲を作らせるという任務は果たすものの、一撃で甲賀の手だれをまとめて倒した鉄砲テクノロジーは同時に伊賀組の存在理由も打ち倒してしまうのでした。南無南無。


『忍法破倭兵状』☆☆(講談社 風太郎忍法帖)98.4.19

インテリ忍者のどんでん返し「忍法蛸飛脚」、大奥女体ネタ「忍法肉太鼓」「忍法花盗人」「忍法しだれ桜」、果心居士炸裂「忍法おだまき」および表題作です。
未読の「忍法花盗人」は、将軍家斉の姫・元姫を奥方として押し付けられた会津松平家のお話。ごついわ武芸が趣味だわ権高だわな元姫を恐怖するあまり、のぼのぼした殿様はご交歓のことが不能な人になってしまい、あせった家老・重役たちは参勤交代で国元に帰る時に美人の側妾を三人選びます。元姫は実家からつれてきた伊賀のくノ一を監視役としてお添い寝につけることを条件に許可するのですが、殿様ったら元姫恐怖症が女陰恐怖症に進んでしまい、すっかり役立たず(汗)。さらにあせった国家老は会津に土着する忍びの芦名一族(玄伯とかゆってますが・・・『柳生忍法帖』参照)を召喚し、忍法でなんとかすることを命じます。んで精を降らせて憑依系忍法、空間知覚逆転系忍法枕返し、最終兵器男根差し替え系忍法炸裂です。くノ一が混迷深めている間に三人の娘は無事懐胎。元姫の命により、側妾は子と引き離され、三人の忍者に五百石つけて下賜されます。ところがこれが忍者たちには大災難な結末。
同じく入手困難「忍法しだれ桜」は尾張徳川家の家老にして幕臣でもある犬山藩の忍者組で江戸根来組・名古屋お土居下組に人材供給もしている木曾根来組のお話。なるべくフツーの生活を心がける漆卜斎の下、なんだか春風駘蕩な小世界が崩壊していく様を描く佳品です。八代将軍ケチケチ吉宗と尾張バブリー継友の間の緊張から、尾張側の元家臣が将軍狙撃事件を起こし、緊張の高まる中、数年前お土居下組へ行った三雲丈念、同じく江戸根来組に入った五明道阿弥が死体で発見されます。組そのものも江戸派尾張派に割れ、江戸VS尾張の代理戦争ともいえる内ゲバが木曾根来組に始まり、復讐が復讐を、猜疑が更なる猜疑を呼んでしまいます。頭領漆家の婿・織部はそれぞれの忍法を公開し、互いの攻撃を無化しかつ誰がやったのかを明らかにすべきだとしますが、卜斎はそれは木曾根来組の存在理由を抹殺するものとして許しません。そんなこんなで江戸と尾張は手打ちに入るのですが、それは憂さばらしに三雲・五明を殺した罪を木曾根来組の江戸派尾張派に問うという形となり、最後に生き残った織部と妻・竜胆でさえ、退転するという織部と、木曾根来組を残すべきだとする竜胆は殺しあう羽目に・・・という大悲劇。小さい具体的な共同体の中での政治の荒れ狂いように着目しているという点では「狂風図」にも通じる異風の忍法帖です。廣済堂に是非復刊していただきたいと思っていたのに山風傑作大全が完結してしまうとわ・・・。


『魔天忍法帖』(徳間ノベルス)98.3.26

長編歴史SFだそうです。まあ、パラレル・ワールドってやつですね。 太平な世に忍法修業したけど、所詮捨て扶持で仕事は評価されないお小人衆鶉兵太郎君(一五俵一人扶持)は、薩摩藩潜入に成功して帰ってきたらば恋人お千が300石の旗本のおうちに輿入れの日(汗)。お千と親父の組頭をたたき切って隠密が変身する化粧蔵に飛び込んだ兵太郎君は、忍法で唯一出世したかもしんない初代服部半蔵に祈願し、二百年前の戦国時代で活躍したかったと念をこめたら半蔵が出てきてアヤシイ永劫回帰理論に基づいて時間をさかのぼろうとしますが失敗。出たところはパラレル戦国時代で、今しも江戸城の徳川家康を石田治部が攻め落とそうというところです。そこから真田忍者に救い出されてきた秀吉の妻・お市の妹お千に恋をした兵太郎君、知識と忍法を武器に成り上がり、お千をゲットしようといたしますが・・・というお話。ちと兵太郎君の腰が据わってないのが難点か。


