Studio Album
ゲイリーのスタジオアルバム

Tubeway Army

シングルデビューはまるっきりのパンクだったチューブウェイアーミーですが、「あくまでもパンクを!」というギターとドラムをクビにして、自分達の音楽性を追求しました。とは言え、このアルバムではパンク色がまだ強く残っていて、好みが別れるところです。
ドラマーは、ダンスバンドのドラマーをやっていた叔父に手伝ってもらい、そのせいでのちのセドなんかと比べると結構軽い感じのドラムです。
いきなりデビューアルバムのジャケットがこれ!

Replicas

言うまでもなく、ゲイリー=ニューマンを一気にスターダムにのし上げた傑作です(当時の邦題は『幻想アンドロイド』。すばらしい!)。「Are Friends Electric?」(邦題「エレクトリック・フレンズ」。テクノだ!(笑))「Down in the Park」といった、今でもライブの重要曲となっているヒット曲を収録しています。
『ギターマガジン』が「エレクトロにハードなギターをかますというのはゲイリー=ニューマンが始めたことだ」と素晴らしいことを書いていましたが、そういうスタイルが確立したのがこのアルバムです。「エッジの効いたギターがキーボードの冷たい音色を引き立てている」とも言われています(何だ、日本のライターも結構やるじゃん!(笑))。まだ10台でこんな世界を構築してしまうのですから、やはり天才なのでしょう。
本国ではベガーズバンケットが何故か2枚ずつ抱き合わせる形でこの頃の諸作品をリイシューしていますが、日本ではこの作品から『テレコン』までの3枚がそれぞれ単独の形で、オリジナルジャケットも復刻してリイシューされています。これは自慢してよいことです。世界各国のマニアが日本盤を買い求めているのですから!(後日談:と思っていたのもつかの間、今では全世界的にリイシューされていて、逆に日本の方が遅れている有様です…)
日本ではこのアルバムが最初に紹介され、『チューブウェイ〜』はあとからリリースされました(と思います)。

『ブレードランナー』とかあの辺のイメージだそうです。裏ジャケもかっこいいです。

The Pleasure Principle

そして「カーズ」収録のこのアルバム(邦題『エレクトリック・ショック!』)です。世界中で大ヒットし、このアルバムをひっさげて来日公演まで行いました。ちなみに、これまでのアルバムはきわめて短いスパンでリリースされたので、このアルバムがヒットした結果、過去作品まで売れてしまい、これまでの3枚のアルバムが同時にチャートインしてしまうというビートルズ以来の快挙を成し遂げてしまいました(どっかの邦楽アーティストに聞かせてやりたいエピソードです(笑))。
音的には、何とギターが全排除されています。代わりにアープ=オデッセイという過激な音の出ることで当時から知られていたシンセサイザーが多用されていて、ムーグ系の素直な厚い音と対比をなしています。というわけで、かなりフェティッシュというか、暑苦しい音です(笑)。曲もリフ主体で、デジタル=グラムという感じの濃い世界です。
面白いところでは、当時解散中だったウルトラヴォックスからビリー=カーリーがヴァイオリンで参加しています。彼は、このアルバムのツアーにも参加して、得意のアープの過激な音を炸裂させていました。
ちなみに筆者が「俺に似てる」と思ったのがこのジャケット(笑)

Telekon

初期ゲリマンの一つの到達点と言ってよい名作です。ファンの間でも人気が高く、最高傑作に挙げる人も多いです。筆者も最初に買おうとする方にはこれを勧めています。
ギターの再導入、アコピの使用、リズムボックスなど色々と新しいことを試みていて、曲調もバラエティーに富んでいます。中でも「Please Push No More」(当時の邦題は「そっとしておいて」。素敵だ(笑))はニューマン+ガーディナー最高のコラボレーションと言ってもよい名演です。
シングル「We Are Glass」(邦題「ガラスのヒーロー」。素敵だ(笑))「I Die, You Die」が当初収録されなかったのは、ゲイリーによると「単にレコーディングが間に合わなかったから」だそうで、今リリースされている状態が本来意図していたものだということです。
当時池袋西部・パルコの壁にこれが書かれていたそうです。見たかった

Dance

ライブ活動から引退(すぐ撤回(笑))、ゲイリーニューマンバンド解散、北米移住と人生の転機の後に再スタートという感じで、この豪華なアルバムです。
とにかく、いつになく参加ミュージシャンが豪華です。ジャパンからミック=カーンとロブ=ディーン、そして何とクイーンからロジャー=テイラーまで参加しました。しかし全曲に亘っての参加ではなく、そのせいで曲調がバラバラです。あとはともかく、ミック=カーンのベースとサックスは強烈な個性でゲイリーのボーカルを食っています。ミックのファン的にもおいしいフレーズがてんこ盛りです(笑)。
残念なことに、この作品を最後にニューマン+ガーディナーのコラボレーションは永久に不可能となりました。つまり、ポール=ガーディナーがドラッグ過剰摂取で亡くなってしまいました。
この頃ハンフリー=ボガードに凝っていたそうで、そんなイメージだそうな。

