行政手続法



第1章 総則

第1条(目的等)
 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続に関し、共通する事項を
定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決
定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第三
十八条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資する
ことを目的とする。
2 処分、行政指導及び届出に関する手続に関しこの法律に規定する事項につ
 いて、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。

第2条(定義)
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるとこ
ろによる。
 一 法令 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例及び地方公共団
  体の執行機関の規則(規程を含む。以下同じ。)をいう。
 二 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
 三 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何
  らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為で
  あって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされている
  ものをいう。
 四 不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直
  接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、
  次のいずれかに該当するものを除く。
  イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明
   らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
  ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当
   該申請をした者を名あて人としてされる処分
  ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
  ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となっ
   た事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの
 五 行政機関 次に掲げる機関をいう。
  イ 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定
   する国の行政機関として置かれる機関、法律の規定に基づき内閣の所轄
   の下に置かれる機関若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の
   職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員
  ロ 地方公共団体の機関(議会を除く。)
 六 行政指導 行政機
関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行
  政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧
  告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
 七 届出 行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するもの
  を除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているも
  の(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知を
  すべきこととされているものを含む。)をいう。

第3条(適用除外)
 次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章までの規定は、適
用しない。
 一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
 二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
 三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意
  若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分
 四 検査官会議で決すべきものとされている処分
 五 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員
  がする処分及び行政指導
 六 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場
  合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、収税官吏、税
  関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の
  職務を行う者を含む。)がする処分及び行政指導並びに証券取引又は金融
  先物取引の犯則事件に関する法令に基づいて証券取引等監視委員会、その
  職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又
  は財務支局長がする処分及び行政指導
 七 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修
  の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれら
  の保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分及び行政指導
 八 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置場(警視庁、道府県警察本部(方面
  本部を含む。)又は警察署に置かれる人を留置するための施設をいう。)、
  海上保安庁の留置場(管区海上保安本部、海上保安監部その他の管区海上
  保安本部の事務所又は海上保安庁の船舶に置かれる人を留置するための施
  設をいう。)、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的
  を達成するためにされる処分及
び行政指導
 九 公務員(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一項に
  規定する国家公務員及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)
  第二条に規定する地方公務員をいう。以下同じ。)又は公務員であった者
  に対してその職務又は身分に関してされる処分及び行政指導
 十 外国人の出入国、難民の認定又は帰化に関する処分及び行政指導
 十一 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
 十二 相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として法令の規定に
   基づいてされる裁定その他の処分(その双方を名あて人とするものに限
   る。)及び行政指導
 十三 公衆衛生、環境保全、防疫、保安その他の公益にかかわる事象が発生
   し又は発生する可能性のある現場において警察官若しくは海上保安官又
   はこれらの公益を確保するために行使すべき権限を法律上直接に与えら
   れたその他の職員によってされる処分及び行政指導
 十四 報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報
   の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導
 十五 審査請求、異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決
   定その他の処分
 十六 前号に規定する処分の手続又は第三章に規定する聴聞若しくは弁明の
   機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において法令に基づい
   てされる処分及び行政指導
2 前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分(その根拠
 となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導並び
 に地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が
 条例又は規則に置かれているものに限る。)については、次章から第五章ま
 での規定は、適用しない。

第4条(国の機関等に対する処分等の適用除外)
 国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又
は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及
び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体が
その固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、
この法律の規定は、適用しない。
2 次の各号のいずれかに該当する法人に対する処分であって、当該法人の監
 督に関する法律の特別の規定に基づ
いてされるもの(当該法人の解散を命じ、
 若しくは設立に関する認可を取り消す処分又は当該法人の役員若しくは当該
 法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、次章及
 び第三章の規定は、適用しない。
 一 法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為
  をもって設立された法人
 二 特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要す
  る法人のうち、その行う業務が国又は地方公共団体の行政運営と密接な関
  連を有するものとして政令で定める法人
3 行政庁が法律の規定に基づく試験、検査、検定、登録その他の行政上の事
 務について当該法律に基づきその全部又は一部を行わせる者を指定した場合
 において、その指定を受けた者(その者が法人である場合にあっては、その
 役員)又は職員その他の者が当該事務に従事することに関し公務に従事する
 職員とみなされるときは、その指定を受けた者に対し当該法律に基づいて当
 該事務に関し監督上される処分(当該指定を取り消す処分、その指定を受け
 た者が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる処分又はその指定を
 受けた者の当該事務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、
 次章及び第三章の規定は、適用しない。

