一つ屋根の下 〜海水浴編〜

 

「祐一、海に行こう……」
 舞がそんなことを言い出したのは7月の初め頃のことだった。
「海? でも俺まだ学校があるし」
「私と佐祐理はもう休みだから……」
「俺は無理なの」
「………………」
 心なしか舞は残念そうに見えた。
「わかったわかった、俺が夏休みになったらいこうな」
「………」
 コクリ
 舞は少し嬉しそうだった。

 じりりりりりりりり………
「うーん………あと五分」
 目覚ましに手を伸ばすがいつも置いてある場所にはなかった。
 じりりりりりりりり…………
「うー……」
 心なしか音が大きくなった気がする。
 じりりりりりりりり……………!
 それは気のせいでなく、
 じりりりりりりりり……………!!
 確実に耳のそばに近づいて……
「って、おい! こら舞!」
「?」
 耳元に舞が目覚ましを近づけていた。
「どうしてそんなことをする?」
「…祐一が起きないから」
「夏休みくらいゆっくり寝させてくれ、まだ7時だろ?」
「今日は、海に行く日だから……」
「眠いから今日はパス」
 ぽかっ
「痛てっ!」
 ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽか!
「わかってるわかってる! 冗談だ! 痛てーなあ」
「変な冗談言うから………」
「舞ーっ! 祐一さん起きたぁー?」
 祐一の部屋に佐祐理まで入ってくる。
「あ、佐祐理さん、おはよう」
「おはようございます。今日はいい天気ですねー」
「そうだな、今日はなかなかの海水浴日和だ」
「祐一早く行こう……」
「わかったわかった、着替えるから出て行ってくれ」
 祐一はベッドから這い出て大きく伸びをした。

「舞達……まだかなー」
 先に着替え終わった祐一は、パラソルやシートを広げてボーっと二人を待っていた。
 暑いので先に泳いでいたいのだが、そんなことをしたら舞に殴られる。
「祐一さん、お待たせしました」
「あ……佐祐理さん」
 佐祐理は薄い水色のビキニに花柄のワンポイントのついたパレオといった水着だった。
 祐一が見とれていると、
 ぽかっ
「祐一、目つきが変」
 舞にチョップされた。
「痛てーな! ま……い………?」
 赤いセパレートの水着だった。
 余計な贅肉のない引き締まった体の舞にはとてもよく似合ってた。
 再び祐一が見とれていると、
 ぽかっ
「恥ずかしい」
「あはははーっ、舞、照れてる」
 ぽかっ
 今度は佐祐理にチョップ
「佐祐理さんも、舞いもめちゃくちゃ綺麗だなー」
「あははははーっ。そうですか?」
「うん」
「…佐祐理綺麗」
「そんあことないよ、舞だってこのへんの腹筋が……」
 佐祐理が舞の腹部に触れると
 ぽかっ
「恥ずかしい……」
「じゃあ、こんどは俺が……」
 ぽかっ
「祐一、手つきが怪しい……」
「ちぇっ」
「それでは泳ぎましょうー!」

「舞!」
「?」
 バッシャーン!
 振り返った舞にまともに海水が降り注いだ。
「ふっ、まだまだ甘いな」
「………………」
 バシャバシャバシャバシャバシャ………
「うおっ!?」
「仕返し……」
「なんの!」
 バシャバシャバシャバシャバシャ………
「あははっ、楽しそうですねえ。佐祐理も負けませんよ」
 バシャバシャバシャバシャバシャ………
 佐祐理まで加わってかなりの水飛沫が舞う。
 高校生の青年と、二人の美女が子供のように水のかけあいをしているのは何か異様なものがあった。

 *人の多い海では他の人の迷惑になるので水のかけあいはやめましょう。

 磯でも遊んだ。
「ウミウシさん」
 舞がウミウシを見つけていた。
「こっちにはヤドカリがいますよー」
「なんの、こっちにはカニが……痛てっ!」
 祐一はカニにはさまれて、カニを放り投げた。
「祐一、カニさん投げたら駄目」
「俺のことは心配じゃないのか!?」
「……そんなことはない」
「?」 
「血が出てる」
「あ……本当だ」
 ちゅっ
 舞が傷口を舐めていた。
「ま、舞?」
「舞ったら、ラブラブですねー」
 佐祐理がからかうと、
 ぽかっ
「いやいや今のアプローチには驚いたぞ」
 祐一がからかうと
 ぽかっ
 舞の顔は真っ赤だった。

 ガタンガタン……
 帰りの電車の中で祐一はどうしようもなく困っていた。
「すー……」
「くー……」
 舞と佐祐理は疲れて眠っていた。
 祐一にもたれかかって………
(動けない……)
 ある意味幸せな状況だったが……祐一は困っていた。

 翌日
「おはよう、舞!」
 ぱん!
 勢いよく舞の背中をたたく。
「………………」
 反応がない。
「舞?」
 何かをこらえているようだった。
「あ、もしかして、日焼け………」
 ばしっ!
「うおおおおおおぉーーーーっ!?」
 舞に日焼けした背中を叩かれ(いくら服の上だからといってもこれは痛い)転げまわる。
「舞、祐一さんいじめちゃ駄目だよ」
「……祐一が背中叩くから」
「あははは……今度はサンオイルもって行きましょうね」
 佐祐理は苦笑いを浮かべた。
 祐一たちはこの後2,3日(特に風呂に入るとき)日焼けに悩まされることとなった。

                      続く
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 ちょっと遅めの海ネタです。ああ、真琴、美汐に続いてこの二人にも水着を着用させてしまった。
 水着って何が似合うか悩みますねー
 さてさて、モラトリアム期間のこの3人ですが、春夏秋冬全てのネタを考えていこうかと………
 秋は何がいいかな? よかったら何かネタください。
 コメント待ってます。

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