当たり前のことが当たり前でなくなった日……
悲しい日々が始まった。
ジングルベルは聞こえない<序章>
昔から栞は体が弱くて、家の外に出ることなんかほとんど出来なくて……
入院と退院を繰り返す……
そんな日々を送っていた。
あたしはいたって健康なのに……
同じ姉妹なのに、こうも違うものかなって……
栞はほとんど学校に行けないので…病院の院内学級で過ごしていた……
時々栞が、あたしの学校の事を聞いてくることがあった。
色々と話してあげるといつも、
「いいなぁ……でも、私は行けないもんね」
そう、悲しそうに呟くのが、辛かった。
これが幼い頃から続く日常。
辛いことだったけど、あたしは精一杯栞と一緒にいてやろうと思って、
そうしてきた。
栞は……
ある意味、慣れていた…といえばいいだろうか?
半ば、諦めがあった。
それは、あたしも、両親も同じだったと思う。
でも、栞は決してそんなことを言わない。
優しい子だから……
あたしに心配かけたくないから………
辛いのはあの子の方なのに………
いつかは改善される筈の、それでも変わらない日常を打ち崩す事件が起こった。
そう、あれは1998年の春の日のこと。
空は悲しいほどに澄み渡り、希望に満ち溢れていた。
その日は、高校の始業式。
栞が初めて学校に来る日だった。
本当は、その日も…学校に行くことは、医者に止められていた。
でも、栞は譲らなかった。
「どうしても叶えたかった夢があるんだ、お姉ちゃん」
「え?」
「お姉ちゃんと同じ学校に通うこと…
お姉ちゃんと同じ制服を着て、
そして一緒に学校に行くこと…
お昼ご飯を一緒に食べて、
学校帰りに偶然会って、
商店街で遊んで帰る…
私のたったひとつの夢なんだ……」
珍しく両親にも医者にも我儘を言った栞に後でこっそりと聞いてみた。
「えらく、安上がりな夢ね……」
「わっ、お姉ちゃんひどい」
栞に笑いかけながら思った。
栞は、ただ普通の生活がしたいだけなんだって……
病気とも、医者とも無縁の、ごく普通の生活を求めていただけなんだって……
でも……
結局、あの子の夢は成就されることはなかった……
その日、学校から戻ってすぐに……栞は倒れた。
今までとは違う、何か重い病気にかかったらしい………
病名なんてどうでもよかった。
重要なのはその次の言葉……
「栞さんは、次の誕生日まで生きられません……」
残酷な、タイムリミットの宣言だった。
to be
continued...
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どうでしたでしょうか?
七年間の空白を…ばかり書いているから久しぶりに別キャラのSSです。
う〜ん、やっぱり美坂姉妹が一番ですね。
では、ばーははーい!