全体利益に反する個別団体の行動を内部からチェックする仕組みが必要。


日本中にいる大多数の人々が環境保護(特に、ダイオキシンなどの猛毒の排除)に賛成していると思います。しかし、日本の行政や企業やマスコミも、環境保護に本気では取組んでいません。もし、本気であるならば、日本もすでにドイツで行われているような「ゴミの分別収集」が実行されているはずです。

なぜ、行政や企業やマスコミが本気にならないか? 環境問題だけでなく、交通事故問題でも、防衛問題でもそうですが、行政や企業やマスコミという「団体」では、日本全体や地球全体の利益よりも、その個別の団体の利益が優先されている事が根本原因であると思います。端的に言うと、「自分が所属している団体が違法行為をしている場合に、内部告発をしてでも、その違法行為を中止させる人が少ないし、もしそのような人がいたとしても、すぐにその団体から排除される」ためだと思います。内部告発は、日本では「組織への裏切り、上司への反逆」ととらえられています。

今、新聞をにぎわせている防衛庁の調達実施本部での汚職問題でも、1999年3月5日に東京地裁で行われた初公判での検察側冒頭陳述からは次のことがわかります。すなわち、防衛庁内部に上野容疑者に対して正論を言って、上野容疑者が東洋通信機などへの返還請求額を少なく算定しようとしたことに反対して、24億円の金額を算出した課長クラスの人(原価管理課課長補佐)もいたようです。しかし、この人たちの正論が防衛庁では、上野容疑者の「24億円というのは論外だ。10億を切って一桁にしろ」との指示で、圧殺されてしまったもののようです。
これと同じ構造が、環境汚染をおこしている企業や行政の内部に存在しているはずです。これらの団体の中で、正論を言って、左遷されたり、冷や飯を食わされたりしている人は多いと思います。また、このような冷や飯を食っている人を見て、「見ざる、言わざる、聞かざる」を決め込んでいる人も多いと思います。内部告発の正当な手順(その団体内部での意見表明から始まり、外部への告発まで進む手順)を定めるとともに、そのような手順を実行した人を保護し、正当な内部告発者を優遇しない団体および役員を処罰する法律(内部告発者保護法)が、必要だと思います。

また、情報公開が遅れているために、環境保護などのような「全体利益」に反した行動をとる行政や企業が指弾を受けることなく、自分たちの個別利益を得ている場合が多いとも思いますので、「情報公開法」も必要です。

汚染された環境を測定して、その結果を公表したり、対策を実行するのも重要ですが、環境汚染を引き起こす「組織の原理」に手をつけて、環境汚染の原因を根元から断つことも重要だと思います。


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