事務次官ポストを廃止せよ
事務次官ポストの廃止が必要との結論に至った過程を説明します。民主主義とは、「国民の意志
によって、国を統治すること」です。この民主主義を分析してみます。
(1)「国民の意志」はどのようにして見いだされるのか?
それは、「ある事項について、国民の過半数が賛同すれば、その事項についての国民の意志は賛
成であり、国民の過半数が反対すれば、その事項についての国民の意志は反対である。」との多
数決原理によって、国民の意志を見いだすのです。そして、国民の意志に従って、国の政策を実
行することが、民主主義です。しかし、多岐にわたる多くの事項を、いちいち国民の過半数が賛
成しているかどうかによって決定することは、技術的に不可能であったので、国民の代理人であ
る代議士(国会議員)による多数決原理実行によって、国民による多数決原理の実行の代替をし
ているものが、現在の代議制民主主義(議会制民主主義)です。
従って、通信技術や個人認証技術の発達によって、すべての行政上の事項について、国民による
直接の多数決原理の実行が可能であるならば、代議制民主主義を継続する理由は、無くなります。
(2)「国を統治する」とは、どういう事か?
司法と行政を実行して、国民に一定の秩序ある行動を強制したり、国民の生命・身体・財産を守
ったり、国土を保全し、改善する事であると、考えます。
(3)従って、「民主主義」とは、「多数決原理によって見いだされた国民の意志によって、司法・行政を制御する事」ということになります。
議会制民主主義での行政の制御の構造をブロックダイアグラムで、書くと次のようなフィードバ
ックシステムになります。
┌─────────────┐
┌───────┤ 国民 │
│ └─┬─┬───┬─────┘
│ 選出 │ │選出 │選出
│ ┌─────┘ │ └─────────┐
│ ┌─┴─┐選出 ┌─┴─┐ ┌─┴─┐
│ │代議士├─┐ │代議士├─┐ ┌─┤代議士│
│ └─┬─┘ │ └─┬─┘ │選出 選出 │ └─┬─┘
│ 議決 │┌──┼───┘議決 │ │ │議決
│ ┌─┴┴─┬┼───────┼─────┼───┘
│ │ ││ ┌────┴─────┴──────┐
│ │ 国会 │└──┤ 内閣(総理大臣、各省庁の大臣)│
│ └┬─┬─┘ │ │
│ │ │ └──────┬──────────┘
│ │ │ │指揮・命令、人事権
│ │ │┌───┐拘束┌────┴────────┐
│ │ └┤法律 ├──┤ │
│ │ └───┘ │ 各省庁の官僚組織 │
│ │ ┌───┐ │ │
│ └──┤予算 ├──┤(私益・省益による不正) │
│ └───┘ └┬─────┬──────┘
│ 天下り │行政指導 │許可・認可・サービス
└─────────────┴─────┘・取り締まり
実際に行政を行う官僚組織を国民の制御下におくことが、「民主主義」です。
官僚組織を制御するためには、次の事が必要です。
(1)国民が、官僚の状態を詳細に検出する。
自動制御理論からすると、制御対象の状態を制御主体が検出することは、制御の必須条件
です。
(2)行政に対する国民の要求を目標値として、内閣が検出する。
国民が公約に基づいて代議士を選出し、代議士は公約の実現のための法律や予算の制定を
努力するとともに、公約の実現にふさわしい内閣を選出する事が、国民の要求を内閣が目標値と
して認識するための必須条件です。国民の要求を認識した内閣は、官僚組織に対して、具体的な
指揮・命令を通じて目標実現を計らねばならない。
(3)官僚組織の状態(特に、内閣から示された目標に合致する状態を官僚組織が示しているか
どうか)を検出し、内閣が示した指揮・命令に反している場合には、人事および組織を改革し、
処罰や解雇などにより、官僚組織に対して、内閣は絶対的な優位を保持しなければならない。
【理由】
ブロック図からもわかるように、内閣が官僚組織に絶対的な優位性を確保しなければ、
官僚組織が国民に対して有する許認可権限や取り締まり権によって、ブロック図の中のシステム
の中で最強のセクターになるためである。官僚組織が最強のセクターになってしまうと、これは
民主主義ではなく、官主主義になってしまう。
日本の民主主義の最大の問題点は、「内閣が官僚に操られている事」である。各省庁の大臣は、
その省庁に対する人事権を事務次官に奪われている。しかも、奪われている事の自覚すらない。
民主主義の実現のためにまずやらねばならないことは、「事務次官ポストの廃止」である。
** 事務次官ポストを廃止せよ **