『伊賀の聴恋器』☆☆(角川文庫)98.3.26

えろ系忍法てんこもり短編集。表題作・「剣鬼喇嘛仏(らまぶつ)」「嗚呼益羅男」「読淫術」「さまよえる忍者」「怪異二挺根銃」「呂の忍法帖」「忍法小塚原」収録です。
よしの的には初見の表題作は、大阪城冬の陣の後な日々に、柳生家の息女お万に岡ぼれした服部大陣がライバル取り除き&お万の婿になるために作り出した、聴診器みたいなののさきっぽに陰嚢なめしたのとハマグリのカラをくっつけ、男女の下腹部に当てて聞こえる音で相性を診断するという聴恋器(こんなアホ思いつくの・・・山風しかいないよな・・・)騒動。「怪異二挺根銃」は、おかしな男女性愛理論から男根が二本あればいいのにと御先祖が念を込めたおかげで二本生えてしまった津軽家の忍者VS同じ男を相手にしないと死んでしまうとだだをこねる田安中納言家(徳川の分家っす)の双子のインランな姫君金姫銀姫に気に入られてしまった小姓塔の辻無近&その恋人。「呂の忍法帖」は精力のない大名になんとか精力をつけようと怪僧がたくらむ頭がぐるぐるしてくる忍法でございます。
既にご紹介した他の作品もレベル高く、古本屋で見つけたら即ゲットな短編です。


『くノ一紅騎兵』☆(講談社ノベルス・山田風太郎傑作忍法帖)98.2.24

えろえろな忍法短編を収録。お献立は「摸牌(もーぱい)試合」、「逆艪試合」、「嗚呼益羅男」、表題作、「忍法幻羅吊り」、「忍法女郎屋戦争」、「お庭番地球を回る」、「『甲子夜話』の忍者」でございます☆
まだ書いてないのからいきますと、「摸牌試合」は、家康の実質長子なのに半分捨てられて恨み骨髄かもしんない結城秀康の真意をさぐるべく送り込まれたくノ一たちのお話。「逆艪試合」は元婚約者の逆上から相手に背を向けて敵を倒す神子上背鬼と御前試合をするはめになった柳生采女と、采女を助けるためにあわわな奇策に出る采女の陰間な愛人絵太夫右近の珍しくモーホなお話。「忍法幻羅吊り」は吉原を舞台に「月の恋占い」という遊女の占いを利用して念じた男を引き寄せる忍法なお話。「忍法女郎屋戦争」は田沼息子の命を受けて官営遊廓を経営するはめになる服部億蔵のお話です。


『お庭番地球を回る』(ポケット文春)98.1.29

表題作(河出かどっか文庫に入ってるはずだけど忘れた)、「怪談 厠鬼」「さまよえる忍者」「読淫術」「忍法 死のうは一定」(『秀吉妖話帖』にも収録)が収録されてます。
「怪談 厠鬼」は、上様お目見えとなった才色兼備な香鳥(かとり)を将来のライバルかもしんないと踏んでけ落とした側妾三人&三人の伊賀者に、娘の婚約者だった塗戸漢学が復讐するのですが、とにかくタイトルの通り厠ネタで攻めまくる怪編。「さまよえる忍者」は精液で他人に乗り移り系忍法に目覚めたばっかりに、他人の体の中をさまよっているうちに収拾つかなくなってしまう忍者譚。「読淫術」は他人の性生活を読む忍法が死命を分けてしまうブラックな忍法譚でございます。ナンセンス系忍法帖集としては出色の一本★


『妖の忍法帖』☆(文芸春秋)98.1.22

五代将軍綱吉誕生に伴い、大老堀田筑前守にくっついてお庭番として復活できる(かもしんない)根来組お小人衆。若手ホープの秦漣次郎君&吹矢城介君は根来組復活に闘志をもやす根来孤雲に期待され、トラブルあるらしい藩に潜入して色々さぐってきますです。
しかーし、まぬけなオチやせつないオチや明快に裏で糸引く悪党がいた場合でも、処断は同じく転封お取りつぶし。最初は正義にめらめら燃えていた若い二人もだんだん疑心が沸いてきますが・・・というあらすじ。『忍法黒白草紙』に似た設定ですが、こっちの方が数段明るいのはやはり時代背景の違いかもです。


『武蔵忍法旅』☆(文芸春秋)98.1.22

新免(宮本)武蔵VS忍者&くノ一な表題作、「おちゃちゃ忍法腹」(『秀吉妖話帖』にも収録)、関ヶ原の戦いにおける大谷刑部の懊悩と策謀「刑部忍法陣」、天皇家の威信を秀吉から守るために、あえて朝鮮半島泥仕合戦争を促す関白近衛前久と太平洋戦争開戦を放置した近衛文麿首相が重なる「近衛忍法暦」、相変わらずつるんでる由比正雪&森意宗軒は、太平の世になってたるんでいる若者たち「飛屁(ひっぴ)組」「下馬坊(げばぼう)組」「呑堀(のんぽり)組」(汗)を武勇伝でどつく彦左衛門から、栄光の物語として語られる過去の真実を搾り出すことで厭戦気分をあおろうとしますが・・・な「彦左衛門忍法盥」(山本周五郎『彦左衛門外記』参照です☆)、ガリヴァーさんが日本にも来ていた!パロディ味充溢の「ガリヴァー忍法島」収録。
初見のものが多かったのですが、相変わらず山風以外誰も思いつけない着想走りまくり。「ガリヴァー忍法島」とかって、この後赤穂浪士の堀部安兵衛とスウィフトと海賊キッドが熱田神宮の草薙の剣めぐって大騒ぎなんすよ(汗)。なんだそりゃー!!


