コスプレと彼女の想い

 

たくさんの人が見てくれる。
たくさんの人が喜んでくれる。
でも・・・あの人は違った。
あの人の目にあたしは映ってなかった。
あの人は喜んでくれなかった。
あの人は怒ってた。
なんで・・・?
どうして・・・?
(何で、君は喜んでくれないの・・・?千堂くん・・・)

あたしは、千堂くんを追いかけて、コスプレスペースを飛び出していた。カメコくん達の声も、明確な声としてではなく、音としか聞こえなかった。
みんな喜んでくれたのに、彼は怒ってた。
「もういい。勝手にしろ!!」
そう言って、去っていった千堂くんの背中がとても寂しそうに見えた。
「もういい。勝手にしろ!!」
「もういい。勝手に・・・」
「もう・・・」
千堂くんの言葉が頭の中を何度も何度もこだまする。
分からなかった。
何で、千堂くんがあんなに怒るのか。
何で、彼千堂くんがあんなに寂しそうにするのか。
でも、なぜか、胸が苦しい。
このままだと、絶対にいけない。そんな気がしてならなかった。

「ブラザー2」
そのスペースは無人だった。
(ここじゃない・・・)
あたしは、別のところを探しに行った。
(千堂くんの行きそうな場所・・・。コスプレスペースにはいないだろうな。準備会スペースなんて、普通は行かないし・・・。誰かのスペースかな?でも、誰のところか分からないなぁ。・・・改めて考えてみると、あたしって千堂くんのこと何にも知らないんだ)
そう思うと、なぜか寂しくなる。今までは、なんともなかったのに。
親しかった男の友人は結構いた。性格が性格だから、性別なんか気にせず、わけへだてなく接していた。つまり、あまり意識してなかったのだ。
でも、千堂くんだけはなぜか違った。最初はなんともなかった。ただの友人として考えていたから。
(でも・・・)
いろんなスペースをまわって、気がついたら、千堂くんのスペースに戻ってきてた。
(あっ・・・)
そこには、千堂くんがいた。
いつも通りに売り子をしている。いや、少し違った。
(やっぱり・・・さっきのことが原因なの?)
千堂くんには、いつもの元気が感じられなかった。その原因はさっきのこととしか考えられなかった。
あたしは無意識に千堂くんに近づいていった。そして、
「玲子ちゃん・・・」
千堂くんの声が聞こえた。いつもとは少し違う呼び方だった。あたしには、どういうあたしに対しての呼びかけなのか分からなかった。
普段のあたし・・・。コスプレをしているあたし・・・。バイトをしているあたし・・・。
「怒って・・・るの?」
千堂くんは一見怒ってないように見える。でも、さっきのことを考えると、怒ってるようにしか見えなかった。
「いや。怒ってなんか無いよ」
(怒ってないなら、何でそんなに素っ気ないの・・・?)
あたしは内心泣きそうだった。
千堂くんには嫌われたくない。素っ気ない態度なんかとられたくない。そんな風に思ってしまう。
だから、あたしは一生懸命説明した。みんなが喜んでくれたことを─。少し、冗談を交えながら。
でも・・・何を話しても、千堂くんの顔が晴れることはなかった。いや、逆に、下火になっていた火に油を注いで、もとの勢いを取り戻させてしまった。
「喜べねぇよっ!!」
千堂くんが怒鳴った。
「耐えらんねぇんだよっ!!」
怒っている。そして、心底悲しそうだった。

「コスプレってのは愛じゃなかったのかよっ!!」
千堂くんが去ったスペースの前であたしは呆然と立ちつくしていた。千堂くんの言葉があまりに、痛かった。
(あたしは・・・何をしていたの?)
心が痛かった。
(好きでもない、よく知りもしないキャラのコスやって・・・)
そして、何より
(彼を傷つけて、彼に嫌われて・・・)
そのことが痛すぎた。
もう、コスプレスペースに戻る気力もなく、あたしは着替えて帰路についた。

「コスプレってのは愛じゃなかったのかよっ!!」
「喜べねぇよっ!!」
家についても、千堂くんの言葉が頭から離れなかった。
あたしは電話をとって、千堂くんの家の番号を押していた。
「はいっ、もしもし!?今忙しいんだけど」
千堂くんのそんな声が聞こえた。
「ごっ、ごめんなさい」
あたしは、そう言って電話を切ってしまった。
(やっぱり・・・まだ怒ってる)
電話が鳴っている気がしたけど、とる気になんてなれなかった。

ピンポーン
あたしは、意を決して、インターホンを鳴らした。バイトに行く前に、千堂君に会おうと思ったのだ。
千堂くんが出てきた。多少ぎこちなく挨拶を交わす。
「えっとさ、昨日のことか少し話があるんだけど・・・」
それを聞くと、なぜか怖くなった。
「あっ、あたしそろそろ行かないと」
そう言って、あたしは走り出していた。
(きちんと話しなきゃいけないのに・・・)
バイトをしている間も、結局千堂くんのことが頭から離れなかった。

「あっ、玲子ちゃん」
ふいに呼ばれたので、見てみるとそこには千堂くんがいた。
「千堂くん」
あたしには、名前を呼ぶことが精一杯だった。
「ちょっと、話があるんだけど・・・いいかな?」
「う、うん。バイト終わりだから、少し待ってて。着替えてくる」
あたしはそう言うと、奥へ着替えに行った。

(きちんと話して、謝らなくちゃ・・・)
あたしは、着替えながら自分に言い聞かせていた。
自分の犯した過ち。今なら、それを全て理解することが出来る。
あたしは、意を決して更衣室から出て、千堂くんのいるところへ向かった・・・。
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あ・と・が・き〜〜〜♪(笑)
どもー。おひさおひさで三千里〜〜♪(謎)の守護雷帝です。
今回は、玲子ちゃんSS〜♪ってことです。玲子ちゃんもなかなかいいですよねぇ〜。(でも、雷帝はあさひちゃん属性です。全員クリアして、全員いいとは思うんですが)
結構好きな展開です。んで、その中でも、一番好きな場面を玲子ちゃん視点でSSにしてみました。
いかがでしたでしょうか?実は、少しだけ玲子ちゃんが千堂くんに恋愛感情を持っていると言うことを匂わせたんですよ。まあ、おわかりでしょうけど(笑)。
雷帝は、あれだけ露出の激しいコスをするのは単純に目立ちたいからと言うわけではなく、無意識に彼に振り向いてもらいたいという本能的な何かが働いたのではないかな?と思ったんです。・・・まあ、世間には露出狂だの何だのかんだのという人間もいますが、玲子ちゃんはそんな気キャラじゃないでしょう。とゆーか、純愛系のゲームでそんなキャラ誰もつくらんでしょうね(笑)。
だから、あのコスには何か意味があるのではないかな?と思って恋愛感情を抱いている感じを匂わせたんです。
まあ、宇宙の彼方〜イスカンダルへ、はるばぁ〜るのぞぉ〜むぅ〜♪ってほど的外れなことは言ってないとは思うんですが・・・(汗&笑)。
ま、まあ、そんな感じです(謎)。
出来たら、感想などをお願いします。それでは、ごっきげんよーーーーーーーーーーーーーーーっ!!

執筆 守護雷帝 作成日 11/13

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