7年間の空白を・・・<Chapter2>

 

 母さんに夕飯の買い物を頼まれた。
「祐一一緒に買い物に行こう」
 でも寒がりの祐一は、
「別に俺が行かなくても、名雪一人で十分だろ?」
 って渋る。
「…部屋の片付け手伝ってあげたのに」
「それとこれとは、話は別だ」
「…昨日も駅に迎えに行ってあげたのに」
 私は祐一と行きたいのになあ……鈍感なんだから。
「2時間も遅刻しただろ」
 それを言われるとちょっとつらい。
 だから、切り札を使う。
「一緒に来ないのなら、晩御飯は祐一だけ全部たくあん」
「そ、それは嫌だ」
 覚えてるかな? 七年前は紅しょうがって言ったんだよ。
「ご飯も、おかずも、飲み物も、デザートも、ぜんっぶたくあん」
「……」
「でも、わたしはロールキャベツ」
「……」
「どうする、祐一?」
 わたしは一緒に買い物に行きたいんだよ祐一。
 駄目かな?
 嫌なのはどうして?
 寒いから?
 それとも……わたしが嫌いだから?
「買い物行こうか…名雪」
 無理やりだけど、嬉しかった。

「全部たくあんでいい」
 本当に祐一は寒がりだね。
「大丈夫、歩いていると暖まるよ」
「…だといいけど」
「すぐに慣れるよ」
 そしたら、七年前のこと思い出せるよ…
「そういえば、昔もこんなふうに一緒に買い物行ったよね」
「そうだったか?」
 やっぱり覚えていない。
「うん。そうだったよ」
 すっぽりと抜け落ちたように忘れてるみたい。
「きっと、その時も脅されたんだろうな…」
「わたし、そんあことしないよ」
 あ、すこしは覚えてるみたい。
「…そうか?」
「わたし、祐一みたいにいじわるじゃないもん」
 全部思い出してくれないなんて、いじわるだよ。
「…そう言えば、あったかもしれないな」
 あ、また少し思い出したみたい。
 嬉しい、でも少し怖い。
 祐一は全てを思い出した時何てわたしに言うだろう……
「あのころは、祐一が鞄持ってくれたんだよ」
「そこまでは覚えてない」
「うー」
 わざとおぼえてないふりしてるよこれは…
「でも、まぁ鞄くらいなら持ってやってもいいぞ」
 そう言ってくれるのがたまらなく嬉しかった。
 まるで、七年前に戻ったようで……

「急いで買ってくるよ」
「じゃあ、俺ここで待ってるから」
「絶対に待っててね」
 七年前みたいに待っていないなんてことは嫌だよ。
 念を押してわたしは商店街で急いで買い物をした。
「祐一おまたせ……あれ?」
 そこにいるはずの祐一はいなかった。
 あれだけ待っていてって言ったのに……
 七年前と同じ。
 あの時は怒っただけだった。
 でも、それだけじゃない……
 今は…不安だった。
 祐一はやっぱりわたしが嫌いで、いなくなったんじゃないかって……
 でも、わたしはそうじゃないことを信じたいから……
 ずっと待った。
 そして……
「な、名雪……」
 すまなさそうに戻ってくる祐一を見てほっとした。
 だから、
「うそつき」
 ちょっとすねてやることにした。

 夜、祐一が目覚し時計を借りに来た。
 貸してあげるならやっぱりあれだよね。
 わたしは寝坊すけだから、祐一を起こしてあげることはできない。
 だから……これは代わりだよ……
 祐一にはわたしの声で起きて欲しい……
 これって我儘だけど……
 いいよね?
 明日祐一はどんな顔して起きるだろう?
 そんなことを考えながらわたしは眠った。

                       to be continued...

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