『天の川を斬る』(後に『銀河忍法帖』)☆☆☆(講談社・山田風太郎全集6巻)98.1.22

相変わらずゴージャス&テクノロジな大久保長安。それを仇と付け狙う謎の美女朱鷺に惚れた暴れん坊六文銭の鉄は長安の娘婿服部半蔵が護衛につけた伊賀者五人、および忍法は所詮名人芸だから無駄じゃんと長安が開発した新兵器で武装した側室五人とすーだらに戦うことに。
忍法VSテクノロジーは『海鳴り忍法帖』のテーマでもありましたが、こっちの新技術の方が弾性の高い鋼鉄をコイル状に巻いた「はがね麻羅」など面白いっす。えろもオッケーな十兵衛さま(愛)かもしんない六文銭の鉄の造形、謎のひっぱりと意外な真相ぶりの見せ方など、よしの的にはもうちょい朱鷺に暴れてほしい気もするけれど、これぞ忍法帖のだいご味という一編です。


『忍法甲州路』☆☆(講談社文庫・大衆文学館)98.1.19

表題作に「忍法肉太鼓」「忍法蛸飛脚」「麺棒試合」「転の忍法帖」「忍者六銅銭」「天明の判官」「羅妖の秀康」収録です。
 表題作はお家騒動に突如現れた催眠系忍法を操る忍者三兄弟を討つべく、悪家老に雇われた浪人三人は、やたらに寝ぼける女郎小銀を使って色々工夫をするのですが・・・というお話。「忍法肉太鼓」は嗣子なしで死にそうな四代将軍家綱のために、大老の命により大奥守護の友達を討ち果たしてまでお手付き中臈を妊娠させまくるも、政変でこんどは自分の子を流す羽目になった忍者の悲劇。「忍法鞘飛脚」は根来組暮らしがいやで蘭医になった竹斎が大老の娘婿のお家騒動に巻き込まれるお話。「麺棒試合」は大老田沼の命で通婚することになった伊賀組甲賀組の花嫁花婿の忍法試合。おつぎの三作はご紹介済みで、「羅妖の秀康」は梅毒で鼻が落ちた結城秀康が人体くっつけ系忍法で男根をつけ鼻としてくっつけたことから起きる奇譚でやんす。 表題作のあざやかなオチ、「麺棒試合」のナイスなタイトルのつけかたなど、忍法帖好きなら逃せない一冊です。


『秘書』☆☆(新潮小説文庫/S43)97.12.24

タイトルからいって、『秘義書争奪』に改題されたモトでしょうか。
かんなりふにゃらけてる14代将軍は子作りの能力もアヤシイらしく(最初の章は「将軍萎ゆ」・・・汗)、気をもむ老中阿部伊勢守。奥医師多紀法印は平安時代のご先祖が隋唐医学を集成して時の帝に献上し、現在では京の典薬頭半井家にあるはずの秘書『医心方』なら療法があるはずだと言って、甲賀のくノ一七人に、法印の甥っ子で蘭方医の弟子&心形刀流免許皆伝の丹波陽馬をつけて泥棒に行かせます。
ところが陽馬君と相弟子にして相愛の仲である雪羽は実は半井家の娘。後に尊王攘夷で暴れまくる青蓮院の宮(なんかこの称号って『柳生十兵衛死す』にもでてきたよな)に七人の伊賀者をつけられ、とりあえず将軍の結婚が定まるまで逃げ通すということになります。
というわけで忍法てんこもりの道中なのですが、なんたってモノが要するに閨房術ですから、伊賀のインテリ忍者が逐一引用しながら実地に試してみたりのかなりヘンなノリです。漢文書き下し調の説明はシンプルすぎて一抹よくわかんないのも味かもです。48手どころではない神秘な中国閨房術に関心もたれたら、推理小説ディー判事シリーズも書いてるファン・フーリックの『古代中国の性生活』(せりか書房)がお勧め。


『野ざらし忍法帖』☆☆(講談社・山田風太郎忍法帖全集)97.12.24

「忍者車兵五郎」、「忍者仁木弾正」、「忍者玉虫内膳」、「忍者傀儡歓兵衛」、表題作、「忍者梟無左衛門」、「忍者帷子万助」、「忍者野晒銀四郎」、「忍者枝垂七十郎」、「甲子夜話の忍者」と忍法短編集です。講談社文庫大衆文学館の『忍者枯葉塔九郎』に割合収録されてますね。
初見の「忍者仁木弾正」はネタの方向は『魔界転生』とは全然違いますが、宗意軒&由井正雪陰謀話。由井正雪邸とかでてきてなにやら懐かしい作。相変わらず四阿の卓が回ってます(笑)
「忍者梟無左衛門」は子宮を思いのままに引きだし、妊娠していれば胎児に色々手を加えて戻すこともできる怪忍法炸裂★忍法帖好きには外せない奇想ぶりでございます。「忍者帷子万助」は水気絞り尽くしてちっちゃくなれるお庭番がやむにやまれず女の腹に入って産まれたフリをするというコント。「忍者野晒銀四郎」はやっと修業終えて帰ってきたら、一族全員死んじまうわ、昔ちょっといいかなって思ってた女が悪家老と陰謀やらかした尻拭いをしたらば裏切られるという野ざらしすぎるとほほな忍者譚。


