宮崎学よ、あなたは、本当にもう
公安調査庁のスパイを辞めているのか?

「個人情報保護法反対」運動を
「公調協力者」が担うというフシギなハナシ


 

 個人情報保護法案に反対するすべてのみなさん。
 私たちは、出版や個人ジャーナリスト、またホームページによる情報発信を規制する「個人情報保護法」案に反対し、合わせてこの集会でトークセッションの司会をつとめる「突破者」宮崎学氏が運動の重要な位置を担っていることに重大な疑義を持っている“宮崎学「スパイ」疑惑を糾察する会”です。
 個人情報保護法は、その一見耳ざわりのよい名称とは裏腹に、政治家や巨大権力者の不正を暴露するような情報発信を規制しようとするものです。条文には「報道機関が報道目的で発信する場合は対象外」という「除外規定」がありますが、政府は「“報道機関”には出版や個人ジャーナリズムは入らない」と明言しています。当然、個人が発信するホームページも同様でしょう。
 この間政府が一貫して追求してきた“報道規制・報道への介入”を最も端的に実現しようとするこの法案の成立を阻止するため、国会上程・無修正可決が噂される次期国会を見据えた今日9月2日に開かれるこの大集会は、法案に反対する声を政府・与党にぶつけていくとても意義深いものです。
 ぜひ、ともに法案に反対する声を上げ、廃案に追い込む闘いを構築していきましょう。

 しかし、この集会には、私たちがどうしても疑問に思わざるを得ないことが1つあります。
 それは、宮崎学氏がこの集会内のトークセッションで司会をつとめ、また実行委員会内で中心的な役割を担っている、ということです。
 宮崎学氏は、著書「突破者」が大ベストセラーになり、盗聴法・組対法反対運動でもその重要な一翼を担ったことで有名な作家です。
 ところが今年になって、その宮崎氏が95〜96年にかけて公安調査庁の協力者であり、自らが関係していた左翼政治団体の機密情報を公安調査庁に売り渡していた、という衝撃の事実が明らかにされたのです。
 先日発売された書籍「公安調査庁スパイ工作集」(社会批評社)には、公安調査庁の内部極秘資料が写真製版で掲載されていますが、その中には、95年、三島浩司弁護士(元「三派都学連」委員長)の紹介で、宮崎氏が公安調査庁調査官樋口憲一郎氏と会談したことが報告されています。
 その中には、当時不動産業を営んでいた宮崎氏が、左翼政治党派の活動家に数百万円単位のカンパをしたりアジトを提供していることを述べつつ、「今後アジト情報を入手したら事前に調査官に報告する」と約束したこと、などが克明に記録されています。
 この文章が本物の公安調査庁の内部秘密文章であることは数々の証言から間違いありませんが、もちろん、その中に記述されていることがすべて100%本当だとは言い切れません。調査官が自らの「手柄」のために誇張して書くことなど、いくらでも考えられるからです。
 この真相を解明するため、この問題を知った政治党派は、同派機関紙によれば、5月から7月にかけて宮崎氏と討議を行ったようです。宮崎氏は当初は一切の「嫌疑」を否認していましたが、その後、調査官とは3回会ったことなど一定の事実関係を認めました。これは同派に対してだけでなく、トークライブハウス「ロフトプラスワン」において開かれたイベントでも宮崎氏が自ら語っていることです。
 しかし宮崎氏は、スパイ工作についての肝心な部分について「迷惑がかかるから話さない」「墓場まで持っていく」「私は清く正しく美しく生きているつもりはまったくない」などとし、その真相について一切口をつぐむことを公言しています。

 いわゆる「スパイ工作」は、左右両派・宗教からNPOに至るまで、権力者にとって「うざそうな」あらゆるな組織に対して常に行われるものです。
 一方、冒頭でも触れたとおり、「個人情報保護法」は実際には“権力者の不正”の暴露を規制するもの。
 この両者が相容れないものであることは言うまでもないでしょう。
 “権力者に対しての自由な批判”に権力者が権力をもって介入する「個人情報保護法」は民主主義の根幹を否定するものですが、金と脅迫でスパイを育成する公安調査庁のような“権力機関”に“反権力”の立場をとる団体の情報を「売り渡す」行為は、“権力への自由な批判”とはかけ離れたものであると言わざるを得ません。
 だからこそ、宮崎氏は、自らが提供した情報のすべてを、あるいは自らに行われた工作のすべてを率直に語り、自らの体験をすべての“権力への批判者”の“他山の石”とすべく共有していく作業をしなければならなかったはずです。
 しかし実際に宮崎氏がしたのは、当初は自らへの嫌疑の否定であり、その後一転して事実を認めつつも詳細については「墓場まで持っていく」という宣言を為したことでした。
 そしてさらに宮崎氏は、その政治党派のみならず、それ以外の人々からも真相究明の声を浴びるや、今度は「新党・自由と希望」から参院選に出馬することでそれらの批判をかわそうしたのです。

 これまで何冊もの「公調暴露本」を出版している元公安調査庁キャリアの野田敬生氏は、自ら発行するメールマガジン「ESPIO!」で「宮崎氏には現在でも公調関係者との交流がある」と断じています。
 事実関係を明らかにせずに「清く正しく美しく生きているつもりはまったくない」と公言する宮崎氏のこと、もしこの現在の交流が事実であるならば、氏は未だに公調の「協力者」なのではないか、との疑念を私たちはきわめて強く持たざるを得ない、と考えます。
 また、一連の疑惑を当初否定しつつ後に認めた、ということは、宮崎氏の言動はこれからも同じようにコロコロと変わる可能性がある、ということであり、「認めた」ということについてもどれだけ真摯なものなのか、どこまで信用できるのかすら疑わしい、と言わざるを得ません。

 一部の宮崎支持者は、この集会のインターネット公式掲示板「私も宮崎も左翼は嫌いだ。だから左翼は排除してよい」「左翼を権力に売って何が悪い。市民による公調の利用だ」と主張しています。
 これらのような、「思想信条の自由」を是とする民主主義の理念には全く相容れず、自分に都合悪い勢力を権力側に「どうにかしてもらう」という発想を一部の支持者が堂々と公言していること自体、極めておかしな話です。
 そのようなことを堂々と主張するような勢力が、最後は、結局その権力によって弾圧される、という歴史は、これまで古今東西何度も繰り返されてきたはずなのですが…

 個人情報保護法に反対するみなさん。
 私たちは、このような宮崎氏に関する疑惑を徹底的に糾察することなしに、「個人情報保護法」に反対する運動は意味をなさないのではないか、と考えています。このような問題をあいまいにせず、毅然と臨むことこそが、同法を廃案に持ち込む力の1つになるのではないかと考えています。
 個人情報保護法廃案に向けてともにがんばりましょう。

2001年9月2日

 

 


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