INFORMAL PROMISE 2
3.そっと……
祐一「………おはようございます」
秋子「…おはようございます、あら?今日は日曜日ですよ?」
いつもの日曜日。
祐一「ええ…よくわからないんですが、どうやら夢を見てたみたいです」
秋子「夢…ですか…」
祐一「なんだかとても恥ずかしい夢を見てたみたいです。起きたら心臓がドキドキいってましたから……あと……懐かしい感じがしたのは覚えています」
秋子「…そう…ですか……」
それを聞いてしばし考え事をする秋子。
祐一「??どうかしましたか?」
怪訝そうに秋子を見る祐一。それに気がついて、
秋子「いえ…大したことではないですから気にしないでください。それより、朝食食べますか?」
祐一「はい、お願いします」
実は秋子にとっては大したことで済ませられる事ではなかったのだが、話すつもりが無いのだろう、いつもと変わらない様子で話を逸らした。祐一のほうも聞き出すつもりはないようで普通に答える。
秋子「祐一さん、パンでいいですよね?」
祐一「はい、お願いします。何か手伝いましょうか?」
秋子「そうですね……じゃあお皿を並べていただけませんか?2人分だけなんですが」
祐一「はい、並べておきますね」
少しして、テーブルに2人分の朝食が並ぶ。席に着く2人。
秋子「じゃあ頂きましょうか?」
祐一「頂きます」
しばらくはお互い何も話さずに食べていたが……ふと、秋子が尋ねる
秋子「祐一さん、学校の方は楽しくやっていますか?」
祐一「はっ?えっ?まあ普通だと思います。友達もできましたし……」
秋子「勉強の方はどうです?」
祐一「あは…まっ…まあそれなりには……」
どうやらあまり勉強していないらしく、ごまかし気味に言う。
秋子「そうですか…勉強はしておくに越したことはないですから…それに進学でしたよね?」
祐一「はあ…そのつもりです」
秋子「大学はどこを?」
祐一「はい、自分の学力で行けるところを選ぼうと思います。それと出来ればここから近いところをと思ってます」
秋子「そうですか………」
祐一「はい……」
秋子「………」
祐一の顔をじっと見る。
祐一「うっ………」
なぜか動揺している祐一。
秋子「立ち入ったことを聞いても良いですか?」
祐一「はあ…なんですか?」
秋子「将来はどうするつもりなんですか?」
祐一「さあ……ちょっと今は考えてないです」
考え込む祐一、それを見て、
秋子「あまり考え込まなくても良いですよ、急ぐことはないですから…」
祐一「はい……」
そこでお互いの目が合う。
祐一「……」
秋子「……」
そのまましばし沈黙。ややあって、
祐一「とりあえずご飯を食べます……」
秋子「……そうしましょう」
そして、食器のふれあう音だけが響くようになる。
祐一「ごちそうさまでした」
秋子「はい、おそまつさまでした」
ほぼ同時に朝食を食べ終わり、祐一は後かたづけを手伝おうと食器を持って行こうとしたが、
秋子「別に良いですよ、祐一さんはくつろいでいてください」
と微笑みながら言われてしまい、結局リビングでぼ〜っと座っていることしか出来ずにいた。台所からは食器がふれあう音と水の流れる音が聞こえてくる。
10分後…
秋子「祐一さん、退屈そうですね」
台所を片付けてリビングに入ってきた秋子さんにそう声を掛けられる。
祐一「はっ…ええ…日曜日に朝早く起きてしまったせいか、どうも動く気になれなくて…今日は特に用事もないですから……」
秋子「お休みの日ですから、ゆっくりすればいいと思いますよ」
祐一「はい、そのつもりです」
秋子「私は少ししたら買い物に出ますから留守番お願いしますね?」
祐一「??………はい……」
なにやら怪訝な顔で返事をする祐一。
秋子「どうかしましたか?」
表情の変化を見逃さずに声を掛ける秋子。
祐一「いつもは昼過ぎに買い物へ行くのに今日はどうかしたんですか?」
秋子「なんとなくです……今日はそうした方がいいような気がしただけです」
祐一「気まぐれですか…」
秋子「そうです」
とそのまま会話がとぎれる。
まあ天使の通り道と言っておきましょうか…そして、
この少しの”間”に何故か動揺した秋子が、
秋子「えっ…あっゆっ祐一さん?」
祐一「あっはい?」
秋子「買い物一緒に行きませんか?」
と、本人も訳が分からない状態のまま祐一を買い物に誘ってしまう。
祐一「は!?」
秋子「……いっいいえ!気にしないでください、何となく言ってしまっただけですから」
明らかに動揺しているとわかる口調でまくし立てる。
祐一「………?」
少し心配げに秋子を見やる。
秋子「じっ…じゃあ……行ってきますね?留守番よろしくお願いします」
この場から逃れようと平静を努めて言い、そそくさとリビングを出ていこうとする。
祐一「あっ、秋子さん」
秋子「はいぃ……なんでしょう?」
祐一「えっと…その、たまには買い物についていこうかなと思いまして…」
秋子「祐一さん……」
祐一「ただの気まぐれですよ」
はにかみながらそう言う。
少しして、
秋子「ふふっ…そうですか、じゃあ用意をしてきてください」
そう言われて返事をして、階段を上がっていく祐一。
それをじっと見つめる秋子。
このときの祐一に対するまなざしは、いつもと違うように感じられた。
それは、子供を見守る母のまなざしでなく、もっと別の……
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「INFORMAL PROMISE」第2話お届けします。
第1話を読んでもなにがなんだか判らない方がおられると
思いますが、この話(第2話)を読んでおわかりの通り、このシリーズは
祐一&秋子さんのSSです。
タイトルについてですが、ピンと来るのが浮かばず、とりあえず
こんなのになっちゃいました。悪くはないと思うんですけど……
1999年 12月 時の孤児 拝
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