『自来也忍法帖』☆☆(講談社・風太郎忍法帖8巻)97.12.10

みもさんにレビューいただいた『自来也』です。あーゆーレビューがあると、とりあえず読んでしまいますね
よしの好みの構図で、よりによって将軍家斉の前で跡取りがあたかも忍法びるしゃな如来に当てられたかのような(笑)奇怪な横死しちまい、54人もいる家斉の子の第33子唖にして白痴の石五郎を跡取り婿に押し付けられちまった藤堂藩。むろんそんな婿をもらった気の強い鞠姫はキレる、今じゃ屯田兵もどきの伊賀の忍者蛇丸は暗躍する、謎の忍者「自来也」はなにげにピンチを見澄ましてやってくるの大騒ぎ。伊賀のくノ一はえろ系忍法てんこもりでぐーです。


『忍者六道銭』☆(講談社)97.12.10

短編集でございます。表題作に「忍者死籤」「くノ一地獄変」(講談社ノベルス『くノ一紅騎兵』収)「くノ一紅騎兵」(同左)「天明の判官」「天明の隠密」(講談社ノベルス『剣鬼喇嘛仏(らまぶつ)』収)
「忍者六道銭」はなにやら松本に居着いている忍者筑摩組の主従が百年ぶりに帰ってきた主君の前で忍法デモをしたのが運のつき。うっかり妹君奈々姫に惚れちまった二人は、姫の言うままに、気にくわねえ婚約者候補の豪傑二人のほにゃららを折ってしまいます。しかしそこに三人目が現れ、そいつも片付けようとかかってみると・・・?ちゅーお話。
「忍者死籤」は器官切り張り系忍法をつかったファルス。落ちが効いてます。うう、この系の短編でアンラッキーなオチのやつも読んだはずなのにタイトル思い出せねえ。
「天明の判官」はおなじみ天保の改革の大弾圧者鳥居甲斐VS平賀源内搭載。
淡々と山風であるという平均的な一本。


『飛騨忍法帖』(講談社・山田風太郎忍法全集)97.11.30

時代は幕末のゴタゴタな時期。さすがに惰眠をむさぼってるわけにいかなくなった幕府は有用の士を取り立てようと腕に覚えのある武士を集めて御前試合とかしてるんですが、そこに現れた飛騨の忍者な郷士・乗鞍丞馬君。ばったばったと試合の相手を倒しますが、岡愡れしちった講武所奉行の娘美也の婚約者の宗像主水正に左腕を落とされ、主水正の若党になります。しかーし、勝海舟とつるんでる主水正が、勝と対立する小栗豊後守にくっついて美也に岡愡れしてやがる元・友達連中に暗殺され、仇討ちでございます。
新撰組やら勝海舟やら岡本以蔵やら、幕末な人間がたんとでてきてそこに忍者というのはなんだかヘンな感じで面白いのですが、飛騨から丞馬を追っかけてくる連中の処理を含めて、丞馬の性格のだしかたにちと不満あり。


『忍者月影抄』☆(講談社・山田風太郎忍法全集)97.11.30

以前掲示板の方に言及してらした方もいらっしゃいましたが、両刀な美少年忍者檀宗綱が出てきます。徳川「ケチケチ」吉宗VS尾張徳川の徳川「ばぶりー」宗春。ほんとーはむっちゃスケベのくせに偽善者面しやがってムカツク奴だがやと、宗春は吉宗の昔の「お手付き」女をお土居下組(「忍者 車兵五郎」参照)の忍者と尾張柳生を使って日本橋に晒し者にしていくプランをたてます。そうと聞いちゃあお庭番&江戸柳生はそれを阻止しなきゃなんないけど、阻止できなきゃその女も殺しちまえってなわけで、忍法剣法交えて大乱戦ざます。忍法のバリエーションはなかなか。宗綱君の忍法「夢若衆」は叙情的かつ怖い技でぐー。


『くノ一紅騎兵』(角川文庫 初版79/10/10)by みもさん97.11.12

くノ一ものの短編集。表題作の他「忍法聖千姫」「くノ一地獄変」「捧げつつ試合」 「忍法幻羅吊り」「忍法穴ひとつ」の6編が収録されております。
お頭の命令や一族の掟を守る為には私情は許されず、虫けらのように扱われるくノ一 達。しかし、くノ一にも恋愛感情もプライドもある。
奇抜な忍法を織り交ぜながら、くノ一の性を多様な角度から描いた作品群です。


