今でもあなたが好きだから・・・

 

      祐一へ
   
      こんにちは。
      もうすっかり冬だね。こっちでは、もう初雪が降ったんだよ。
      今年も寒くなりそう……
      お母さんから祐一がうちの家に住むことになるって聞きました。
      久しぶりに会えるね……
      祐一を最後に見たのは七年前だから、七年ぶりだね。
      月日が流れるのって早いんだなって、驚いてる。
      わたしすぐにおばあさんになっちゃうね。
      そっか、七年か……
      祐一はどうしてた?
      わたしはいろいろあって、何から話せばいいかわからないよ。
      今度あったら、いろいろと話をしようね。
      今から祐一に会えるのが楽しみだよ。
                     *
                     *
 机に向かってうなりながら手紙を書いていたら、もう2時間ぐらいたっていた。
 ふう…変なところは無いかな……
 何度も何度も手紙を読み返す。
            『それじゃあ祐一、これからもよろしく』
            『12月1日   名雪より』 
 最後にそう締めくくって手紙は終わっている。
 本当は……もっと別の終わり方をしたかったんだけどね……
 うん、これでOKだよ。
 便箋を封筒に入れて、
 表に祐一の住所と名前。
 そして、裏にわたしの住所と
 水瀬名雪……
 名前を書いて……
 封をする。
 住所これであってるよね?
 うん。
 わたしは立ち上がって部屋を出た。

「あら、名雪出かけるの?」
 お母さんは、丁度夕飯を作っているところだった。
 そっか、もうこんな時間なんだ……
「うん、手紙を出しに行くの」
「祐一さんに?」
「わっ、どうしてわかったの?」
「他に手紙を出す人なんていないでしょ?」
「うー…」
 お母さんはなんでもお見通しだった。
「外は寒いから気をつけるのよ」
「うん」
 コートを羽織って家を出る。
 お母さんの行ったとおり寒かった。
 風も強い。
「わっ、わっ…」
 封筒が飛んでいきそうになる。
 急いでコートのポケットの中に入れる。
 折れ曲がらないよね?
 ちょっとポケットをかばいながら歩く。
 空はもう夕焼けから、星空へと移り変わっていた。
 手紙を出すようになったのは、七年前、祐一と会わなくなってから……
 わたしが作った雪うさぎ……
 祐一のことが好きだって言って……
 祐一にプレゼントしたら……
 壊されて……
 嫌われたんだと思った……
 でも、やっぱりわたしは祐一のことが好きで……
 だから、手紙を書くようになった……
 返事は来なかった一度も来なかった……
 届かなかったのかって、はじめは思ってた……
 でも、だんだんこう思うようになった。
 祐一はやっぱりわたしのことが嫌いで…手紙なんて出す気になれなかったんじゃないかって…
 でも、わたしは手紙を出し続けた。
 嫌がらせだって思われてるかもしれない……
 でも、やっぱり好きだから……
 想いを伝えたいから……
 でも、わたしにもまだ勇気が足りない……
 いつも手紙の最後に書きたい一言が……
 どうしても書けない……
         『祐一のこと、今でも大好きだよ』
 って……
 
 郵便ポストの前に辿り着いた。
 ゆっくりと投函する。
 そして、そのままもと来た道を戻る。

 もうすぐ祐一がうちにやって来る。
 そのときわたしは言えるだろうか?
 手紙じゃなくて……
 自分の声で……
 祐一の目の前で……
 はっきりと…… 
          『祐一のこと、大好きだよ』
 って……
 言えるだろうか?
 ずっと伝えたい言葉……
 この想いは、祐一に届くかな……
「ふぁいとっ、だよ」
 なんとなく自分で言ってみたら…
 気分が軽くなった……
 今考えても仕方ない。
 すべては、祐一に会ってから……
 そして、伝えよう……
 今でも祐一が好きだから……
 わたしのこの想いを……

 星が綺麗だった……
 あいにく流れ星は無かったけど、
 わたしは、星に願った。
 わたしにほんの少しだけ勇気をください、って……

 さあ、帰ろう…
 お母さんが夕飯を作って待ってる…
 わたしは、駆け出した。
 星に願いが届いたような気がした……

                       fin

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