I Assassin

前作が「豪華だけれど散漫」になってしまった反省からか、一定のメンバーでレコーディングを行い、統一感は得られました。その反面、曲調が似てきてちょっとくどいかもしれません。
このアルバムで大活躍なのがベースのピノ=パラディーノで、彼はこの作品で一流ベーシストの仲間入りを果たしました。全曲に亘ってあの独特のいやらしい〔笑〕音色でプルンプルン歌っています。冒頭のベースは何をどうやっているのかさっぱり分からず、初めて聴いたときは無茶苦茶うろたえました。
これもHBだということです。

Warriors

ベガーズ=バンケットからの最後のアルバムです。最初はプロデューサーにビル=ネルソンを迎えて制作されましたが、ゲイリーと折りが会わず、プロデューサーを降りています。
とは言え、ビルのギターは大活躍で、「ニューウェーブ最後の名盤」と、誰も呼んでいませんが(笑)、それくらい素晴らしい作品です。当時やっとデジタルシンセサイザーが普及し始めた頃で、その冷たい音色でゲイリーの世界観がより的確に表現されるようになりました。あと、この作品から黒人女性ボーカルが取り入れられるようにもなりました。もちろんアナログシンセサイザー、フレットレスベース、サックスもバンバン入っていて、音的には暑苦しいくらい豪勢です。
こっちは『マッド=マックス』のイメージだそうです。画像データの取りようがちょっとないのでこんなものしかないですが、ゲイリーは腕にプロテクターを着けて金属バットを持っています。実は、実際金属バットを振り回して逮捕されたことがあるので、シャレになりません。

Berserker

ベガバンを離れ自分のレーベル「NUMA」(「ニューマ」。「沼」ではない(笑))を設立して、そこからの第一弾です。ちなみに、当時NUMAにはゲイリー以外のアーティストもいたようですが、その後はほとんどゲイリーの個人レーベルです。
音楽的には前作の延長線上ですが、テンションが激高いです!どの曲も気合入りまくりのすばらしい出来で、名曲名演の嵐です。特にラッセル=ベルのギターは刺激的なフレーズの連発で、爆発しています。メンツ的にはかつてのゲイリー=ニューマンバンドのメンバーに落ち着いています。
こんなすばらしいアルバムを出さない日本のレコード会社はどうかしていると思います
自分のレーベル第一段がこれです。強烈。ちなみに、このアルバムのツアーはこの顔でやっていました!
ここから3枚は国内版が出たことがありません。輸入盤で買うしかありません。
ニューマからの諸アルバムは、オリジナル(と言ってもCDの)、リマスター+ボーナス付加再版、「コレクターズエディション」、「エクステンディッド」やら、いろんなのがあってはっきり言って迷惑です…(結局全部買うのだろうな…とほほほ…)

The Fury

大傑作の前作の後どうするかというところで、ゲイリーはブラコンへの系統を深める方向を選びました。
レコーディングのメンバーから、盟友たちがほぼ一掃されているのに驚きますが、ゲイリーが一人でやれることを追究しようとし始めたのがこのアルバムと言っていいでしょう。とは言え、アンディ=コクラン・ディック=モリッシー・テサ=ナイルズ等は本作にも参加しています。ラッセルとセドが参加していないのは音的にも大きいですね。ドラムもこのアルバムからほぼ全面的にマシーンですが、この段階ではキックの音などセドに結構似ているのでそんなに違和感はないです。
明らかにスラップを意識した硬質の細かい打ち込みベース音が全体を支配していて、インダストリアルなホワイト=ファンクとでもいうような音です(何か軽薄だな…)
それよりも一番びっくりするのは冒頭の音ですね!いきなりやってくれます(笑)。ばらすと聴く楽しみが減ると思うので、黙っておきます(どうしても知りたい方にはメイルでお教えします」)
現在リマスター(音がすばらしくよい!)にボーナスを加えて再発されています。筆者もそれを持っています。

ビジュアル系です(笑)。筆者が持っている版では、裏ジャケ写真にレコードの縁の跡がくっきりとついています(こんな写真使うなよ!(悲))

