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「俺だよ。笑止……犇斧ヌンチャクと恟透翼が俺の全てだとでも思っているのか? まぁその犇斧ヌンチャクと恟透翼だが、今でも使ってるよ。ただ、あの時は月光と桃が全部叩き壊してくれたんで、予備がなくなっちまったんだよ。犇斧ヌンチャクも恟透翼も素材が特殊なものなんで、注文しても中々上がってこねえんだよな。特に恟透翼は水晶だからな。いい素材がないと完全に透明にはならないし、あの頃は予備を置いておけるほど裕福じゃなかったしな。ま、俺には毒手があるから、別に武器がなくても何てことないんだがな。他の道具に関してはそいつらに訊いてくれよ。
それにだ、毒手を使うようになってからは、かすり傷一つでも俺自身に致命傷になりかねんので、用心して刃物系の武器は使わないようにしていたんだ。ただそれだけだよ。毒手だけで十分な相手しかいなかったしな。
余談だが俺は刃物を使う料理ができないので自炊できなくて困ってるんだ。どこかにいいカミさんいないか?」
「俺だよ。笑止! 「バキ」も読んでねえのかお前等? 毒手拳の毒はもちろん使い手にとっても毒だから毒消しを一生飲む羽目になると板垣先生も書いてただろうが! あれからずっと解毒剤を手放せない生活を送ってるよ。そのくらいの覚悟がないと使えない拳法なんだぜ毒手拳は。もちろん負担の少ない解毒剤には俺も苦心してて、それでそれが本職になったりもしてるんだがなフフフ……
穿凶毒手が「死の奥義」なのは本当だ。あれは究極奥義なので、解毒剤を用意しておくなんて生半可な覚悟じゃ使っちゃいけないもんだ。解毒剤を飲むくらいなら死ぬ、そういう根性がないとな。だから大威震八連制覇の時は解毒剤を持っていかなかったんだ。しかしまさかあの奥義を使う羽目になるとはな……そのくらい桃太郎はすごい奴だということだ。それよりもっとビックリしたのは王大人が解毒剤を持ってたことだがフフフ……あれには助かったぜ……」
「俺だよ。フッ……まず俺対ジオラマ坊主戦はそもそもが「芝居」だったってのが重要だな。その前の大凧フィギュア坊主は倒されたフリもできないくらい問題外に弱かったからアレだが(あれには焦ったな……「おい、こいつでどうやって死んだフリしろというんだ」ってな……。卍丸たちが続けて戦わせてくれたからよかったようなものの、あそこで交代させられたら、次に俺が出るまでに蝙翔鬼とかディーノとかが本当に死んじまったかもしれないからな)、あそこで俺は討ち死にしたフリをしなきゃいけなかったんだ。で、それは後から翔霍として桃たちを助けるためでもあるんだが、そこで何もかも元のままだったら俺だってのがバレバレだろ? そこで指の一つでも千切っておいて、「いや、アレが影慶なら小指がないはずだ。だからアレは影慶じゃない」とか言わせようと思ったんだ。でも誰もそこは突っ込んでくれなかったがな(苦笑)。羅刹はともかく、卍丸とセンクウには邪鬼様がもう言ってあったんだろう。お見通しだったみたいだしな。
だから全部芝居で、従って本当に指を食いちぎったわけじゃない。食いちぎった指みたいなものを用意しておいて、それを投げつけただけだぜ。飛び道具は気塵流の得意とする所だから、あのくらいは訳ない。大体毒手口に入れたら本当に死ぬだろが。笑止!