『自来也忍法帖』(角川文庫 初版81/4/30)by みもさん97.11.12

上様お目見えの祝儀の最中、三十二万石の大名の嫡男が悶死した!
しかもとんでもない様相で。前代未聞の不祥事で御家断絶の危機になぞの忍者「自来也」登場。跡目相続を廻って、伊賀忍者と自来也の忍法争い。白装束の正義の忍者「自来也」の正体とは?忍法も13通りもでてきてサービスてんこもりの長編です。


『忍びの卍』☆☆(講談社・山田風太郎全集第7巻)97.11.12

伊賀/甲賀/根来と三組ある忍法組を一つに絞りたいという土井大炊頭に、各組の代表の忍者の技&忠誠心の検分役を仰せ付かった椎の葉刀馬君。柳生流かなりの使い手である刀馬君もびびるような忍法を見せられますが、一見忠誠心が一番薄そうな甲賀組に土井大炊頭は決めてしまいます。しかし、復活を伊賀と根来の忍者の代表が将軍家光を女色で篭絡しようとして失敗、こんどは弟君駿河大納言の下に奔って将軍暗殺をたくらみます。立ち向かう葉刀馬君&甲賀の百々銭十郎。根来の女の肌すべてを性器とおんなじくらい敏感に変えてどんな男でも思いのままにしまう忍法「ぬれ桜」、伊賀の性交した女に一昼夜乗り移る忍法「任意車」、精液を注ぎ込んだ女体を斬り、その血で離れた相手をも倒してしまう忍法「赤朽ち葉」とえろ系忍法濃いいっす。でも相変わらず途中で実験とかしはじめてなんか変☆


『江戸忍法帖』☆(講談社・山田風太郎全集第7巻)97.11.12

第四代将軍家綱公のご落胤葵悠太郎君。もちろん五代綱吉にくっついてる柳沢出羽守は悠太郎君にでてこられちゃーマジヤバなので、甲賀七忍衆に暗殺を命じますです。ぷー生活に満足している悠太郎君はさておいて、悠太郎君を世に出したい守り役三人は七忍衆にあっという間にやらりてしまい、ついでに長屋のお隣の角兵衛獅子姉弟の弟も巻き添え食ってしまいます。ついにキレた悠太郎君、武芸経験なしながら身の軽さを武器に戦っちゃう角兵衛獅子姉やら忍者が嫌いでしょうがない甲賀組頭の孫娘やら驕慢にして純情な柳沢の養女鮎姫に惚れられながらも甲賀七忍衆に立ち向かいます。水戸のご老公+助さん格さんまでちらっと出てくる明朗(七忍衆暗いけど・・・)新春時代劇とかになりそーな一本。映像化するならやっぱ太る前の田中健だな。


『忍者 枯葉塔九郎』☆☆(講談社文庫/大衆文学館)97.11.12

「忍者枝垂七十郎」、表題作、「忍者本多佐渡守」、「忍者明智十兵衛」、「忍者車兵五郎」「忍者服部半蔵」「忍者撫子甚五郎」「忍者傀儡歓兵衛」と、「忍者〜人名〜」な短編ばっかり集です。「枝垂」はお庭番に恋した大店の娘の女心の機微、表題作は妻を売っちゃう小才子馬鹿対謎過ぎる忍者、「本多佐渡」と「服部半蔵」は共に権力のすごみを描いたもんですが、「本多佐渡」は陰謀はりめぐらし野郎本多佐渡とその後継者たる土井大炊頭のお話。家康あたりの時代が好きな人はまじで要チェック。本多佐渡が忍法使うわけじゃないけれど、非情さにおいてはそのへんの忍者なんざ目じゃないっすね。でも「いい人」大炊頭の方が逆に情で忍者を主体的に動かしてしまえるというところで本多一族より非情なのがこあいところ。「車」は読んでると混迷してしまうような忍法炸裂のラストがグレートな好短編。たしか「風眼抄」かなんかで奥さんと敷居を境に横になって実験して書いたとあるのはこの忍法です。「傀儡」は心理トリックかもしんない一編。


『忍法聖千姫』☆☆(講談社 1970年)97.11.3

忍法物短編集。あくまで無邪気でありながら、ヒットポイント高すぎて大魔女化した千姫をめぐる男たちの逆上ぶりな表題作、忍者鴫留盃堂(しぎる・はいどう・・・笑)が細川ガラシアを分裂させてしまう「忍法ガラシアの棺」、男体の神秘系忍法「忍法穴ひとつ」、「忍者は非情」を徹底しようとしたばかりに大悲劇(しかし本人非情なので悲劇わかってないっつーのがまたつらい)「忍法阿呆宮」と、いつものことですがレベルたかいっす。『くノ一忍法帖』の可憐千姫も好きだけど、この千姫もいいですねー。他に「忍法とりかえばや」「忍法幻羅吊り」「忍法瞳録」収録。


