祐一は誰のもの? VOL.8


コンコン…
祐一の部屋のドアがノックされる。

起きない祐一。

コンコン…
2度目のノック…

祐一「ん……?」

コンコン…
3度目…

祐一「誰だ?」
目を覚ました祐一は、扉の向こう側の相手に声をかける。

??「……私です……祐一さん」

扉の向こうから聞こえてきたのは、女の子の声。

祐一「栞……か?」
声は確かに栞に似ていた…

??「あっ……えっと…その…」
とまどっている女の子。

祐一「入ってこいよ、構わないから」
完全に栞だと思ってしまった祐一はそう声をかける。

??「あっ…はい!」
嬉しげな返事が返ってきて、ドアが開く。

人が入ってくる気配。そして…

祐一「どうしたんだ?」
と問う祐一に答えずに聞いてくる。

??「一緒に寝ても良いですか?」
祐一「ああ…構わないぞ」
??「では…」
と祐一の了解を得た彼女はためらいもなく祐一の布団に入る。

祐一「他の2人はどうしたんだ?」
??「はい…ぐっすり眠っています」
祐一「そうか…」
答えた祐一の声が少々嬉しげである。

祐一「しかし…良く名雪と香里を寝かせたな…すごいじゃないか…栞…」
彼女をすっかり栞だと勘違いしている祐一。
??「ふふふ……」
祐一「どうした?栞?……って!香里か!」

香里「ふふふ……祐ちゃん…お・ま・た・せ!」
栞だと思ったものが香里だとわかり、逃げ出そうとする祐一だったが、香里に抱きつかれ、逃げられなくなる。
祐一「栞はどうした!?」
香里「秋子さん秘蔵のジャムを食べて、感動のあまり卒倒したわよ」
祐一「秘蔵の…ジャムって…」
香里「そう…」
祐一「名雪は!?」
香里「ふふっ…栞お手製の睡眠薬でぐっすりよ…」
祐一「なっ…」
動揺する祐一…助けは…無い

香里「ふふふ……ふふふふ…邪魔者はいないわ…さあ祐ちゃん!めくるめく愛の世界へ共に旅立ちましょう!!」
祐一「うっ……おっ、オレは年増には興味がないんだ…」
香里「そうでもないでしょう?」
祐一「そうでもないことはないぞ」
香里「祐ちゃんったら…恥ずかしがり屋さんなんだから!」
祐一「……いや…別に恥ずかしがってるわけじゃないんだが……」

香里「恥ずかしがらないで堂々と自分を出して…ね?祐ちゃん」
祐一「自分を出せって…」
香里「下の方は堂々と自分をだしてるわん…あとは祐ちゃん本人だけ…」
祐一「は…離れてくれ…頼むから…」
香里「どうして?」
そう言いながら、逆に顔を近づけてくる香里。

祐一「…香里…息が荒いぞ…」
香里「これから愛する人と愛を確かめ合うんですから仕方ないわ…」
恥ずかしげにつぶやく香里。

祐一「いや…オレは別に香里のことを愛してないんだけど…」
香里「いやん!愛してるなんて口に出して言わないで…お互い判ってることなんですから!」

祐一「誰でも良いから……助けてくれ……」
香里「ふふっ……誰も私たちの愛の営みを邪魔することはできないのよ!さあ祐ちゃん…私と一緒に…」
と言いながら祐一の服を脱がしにかかる。
祐一「やめてくれぇぇ〜」
半泣き状態で服を脱がされまいと抵抗する祐一

香里「祐ちゃんの子供のお母さんは私なの〜」
るんるん気分で服を脱がしにかかる香里、そこへ……

栞 「祐一さんの子供は私が産みます!」
ガンッ!
そのまま撃沈する香里、ベッドの脇には栞…
祐一「し…栞ぃ〜助かったぁ〜」
栞 「危なかったですね…」
祐一「ああ…ホントに危なかった…」
栞 「とりあえず…お姉ちゃんを退けますね?」
祐一「ああ…そうしてくれ…」

