『ラインホルト・メスナーの肖像』発表1周年レポート
『ラインホルト・メスナーの肖像』はスバラシイ
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『ラインホルト・メスナーの肖像』(99.4.21) 1.Narcolepsy 2.Don't Change Your Plans 3.Mess 4.Magic 5.Hospital Song 6.Army 7.YourRedneck Past 8.Your Most Valuable Possession 9.Regrets 10.Jane 11.Lullabye |
| 4.センチメンタリズム(!?)の変化 「3匹の熊の物語を書いたってぼくの人間性が出るはずさ」 ― BEN FOLDS ― (1) ●ところで、なぜ『メスナー』のジャケが上のように、何人も同じ人物が並んでいるのか??。最初は全然そんなこと気にもしなかったが、最近ようやくまじめに考える機会ができた。これはあくまでぼくの個人的見解に過ぎないが、中央左よりの白い人物が「BEN」を象徴しているすとれば、残りの赤は「BENの泣き虫に共感するであろう、ぼくらみんな」だと考えられる。 ●BENは「Rockin' on」誌99年6月号のインタビューで「ラインホルト・メスナー」はBEN自身であると発言しており、照れ隠しとユーモア的な意味でタイトルに「メスナー」をもってきている。また、BENは「ぼくの曲を聞いて、『あ、俺と同じ事を考えている奴がいる、俺は1人じゃないんだ』って喜んでくれる人がいたらいいな。」とも語っている。そう考えるとジャケの意味がわかってくる。したがってライナーの「タイトルについて」の内容は半分明確にされてはいるが、もう半分は正面切って自分を表現できないBF5らしさがうかがえる。 ●しかし、『メスナー』収録曲の歌詞は、これまで以上にないBENの繊細な独白なのだが…。 (2) ●さて、3rd『メスナー』収録曲の歌詞について追求する前に、1st・2ndの歌詞にも少し触れることにする。1st『BEN FOLDS FIVE』は「泣き虫野郎のパンクロック」を確立した衝撃的作品だった。ぼくはこれを「逆説の勝利宣言」と呼んでいる。1stのハイライトとなる”Philosophy”や”Underground”では「笑いたければ笑うがいいさ、ぼくにはぼくの哲学がある」「こんなぼくでらも地下ではハッピー!」と、落ちこみながらも独自のユーモアで開き直りの態度を見せる。そこにはoasisの「今夜俺はロックンロール・スターだ」のような完全肯定はない。あくまでBENは自分のコンプレックスにナーバスで、倒れそうになりながらも歩き続けている。 ●2nd『Whatever〜』ではやや落ち着いた曲が増えたぶん、より「泣き虫」が強調される。オープニングの”Dwarf”で「ぼくがビッグになったとき、お前は後悔するのさ」と強がりながらも、エンディング”Evaporated”で「故郷に帰りたい、みんな心配してくれるから」と結んでいる。まさに「アーメン」状態。しかし、2ndで重要な位置を占める中軸”Kate”で、BENの屈折した落ちこみは、一瞬だが最大の喜びに変わる。 (3) ●そして『メスナー』では、今までになくBENの内面と実際経験が、全編にわたって赤裸々に綴られている。そこにはもはや「泣き虫の開き直り」といった甘さや3人称的な物語はなく、自らのつらい過去や経験を1人称の詞で書くことによって、ある意味「精神的安定」を求めているようにさえ感じる。当時BENが前妻Kateと別れたり、過密なLAでのレコーディング・スケジュールが、歌詞や楽曲に少なからず反映されている。 ●ここでBENの心境を整理し、『メスナー』のストーリーを追うことにする。 ●”Narcolepsy”で、「眠ってしまえば、なにもつらくない」と言いながら別れた相手(Kateか??)に助けを求めている。でも眠ってしまう。 ●”Plans”では、「きみこそぼくがここにいたい理由」と言いつつ「自分のいるべき場所にいなきゃならない」と別れを告げている。 ●”Mess”「ひとりぼっちで自分がやらかしたこんなヘマに対処することを学んできたのさ」と、さらに別れを告げている。ちょっと彼女にグチってるけど。 ●”Magic”(ダレン作)は、彼女のことを思い出している。 ●”Hospital Song”は『メスナー』の前半と後半をつなぐ重要な位置を占めている。 ●”Army”は『メスナー』のハイライトとなる曲で、目を覚ましたBENは自らの過去についていろいろ考え出す。「前妻たちはみんなぼくを軽蔑してる/全てを過去に残して前進しようとしてるんだけど/ぼくのレッドネック(無教養な貧乏白人:とくに南部出身者)の過去が足を押さえつける」 ●”Your Redneck Past”においては、”Army”の内容を更に掘り下げ、「愚かで惨めな過去は簡単に始末できる」と言いながらレッドネックである過去を再確認し、気持ちは故郷へと帰る。 ●”Your Most Valuable Possession”ここで親父登場。父は「お前にとって1番大事なものは、お前の『精神(頭・mind)』だ」と告げる。BENは”Army”において、過去に父親からアドバイスを受けているが、さらにアドバイス。今回この『精神』がアルバム全体の重要なテーマとなる。 ●”Regrets”ではさらに悩める過去が頭の中を駆け抜ける。そこには「後悔」しかなかった。 ●”Jane”はJaneという人物について歌っているが、BEN自身、あるいはBENと同じ経験をしてきたであろうみんなに対して「きみは人が考えるよりずっとしっかり自分を持ってた」「でもそれはきみの人生だから/きみが好きなように」と、過去と向き合い、決して自らを否定してはいけないと促す。 ●そして最終曲”Lullabye”で、さらにBENは言う。「世の中は思ったよりも君のためにいろんなことを用意してくれるんだ」。この「いろんなこと」とは決していいことだけではないが、それを肯定できるときがきっとくるはずである。そして「たいへんだったな。もういいんだよ。おやすみ」とやさしく声をかける。 ●ぼくはうまくストーリーを説明できなかったが、BENが言うには、前半を「死」、後半を「生」のイメージとしている。まさにそのとおりの内容で、これを「1人の悩める人間のコンセプトアルバム(肖像)」と言わずしてなんというのだろうか。 |