星降る夜に願いを 

 前回、婚姻届とともに離婚届まで書いたR美の話をしたけれど、
去年から今年にかけて、結構Del の周りでは、結婚が相次いでいる。
今日の主人公は、S子で、S子もDel の学生の頃からの友達だ。
ずっと前からエッセイに書こうとして、なかなか書けなかったお話を
今日は書いてみようと思う。

 S子は二人姉妹の長女で、25を過ぎた頃から、
親に早く結婚しろと言われ続けていたらしい。
実はS子にはその時点でつき合っていた人が居たのだけれど、
彼氏とは5つ年が離れていた。

 "5歳離れていることに問題がある?
世間には一回り離れたカップルだっているわよ"って思うかもしれない。
確かに、彼氏が5歳年上なら何も問題はなかったのかもしれないけど、
そうではなく、S子より彼氏の方が5歳、年下だったのだ。
だから、S子が25だったときには、彼氏はまだ、20で学生だった。

 今時年下の彼氏、年下のダンナさん、なんて珍しくは無いと思う。
確かにそうなんだけど、女っていうのはきっと、
好きな人の前では、いつまでも綺麗でいたくて、
でも、自分が年上だと、相手より先に老いていくことになる。
"可愛いくて若い女の子に気持ちが移っちゃったら?"
もしかしたら、S子に、そういう懸念があったのかもしれない。
それでつき合っている彼氏のことが大好きだったけれど、
結婚とは別なんだと、たぶん自分に言い聞かせていたんだろう。

「恋愛と結婚は別だから」というのがS子の口癖だった。
そして、彼氏にも他の年下の"彼女"が見つかれば、私はすぐに別れるから、
そんな風に言っていたらしい。

 それは哀しい強がりだったと思うけれど、
判るような気がした。

 そんなわけで、親の勧めもあって、
何度かお見合いを繰り返していたS子だったから、
S子から、「結婚するの」と聞かされたときは、
ああ、この間お見合いした人かなって、思ったのだ。

 ところが、さにあらず、くだんの年下の彼氏だという。
あれほど彼氏とは結婚しないと言っていたのにどうして急に?
疑問を見透かすように、S子は、話をしてくれた。
ざっとまとめるとこんな風になる。

 去年の話になるけれど、しし座流星群やってくる、というのが
話題になったのを覚えているだろうか?
Del も、流星を見たことがなかったので、とても楽しみにしていたのだ。
けれど、たぶん全国的にだったのだろうけど、
大阪もあいにくの天気で、結局は見ることが出来なかった。

 その日、S子と彼氏は一緒に流星群を見ようと、
彼氏のマンションに行き、夜中中ベランダにいたそうだ。
ところが、結局見れなかったので、またの機会だねと、
S子が言ったのがきっかけらしい。

 またの機会って、いつだろう?

しし座流星群は、33年に一度巡ってくる。
ということは、33年後?と思うだろうけど、それは違うのだ。
実は33年後に、しし座流星群が見える時間帯というのは、
日本でちょうどお昼にあたってしまい、
当然お昼に流星なんて見れるわけがないので、
日本にいる限りは観測できないことになる。

 その話をS子がすると、
彼氏がこう言ったんだそうだ。
「じゃ、66年後に一緒に見よう」と。

 S子は、何を言ってるんだと、思ったらしい。
66年後と言えば、S子は、90歳をとおに過ぎている。
そんなの見れるわけ無いじゃないと言うと
「僕がもしSちゃんより年上だったら、
 寿命を考えても僕は生きていないだろうけど、
 僕は年下だから大丈夫だよ。
 あと、66年しっかり生きて、一緒に
 しし座の流星群を二人で見ようよ」
そう彼氏は、言ったらしい。

「それは…」何を意味しているのかと、S子が問う前に、
彼氏はS子に向かってはっきり言った。
「Sちゃん、僕が年下だから、気を遣ってくれていると思う。
 いつも僕とは結婚しないみたいなことほのめかしているよね。
 だから、ちゃんと僕から言うけど、僕はSちゃんと結婚したいよ。
 Sちゃんがおばさんになったら、僕だっておじさんだしね。
 20歳と15歳じゃ問題有るけど、30と25とか、35と30とか、
 そんなの全然問題ないから。」

冗談でなく、彼氏ははっきりと言ってくれたらしい。

「うれしかった」とS子は電話口で少し涙声だった。
Del も、少し泣いてしまった。

 明日どうなるか判らないこんな不安定な世の中だ。
だけど、それでも66年間一緒に生きて、
もう一度しし座の流星群を見ようって、
なんて、素敵なプロポーズなんだろう。

 その言葉でS子は、馬鹿な強がりは止めて、
結婚しようと決心したらしい。

 ただ、双方のご両親には猛反対をくらい、
(やはりS子の方が年上だというのが、ひっかかったらしい)
「説得するのが大変だったの」
と、S子は言った。
普段たまに、彼氏に対して"少し頼んないな"と思う部分が
なきにしもあらずのS子だったけれど、
「双方の親を説得する彼の姿は本当に頼もしかった」
と、最後にのろけてくれた。

 彼氏の説得の甲斐あってか、最近ようやく、
しぶしぶではあるが、双方のご両親も認めてくれたらしい。
「けど、まだ心底は納得していないみたいなの。
 でもこれから、それは私たちの姿をみてもらって、
 この結婚は間違いじゃなかったって、思ってもらえるようにする」
と、S子は言う。

 S子、大好きな人と結婚が決まって本当に良かったね。
自分が年上だから、という気負いは、きっと
彼氏にはいらないと思う。
これからずっと二人で過ごして、
次の次にしし座の流星群が巡ってきたとき、
ほら、一緒に見れて良かったねって、
二人で星を見上げてください。

どうぞ末永くお幸せに。
ずっとずっと、ね。
May 24, 1999