『忍法剣士伝』☆☆(角川文庫)97.9.20 「じゅ」さんのレビューはこちら

いんやー、論文締め切り間近で、はまらないようにツレに隠してもらったんだけど(面白い山風は読了した後通常三回はループしてしまうのです)、電球とりかえようとして見つけてしまった・・・♪院生殺すにゃ刃物はいらぬ〜山風ちらつかすだけでよくってよ〜♪(意味不明)
以前「じゅ」さんにレビューしていただきましたが、忍法的には「果心幻法びるしゃな如来」&びるしゃな如来は女性の精を吸いきったのをぶっかけなきゃなんないんでその仕込み用「幻法ほおずき燈籠」オンリーで(っつーてもこの二つがかなりキテるけど)、むしろ塚原卜伝やら上泉伊勢守、柳生石舟斎他戦国時代な剣士12名のバトルがメインでやんす。びるしゃな如来かけられちゃう旗姫&あんま強くないのに旗姫守って逃げ回る京馬君はなかなか愛らしい。


『伊賀忍法帖』☆☆(角川文庫)97.9.20

大昔読んでいたのですが、近所の古本屋に出てたので再読☆
松永弾正に女絡みで復讐とゆーネタといい、天上的女人VS地獄的女人な女のバトルといい、『海鳴り忍法帖』と題材的には似てますが、根来忍法坊主の中に切られた身体を胴でも首でもつないでしまうブラックジャックがいたばっかりに(笑)、そして弾正に捕まって自殺した伊賀忍者笛吹城太郎の妻・篝火、弾正のえろえろ妾・漁火、弾正の主家である三好家の右京大夫、篝火と右京大夫がそっくりだったばっかりに誰が誰だかわかんなくなって行きます。柳生新左衛門(石舟斎)は『魔界転生』の十兵衛様(愛)とさすがおじいちゃんだけあって相通じる造形☆(だったら『忍法剣士伝』はなんだ、という気もするが・・・)。 こんぐらい読んでくると、先生の作品やら忍法の中に共通のモチーフを見つけるのはわりと簡単にはなってくるのだけど、しかし組み替えて新しいテーマ出してくる手管はますますはまらざるをえないと言えましょう(涙)


『剣鬼喇嘛仏(らまぶつ)』☆☆ 97.9.7

時代は秀吉朝鮮役〜徳川末期と一応順番のかな?
奇想&えろよりもどっちかっつーと山風思想が強く出た忍法物短編を中心に編集した印象です。「忍法破倭兵状」の日本批判、「姦の忍法帖」「忍法小塚ッ原」の意味なしぶりなど。とはいえ「剣鬼喇嘛仏」は相変わらず飛ばしてて、宮本武蔵と対決したくて大坂城入りを志す剣の道をたくな細川家次男は、んなことされっとマジヤバな親父に泣き落としで子供くらい残していけと言われ、以前立ち会ってしてやらりたくノ一(というより剣なねーちゃん)と交合しますがそこでトンデモ忍法出ないはずがなく、というお話☆解説笠井潔
他に切支丹の資料が巧みに使われた「忍法天草灘」、忍法馬吸無炸裂「〆の忍法帖」、「天明の隠密」


『忍法忠臣蔵』☆97.9.7

なんだか木っ端役人化した江戸伊賀組にあきたらず、家出して忍法修業してきた無明綱太郎。とはいえ無為な大奥勤めの日々に腐っていてつい恋に落ちてしまいますが、相手が将軍の目にとまっちまい、「忠」を口実に乗り換えられて逆キレしたあげく出奔しちまいます。「忠」がすっかりやんなった無明君はひょんなことからかかわりあいになった上杉家国家老千坂兵部(直江兼継様系☆)に依頼され、「忠」の名のもとに仇討ち希望中の赤穂浪人どもの切り崩しを上杉家秘蔵のくノ一達とともに工作しますが・・・という感じ。腹黒いんだかお人よしなんだか大石内蔵助の造形は面白いです。


『忍法剣士伝』(角川文庫) by「じゅ」さん☆97.8.31 

山風との出会いは『忍法剣士伝(忍法不死鳥改題)』でござった。
あれは忘れもしない「果心忍法びるしゃな如来!!」。この忍法にかかったおなごの半径十歩以内に近づく者は、おなごの発する強力なフェロモンに下半身直撃の大怒張、精液&カウパー氏線液を水道水の如く放出し、のたうち回って512回転、なめくじ状態で息絶えること必至の運命にござる。もちろん、チラリと目にしただけで「おれにやらせろ」のご乱心状態と相成りまするのことよ。あっ、おなごのほうには何の自覚も発症もないのが、この忍法の特長ね。
さてさて、この忍法にかかった北畠具教の一人娘、☆旗姫☆。術に陥った経緯はさておき、この姫に先のご乱心状態となったのが、ぬわ〜んと十二人の名だたる剣士達でござったのが、彼女を守る我らが木造京馬の運の尽き。しかも姫は「あ、ん、た、好き・・」なとどほのめかすではござらぬか。これはもう京馬殿でなくとも「ヤリたくなります逃避行」というものでござろう。  
右手にお色気過剰姫、自分の下は大怒張、背後に迫る剣豪、その数十二本、もとい、十二人!!。悪逆非道、エログロ怪異、抱腹絶倒、何故かは知らねど心洗われる如きの読後感であったでござるのことね。
 で、実はこの本、「山風忍法びるしゃな本」だったのよ。その後、「じゅ」にかかった「びるしゃな本」は解けていません。今もかかったまんまです。


