一つ屋根の下 〜引越し編〜
四月吉日。
祐一、舞、佐祐理の3人は約束通り同居することとなり、マンションの一室に部屋を借りた。
そして今日は引越しである。
「最近は、○本引越しセンターとかがあって楽だよな」
部屋の中に山積みになっているダンボール箱を見てしみじみと祐一は言った。
男手は祐一一人。舞はまだましだろうが、佐祐理はあまり戦力にならないだろうから、約1.5人でこれだけの荷物を運ぶとなるとぞっとしない。
ぽかっ
「祐一…さっさと片付ける」
感傷に浸っている(?)祐一に舞がチョップする。
「わかってるよ、殴ることないだろ」
「舞はですねえ、嬉しいんですよ。佐祐理と、大好きな祐一さんと一緒に住めて」
ぽかっ
『大好きな』という言葉に反応して舞が佐祐理にチョップする。
「舞、佐祐理さん。遊んでないで荷物整理しようぜ。そうじゃないと今日は布団なしで寝ることになっちまう」
「…それは嫌」
「それじゃあ、頑張って整理しましょー!」
三人は荷物を片付け始めた。
「おい舞、やっぱりアリクイのぬいぐるみもって来たんだな」
「祐一と佐祐理に貰ったから……」
「そうか……」
ぽふっ
舞が大きなアリクイのぬいぐるみで祐一をつつく。
「…ぶー……」
「それは豚だろ? それにアリクイって鳴くのか?」
ぽかっ
「いて」
「祐一は細かい…」
「お前が大雑把なの。お前にかかったら象が月に向かってコケコッコ−と鳴くかもしないぞ」
「象さんはそんな鳴き方しない…」
「そうじゃなくて……」
「あはははーっ、楽しそうですねー」
「おわっ! 佐祐理さんそのぬいぐるみ…」
「ハムスターさん……」
「それって、50万円から値下がりして8000円ぐらいになってたあの……」
「はいそうですよ」
「いくらしたんだ?」
「3000円ですよ」
(さらに下がったのか)
「やばい、全然片付いてない」
ぬいぐるみの話で盛り上がってたせいで気づいたらもう昼だった。
「……祐一が悪い」
「俺かっ!?」
「祐一がアリクイさんの話するから……」
「あはははーっ、困りましたねー」
「急いで片付けるぞ!」
「……お腹すいた」
「そういえば佐祐理もお腹がすきました」
「そんなの後だ」
ぽかっ
「痛っ!」
ぽかぽかぽかぽかぽかぽかっ!
「わかった! わかったよ!」
「牛丼……」
「はいはい」
仕方なく祐一は出前で牛丼を注文した。
ぐしゅぐしゅ……
「はあ、まだ半分以上残ってるぞ」
ぐしゅぐしゅ……
「昼からは、頑張りましょう」
さすがに佐祐理も苦笑している。
「……ここの牛丼おいしい」
「お前だけ異世界にいるな」
「?」
「はー……疲れた」
全て片付け終わったころには午後9時を回っていた。
「お腹すいた」
「佐祐理、何か買ってきますね」
そう言って佐祐理は近くのコンビニまで買い物に行った。
「舞、テレビでも見とくか?」
「…うん」
テレビをつけて床に二人で座る。
「ソファー買わないとな」
「……別に構わない」
「でも、尻が痛くなるぞ」
「祐一と佐祐理がいればそれで構わない……」
舞が祐一にもたれかかってくる。
「ま、舞?」
「すー…………」
舞は眠っていた。
引越しで疲れたのだろう。
「舞、好きだぞ」
祐一はそっとつぶやいた。
「あれ? 祐一さん、舞寝ちゃったんですか?」
「そうなんだけども……どうしよう、俺動けない」
「あはははーっ、どうしましょう?」
「おい、舞。飯だぞ」
ぷにぷに
ほっぺたをつついてみても起きない。
「よっぽど疲れたんでしょうね」
「安心しきってるよな……俺が男だってこと忘れてないか?」
「祐一はそんなことしないから……」
「うわっ!」
ゴン
祐一が動いたので舞は床で頭を打った。
「祐一、痛い」
「いつから起きてた?」
「初めから」
「じゃあ……俺が言ったことも?」
「嫌じゃなかったから……」
「そういう問題じゃなくて」
祐一の顔は真っ赤になっていた。
「いってきまーす」
新学期が始まり、高校3年生になった祐一はマンションから一人で学校へ向かう。
「二人とも卒業しちまったからなあ……」
ちょっと寂しかった。
たっ…
と、横に誰かが追いついてきた。
「舞?」
「大学こっちだから」
「待ってくださーい!」
佐祐理も追いついてきた。
「舞、全然違う方向に行っちゃうんだから」
ぽかっ
舞が佐祐理にチョップする。
「こっちで合ってる」
「でも大学って駅で電車に乗っていくんじゃあ……」
ぽかっ
「祐一は細かい……」
どうやら祐一と一緒に通学するために遠回りしているようだ。
それが、嬉しくて……
「じゃあ、これからも一緒にいけるな」
コクリ
「なんだかよくわかりませんがそうですね」
桜の舞ういつもの通学路を三人はゆっくりと歩いて行った。
続く
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どうでしたか? 舞と佐祐理さんとの三人での同居生活のスタートです。
世間でよくあるように、佐祐理さんと祐一がくっ付いて泥沼化…とかいうことにはこの三人はならないと
思うんです。
ただ、このままだと佐祐理さんは舞いにかかりっきりで、いい男性を見つけることができないような…
まあ、三人のモラトリアム期間ということでしばらく続かせたいかと………
コメント待ってます。
それでは、バーハハーイ!