ずりずり……
栞に足をもって引きずられながら部屋を出ていく香里。
しばらくして栞が戻ってくる。

栞 「ふう……危ないところでしたね祐一さん」
祐一「……ああ」
少々惚け気味の祐一。
栞 「祐一さん?」
祐一「ん?ああ……どうした?」
栞 「ちょっと惜しかったかな、とか思ってませんか?」
祐一「……ん…まあな」
そう言ってにやりと笑う祐一、ふざけているのは身の安全が確保されて安心したからだったのだろう。

栞 「ひどいです〜」
ほほをふくらませ、非難する栞。
祐一「ははは…すねた栞も可愛いぞ」
話を逸らしたい祐一。
栞 「そ…は…はずかしいです」
どうやら真っ赤になってうつむいてしまったらしい栞。
祐一「それで…部屋に戻って寝るのか?」
栞 「えっ?……できれば…祐一さんと…」
祐一「じゃあ…入れよ」
と自分の布団にはいるように言う祐一。どうやら話を逸らすことに成功。

栞 「お姉ちゃん…すごく変わってしまいました」
祐一と同じ布団に入りながらそんなことを言い出す。
祐一「そうだな、まるで性格が反転したみたいだな」
栞 「でも…今のお姉ちゃんは大好きです」
祐一「そうなのか?」
栞 「はい…一緒に居てて楽しいです」
祐一「ふうん…オレは…迷惑だけどな」
迷惑そうに言うが、実は口調はまんざらでもないようだ。
栞 「実は嬉しいんじゃないですか?」
すかさずつっこむ栞。

祐一「……栞」
栞 「はい?」
祐一「オレの一番はおまえだ」
栞 「祐一さん…」
布団の中で向き合ったままそんな会話をしている。

  時を同じくして、隣の部屋では名雪が目を覚ましていた。

祐一「栞…」
栞 「祐一さん……」
2人の唇が…近づく。

  目を覚ました名雪は…祐一の部屋へ向かっている。どうやって自分を縛っていたロープを外したかは不明である。

栞 「ん…」
互いの唇が触れ、離れる。続いて……

祐一「栞…」
栞 「祐一さん…」
そうつぶやき合って、再び唇を重ねる。
2度目のキスは…互いの唇をむさぼり合うようなディープキス…

  その間に、祐一の部屋のドアが静かに開き、名雪が入ってくる。その手には…鋼鉄製(なぜか秋子さん謹製)目覚まし時計が握られていた。

邪魔者が部屋に入ってきていることに気づかずにキスを続ける栞と祐一。

静かに唇を離し、
祐一「栞…いいか?」
栞 「はい…大丈夫です」
そして、祐一が栞のパジャマに手をかけようとする…少し遅れて…

名雪「なにが大丈夫なのかな〜?」
ごっ!!
栞 「はうっ!?」
(秋子さん謹製)鋼鉄製目覚ましに頭を殴打される栞。そのまま気を失う。
祐一「栞!?おい!!大丈夫か!?」
気を失った栞を介抱しようとする祐一、けれども

名雪「さ!栞ちゃん、私の部屋でお姉ちゃんと一緒に寝かせてあげるからね」
そう言って栞を引きずって部屋を出ていく名雪。
祐一「名雪、おまえ…」
名雪「ふふ、祐一の”はじめて”は私のものだよ〜。」
口調はいつもと同じ、しかし放っている雰囲気は……今から獲物を狩ろうと舌なめずりしている猛獣であった。

祐一「……部屋に帰ってそのまま寝てくれ…名雪」
名雪「寝れないよ〜、だって…一晩中祐一の”おあいて”をしないとだめだからね〜、祐一待っててね〜この”生ゴミ”処理したらすぐ戻ってくるから〜」
栞 「わ…たし…生ゴミ……ではあり…ませ…ん」
祐一「し…栞…」
何もできずにおろおろする祐一。
名雪「じゃあ…粗大ゴミだね〜」
そう言って、栞を引きずり去ってゆく名雪。

果たして……祐一は眠ることができるのか?そして、祐一の純潔は!?(爆


vol9へ


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こんばんは〜8話できました〜
ますますみんな壊れてきてます……(^^;;
次回話はたぶん、みんな落ち着いてくると……
…………落ち着いてくれると良いな〜と思ってます(ぉぃ

それでは……
                2/16      時の孤児
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