論文第001「行政情報の目録の公開について」 久野 1998年10月3日
【現状の問題点】
行政情報の公開を求める場合、公開の対象の行政情報を特定する必要がある。しかし、本質的には、公開される前にこの「行政情報の特定」をする事には、無理がある。従って、「**に関する一切の行政情報を公開せよ」という言い方で、行政情報の公開を求める事が、情報公開条例に基づいて行われている。このような、方法で公開を求める場合には、次の問題点がある。
1)公開を求めた側には、本当に関連する一切の情報が公開されたのかどうかがわからない。
2)公開する側からみると、「関連する」という事の意味があいまいなので、本当にどこまで公開すれば良いのかがわからない。
3)公開されなかった情報を含めて、どんな種類の情報がどこにどのようにしてあるのかという全体像が見えないので、公開請求も非効率になってしまう。また、行政での情報の管理・保管・公開・機密保持の体制が的確なものかどうかを、市民からや、他の行政部門や国会からみて判断できない。
【問題点の解決策】
したがって、電子化された情報も電子化されていない情報も含めて、行政情報の目録は、統一した書式でデジタルデータ化されて、簡単にアクセスできるように保持される必要がある。デジタル化された行政情報目録を、ここでは「電子目録」と呼ぶ。電子目録を全ての行政事務機関の統一されたものとして作成し、データベース化する必要がある。電子目録に記録すべき情報項目は、次のとおりであると考える。
@ 行政情報の表題
A 作成責任者の所属・官職・氏名
B 保管責任者の所属・官職・氏名
C 作成年月日
D 保管期間
E その行政情報の本体部分のデジタル化の有無
F その行政情報を非公開とする場合の根拠符号
G その行政情報を検索するためのキーワード群
H その行政情報に付与された管理番号
I その行政情報に関連する他の既登録の行政情報の管理番号のリスト
J その行政情報の保管場所(デジタルデータ化されている場合はURL,デジタルデータ化されていない場合は保管場所を示す符号)
注)上記のURLの表示をクリックすると、その行政情報の本体にアクセスが可能である事も必須条件である。
K 上記の@〜Jまでのデータに基づいて生成されたチェック符号
各行政情報ごとに、上記の@〜Kの管理情報をデータベースに登録し、インターネットで無料で高速にアクセスできるようにする必要がある。これを、全中央省庁・地方自治体・特殊法人など全ての行政事務機関が統一したフォーマットと、システムで実行する必要がある。
【得られる効果】
全ての行政情報について、電子目録が生成されてインターネットで簡単にアクセスできるようになると、次のような副次的な効果が期待できる。
1)不正行為の証拠隠滅のために行政情報を廃棄したり、改竄する事が困難になる。なぜならば、電子目録には行政情報ごとにチェック符号が付与されているので、その目録の中身を変更する事ができない。仮に、それができたとしても、関連する他の行政情報の番号によって、多くの行政情報が互いにからみあっている。したがって、1つの行政情報のみを簡単に削除してしまうと、さまざまな矛盾が発生する。
2)市民も行政機関も国会も、行政情報の全体像が見えるようになるので、広い視野で業務を遂行したり、業務を評価したり改善できる。