第2章 申請に対する処分

第5条(審査基準)
 行政庁は、申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定め
に従って判断するために必要とされる基準(以下「審査基準」という。)を定
めるものとする。
2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、当該許認可等の性質に照らし
 てできる限り具体的なものとしなければならない。
3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により当該申請の提
 出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審
 査基準を公にしておかなければならない。

第6条(標準処理期間)
 行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするま
でに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申
請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている
機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべ
き標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これら
の当該申請の提出先と
されている機関の事務所における備付けその他の適当な
方法により公にしておかなければならない。

第7条(申請に対する審査、応答)
 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開
始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必
要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたもの
であることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請に
ついては、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の
期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等
を拒否しなければならない。

第8条(理由の提示)
 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申
請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令
に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客
観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合
しないことが申請書の記載又は添付書類から明らかであるときは、申請者の求
めがあったときにこれを示せば足りる。
2 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により
 示さなければならない。

第9条(情報の提供)
 行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申
請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。
2 行政庁は、申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ、申請書の記載
 及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければ
 ならない。

第10条(公聴会の開催等)
 行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべき
ことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必
要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見
を聴く機会を設けるよう努めなければならない。

第11条(複数の行政庁が関与する処分)
 行政庁は、申請の処理をするに当たり、他の行政庁において同一の申請者か
らされた関連する申請が審査中であることをもって自らすべき許認可等をする
かどうかについての審査又は判断を殊更に遅延させるようなことをしてはなら
ない。
2 一の申請又は同一の申請者からされた相互に関連する複数の申請に
対する
 処分について複数の行政庁が関与する場合においては、当該複数の行政庁は、
 必要に応じ、相互に連絡をとり、当該申請者からの説明の聴取を共同して行
 う等により審査の促進に努めるものとする。

第3章 不利益処分

第1節 通則

第12条(処分の基準)
 行政庁は、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかに
ついてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準(次項におい
て「処分基準」という。)を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなけれ
ばならない。
2 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、当該不利益処分の性質に照ら
 してできる限り具体的なものとしなければならない。

第13条(不利益処分をしようとする場合の手続)
 行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、こ
の章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、
当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
 一 次のいずれかに該当するとき 聴聞
  イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
  ロ イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪す
   る不利益処分をしようとするとき。
  ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処
   分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて
   人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
  ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認める
   とき。
 二 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与
2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の規定は、適用しない。
 一 公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、前項に規定する意見
  陳述のための手続を執ることができないとき。
 二 法令上必要とされる資格がなかったこと又は失われるに至ったことが判
  明した場合に必ずすることとされている不利益処分であって、その資格の
  不存在又は喪失の事実が裁判所の判決書又は決定書、一定の職に就いたこ
  とを証する当該任命権者の書類その他の客観的な資料により直接証明され
  たものをしようとするとき。
 三 施設若しくは設備の設置、維持若しくは管理又は物の製造、販売その他
  の取扱いについ
て遵守すべき事項が法令において技術的な基準をもって明
  確にされている場合において、専ら当該基準が充足されていないことを理
  由として当該基準に従うべきことを命ずる不利益処分であってその不充足
  の事実が計測、実験その他客観的な認定方法によって確認されたものをし
  ようとするとき。
 四 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、又は金銭
  の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようと
  するとき。
 五 当該不利益処分の性質上、それによって課される義務の内容が著しく軽
  微なものであるため名あて人となるべき者の意見をあらかじめ聴くことを
  要しないものとして政令で定める処分をしようとするとき。

第14条(不利益処分の理由の提示)
 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該
不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処
分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明し
 なくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があると
 きを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなけれ
 ばならない。

第2節 聴聞

第15条(聴聞の通知の方式)
 行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間
をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面
により通知しなければならない。
 一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
 二 不利益処分の原因となる事実
 三 聴聞の期日及び場所
 四 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
2 前項の書面においては、次に掲げる事項を教示しなければならない。
 一 聴聞の期日に出頭して意見を述べ、及び証拠書類又は証拠物(以下「証
  拠書類等」という。)を提出し、又は聴聞の期日への出頭に代えて陳述書
  及び証拠書類等を提出することができること。
 二 聴聞が終結する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する
  資料の閲覧を求めることができること。
3 行政庁は、不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合に
 おいては
、第一項の規定による通知を、その者の氏名、同項第三号及び第四
 号に掲げる事項並びに当該行政庁が同項各号に掲げる事項を記載した書面を
 いつでもその者に交付する旨を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示すること
 によって行うことができる。この場合においては、掲示を始めた日から二週
 間を経過したときに、当該通知がその者に到達したものとみなす。

