祐一は誰のもの? VOL.3

 

  注)1 ネタばれはないです。
    2 時間的に栞ハッピーエンド後になっているはずです(^^;;
    3 姉、暴走してます(爆)


in 百花屋

2人が案内されたのは4人がけの席だった。
お互いが向かい合うように座る。しばらくして、店員が水とメニューを3つ持ってくる。
それを見て祐一は1つ多いことをと言おうとしたが、正面の栞が驚いた顔でこちらのほうを見ているのに気づき、ふと隣を見る。

そこには・・・にこにこしながら注文する香里がいた。

そして
香里「新しく出たアイスクリームお願いします」
平然と注文をする。
店員「特製アイスクリームですね?・・・はい、他の方はどうなさいますか?」

祐一「・・・・・」
栞 「・・・・・」
固まる2人

香里「ほら!早く注文しちゃいなさいよ、店員さん待ってるじゃない」
祐一「・・・・・」
栞 「・・・・・」

香里「なにやってるの?早く・・・」
と言いかけるが・・

祐一「出ようか?栞・・・」
栞 「そうですね・・・」
立ち上がる2人、

しかし、狙いすましたように、
香里「あら?新しく出た特製アイスクリーム食べないの?栞」

栞の動きが止まる。どうやら選択しかねて悩んでいるようだ。
祐一はその横であきらめたように溜め息をつく。
香里「ちなみに、限定30っていう話よ?」

店員「はい、材料に特注品がありまして30個がやっとなんですよ。今日は残り4つです」

それを聞いた栞は、無言で席に戻ると
栞 「・・・・特製アイスクリームお願いします」
と注文する。どうやら特製アイス残り4個というのがかなり効果があったようだ。
肩をすくめる祐一だったが、栞に次いで席に座りコーヒーを頼んだ。
店員が戻った後、

祐一「なあ栞、この後どうする?」
香里「映画館行かない?」
栞 「そうですね、今日はこれで帰ることにしませんか?」

祐一「そうだな・・・そうしようか」
香里「・・・・・・」

栞 「明日はどうしますか?」
香里「ちょうど土曜日だし、相沢君の家へ遊びに行かない?」
祐一「う〜んどうしようか?」

栞 「どこかもおもしろいところないでしょうかね」
祐一「このあたりはそういうのってないからなぁ」
香里「だから、相沢君の家へ・・・」

2人に完全に無視されている香里。すこし顔を引きつらせている。
そこへ・・

店員「特製アイスクリーム2つとコーヒー、お待たせしました」

注文した品物が来る。それを受け取り食べ始める3人。
香里「・・・おいしいわね」
つぶやく香里、栞はというと
栞 「アイスクリーム・・・おいしいです」
心底嬉しそうに、幸せそうに言う。

しばらくして・・・
栞 「祐一さんも一口食べてみますか?」
とアイスクリームをスプーンですくいそれを祐一の方へ持ってくる。
いわゆる、「はい、あ〜んして」状態である。
もちろん祐一が拒むわけもなく、口をあけて食べようとする。そして口に入れようとする直前、

香里「祐一君!」

ちょっと急いたような声で言う香里。それを聞き香里の方を向く祐一。
そして・・・

祐一「んむぐぅ・・・」
栞 「・・・・・・ヒクッ・・・・・」
アイスクリームが口につっこまれる、しかも香里のスプーンで。

香里「ふふ、おいしいでしょう?あら、間接キスよね?これって」
わざとらしく言う。しかし本人は非常にうれしそうである。
祐一「・・・・・栞、口直しにアイスクリーム食べさせてくれ・・・・」
栞 「はい!」
栞が差し出すアイスクリームを食べようとするが・・・またも香里のスプーンが祐一の口に入る。

今度は少しの間の沈黙。そして・・
祐一「美坂・・・どうして邪魔する?」
香里「好きな人が自分と同じスプーンで同じ物を食べてくれるって言うのは女としてはうれしいことなのよ」
祐一「そういうことじゃあなくて・・・」
栞 「それはわかるけど・・・私の目の前でそんなことしなくてもいいでしょう」
そろそろ変わった姉に慣れてきたのか、落ち着いた対応をする栞。

香里「どうしてそんなことするかわからない?」
栞 「嫌がらせ・・」
祐一「・・・・だな」

香里「その嫌がらせってどこからきてると思う?」
栞 「祐一さんが私のことを好きだから?」
祐一「姉として、妹とその彼氏との絆を深めてやろうという気持ちからじゃあ?」