Strange Charm

『Fury』の延長線上と言うよりは「展開」と言った方がいい音楽性です。のっけからストリングスの導入に面食らいます。佳曲が揃ってはいますが、全体的なコンセプトは筆者には今一つよく分かりません。どうも何をやろうとしているのかよくまとまらないままに作った節があります。
歌詞はめちゃめちゃ重いですが、裏腹に音はさわやかな感じです。
たまに輸入盤屋さんでも見かけます
最後のブリーチです(笑)薄くなって困るのでやめたそうです(笑)。珍しくジャケットの印象と内容が一致していません

New Anger (Metal Rhythm)

当時鳴り物入りで誕生したレーベルIRSとゲイリーが契約して、その第1弾です。引き抜いたアーティストをことごとく買い殺してしまったIRSですが、ゲイリーも御多分に漏れずその餌食になってしまいました。「きつい時期だった」とご本人も言っています。
とは言え、このアルバムの完成度は高いです。音の傾向的には音数の多い打ち込み主体の、要するに今風の音で、小室先生とかも聴いてそうです(笑)(ある収録曲にそっくりな曲がTMの曲にあるし(笑))。
タイトルが2つあるのは、イギリスでは『Methal Rhythm』のタイトルで、日本を含むその他の国では『New Anger』のタイトルで2曲追加してリリースされたという事情のためです(追加された2曲はいずれも『Berserker』収録曲のリミックス)。というわけで、随分久しぶりに国内リリースされたゲイリーのアルバムにして、CD国内版になったゲイリーの最初の作品でもあります。

『ロッキング・オン』でこのジャケットは絶賛され、見開き特集記事が載りました。怒ってます(笑)。

Outland

IRSからの第3弾(スタジオとしては第2弾)。ところが、IRSとの葛藤のためか内容的には何がやりたいのか誰も理解できず、ファンの間でもいまだに物議を醸しています。筆者も、音的には結構楽しめますが、コンセプトはいまだに理解できません。音の特徴としては、現実音のサンプリングの多用が目立っていて、インダストリアルな感じです。
当然このアルバムも国内盤は廃盤。あまり売れなかったのか中古屋でもあまり見ません....
この人物はゲイリーのようですが、顔がちゃんと見えないのは珍しいです。

Machine + Soul

ここ数作でブラコンとの融合を図ってきたその完成系。今までは少々「??」なところもありましたが、この作品ではまったく無理がないものになっています。この頃プリンス(現(あのマーク))に傾倒していたようで、久々にカバーナンバーを収録しています。
この作品からはまた自分のレーベル「NUMA」に戻っています。というわけで、この作品と次の『Sacrifice』は日本でのメジャー流通はありません。この作品は北米で流通しているもの(別ジャケットでボーナストラック追加)が今割と輸入番屋に並んでいます。
これはオリジナルジャケットで、今北米でも発売され日本にもかなり入っているものは違うジャケットになっています。

Sacrifice

それまで追究してきたブラコン寄りの音楽性を突然バッサリと捨て、淡々としたドラムループ+必要最小限のキーボード+ボーカルのみで宗教への不信を歌った問題作。当然ファンの間でも大変な物議を醸しました。「この時期のゲイリー=ニューマンのスタイル」としか形容できないまったく独自の音世界が築かれています。
結構話題になった作品のためか、輸入盤屋さんには割とよく置かれています。
何やら不気味なジャケットですが、音の内容的にもそのまんまです。

Exile

音楽性的には前作の延長線上にありますが、コンセプト的にはより過激になっています。音的には前作よりももっとゴチャゴチャした感じです。タイトルに合わせてか、少々エスノっぽいところもあります。
北米でメジャー流通したためか、随分久しぶりに日本でもリリースされました。日本版にはボーナストラックが加えられています。ライナーは期待はずれの噴飯ものです。
前作ほどではないですが、やっぱり何やら不気味です。内ジャケの写真も全部不気味です。で、当然音もそのまんまです。一貫してます、すばらしい。

さて、一応正規スタジオアルバムですが、位置付け的に特殊なものが2枚あります。

The Plan

ゲイリーがベガバンを離れるに当たって、ごくごく初期の音源をまとめてアルバムにしてしまったものです。当然音楽的には「パンク」です。パンクサウンドにあの声が妙にはまっています。
『Asylum 1』に最初のアルバムとして収録されている他、ベガバンの「2枚ずつリイシュー」にも入っています。
デビュー以前は売り込みのためにパンクを装っていたので、この通り髪が真ッキンキンです。

こちらは99年にリイシューされた版のジャケットです。最近また日本語に凝っているのか、「れが僕の人生」という謎の日本語ロゴが、全然話題になっていません…

Human

これはインスト集です。元々は自分のアクロバット飛行を題材にしたビデオのサントラだったそうです。持っていないのでどんな音か想像つきません。
ゲイリー本人がまったく出ていないジャケットというのはこれだけですね。

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