7年間の空白を・・・<プロローグ>

 

 雪が降っていた。
 七年前のあの日もこんな雪の日だった。
 あの日私は祐一に好きと言った。雪ウサギをプレゼントした。
 何が悲しいのかわからなかったけど…悲しんでいる祐一を見たとき、自分も悲しくなって……
 あ、私は祐一のことが好きなんだなって気づいたから。
 でも、想いは通じなくて……
 雪ウサギは粉々に砕け散った………

 雪が降っていた。
 私は今でも祐一のことが好き。
 
 今日は祐一が帰ってくる。
 だから部活も早めに切り上げて、約束の時間に駅前に向かった。
 向こうに祐一の姿が見えた。
 ベンチに座ってずっと私を待っている……
 突然、怖くなった。
 本当に私を待っているのか……
 祐一は私のことを忘れてしまったんじゃないか……
 そう思うと怖くなって………
 私は祐一に近づくことができなかった。

 雪が降っていた。
 ずっと私は近づくのが怖くて町の中を歩き回っていた。

 雪が降っていた。
 七年前のあの日もこんな雪の日だった。
 七年前……?
 あの日祐一は私を拒絶した。
 次の日、駅前には来てくれなかった……
 寂しかった、悲しかった………
 もうあんな思いはしたくない。
 祐一……
 もし、祐一が私を覚えていて、
 もし、私と会うのを楽しみにしているのなら……
 私と、同じ思いをすることになる。
 そんなの、嫌。
 好きな人だから……
 そんな思いはさせたくない。

 雪が降っていた。
 私は駅へと走る。
 寒かったよね?
 ごめんね、祐一……
 自販機であったかい缶コーヒーを買った。
 こんなものしか用意できないけど……
 これがお詫びだよ。
 どうやって声をかけよう?
 こんにちは?
 久しぶり?
 うまく言葉が思いつかなかった。
 そのまま、ベンチに座っている祐一のところにたどり着いてしまった。
 祐一の頭には白い雪が積もっていた。
 頭の雪も払わないで……
 しょうがないね祐一は……
 そう思うと、悩んでたことが馬鹿らしくなってきて……
「雪、積もってるよ」
 七年ぶりに交わす言葉は、劇的でも、感動的でもなかったけど……これが一番だと思った。
「私の名前覚えてる?」
「花子」
 ふざけて私をからかおうとする祐一は七年前と同じだった。
 でも、名前はちゃんと呼んで欲しかった。
 七年間の空白を埋めて欲しかった。
 だから…
「行くぞ、名雪」
 他愛のないこの一言がたまらなく嬉しかった。
 
 雪が降っていた。
 でも、結末は七年前とは違うものになる……そんな予感がした。

                       to be continued...

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