香里「自分も思いを寄せてる人なのにその人と妹の絆を深めてあげようなんて考えて譲ってあげるほど出来た姉じゃあないわよ。栞が正解。私は栞がうらやましくて嫉妬してるの。それと、栞しか見ていない相沢君に私のことも見てもらいたいから嫌がらせするのよ。ほかに方法が見つからないから・・」
 ある意味ストーカーよりもひどいかもしれないが、こちらのほうがまだ納得できるし、本音なのだろう。

栞 「お姉ちゃん・・・」
祐一「他に方法あるぞ・・・」
香里「誰か別の人を選べって言うんでしょう?」

祐一「おう、北川とか結構いい感じじゃあないのか?」
香里「・・・・どうしてそう思う?」
祐一「なんか俺が来る前から仲良かったみたいだし・・」
香里「そうね・・・」
ちょっと小さめの声で言う。

栞 「北川さんいい人みたいですし」
祐一「まあ悪いやつじゃあないな」

その北川さんはというと、クラスの男子達と「水瀬さんと美坂さんを相沢の魔の手から救い出そう」計画を練っていたりする。
まあそれはそれとして・・・・

祐一「北川も美坂のこと気になってるんじゃないのか?」
香里「そうみたいね・・・」
なんとなく勢いがなくなってきているような香里

栞 「じゃあお姉ちゃんは北川さんと・・・」
祐一「これで万事丸く収まるな」
にやにやと2人は言う

香里「だめよ・・・」
自分に言い聞かせるようにつぶやく

栞 「んえ?」
祐一「んへ?」
それを聞きちょっと間抜けな声を出す2人
香里「それはだめ・・・・」
祐一「だめ?」
栞 「なにがだめなんですか?」
香里「・・・」

少し考えながら、自分の思いを確認しながら話し出す
香里「あの時まではね・・北川君のこと好きだったのは確かなのよ。それは本当。でも、
   今はもう彼じゃあダメ」
栞 「あの時?」
祐一「いつのことだ?」

香里「相沢君が転校してきたときよ。初めは名雪のいとこの男の子っていう感じだったんだけどね、
   名雪が相沢君のことが好きなんだって知って、それから気が付いたら好きになってたのよ。
   もう「身も心も」っていうくらいにね」
祐一「男としては嬉しい限りだが、昼にもいったように・・・」
香里「わかってるわよ、だからこうして気を引こうとしてるんじゃない」

栞 「私にとってはいい迷惑です」
香里「でしょうね・・・でもね何度も言ってるんだけど、自分を抑さえつけて生きていくのはもううんざりなの
   だから私はやりたいようにやるの、栞が元気になったときにそう決めたから」
栞 「平行線ですね・・・」
祐一「しばらくは苦労しそうだ・・・」
香里「将来どうなるかわからないけど、今はこうしたいから2人には悪いけど本気で行くわよ?」
栞 「がんばるしかないみたいですね・・・」
祐一「そのようだな・・・・」
しばしの沈黙・・・

香里「さてっ・・と、こういうお話は早く切り上げて・・・明日は2人どうするの?」
栞 「どうしましょうか祐一さん?」
祐一「う〜ん・・・やっぱり映画あたりにしようか」
栞 「そうですね」

祐一「問題は・・・邪魔が入ることだな・・・」
栞 「・・・・・・・・・」
香里「あら?明日は残念だけど邪魔できないわ・・・」
それを聞いた2人は心の中でガッツポーズをとる。人前なので大げさに喜ぶわけにもゆかず平静を保とうとする・・・が
本人達は保っているつもりらしいが、2人とも口元が笑っているのに気付いていない・・・
そして香里はそれを見ても特に悔しがっている様子はない・・・

2人はそのまま話し込んでいく・・・

「ふふっ、映画を見に行くのは邪魔しないわ・・・そのかわり・・」

香里はつぶやいて、楽しそうに、うれしそうに、そして、妖しく笑う。

VOL4へ続くです!


〜あとがき〜
 やっとVOL3公開です・・・
 思いつくままにSSを書いているので、この先どうなるか見当がつきません(;;)
 しばらくは三つ巴状態が続くと思います。 では・・・・

時の孤児 拝

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