私には妹がいる
『相沢君』
『奇跡って、そんな簡単に起こるものじゃないのよ』
そう、奇跡はそんな安っぽいものじゃない。
『栞さんの病気が助かる見込みはほとんどありません』
かかりつけの医者にそう宣告されたのはいつだっただろうか。
もう助からないのかと聞いたら
『奇跡でも起きれば……』
そう言われた。
私には妹なんていない。
いないことにした。
どうせいなくなるのなら、いないのと同じ。
そう思えば傷つかずに済む。
そう、思っていた。
それなのに……
『奇跡だな』
相沢君がそんなことを言うから……
奇跡を願ってしまう。
栞が助かればと願ってしまう。
栞のことを思い出してしまう。
お願いだから思い出させないで!!
栞なんて知らない!
私に妹なんていないの!
そう……
悲しむことなど無いはずなのに……
涙が溢れそうになる。
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栞が毎日相沢君に会いに来ているのは知っていた。
(そんなこと知らない!)
栞が昼休みになるとあの子の大好きなアイスクリームを相沢君と食べているの
を知っている。
(栞なんて知らない!)
栞が相沢君のことが好きだということを知っている。
(それが何なの!?)
忘れようとすればするほど辛くなる。
もうすぐいなくなるのに………
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『相沢君』
『ひとつだけ答えて』
『その子のこと好きなの?』
彼は好きだと言った。
『…そう』
もうすぐ栞は消えてしまうのに……
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『二週間なんてあっという間』
『きっと…一週間はもっと短いでしょうね』
『妹のこと』
そう妹のことだ。
全て相沢君に話した。
栞の夢。
病気のこと。
あと一週間の命だということ。
そして…私のが栞を拒絶した理由………
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それでも相沢君は栞と残された時間を過ごそうとした。
彼は強い。
そう思った。
そして、わたしは……
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結局忘れることなんて出来ない。
私は栞が好きで、
大好きで、
だから忘れなくて、
辛くて、
『あの子、何のために生まれてきたの?』
運命は残酷だ。
神様がいるのなら、一生恨む。
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栞は許してくれるだろうか?
今まで拒絶しつづけたのに、手のひらを返したように優しくなるなんて。
勇気が無い。
ここまで来てまだ自分が傷つくのを嫌がる自分が嫌になった。
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12月29日
名雪に付き合って百花屋にいくと、相沢君と栞がいた。
大きなパフェを囲んで私を除く3人はパフェを食べていた。
私は……
私は………
私は栞と居たい。
残り少ない人生を綺麗なものにしてやりたい。
いや……生きて欲しい。
酷いことした分、一緒に楽しいことをしてやりたい。
だから……
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『祐一の大切な人だもん』
名雪はそう言った。
『ほんと見る目が無いわね』
相沢君は見る目が無い。
自分が傷つくのが嫌で、
妹を拒みつづけるような、
『私の妹なんだから』
私はもう逃げない。
Fin
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どうでしたでしょうか?
なんだか【香里の勇気】の前書きめいたものになってしまいました。
かおりんはいいお姉さんだと思います。
しおりんは幸せものですね。
人にこんな風に愛されたいものですね。