1998年5月号の文芸春秋で元内閣安全保障室長の佐々淳行氏が寄稿された「大蔵省腐敗一掃への緊急提言」に記載された内容の中から、大蔵省の傲慢を示す部分を、かいつまんで紹介する。
1)中曽根総理大臣が予算委員会で売上税の導入について、「私は歳出税と主張したんですが・・・」と答弁したら、大蔵省から来ていた総理秘書官が予算委員会において、「そんな答弁は大蔵省は承知していないぞ。総理の横暴だ。勝手な答弁をするな。」と叫んだ。この総理秘書官は、後に事務次官にまでなった。
2)昭和61年に内閣5室が設置されたとき、当時の後藤田正晴官房長官が5室の補佐官を呼んで「省益を忘れ国益を思え」に始まる、いわゆる「後藤田五訓」を訓示した。ところが、これを聞いた当時の大蔵次官はなんと言ったか。すぐに幹部を集めて、「後藤田がなんと言おうと、大蔵省は省益最優先ぞ」とやったという。
3)内閣安全保障室にハイジャック事件などに対応するための電話回線の増設を要求したときの、当時の大蔵省の担当官の言葉は、「佐々さん、ハイジャックが起きても、大蔵省から予算をつけないんだから何もしなければいいんですよ。予算なきところに責任なしですよ」であった。この人も後日次官になった。
4)中島義雄問題が起きた時、「あれはタニマチみたいなもの」と言った大蔵省幹部がいた。
5)予算折衝の時期には、全省庁の予算担当の役人が大蔵省に日参する。この時の差し入れには凄まじいものがある。夜食の弁当はもちろんのことタクシー券、航空券、お相撲の桟敷席の切符等、日本全国から各省庁に集まったありとあらゆる品物が大蔵省に上納される。
6)予算に関しては他省庁と身分格差をつけており、予算折衝の際、大蔵省の主査(課長補佐)は他省庁の課長と、主計官(課長)は他省庁の局長と、局次長は付属機関の長官と、主計局長は次官たちと折衝するというしきたりがある。
7)他省庁の局長は指定職(民間の役員)七号で、主要な一、二の局長のみ八号ですが、大蔵省は局次長で七号。主計局長となると付属機関の長官と同号の九号。年俸で百数十万円の差がある。
8)都心に近くて新しい官舎は大蔵省優先である。
9)平成八年度の夏の資料をみると、大蔵省は防衛庁、環境庁、沖縄開発庁、国土庁の四官庁の次官を、そして会計検査院の検査官を自分のところの出身者でおさえている。
経済企画庁官房長、大臣官房秘書官、人事院給与二課長、総務庁の人事局次長、人事局参事官、行政管理局管理官、内閣法制局の参事官、防衛庁会計課長などの重要ポスト、山形、東京、三重、徳島、石川、熊本などの地方自治体の主要部長のポストが大蔵省出身者で占められている。
10)大蔵省は、各省庁の等級別定数(格付)や指定職ポストの数と号俸を決定する総理府と人事院の担当者を大蔵省出身者で固め、自分たちに有利となるように、各省の人事にさまざまな形で介入してくる。
11)外務省の海外ポストも、重要なところに公使・参事官クラスの大蔵省出身者が代々いて、財政問題は外務省を排除する。現在ワシントンにいる大蔵省出身者は二十七名の多きに達し、そのうちの二人はスキャンダル逃れの”亡命者”と言われている。
12)内閣の権限強化、防衛費1パーセント突破などには陰に陽に抵抗し、法案や有権解釈は法制局の大蔵省出身者がチェックする。大蔵の不正は、国税庁や会計検査院の大蔵省出身者が不問に附するという構造的腐敗である。
出典:別冊宝島 「大蔵官僚の暴落」 85ページより
(1998年4月20日追加)
超過勤務手当ての予算(平成10年度予算、本省分) 単位 1000円
職員基本給(A) 超過勤務手当て(B) B/A(%)
法務省 4588640 466880 10.17
外務省 9604329 1063367 11.07
大蔵省 8353327 2201255 26.35
文部省 6301354 763822 12.12
厚生省 10698895 1370009 12.81
農水省 13760400 1769961 12.86
通産省 10264687 1274933 12.42
運輸省 8286173 919573 11.10
郵政省 2735050 316298 11.56
労働省 4437463 525543 11.84
建設省 8209776 919254 11.20
自治省 2093570 214222 10.23