祐一は誰のもの? VOL.6
注)1 ネタばれはないです。
2 時間的に栞ハッピーエンド後になっているはずです(^^;;
〜水瀬家〜
さて、ここは水瀬家の玄関である。
栞 「こんばんは!祐一さん、名雪さんのお母さん、お世話になります!」
祐一「おう、今から晩ご飯だ。一緒に食べるだろ?」
栞 「ええ、ごちそうになりたいと思います」
秋子「大したものはないけど良かったらどんどん食べてくださいね」
栞 「はい、ありがとうございます」
なにやら気合いの入っている栞、にこにこと迎える祐一、同じく秋子さん。
ちなみに、他の2人は玄関にはいない。その2人はどうしているかというと、
名雪「香里……とりあえずは栞ちゃんだね…」
香里「そうね……あの子が一番やっかいだからね……」
栞を強敵とみて、タッグを組む話をしていた。
さて、こうして食卓に全員そろったが。問題が発生……というより絶対にぶつかる壁にぶつかったと言った方がいいかもしれない……
「食卓のどの位置に座るか」
たったそれだけのこと。
もっと端的に言うならば
「祐一の隣に座れるかどうか」
ということである。
結果は……秋子さんの一人勝ち!
どういうことかを説明のにまず、食卓の席の配置を説明をしようと思う。イスの配置が、2席とその対面に3席なのである。
そして、祐一はこの2席の方に座った。
当然、名雪、栞、香里の3人はその隣に座ろうと互いを牽制しあう。
名雪が座ろうとすると、香里が何気なく髪を引っ張る。
栞が座ろうとすると、名雪が足払いを掛けようとする。
香里が座ろうとするが、栞が足の指を踏みつけている。
そんな牽制に3人が夢中になっていた隙に、用意を終えた秋子さんが祐一の隣へあっさりと座ってしまったのである。
秋子「さあ、料理も並びましたし、夕飯にしましょ。名雪、栞さん、香里さん、3人とも席に着いてくださいね」
そういわれて、気づいたときに3人は後悔したが、自分たちのうち1人がそこへ座るよりはまだましだろうと一応納得しつつ席に着いた。
結局何事もなく食事が終わって、祐一が部屋でくつろごうと2階へ上がる。
3人はそれを見送った。祐一と2人きりになるには他の2人を動けなくしないといけないからというのが理由である。まず動いたのは……名雪
名雪「わっ私そろそろ部屋に戻って勉強してくるねっ!!だから2人ともゆっくりテレビを見てて良いよ!!」
そう言いつつリビングから出ようとする。
ぐいっ!……ばたんっ!!
………………
名雪「うう〜いたいよ〜ひどいよ〜かおり〜〜」
出ていこうとした名雪の髪を引き、床に引き倒した香里。
香里「名雪……どこの部屋で、何の勉強をするつもりなの?」
仰向けに倒れた名雪を仁王立ちの体勢から見下ろす。
名雪「部屋だよ〜勉強だよ〜」
栞 「誰の部屋で何の勉強をするんですか?」
香里「相沢君の部屋で、夜の勉強でもするつもりだったのかしら……名雪?」
栞 「えっ……そっそうなんですか?」
名雪「誰も、祐一の部屋で……その…うう〜〜」
起きあがりながら、言い訳を考えている。
香里「ふうん……名雪は抜け駆けしないと思ってたのに……所詮友達ってその程度のものなのね…私悲しいわ」
少し涙目でつぶやく。だがそれで名雪が動揺することはなかった。
名雪「私だって…悲しいよ……」
香里「なんですって?よくもそんなこと……」
名雪「姉が妹の恋人を奪おうとするなんて……香里ってそう言う人だったんだ…」
香里「それはそれ!!これはこれ!!」
名雪「お互い様だと思うけど……」
香里「くっ……いつも寝ぼけてる割には今日は冴えてるじゃない」
名雪「ふふっ、こんなのまだまだだよ。私の本気は」
香里「へえ…楽しみね」
名雪「………」
香里「………」
ここで膠着状態に入る。
タンタンタンタン……
階段を上る音。階上から栞の声
栞 「祐一さん、あの…入っても良いですか?」
名雪「……………」
香里「……………」
ドドタタタタタタッッッッ!!
