もう…病院に行くことは苦痛でしかなかった。
栞が少しずつ確実に弱っていく様を目の当たりにしたくなかった……
ジングルベルは聞こえない<第4章>
秋になった。
空が茜色に染まる頃…あたしは病院へ向かう。
前のように毎日は行かなくなった……
それほどあたしは強くない。
街を彩る銀杏が風の音と共にちらほらと舞い落ちる。
まだまだたくさん葉はある。でも、確実に数を減らして…やがては裸になってしまう……
栞も同じように…命の灯火を少しづつ弱めていっているに違いなかった……
「お姉ちゃん……ほら…綺麗でしょ?」
ベッドの上の栞はいつものように笑っていた。
「どうしたの? それ」
栞のベッドの上には色とりどりの葉が広がっていた。
「今日、外に出ていいって言われたから…中庭で拾ってきたの」
ほら、綺麗でしょ? と笑いながら栞は木の葉をすくってぱっ、と手を離す。
ちらほらと木の葉が舞う……
「ほんと…綺麗ね……」
窓から差し込んでくる夕日に栞の頬は赤く染まっていた。
色白だから…肌の色が夕日色に見える。
そのまま溶け込んでいくような……そんな感じ……
「でも、それ…どうするの?」
「え?」
「もうすぐ看護婦さんが来るわよ…そしたら、怒られると思うわよ……」
「わあっ! 早く直さないと!」
急いで木の葉をビニール袋に詰め込み始める。
「お姉ちゃんも手伝って!」
「はいはい……」
慌てる栞がおかしくて…つい笑ってしまう。
「急がないと……」
「ほらほら…そんなにあせったら余計に散らかるわよ……」
「うん…でも…いそ……………」
突然、栞の手が止まる。
「栞?」
「う……っ……」
「栞!?」
栞が血を吐いた。
シーツを、あたしの制服を、そして散らばっている木の葉を…血が真っ赤に染めていく……
「栞っ! 栞っ!!」
「う………」
苦しくて何もいえないようだった。
あたしは急いでナースコールする。
「どうしましたか?」
「栞が、血を吐いたんです。早く来て!!」
看護婦が来る間、あたしはずっと栞を抱きしめていた。
「死んじゃ嫌だからね……まだ早すぎるわよ……まだ…誕生日じゃないじゃない……」
自分で何を言っていたのか覚えていない……
「栞…死なないで…まだ…あなたの誕生日じゃない……」
うわごとのあたしは何かを呟きつづけていた……
幸い、栞は死ななかった。
医者の説明によると……発作が起こった…そう言っていた。
血を吐くような発作といえば重い病気に違いない。
改めて…それを認識させられた……
辛かった……
でも、それだけが原因じゃない……
「ごめんね。お姉ちゃんの制服…汚しちゃった……」
血を吐いてなお、栞はあたしのことを気遣ってくれた……
それが…つらかった………
to be
continued...
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どうでしたでしょうか? あと二話ぐらいで完結の予定です。
HPを作りました。まだ全部じゃありませんが過去のSSも置いてあります。
よかったら来て下さいね。
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では、ばーははーい!