芝居に踊らされているのはキミ自身だ

焚火派地下戦線

【1】宮崎にはスパイする動機も目的も見当たらないだろうか?

 不動産業者であった宮崎はバブルの頃は土地ころがしによって多いに潤っていた。そのころには中核派にもカンパを何度かおこなっていた、と見られる。しかし、バブル崩壊後には大きな借金を抱え、中核派に「貸した一千二百万円を返してもらった」と言っている。三上氏は「宮崎には動機がない」というが、動機は充分にあると見ていいのである。
 また、三上氏は宮崎が樋口に会った動機として「オウム信者の救済」を想定しているが、これが「情報を売ることではない」となぜ言えるのだろうか? 『公安調査庁スパイエ作集』を読んだのなら、後半に宮崎がオウム信者川本と樋口と三人で会話したテープが収録されているのも知っているだろう。川本は樋口にオウムの秘密情報を話して自分は助かろうとしたのであり、樋口はオウムの情報を聞き出すことによって破防法適用への道を開くことができた。そして、宮崎は川本を樋口に仲介してやった事によって川本からは莫大な(二千万といわれる)謝礼を受け取っているのである。このように三者三様に利益を得た。宮崎は「スパイ活動」によってちゃんと巨額の利益を得ているのである。別に公安調査庁が使える程度の端金などを心配する必要はまったくない。

【2】何がスパイされたかは明らか

 三上氏は宮崎が樋口と「雑談をした」という。そしてそれを正当化するために「逮捕者と取調官との雑談」を持ち出す。まったく見当違いも甚だしい。だれでも警官や公安やその他「国家権力の手先」と会話する場面は想定できる。それは否定しない。しかし、宮崎もその範疇に入るというのであろうか? では、宮崎はすでにスパイとわかっている三島弁護士と連絡をとって樋口と三人で会い、名刺交換をしてから“雑談をした”というのだろうか? 宮崎は雑談をするだけのためにわざわざ銀座4丁目のちゃんこ鍋屋に行ったというのだろうか? こんな不自然な言い逃れが通ると思っているなら三上氏はよっぽど周囲をバカにしているか、物を知らぬかどちらかにちがいない。
 「樋口は成績をあげるための動機があるのだから、中身をそのまま信用はできまない」という三上氏の主張は一部認めてよい。しかし、それは「情報をすこしおおきく膨らます」可能性であって「ないものをあるかのように」報告する事ではない。そんな事は不可能である。調査機関に勤務する者がそんな事をしてバレれば、懲戒ものである。樋口がそこまでデタラメな男であればとっくに解雇されているだろう。そして工作日誌の記述が事実であった事が中核派「前進」で発表された。もはやこれで宮崎がやった悪辣極まりない行為は満天下に明らかとなったのである!

【3】信用するのは樋口か、宮崎か、どちらかだけなのか?

 三上氏は樋口のスパイ工作の報告と宮崎のオウム信者救済のための接触とが「すれ違い」であるという。全然すれちがいでもなんでもない。双方の主張の「どっちを信用するのか?」ではなく、どちらの主張も「正しい」のである。すでに【1】で説明したように、宮崎はオウム信者川本を助けてやるかわりに謝礼金をもらう。川本は助かるかわりに公安調査庁にオウムの内部情報を話す。樋口は川本ひとりくらいならお目こぼしをしてやるかわりにオウムにまるごと「破防法」を適用できるだけの証拠を聞き出す。こうして三方丸く収まったのである。どこが「すれ違」っているのだろうか?
 宮崎は1995年当時、不動産屋などをしていたわけだし、そこにオウムの信者が救済を求めてきたらそういうことを考えても別におかしくない、と三上氏は言う。まったくそのとおり。そして、その救済をネタに宮崎は一儲けしたのである。「若い衆」の助け方にもいろいろあるだろうが、これでは真相を「墓場まで持っていく」しかあるまい。国家権力による破防法発動への道を手助けした宮崎は反権力を闘う全ての人々にとって敵である。

【4】明らかな敵を「幽霊」とゴマカす者も敵対者と見なされるだろう!

 この部分はもっとも長々と書いているが、書いてある事は単純である。「自分は国家権力をそれほど危険なものとは思わない。だから国家権力の側も自分たちに対してスパイするなどありえないだろう」と言っているのである。
 だが、注意深くよめば、三上氏がここで混乱している事がわかる。「われわれは国家権力をどう見るべきか」と「国家権力の側はわれわれをどう見ているか」をごちゃ混ぜにしているのである。その区別がつかない三上氏は「僕の思想はマルクスレーニン主義を否定している」「僕は暴力的な闘争のための非合法組織を必要としていない」という自分の主観に基づいて「だから国家もわれわれの運動をスパイする必然性など大してない」と結論づける。彼によれば共産党でさえスパイする価値などないことが「ちょっと想像してみればわかる」そうである。
 まったくおそれいった妄想である。いったい国家は「個人情報保護法」をなぜ成立させようとしているのだろうか? また一昨年成立を許してしまった「盗聴法」は何のためにあるのだろうか? われわれはなぜ今も国家によるこのような不当な言論・報道の自由の束縛の脅威に対してたたかっているのか? これらが国家による「情報管理をめざす動き」である事がまるでわかっていないではないか!「スパイ工作」とはこの「国家の意図」をスムーズに成就させるための補助的手段にすぎない。
 三上君よ! 世の中は「キミの主観」によって動いているわけではない! キミが「マルクス主義を捨てる」のはキミの自由である。だがこの闘いは「マルクス主義者だけのたたかい」ではない。国家権力は一部の「暴力革命論者」だけではなく全ての人々から報道・言論の自由を制限し束縛し監視しようとしている。それが「個人情報保護法案」なのだ。だから自由を求めるすべての人々がこの法案の廃案のために立ち上がるべきなのだ。
 キミが「暴力を否定する平和愛好者に転向した」からといって、国家権力がわれわれを監視するのをやめてくれるとでも思っているのかね? キミは共産党の緒方国際部長宅に現役の警察官が盗聴器を仕掛けた事が国会でも問題になったのを知らないのか? 国家公安委員会がいまだに「破防法適用団体」として日本共産党・朝鮮総連・革命的共産主義者同盟の三つを指名しているのを知らないのか? キミはいったい何のために9・2集会に来たのかね? 「スパイ疑惑」を否定し宮崎をかばおうとするあまり、国家による悪辣な意図に対しても無防備な俗物へと堕落し果てたキミにはこの闘いをおこなっていく資格があるのだろうか? いや、国家のどす黒い意図を「幽霊」と言い換えて闘いの矛先を鈍らせようとするキミのような危険人物は宮崎と同じく「味方の中の敵」と見なされるべきじゃないかね? 君は「個人情報保護法案」廃案を本当に闘う気があるノカー! 無いのならさっさと闘いの舞台から退場したまえ!

【5】芝居に踊らされているのはキミ自身だ!

 われわれの闘いはさらに続く。新事実はまだまだ出てくるだろう。運動自体が取り返しのつかぬ事になる前に宮崎のように反社会的な行為を堂々とおこなう者は除去しなければならない。宮崎に心酔し、もはや善誤の見境もつかずに宮崎に追随しようとする者も同じく危険な領域に足を踏み込もうとしている。「宮崎スパイ説に踊った人たち」と我々をヤユしながら、実は自分が宮崎に利用され踊らされている事にまだ気が付いていない。だが、我々はすでに警告を何度もしている。堕ちたあとで嘆いても我々を恨んではいけない。