国家行政組織法

(総則)
第1条
 この法律は、内閣の統轄の下における行政機関の組織の基準を定め、もつて
国の行政事務の能率的な遂行のために必要な国家行政組織を整えることを目的
とする。

第2条
 国家行政組織は、内閣の統轄の下に、明確な範囲の所掌事務と権限を有する
行政機関の全体によつて、系統的に構成されなければならない。
2 国の行政機関は、内閣の統轄のもとに、行政機関相互の連絡を図り、すべ
 て、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。

(行政機関の設置、廃止、所掌事務等)
第3条
 国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする。
2 行政組織のため置かれる国の行政機関は、府、省、委員会及び庁とし、そ
 の設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。
3 府及び省は、内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関として置かれる
 ものとし、委員会及び庁は、府又は省に、その外局として置かれるものとす
 る。ただし、委員会及び庁は、特に必要がある場合においては、法律で国務
 大臣をもつてその長に充てることと定められている委員会又は庁に置くこと
 ができる。
4 第二項の行政機関として置かれるものは、別表第一にこれを掲げる。

第4条
 前条の行政機関の所掌事務の範囲及び権限は、別に法律でこれを定める。

(行政機関の長)
第5条
 総理府及び各省の長は、それぞれ内閣総理大臣及び各省大臣(以下各大臣と
総称する。)とし、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣とし
て、それぞれ行政事務を分担管理する。
2 各省大臣は、国務大臣の中から、内閣総理大臣がこれを命ずる。但し、内
 閣総理大臣が、自らこれに当ることを妨げない。

第6条
 委員会の長は、委員長とし、庁の長は、長官とする。

(内部部局)
第7条
 府及び省には、その所掌事務を遂行するため、官房及び局を置く。
2 前項の官房又は局には、特に必要がある場合においては、部を置くことが
 できる。
3 庁には、その所掌事務を遂行するため、官房及び部を置くことができる。
4 前項の規定にかかわらず、法律で国務大臣をもつてその長に充てることと
 定められている庁には、部に代えて局を置くことができる。第二項の規定は、
 部に代えて局を置く庁の官房及び局について、これを準用する。
5 官房、局及び部の設置及び所掌事務の範囲は、政令でこれを定める。
6 庁、官房、局及び部には、課及びこれに準ずる室を置くことができるもの
 とし、これらの設置及び所掌事務の範囲は、政令でこれを定める。
7 委員会には、法律の定めるところにより、事務局を置くことができる。第
 三項、第五項及び前項の規定は、事務局の内部組織について、これを準用す
 る。
8 委員会には、特に必要がある場合においては、法律の定めるところにより、
 事務総局を置くことができる。

(審議会等)
第8条
 第三条の各行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令
の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験
を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための
合議制の機関を置くことができる。

(施設等機関)
第8条の2
 第三条の各行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令
の定めるところにより、試験研究機関、検査検定機関、文教研修施設(これら
に類する機関及び施設を含む。)、医療更生施設、矯正収容施設及び作業施設
を置くことができる。

(特別の機関)
第8条の3
 第三条の各行政機関には、特に必要がある場合においては、前二条に規定す
るもののほか、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律の定めるところにより、
特別の機関を置くことができる。

(地方支分部局)
第9条
 第三条の各行政機関には、その所掌事務を分掌させる必要がある場合におい
ては、法律の定めるところにより、地方支分部局を置くことができる。

(行政機関の長の権限)
第10条
 各大臣、各委員会の委員長及び各庁の長官は、その機関の事務を統括し、職
員の服務について、これを統督する。

第11条
 各大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令の制定、改正又は廃
止を必要と認めるときは、案をそなえて、内閣総理大臣に提出して、閣議を求
めなければならない。