『姦の忍法帖』(文春文庫)97.8.31

時代は戦国時代〜徳川前期と色々です。えろねた奇想忍法多し。
「〆の忍法帖」:南朝の忠臣の血を引く切腹寸前の藩主のために、藩主が愛妾に出した精液を忍法馬吸無(ばきゅむ。。。としか読めないよなあ)で吸出して体内に蓄え、国元に待つやっぱ南朝の忠臣の血を引く側室に種つけしなきゃなんない忍者道兵衛。しかしこやつには忍法馬吸無しか技はないわ、伊賀者追っかけてくるわ、そもそもお水飲んでおちっこしてしまっては肝心の精液もわやだわの大騒ぎ☆どたばた系山風として一押しの一本ざます。登場人物の名前のお遊びぶりにも要注目。
他に「転の忍法帖」「姦の忍法帖」「笊の忍法帖」「胎の忍法帖」「牢の忍法帖」


『秀吉妖話帖』(集英社文庫)97.8.31

いちおー秀吉が生きてた前後な時代の忍法短編集。秀吉の妾暗殺をもくろんで潜入して参りました朝鮮半島シャーマンの妖術☆修行重ねた妖術よりもじゅくじゅく熟女は強かった、としかいいようのない壮絶天然忍法炸裂な「おちゃちゃ忍法腹」、果心居士&信長な「忍法死のうは一定」、本能寺の変忍者四すくみな怪編(山風の魅力のポイントは結構忍法や剣法のかみ合わせの妙であるけれど、その意味では濃縮山風かも)「叛の忍法帖」、「忍者 石川五右衛門」「虫の忍法帖」。


『忍法黒白草紙』(旧題『天保忍法帖』)(角川文庫) 97.8.31

天保の妖怪/鳥居耀蔵の秘密部隊にスカウトされちった伊賀者二人。鳥居耀蔵がどーゆう人かといえば、ごりごり保守派で粛正しまくりの江戸町奉行なんですが、忍法そのものより当時の世相ネタとか、政治理念批評にポイントの置かれた作品。
鳥居ネタは「東京南町奉行」参照。


『甲賀忍法帖』☆

記念すべき忍法帖第一作。甲賀と伊賀でロミオとジュリエット! 三代将軍を賭けた忍者大バトル! 芋虫な忍者とか鳥もちのようなおよだを吐くスパイダーマンな忍者しょっぱなから風太郎先生の奇想はとどまるところを知らない。ロミオとジュリエットさんたちが、忍法を無効にする/相手の忍法を相手自身に返す瞳術を使うのも面白いです。


『くノ一忍法帖』☆☆☆(いくつ☆をつけても足りないっす)

よしのフェイバリット。大阪城落城後、豊臣秀頼の種を身ごもった5人の真田くノ一+千姫+豊臣方の名将長宗我部盛近の妻・丸橋(無茶強い・・そしてこの人も妊娠中)VS家康+伊賀忍者のバトル。千姫可憐、くノ一・丸橋かっこいいという大傑作。要約すれば「戦う妊婦」でしょうか。「信濃忍法筒からし」は嫁入り前の娘としては是非覚えておきたい技でございます。まじでこれ出来たら人生むっちゃ楽しうなるで。


『柳生忍法帖(上・下)』☆☆

柳生十兵衛様(滝のよーな愛登場の作(たぶん)。福島の方のバカ大名が起こした騒ぎに巻き込まれ、逐電して無惨に処刑された堀一族の生き残りを助けて、十兵衛がヘンな福島の土着忍者に立ち向かう。『魔界転生』より素人のお姉さんたちががんばるので、「戦うおねえさん」好きなら外せない一本。よしのは親不知抜いた痛みをこれで乗り切りました。千姫も登板しております。『柳生外伝・くノ一忍法帖』のタイトルで1998年に映画化されとります。


『魔界転生(上・下)』☆☆☆(初出時は『おぼろ忍法帖』)

これ読んであくまでさわやか柳生十兵衛様(愛)に惚れない女はいないでしょう。敵は旧主の切支丹大名の復讐に燃える怪老人森意宗軒に由井正雪になんだか天下とれねえかと隙をうかがってる南海の竜・徳川頼宣で、陰謀度は忍法帖全作品中たぶん一番高い。えたいのしれないもんのすごい忍法でいきなり魔人として蘇りまくる(特に冒頭の島原の乱が終結した夜のシーンはすごい!)武蔵やら又右衛門やら稀代の名剣士達しかも十人VS十兵衛。切支丹なくノ一もステキ。弱っちいけど根性100万人分のバカ(ほめ言葉)な柳生十人衆もグー。この面白さは忍法帖代表作っす。