2人そろって階段を駆け上がり、祐一の部屋に入りかけている栞を捕まえる。
栞 「チッ……お姉ちゃん、名雪さん、どうしたの?」
微笑みながら言う。
祐一「どうしたんだ栞?」
ひょこりと顔を出してくる祐一、しかし名雪と香里に睨まれ引っ込んでしまう。
香里・名雪「「ちょっと来なさい!!」」
栞 「ええ〜〜!!」
2人に名雪の部屋へ引きずり込まれる栞。
香里「さて……抜け駆けしようとした罰は受けてもらうわよ……栞」
名雪「そうだね……」
栞 「いやあぁ!!お姉ちゃん許してぇ!!」
がんっ……パタッ
床に崩れ落ちる栞。
香里「ふう…これで一件落着」
名雪「そうだね……でも、私の目覚ましで殴るのはやめて欲しかったな……」
香里「手元にあってちょうど殴りやすかったのよ、それと名雪…」
名雪「なに?」
香里「抜け駆けしようとしたのはあなたも同罪」
名雪「えっ!?でっでも、あれは勉強だって………」
そう言いつつ部屋から逃げ出そうとする。
香里「いいえ…どう見ても抜け駆けね。覚悟は良いかしら?」
名雪「………」
脱兎のごとく逃げだそうとするが、
香里「甘い!!」
シュ!…………ガンッ!!
名雪「あう!」
投げられた目覚ましの直撃を受けて床に昏倒する名雪。
そして部屋に静寂が訪れる。
香里「ふふっ邪魔者はすべて排除したわ…」
……コンコン
祐一「誰だ?」
カチャ……バタン
ドアが開き閉まる。
香里「私よ」
祐一「……何しに来た?」
香里「わからない?」
カチャ
これはドアの鍵が閉まる音
祐一「なぜに鍵を閉める?」
香里「邪魔が入るのを防ぐため、獲物を逃さないため」
祐一「えっえもの!?」
動揺気味の祐一。
香里「そう」
祐一「この部屋にはキツネもシカもクマも居ないぞ?」
香里「邪魔者は名雪と栞……さて、この場合獲物は誰でしょう?」
動揺する祐一。
祐一「おっ俺を食ったっておいしくないぞ?」
香里「大丈夫、煮たり焼いたりはしないわよ」
祐一「……まさか……俺を剥製にするのか!?」
香里「そんなことしないわよ……解ってるみたいだけど解ってないみたいだからちょっとわかりやすく言いましょうか……相沢君は男、私は女。その2人が一つの部屋ですることは?」
祐一「おままごと…かな?」
香里「仕方ないわね…体で解ってもらいましょうか」
祐一「なに!?どういうことだ!」
香里「こういうこと」
とさっ
香里がベッドに入り、祐一に抱きつく
祐一「なっ…なっ……」
香里「なにを怖がってるのよ」
祐一「頼むから離れてくれ」
香里「どうして?」
祐一「俺には栞がいる」
香里「そんなこと関係ないわよ……少なくとも私にはね」
祐一「おまえの妹だろうが」
香里「私に子供ができちゃったら身を引いてくれるわよ」
祐一「だめだ!やめてくれ!」
抱きつかれたままもがく祐一。
香里「さあ…祐一君、ぬぎぬぎしましょうね〜」
妖しくも満足げな笑みで言う。
祐一「だれか……たすけて……このままじゃ」
香里「このままじゃ理性が持たないって?」
祐一「ううっ…栞ぃ〜」
香里「野暮ねえ……こんな時ぐらい忘れなさいよ。昔の女なんて」
バタンッ!!
栞 「お姉ちゃん…誰が昔の女なんですか?」
名雪「………うう〜かおり〜〜」
祐一「助かった…栞、おまえの姉さんどうにかしてくれ…」
栞 「どうやらじっくり話し合う必要が有るみたいですね」
名雪「香里は卑怯すぎるよ…」
そういいつつ今度は名雪と栞の2人が香里を祐一からひっぺがし引きずって部屋を出ていく。
栞 「お騒がせしました祐一さん」
名雪「じゃあね〜祐一」
香里「また来るからね〜あ・な・た!」
……バタン
3人が出ていった。
祐一「俺……今日寝れるのかな……」
それからしばらくして……
コンコン
祐一の部屋のドアがノックされる
名雪「ゆういち〜お風呂入って〜」
祐一「ああ……もうそんな時間か……今から行く」
名雪「うん」
着替えを持って部屋を出ようとする祐一。ドアを開けると目の前に名雪がいる。
祐一「どうした?」
名雪「なっなんでもないよ」
階段を下りようとする祐一
祐一「なあ…名雪の部屋で言い合ってるのはあいつらか?」
名雪「うん…というかあの2人しかいないよ?」
祐一「そうだな…」
栞 「誰が昔の女なんですか!」
香里「あら?私そんなこと言ったかしら?」
栞 「お姉ちゃんボケましたね?まあその年じゃあ仕方ないですね」
香里「1歳しか違ってないじゃない」
栞 「熟した実は一年もしないうちに腐っちゃいます」
香里「ふうん…私はもう腐ってると?」
栞 「はい、もう土に還ってます」
香里「私だってまだ十分食べ頃よ」
しばし言い争いを聞く祐一と名雪
祐一「早く風呂に入って寝る……」
名雪「……その方がいいと思うよ」