第12条
 各大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又
は法律若しくは政令の特別の委任に基いて、それぞれその機関の命令(総理府
令又は省令)を発することができる。
2 各外局の長は、その機関の所掌事務について、それぞれ主任の各大臣に対
 し、案をそなえて、前項の命令を発することを求めることができる。
3 外局の長以外の各委員会の委員長及び各庁の長官は、その機関の所掌事務
 について、別に法律の定めるところにより、それぞれ主任の各大臣に対し、
 案をそなえて、第一項の命令を発することを求めることができる。
4 第一項の命令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、
 若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。

第13条
 各委員会及び各庁の長官は、別に法律の定めるところにより、政令及び前条
第一項に規定する命令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができ
る。
2 前条第四項の規定は、前項の命令に、これを準用する。

第14条
 各大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を
必要とする場合においては、告示を発することができる。
2 各大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令
 又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発するこ
 とができる。

第15条
 各大臣は、主任の事務について、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)
第百五十条の規定により、地方公共団体の長のなす国の行政事務に関し、その
長を指揮監督することができる。
2 国の機関としての都道府県知事の権限に属する国の事務の管理若しくは執
 行が法令の規定若しくは主任の各大臣の処分に違反するものがある場合又は
その国の事務の管理若しくは執行を怠るものがある場合において、地方自治法
第百五十一条の二に規定する措置以外の方法によつてその是正を図ることが困
難であり、かつ、それを放置することにより著しく公益を害することが明らか
であるときは、主任の各大臣は、同条の規定により、当該違反を是正し、若し
くは当該怠る事務の管理若しくは執行を改めるべきことを勧告し、命令し、訴
えをもつて裁判所の裁判を請求し、又は当該都道府県知事に代わつて当該命令
に係る事項を行うことができる。
3 各大臣は、主任の事務について、地方自治法第二百四十六条の二の規定に
 より、普通地方公共団体又はその長に対し、その事務の処理又は管理及び執
 行について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずるよう内閣総理大臣
 に請求を行うことができる。
4 内閣総理大臣は、前項の規定により各大臣が行つた請求に基いて必要な措
 置を講ずることができる。

第16条
 府令、省令並びに前条の規定による指揮監督の権限に基いて、各大臣が地方
公共団体の長に対してなす命令、示達その他の行為について、地方自治の本旨
に反するものがあると認めるときは、当該地方公共団体の長は、その旨を内閣
総理大臣に申し出ることができる。この場合において、その申出を理由がある
と認めるときは、内閣総理大臣は、三十日以内に調査を行い、関係各大臣に対
し、必要な指示をなし、その他適当な措置を講じ、その申出を理由がないと認
めるときは、その理由を示して当該地方公共団体の長に通告しなければならな
い。
2 前項の規定による申出は、関係各大臣の命令、示達その他の行為の効力に
 影響を及ぼすものではない。

(政務次官)
第17条
 各省及び法律で国務大臣をもつてその長に充てることと定められている各庁
には、政務次官一人を置く。
2 前項の規定にかかわらず、別表第二に掲げる省に限り、政務次官二人を置
 くことができる。
3 政務次官は、その機関の長たる大臣を助け、政策及び企画に参画し、政務
 を処理し、並びにあらかじめその機関の長たる大臣の命を受けて大臣不在の
 場合その職務を代行する。
4 政務次官が二人置かれた省においては、各政務次官の行う前項の職務の範
 囲及び職務代行の順序については、その省の長たる大臣の定めるところによ
 る。
5 政務次官の任免は、その機関の長たる大臣の申出により、内閣においてこ
 れを行う。
6 政務次官は、内閣総辞職の場合においては、内閣総理大臣その他の国務大
 臣がすべてその地位を失つたときに、これと同時にその地位を失う。

(事務次官及び庁の次長等)
第17条の2
 各省及び法律で国務大臣をもつてその長に充てることと定められている各庁
には、事務次官一人を置く。
2 事務次官は、その機関の長たる大臣を助け、省務又は庁務を整理し、各部
 局及び機関の事務を監督する。
3 法律で国務大臣をもつてその長に充てることと定められている庁以外の庁
 には、特に必要がある場合においては、長官を助け、庁務を整理する職とし
 て次長を置くことができるものとし、その設置は、政令でこれを定める。
4 総理府、各省及び各庁には、特に必要がある場合においては、その所掌事
 務の一部を総括整理する職を置くことができるものとし、その設置及び職務
 は、法律(法律で国務大臣をもつてその長に充てることと定められている庁
 以外の庁にあつては、政令)でこれを定める。