『忍法封印いま破る』

よしのが最初に読んだ忍法帖。一応『天の川を斬る』(『銀河忍法帖』)とお話つながってます。
鉱山開発大功労者にして科学な人大久保長安の遺志により、長安死後の大久保家取りつぶしを逃れ、「サイエンスな子供」を産み百年後の日本を守るべく甲賀精鋭の忍者と戦う長安の子供妊娠中のくノ一3人+長安の遺児にして山窩の子である忍者おげ丸。忍法はかなり凝ったものが色々入っていますが、伊賀組に「死人復活系」忍法使いが入っていたばっかりに後半かなりヘンな展開でかなりヘン。


『海鳴り忍法帖』

根来寺の忍法坊主3万人対堺鉄砲テクノロジー。風太郎先生お気にの松永弾正入ってます。忍法がいまいちあんまとんでもなくないのがちと不満。しかしこの作品で一番重要なのは昼顔御前で、彼女は足利将軍の側室なんだけど、なんも悪いことしていないのにえっちな目で見られるのにある日切れてしまい、大迷走してしまうのさ。もはやフェミニズム文学かもしんない。


『笑い陰陽師』☆☆☆

男体(なんたい)の神秘炸裂!! 忍法帖読み慣れた人でもこんな忍法あっていいのかとたまげざるをえない忍法がてんこもり。睾丸を他の人からもらったり、立たなくしたり無理やり立たせたりの大混乱。よしのは思わず実験してみたりしてみました(笑)。男の子必見。風太郎先生ご自身も一押しの傑作。


『忍法八犬伝』☆

大阪の陣前夜の相模。相変わらず陰謀はりめぐらし屋さんな本多佐渡守&服部伊賀組にひっかかり、竹千代君(徳川家光っすね)に献上予定の家宝・伏姫から伝わった忠孝悌仁義礼智信の八犬士の珠をすり替えられた里見家。八犬士の子孫であるじいさんたちは責任感じて皺腹かっさばいちゃうし、じいさんたちが後を託した風賀卍谷で修行しているはずの息子たちは全員ばっくれておんな歌舞伎の振り付けやってたり忍法と全然関係ない方向に行方しれず中。いったいどおなる里見家! むちゃくちゃすごいとこをしているわけではないけれど、風太郎節の完成度高い逸品。解説京極夏彦は風太郎忍法の極意をよく整理してあります。もうちっと船虫さんたちに活躍してほしかった気もするが、バカのさわやかさ横溢しているのでまあいいです。

 


『信玄忍法帖』

上洛途中で死んでしまった武田信玄。「三年は喪を秘せ」との遺言に従い、影武者を守る真田忍者VS服部半蔵伊賀忍者軍団。死んだはずの山本勘介はうろついてっし、信玄の嗣子勝頼は自分じゃあてにならんのかとむかついてっし、なかなか内輪もめも多い武田は果たして信玄の死を隠し通せるのか! 忍法春水雛キテるっす。


『風来忍法帖』☆

秀吉の天下統一間近で大ピンチな小田原北条氏。混戦と策謀の中を7人の香具師(やし)は拾い集めた鉄砲玉を落城寸前戦闘中の武士に売りつけたり、落城したらしたで落ち延びてきたおねいさんたちを売り飛ばしたりでまったり生きていたのですが、ひょんなことから忍城のおんなあるじ・麻也姫とかかわり合ったばっかりに、小田原風魔組にはいぢめられるわ、気がついたら忍城篭城戦で化け物忍者と戦う羽目になってるわという展開。麻也姫は他の忍法帖のデウス・エクス・マキーナ風の姫君たちのなかでもひときわ無邪気に造型されており、可憐です。


『外道忍法帖』(講談社ノベルス・山田風太郎傑作忍法帖)

ローマ法王から天正少年使節団がもらってきた財宝の在処を求めて、15人の童貞女の体内に隠された鈴を一族復活を悲願とする天草一族VS由比正雪あやつる忍者な人たちが追い回すんだけど、まず3組各15人というのが多すぎて、とにかくそやつら消化するので手一杯(涙)。いつもはせいぜい10人対10人で20人くらいだもんなあ・・・45人はきついざます。鈴に一文字づつ隠し場所の指定がはいっているので15人になっちゃったんだけど、もっと単純にして7人くらいにしてたら良かったと思います。童貞女の親玉たる天姫もいい設定なのにいちまつ生かし切れてない感じ。もったいなさすぎ。高い評価をつける方も多いのですが、疾走しまくって読者蒼惶な物語のバラけ方には確かにすごみがあるものの、よしの的には濃すぎるという気が。上下巻でしつこく展開されてたら大傑作だったかも。

 

TOPへ