第16条(代理人)
 前条第一項の通知を受けた者(同条第三項後段の規定により当該通知が到達
したものとみなされる者を含む。以下「当事者」という。)は、代理人を選任
することができる。
2 代理人は、各自、当事者のために、聴聞に関する一切の行為をすることが
 できる。
3 代理人の資格は、書面で証明しなければならない。
4 代理人がその資格を失ったときは、当該代理人を選任した当事者は、書面
 でその旨を行政庁に届け出なければならない。

第17条(参加人)
 第十九条の規定により聴聞を主宰する者(以下「主宰者」という。)は、必
要があると認めるときは、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠とな
る法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者
(同条第二項第六号において「関係人」という。)に対し、当該聴聞に関する
手続に参加することを求め、又は当該聴聞に関する手続に参加することを許可
することができる。
2 前項の規定により当該聴聞に関する手続に参加する者(以下「参加人」と
 いう。)は、代理人を選任することができる。
3 前条第二項から第四項までの規定は、前項の代理人について準用する。こ
 の場合において、同条第二項及び第四項中「当事者」とあるのは、「参加人」
 と読み替えるものとする。

第18条(文書等の閲覧)
 当事者及び当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる
参加人(以下この条及び第二十四条第三項において「当事者等」という。)は、
聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、当該事
案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事
実を証する資料の閲覧を求めることができる。この場合において、行政庁は、
第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなけれ
ば、その閲覧を拒むことができない。
2 前項の規定は、当事者等が聴聞の期日における審理の進行に応じて必要と
 な
った資料の閲覧を更に求めることを妨げない。
3 行政庁は、前二項の閲覧について日時及び場所を指定することができる。

第19条(聴聞の主宰)
 聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、聴聞を主宰することができない。
 一 当該聴聞の当事者又は参加人
 二 前号に規定する者の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族
 三 第一号に規定する者の代理人又は次条第三項に規定する補佐人
 四 前三号に規定する者であったことのある者
 五 第一号に規定する者の後見人、後見監督人又は保佐人
 六 参加人以外の関係人

第20条(聴聞の期日における審理の方式)
 主宰者は、最初の聴聞の期日の冒頭において、行政庁の職員に、予定される
不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項並びにその原因となる事実を聴聞
の期日に出頭した者に対し説明させなければならない。
2 当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類
 等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発するこ
 とができる。
3 前項の場合において、当事者又は参加人は、主宰者の許可を得て、補佐人
 とともに出頭することができる。
4 主宰者は、聴聞の期日において必要があると認めるときは、当事者若しく
 は参加人に対し質問を発し、意見の陳述若しくは証拠書類等の提出を促し、
 又は行政庁の職員に対し説明を求めることができる。
5 主宰者は、当事者又は参加人の一部が出頭しないときであっても、聴聞の
 期日における審理を行うことができる。
6 聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを
 除き、公開しない。

第21条(陳述書等の提出)
 当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の
期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
2 主宰者は、聴聞の期日に出頭した者に対し、その求めに応じて、前項の陳
 述書及び証拠書類等を示すことができる。

第22条(続行期日の指定)
 主宰者は、聴聞の期日における審理の結果、なお聴聞を続行する必要がある
と認めるときは、さらに新たな期日を定めることができる。
2 前項の場合においては、当事者及び参加人に対し、あらかじめ、次回の聴
 聞の期日及び場所を書面により通知しなければならない。ただし、聴聞の期
 
日に出頭した当事者及び参加人に対しては、当該聴聞の期日においてこれを
 告知すれば足りる。
3 第十五条第三項の規定は、前項本文の場合において、当事者又は参加人の
 所在が判明しないときにおける通知の方法について準用する。この場合にお
 いて、同条第三項中「不利益処分の名あて人となるべき者」とあるのは「当
 事者又は参加人」と、「掲示を始めた日から二週間を経過したとき」とある
 のは「掲示を始めた日から二週間を経過したとき(同一の当事者又は参加人
 に対する二回目以降の通知にあっては、掲示を始めた日の翌日)」と読み替
 えるものとする。

第23条(当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結)
 主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せ
ず、かつ、第二十一条第一項に規定する陳述書若しくは証拠書類等を提出しな
い場合、又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には、
これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与える
ことなく、聴聞を終結することができる。
2 主宰者は、前項に規定する場合のほか、当事者の全部又は一部が聴聞の期
 日に出頭せず、かつ、第二十一条第一項に規定する陳述書又は証拠書類等を
 提出しない場合において、これらの者の聴聞の期日への出頭が相当期間引き
 続き見込めないときは、これらの者に対し、期限を定めて陳述書及び証拠書
 類等の提出を求め、当該期限が到来したときに聴聞を終結することとするこ
 とができる。