(秘書官)
第18条
 各省に秘書官一人を置く。
2 秘書官は、それぞれ各省大臣の命を受け、機密に関する事務を掌り、又は
 臨時命を受け各部局の事務を助ける。

(内部部局の職)
第19条
 委員会の事務局並びに局、部、課及び課に準ずる室に、それぞれ事務局長並
びに局長、部長、課長及び室長を置く。
2 官房に長を置くとき、又は局、部若しくは委員会の事務局に次長を置くと
 きは、その設置及び職務は、政令でこれを定める。
3 官房、局、部又は委員会の事務局に、その所掌事務の一部を総括整理する
 職を置くとき、又は課(課に準ずる室を含む。)の所掌に属しない事務の能
 率的な遂行のためこれを所掌する職で課長に準ずるものを置くときは、これ
 らの設置、職務及び定数は、政令でこれを定める。官房、局又は部を置かな
 い庁にこれらの職に相当する職を置くときも、同様とする。

(現業の行政機関に関する特例)
第20条
 現業の行政機関については、特に法律の定めるところにより、第七条及び前
条の規定にかかわらず、別段の定めをすることができる。

(組織上の職名)
第21条
 この法律の規定に基く職には、職階制による職級の名称の外、それぞれ当該
組織上の名称を附するものとする。

(国会への報告等)
第22条
 政府は、第七条第五項(同条第七項において準用する場合を含む。)、第八
条、第八条の二、第十七条の二第三項若しくは第四項又は第十九条第二項の規
定により政令で設置される組織その他これらに準ずる主要な組織につき、その
新設、改正及び廃止をしたときは、その状況を次の国会に報告しなければなら
ない。
2 政府は、少なくとも毎年一回国の行政機関の組織の一覧表を官報で公示す
 るものとする。

別表第一
┌───────┬───────────┬──────────┐
│ 府又は省  │ 委員会       │ 庁        │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 総理府   │ 公正取引委員会   │ 宮内庁      │
│       │ 国家公安委員会   │ 総務庁      │
│       │ 公害等調整委員会  │ 北海道開発庁   │
│       │           │ 防衛庁      │
│       │           │ 経済企画庁    │
│       │           │ 科学技術庁    │
│       │           │ 環境庁      │
│       │           │ 沖縄開発庁    │
│       │           │ 国土庁      │
│       │           │ 防衛施設庁    │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 法務省   │ 司法試験管理委員会 │ 公安調査庁    │
│       │ 公安審査委員会   │          │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 外務省   │           │          │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 大蔵省   │           │ 国税庁      │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 文部省   │           │ 文化庁      │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 厚生省   │           │ 社会保険庁    │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 農林水産省 │           │ 食糧庁      │
│       │           │ 林野庁      │
│       │           │ 水産庁      │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 通商産業省 │           │ 資源エネルギー庁 │
│       │           │ 特許庁      │
│       │           │ 中小企業庁    │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 運輸省   │ 船員労働委員会   │ 海上保安庁    │
│       │           │ 海難審判庁    │
│       │           │ 気象庁      │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 郵政省   │           │          │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 労働省   │ 中央労働委員会   │          │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 建設省   │           │          │
├───────┼───────────┼──────────┤
│ 自治省   │           │ 消防庁      │
└───────┴───────────┴──────────┘

別表第二
┌───────┐
│ 大蔵省   │
│ 農林水産省 │
│ 通商産業省 │
└───────

ご意見をメールでお送り下さい。 E-mail:atsushi_hisano@hotmail.com        

ホームページへ


/BODY>