大臣も国会議員も官僚型論理の答弁をしないで、国会を内容のあるものにせよ


官僚特有の責任回避や情報隠しや問題先送りを目的とした論理や言い回しが、国会答弁や企業社会にまで広がっている。これは、事実や本質を正視したり、問題に正面から取組む姿勢の全くない態度をとりつくろう「官僚型論理」である。この官僚型論理を国会から排除しない限り、政府委員制度を廃止しても国会が空疎な言葉遊びの場になるだけである。また、官僚型論理が浸透した企業は、責任回避と問題先送りの官僚体質をもった企業内官僚という癌細胞によって、死を迎えることになる。

警戒して排除すべき「官僚型論理と言い回し」の形態を述べる。

【官僚型論理と言い回しの10形態と、それへの批判】


1.「ケースバイケースで判断すべきものと考える」

 【批判】どのように判断するのかという質問に対して、このように回答するのは、全くの無責任か無能である。世の中の事態はケースごとにその内容が異なる。しかし、それらを類型化したり、本質的な共通点を把握して、事態に応じた判断基準や判断方式を示せないようでは、何の知恵もないという事になる。医者でも、ケース毎に異なる症状の患者に対処するための治療法を類型化して蓄積している。ケースバイケースで判断する際に用いる判断基準や判断方式すら持ち合わせがないのであれば、出たとこ勝負の判断能力しか無いことになるし、判断を間違った場合でも、判断基準を修正する事すらできない。

2.「個々の具体的内容に応じて、適切に対処する」

 【批判】願望を示しているにすぎない表現である。対処方法なども何も考えていない事を示す幼稚な表現である。何をもって「適切に対処」と考えるのかが、全く不明である。様々な場合を想定して、どんな場合に何をすれば適切な対処と言えるのかを示すマニュアルを持たないで、このような回答をするのは無責任であり無能でもある。マニュアルがあっても、このような回答をする場合は、情報隠しであると言える。

3.「○○を考慮して、総合的に判断する」

 【批判】どのような方式や基準で判断するのかが全く不明な回答である。判断基準や判断のための知恵を持たない場合と全く区別できない。判断方式についての質問に対してこのように回答するのは、無能か情報隠しである。

4.「個別の問題にはお答えできない」

 【批判】個別の問題に答えられない根拠を示す必要がある。秘密保持義務があるから答えられないのか、答えるに足る具体的な情報を入手していないのかを示さなければならない。このような根拠を示さないで、「個別の問題にはお答えできない」とする事は、情報隠しである。

5.「仮定の問題にはお答えできない」

 【批判】問題が発生する前に事前に対処するためには、「仮定の問題に対して対策を検討する」という事が必須である。政治や行政は、国民生活や社会・経済に発生する可能性のある問題を事前に予想して、対策をする事も大きな任務である。法律の条文には、「○○の場合には、○○をしなければならない」というような規定を多く持つ。これなども、仮定の問題への対処を条文化したものである。「仮定の問題にはお答えできない」との回答をする者は、政治や行政の任務や法案作成を行なう能力が自分にはないと宣言しているに等しい。

6.「○○には特効薬はないので、できるものからやっていく」

 【批判】問題を解決するための最適な方法を研究したり、検討したりすることなく、このような回答をする者は職務怠慢である。問題によっては特効薬が存在する場合があるのだから、特効薬を探すことなく、できるものからやるという事を当然視する者は、無能であり職務怠慢である。

7.「○○は、いかがなものかと思う」

 【批判】賛成なのか、反対なのかが文法的には不明である。単なる疑問形に「思う」が付いているだけである。責任回避のための表現であるので、このような表現が横行する組織はやがて壊死する。

8.「○○は、理想論であって現実にはありえない」

 【批判】本来は理想は実現すべきものである。理想と現実の差異やその原因を抽出して、現実を理想に近づける方策を実行すべきである。それなのに、現実を追認するのみで理想に現実を近づける事をしない態度を示す上記の回答をする者は、職務怠慢か能力不足である。

9.「○○すべきものは、○○する」

 【批判】無内容な表現である。「検討すべきものは、検討する」とか「改善すべきものは、改善する」などと表現される場合が多いが、どのようなものを、どのような基準で「○○すべきもの」であるとするのかが示されていない。結局は、何も考えていない人にも言える空疎な表現である。

10.「前向きに検討する」

 【批判】典型的な意味不明で責任回避型の表現である。「前向き」とは、具体的にはどのような方向なのかが不明であるし、「検討する」では「実行の保証」がない。何もしない場合との区別がつかない表現である。このような表現をする者に対しては、検討項目を事前に提示させた上で、検討結果の報告義務を報告期限を示して課すべきである。


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