第24条(聴聞調書及び報告書)
 主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、当該調書において、
不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らか
にしておかなければならない。
2 前項の調書は、聴聞の期日における審理が行われた場合には各期日ごとに、
 当該審理が行われなかった場合には聴聞の終結後速やかに作成しなければな
 らない。
3 主宰者は、聴聞の終結後速やかに、不利益処分の原因となる事実に対する
 当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作
 成し、第一項の調書とともに行政庁に提出しなければならない。
4 当事者又は参加人は、第一項の調書及び前項の報告書の閲覧を求めること
 ができる。

第25条(聴聞の再開)
 行政庁は、聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認
めるときは、
主宰者に対し、前条第三項の規定により提出された報告書を返戻して聴聞の再
開を命ずることができる。第二十二条第二項本文及び第三項の規定は、この場
合について準用する。

第26条(聴聞を経てされる不利益処分の決定)
 行政庁は、不利益処分の決定をするときは、第二十四条第一項の調書の内容
及び同条第三項の報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをし
なければならない。

第27条(不服申立ての制限)
 行政庁又は主宰者がこの節の規定に基づいてした処分については、行政不服
審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができな
い。
2 聴聞を経てされた不利益処分については、当事者及び参加人は、行政不服
 審査法による異議申立てをすることができない。ただし、第十五条第三項後
 段の規定により当該通知が到達したものとみなされる結果当事者の地位を取
 得した者であって同項に規定する同条第一項第三号(第二十二条第三項にお
 いて準用する場合を含む。)に掲げる聴聞の期日のいずれにも出頭しなかっ
 た者については、この限りでない。

第28条(役員等の解任等を命ずる不利益処分をしようとする場合の聴聞等の特
    例)
 第十三条第一項第一号ハに該当する不利益処分に係る聴聞において第十五条
第一項の通知があった場合におけるこの節の規定の適用については、名あて人
である法人の役員、名あて人の業務に従事する者又は名あて人の会員である者
(当該処分において解任し又は除名すべきこととされている者に限る。)は、
同項の通知を受けた者とみなす。
2 前項の不利益処分のうち名あて人である法人の役員又は名あて人の業務に
 従事する者(以下この項において「役員等」という。)の解任を命ずるもの
 に係る聴聞が行われた場合においては、当該処分にその名あて人が従わない
 ことを理由として法令の規定によりされる当該役員等を解任する不利益処分
 については、第十三条第一項の規定にかかわらず、行政庁は、当該役員等に
 ついて聴聞を行うことを要しない。

第3節 弁明の機会の付与

第29条(弁明の機会の付与の方式)
 弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面
(以下「弁明書」という。)を提出してするものとする。
2 弁明をするときは、証拠書類等を提出することができる。

第30条(弁明の機会
の付与の通知の方式)
 行政庁は、弁明書の提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、
その日時)までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に
対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
 一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
 二 不利益処分の原因となる事実
 三 弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合
には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)

第31条(聴聞に関する手続の準用)
 第十五条第三項及び第十六条の規定は、弁明の機会の付与について準用する。
この場合において、第十五条第三項中「第一項」とあるのは「第三十条」と、
「同項第三号及び第四号」とあるのは「同条第三号」と、第十六条第一項中
「前条第一項」とあるのは「第三十条」と、「同条第三項後段」とあるのは
「第三十一条において準用する第十五条第三項後段」と読み替えるものとする。

第4章 行政指導

第32条(行政指導の一般原則)
 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任
務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくま
でも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなけ
ればならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由
 として、不利益な取扱いをしてはならない。

第33条(申請に関連する行政指導)
 申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わ
る者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず
当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるような
ことをしてはならない。

第34条(許認可等の権限に関連する行政指導)
 許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関
が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合にお
いてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る
旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせる
ようなことをしてはならない。

第35条(行政指導の方式)
 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容
並びに責任者を明確に示さなければならない。
2 行政指導が口頭でされ
た場合において、その相手方から前項に規定する事
 項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、
 行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
3 前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
 一 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
 二 既に文書(前項の書面を含む。)によりその相手方に通知されている事
  項と同一の内容を求めるもの

第36条(複数の者を対象とする行政指導)
 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指
導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、これらの行
政指導に共通してその内容となるべき事項を定め、かつ、行政上特別の支障が
ない限り、これを公表しなければならない。

第5章 届出

第37条(届出)
 届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付され
ていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合
は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達
したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。

第6章 補則

第38条(地方公共団体の措置)
 地方公共団体は、第三条第二項において第二章から前章までの規定を適用し
ないこととされた処分、行政指導及び届出の手続について、この法律の規定の
趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要
な措置を講ずるよう努めなければならない。