今あなたのことを想っている 

 活字がとても好きなDel だけど、本当は写真も好きなのだ。
撮るのも、観るのも。
人物より風景。無生物が主体の写真が好き。
フルカラー写真も良いけれど、モノクロームが好き。
そこだけ時間が止まっているような、そんな写真。

 前回のエッセイ「届けられた一通の詩」の中で、
紹介した詩を読んで、イメージした所は、
少しさびれたコンテナの埠頭。
霞むような雨の中、寄り添う二人。赤い傘、紅い唇。
 もちろん加工しなければならないだろうけれど。
そういう写真が撮りたいなと、真剣に思ってしまう。

神戸に行けばあるだろうか…。イメージに沿う場所が。
 行ってみようかな。今度の休み。

 そんなことを考えていたら、
この間の詩のシリーズ2作目だと、
友達が新しく詩を送ってくれた。


雨だから、オープンテラスに座れなくて、
あなたはちょっといらいらしている。
自分の好みのあの席が、
ヤツデの葉で陽光がやわらげられる席が、
ツマヨウジを人通りにむかって投げて
そのあとは知らないフリをしていられる席が、
雨に占領されているのを、
あなたはうらめしそうな目で見ている。

でも、僕はコーヒー一杯で、
あなたはシナモンティー一杯で、
2時間はねばってしまうのは
雨でも晴でもかわらない。

机の上にとびかうむすうのコトバが、
カラのティーカップの上につもっていく。
むすうのごめんなさいとありがとうが、
地層のように堆積していく。

長い時代、同じようなことばっかりしてるんだから、
僕たちがいつも同じようなのも、仕方ないんじゃない。

同じじゃないとだめなことも、あるしね。

だから、店員のけげんそうな目を気にせず、
ゾウキンを借りて、あの席に。
傘の下で、
僕たちは、珍しく、二杯目の注文をした。


 いいね。

 読んだ瞬間、頭に風景が思い浮かぶ、
オープンテラスのカフェ。
いつか見た風景、いつかみた二人。
記憶の断片が蘇る。

 切ないと思いながらも、想い出せる記憶があるのは、
きっと幸せなんだろう。

 この詩を読んで、あなたが思い出す風景、
あなたが想い出す人は誰ですか?
April 28, 1999