そして、2人そろって階段を下りていく……
栞 「食べ頃だなんて……よくもそんなことを…」
香里「栞こそ…まだ熟してないのによくもそんなことを…」
栞 「……!!」
香里「……!」
どんどんエスカレートしていく姉妹ゲンカ…もとい祐一の所有権(?)争い。
―― てぃ〜たいむ ――
階上から聞こえてくる言い争いの声を無視して風呂場へ入る祐一。
祐一「ふう……」
湯船に浸かってため息をつく。ようやく一息ついたというところか…
一緒に降りてきた名雪はリビングへ行った。
つかの間の自分の時間……物思いに耽る。
カラカラ……
そのとき、1人の時間が終わりを告げた。
扉が開く、そちらを見る祐一。
名雪「ゆういち〜背中流してあげるよ〜」
固まる祐一。そんなことを気にせずに入ってくる名雪。
一応タオルで前を隠してはいるが……
名雪「あったかいね〜」
そのまま湯船に入ってくる。固まったままの祐一、にこにこそれを見る名雪。
しばしの沈黙。
祐一「名雪…」
名雪「ん?」
祐一「どうして裸なんだ?」
名雪「お風呂に入ってるからだよ?」
祐一「どうして風呂に入ってるんだ?」
名雪「祐一の背中を流してあげようようと思って…」
祐一「恥ずかしくないのか?」
名雪「……とっても恥ずかしいよ」
祐一「なら…」
名雪「でも…祐一なら…がまんできるもん」
上目遣いでこちらを見てくる。
祐一「……」
生唾を飲む祐一。
名雪「祐一……」
祐一「名雪……」
自然と近づく顔と顔。
お互い顔が近づくにつれ目を閉じていく。
そして…唇が……
名雪「やっぱりだめ!」
ゴンッ…
祐一を突き飛ばす名雪、壁に頭をぶつける祐一。
祐一「あうう……」
急速に意識が無くなっていく。
名雪「…そんなっ、だめだよ祐一、今はだめっ…ああっでもいいかも…でも子供をつくるにはまだ早いよ〜」
1人で身悶える名雪。
湯船に沈みゆく祐一。室内に響くのは名雪の嬌声のみ……
………ゆ……ち…さん……ゆう…ちさ…ゆういちさん…祐一さん
自分を呼ぶ声に少しづつ意識がはっきりしてくる。
祐一「……ううっ」
栞 「祐一さん!大丈夫ですか?」
祐一「…っ…ここは?」
栞 「お風呂場です」
祐一「え〜っと…確か…名雪に突き飛ばされて……」
唐突に黙る。
栞 「なにか?」
祐一「……」
栞 「……?」
にこにこと祐一を見る。
沈黙。
祐一「ええっと…」
栞 「湯船に沈んでた祐一さんを上げたのは私とお姉ちゃんです」
祐一「そうか……ありが………なにぃ!」
栞 「どうかしました?」
祐一「ということは……2人そろって俺の裸を…」
栞 「はい……ばっちり」
頬を赤らめうつむいて言う。
祐一「ああああ……」
すでに瞳は虚空を見ている。
栞 「お姉ちゃんは……祐一さんの体を見てからはずっとにやにやしてました」
祐一「ううう……それはそれとして……何で栞まで風呂に入ってるんだ?
栞 「お姉ちゃんや名雪さんに負けるわけには行きませんから」
と真剣な栞。
祐一「香里は?」
栞 「名雪さんをお風呂から引きずり出して行きました…」
祐一「そうか…」
栞 「そう言うことですので、ゆっくり”2人きり”でお風呂に入りましょう」
にっこり微笑みながら言う。
祐一「そうだな……何たって彼女だしな」
栞 「はい!」
香里「このボケ!!いつまで妄想してるんや!!目ぇ覚まさんかい!!」
ごすっ…ばたんっ…
(ちなみに”ごすっ”は香里が名雪を殴りつけた音、”ばたんっ”は床に崩れ落ちる名雪の音です。)
香里「抜け駆けして相沢くんと一緒に風呂にはいるなんて!!計画では私が入るはずだったのに!!!」
祐一「……」
栞 「お姉ちゃんが……キレてます」
祐一「名雪…大丈夫かな?」
栞 「さあ……」
祐一「………」
栞 「…………」
祐一「…………」
祐一・栞「はあっ……」
2人同時にため息をつく。
祐一「とりあえずさっさと上がろう……」
水瀬家の夜はふけてゆく……
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ども…孤児です…
「祐一は誰のもの」シリーズ第6話お届けします。
内容については……聞かないでください(;;)
とりあえず入浴シーンまで来ました。次は大人の時間帯です。
暴走姉、妄想猫好き女、薄幸の少女、男の敵A
この4人が今後どんなふうになるのか予想はついてませんが、精一杯
書いていきたいと思っています。
この6話を楽しみにしてくださっていた方々、
また直接私を応援して下さったaquaさんに感謝の意を表して…
1999 12/10 時の孤児 拝
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