小さな勇気は永遠になる 2

 

 香里には自分の気持ちがわからなかった。
 本当に自分が北川のことを好きなのか?
 それとも、栞たちに言われたせいなのか?
「よう、美坂」
 そう思うようになってからというもの、
「…おはよう」
 どうしても北川のことを避けてしまう。
 接し方が素っ気無くなる。
「どうした美坂? 調子悪いのか?」
 怪訝そうに北川が言うが、
「なんでもないわ……」
 すべてがこうである。
                       *
「あの…なんだかお姉ちゃん最近おかしいんです」
 祐一とのデート中栞がそんなことを言い出した。
「変?」
「はい。なにか思い悩んでるみたいで……」
「やっぱり、あのことかな」
「はい。私、お姉ちゃんにも幸せになって欲しくて……でも………」
「北川は香里のこと、好きらしいぞ」
「え?」
「でも、最近嫌われてるみたいだって」
「…………」
「香里はあの反応振りからしてな、北川のこと好きだと思う」
「はい」
「あとはあいつら次第かな。舞台設定はできたんだから」
「でも……」
「大丈夫だって。どうにかなる」
「祐一さんが言うとそう思えてしまいます」
「恥ずかしい奴だなー惚れ直したか?」
「そんなこと言う人嫌いです」
 にっこりと栞は笑った。
                       *
「何? 話って?」
 中庭の物陰に香里は北川に呼び出された。
「えっとだな………」
「……………」
「俺、美坂の事が好きだ」
「え!?」
「最近避けられてばかりで、でも俺美坂のこと好きだから」
「あ……え…………」
 わからない。
 自分の気持ちがわからない。
 涙が溢れる。
 理由のわからない涙。
「あの、その………」
 どうしようもできなくて、
 香里は逃げ出した。
 その理由さえわからず………
                       *
 家に帰って香里は栞に、
「どうして? どうしてなの? 自分の気持ちがわからないの」
 それは悲痛な心の叫びだった。
「お姉ちゃん。北川さんのこと嫌い?」
「それは、ないと思う。でも男の人として好きかはわからない」
「あのね、私、人を好きになるってことは、自分より相手のことが大切になるってことだと思うの。
 祐一さんは私のためにいろんな我儘を聞いてくれて、
 私は祐一さんのためなら何でもしようって思うの。
 好きになるってそういう事だと思うの。
 だから……」
「……私は、多分怖いの。北川君が、私が栞を避け続けたような酷いやつでも好きでいてくれるか?
 そんな自分勝手な私でも好きになってくれるか?
 その答えを聞くのが怖かった」
「お姉ちゃん?」
「また逃げてしまうところだったわ。でも、大丈夫。ちゃんと答えを聞くから。多分北川君だから聞くんだと思う。私はどうやら北川君のことが好きみたいだから」
                       *
 香里は語る。今までの自分を。
 それでも自分を受け入れて欲しくて、
 そんな我儘を聞いて欲しくて、
「みんな自分が大切さ。でも、美坂は傷付くのを承知で俺に話してくれた。それでいいじゃん。
 俺は美坂のことが好きっていう気持ちは変わってないから」
「……ありがとう。私も好きよ。」
 たった一つの小さな勇気。
 そこから二人の物語は始まる。
                       *
 中庭。
「相沢君。また、昨日栞と遊びまわったでしょ? 勉強してるの?」
「香里だって………」
「いいのよ私は。ちゃんとしてるからいいの」
「北川と?」
「ええ。栞は学年が違うから教えてもらえないわね」
 楽しそうに香里は言う。
「なら、名雪に………」
「残念。名雪、最近気になる人がいるのよ。相沢君のことばっかり構ってられないのよ」
「う………」
「祐一さん、お姉ちゃん!」
 栞が弁当箱をもって走ってくる。
 北川も一緒だった。
「さっき北川さんと話してたんですけど」
「なんだ?」
「結婚式は合同でしましょうね」
『気が早い……』
 語尾は違ったが、祐一と香里は同時に言っていた。
 これも二人の物語の1ページ。
 そのなんでもない日常が、二人の物語になる。
 物語が完結するか否かは、また別の話。
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 なんだかクサクサですね。
 はしょりすぎの感があります。
 こんなのでもレスください。
 また、何かを書く原動力となりますので。
 では、ばーははーい! 

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