ん? どこでそんな技を見につけたかって? さすがに気慄流にもそんな手品みたいな技はないからな。フッいい所に気が付いたな。それについては俺よりも羅刹の方が詳しいから、俺はここら辺で失礼しておくぜフフフフ……
余談だが、俺は手づかみでものを食えないからおにぎりを出されると一々包帯を巻かないといけなくて困るんだよな……毒手はつらいぜ……」
「ホホホホ……ご機嫌いかがかな? 団英彦じゃなかった、男爵ディーノです。おや、ここは笑う所ですよホホホホ……。諸君もどうやら余程小生にご興味がおありのようですね。その感心な心がけに免じて、特別にお教えしましょう。
ここでちょっとお考え頂きたいのですが、あの邪鬼様は男塾の「帝王」、その下に控えておられる方々が「死天王」と、そう呼ばれていたわけですね。名誉なことに小生、そして独眼鉄殿や蝙翔鬼殿はその次の地位を与えられております。そこで、本来なら子爵なり伯爵なりと――ここは男塾なので「死爵」「迫爵」とでも名乗るところですかねホホホホ……――名乗ってもよさそうなものですが、小生はこのとおり控えめな性格なので、その末席というわけで「男爵」と自称しておるわけですよ。後のお二方は、特に独眼鉄殿はあの通りシャイなので、その手の称号を好まれないのです。お分かりかな? ホホホホ」
ということなのですが、ん? 何と剣桃太郎さんからも一言あるそうです
「オッス! 桃太郎です。ディーノ先輩について一言失礼します。先輩はあの通り腰の低い方なのでこう謙遜なさっていますが、実はディーノ先輩、もちろん先輩御自身は男爵ではありませんが、ヨーロッパのれっきとした男爵家の血筋を引かれる由緒正しき方なのです。先輩お得意のマジックも、貴族のたしなみというわけですね。よく、寺の息子が「坊主」、郵便局長の息子が「郵便局」と呼ばれたりしますね、そういったのと同じことです。
俺たちの親友Jやファラオの例でも分かるとおり、男塾が外国人の入学を許可することは珍しくないですが、ディーノ先輩のような高貴な血筋の方がどうしてこんな所に来る羽目になったのか、それは俺にも分かりません。フッ……全く謎の多い先輩を持ったものです」
だ、そうです……
「俺だよ。笑止! 溶岩の真ん中から飛燕を救出したこの俺が塾長の命に背くことをすると思うのか? もちろんディーノも救出したよ。ただ、ディーノは受けた傷がさすがに深かったので、その後は復帰に時間がかかって連載終了までに間に合わなかったのが残念だがな。ん? ディーノも一言言いたいか? 言えよ」
「ホホホホ……皆さんも私が死んだと思っていましたか? 言ったはずですよ『マジックとは人の心理の裏をかくものだ』と。ああやって剣君たちに今一つのカツを入れて差し上げたわけですよ。タネがなかったのは本当ですが、いや、あの時は影慶殿に本当に助かりましたね。やはり、持つべきものは仲間というわけです、ホホホホ……そう言えば私の対戦相手だったあの卑劣な酔っ払いはどうなりましたかね?」
「さあな…… さすがに俺もそこまでは手が回らんし、そこまでお人よしじゃねえぜ。ただ、俺も救出できなかった月光が助かっていたり、独眼鉄も生きてたり、あの大会実は色々裏で動いてる連中がいたみたいだから、どうか分からんけどな……」
「フッ……誰にものを尋ねている? 俺は伊達臣人だ。まぁ冥土の土産に答えてやろう。まず、どこかで俺も言った覚えがあるが、ディーノが弱いんじゃなくて、俺が強すぎるんだ。
それに一つ面白ぇことを教えてやる。知っての通り、ディーノの本領は「地獄の魔術」と書いて「ヘルズ・マジック」にあるわけだが、オッサンはアレを本当に使わなきゃいけない時まで隠していたんだな。棘殺怒流鞭とか死穿鳥拳とかは、オッサンにとっちゃいわば「余技」だったわけだ(死穿鳥拳はちょっとマジックぽいがなフフフ)。言うならば空手家が趣味で柔道もしていて、余興で大会にも出ていたがそこでは妙に弱かったってなもんだ。だから負けてもあまり気にしていなかったんだろうよ。いや、それにしてもちょっとカッコ悪すぎるがなフッ……まぁそれもオッサンの憎めないところだ。
それにディーノのマジックは意外な所で俺たちの役に立ってたんだぜ。そのことに関しては影慶か羅刹が言ってくれるだろうから、俺は黙っておくがなククク……」
ありがとうございました……
「フッフフ……わしが卍丸だ……羅刹に代わって俺が答えよう。邪鬼様の親衛隊たる、男塾死天王、その中で誰がああいう役をするか? 影慶は死天王最強だから除くとして、残り三人からってことになると、外見見りゃ分かるだろうが! 適役は羅刹しかいねえだろ?(笑) モヒカンやスーパーリーゼントが号令役やってて示しつくかよ! それに俺は口にこんなもん付けてっからそもそも号令役には不向きだし、センクウは時々バラくわえたりしてっからな。
それに、単純な話、羅刹は声がでけえんだよ。明石が雪山で仁王立ちしていたエピソードの時も先頭にいたのは羅刹だろ。あれだってそのせいだ。号令役は声がでかいに越したことはないもんな。
巷じゃ「羅刹は死天王で一番弱いから号令役なんだろ」とか言う輩もいるようだが、影慶は別格としても後三人は互角だぜ。羅刹をアホの田沢とかと一緒にするなよな」
「わしが羅刹だ。既に影慶がヒントを出してくれているのだが……わしが腕を切断したのも、そう見えていただけで、実は切断していないのだ。ああいうものを用意してそう見せかけていただけだな。俺たちの敵は奇想天外な技を使う奴等が多いから、それに天挑五輪大武会は結局藤堂を討つために色々仕掛けを打たなきゃならなかったし、人を欺く必要が何かとあったんだな。わしの場合、結局最後の最後まで片手のフリして戦う機会はなかったわけだが。要するに影慶の小指と同じで、全部芝居・演出だったのだな。
そこで、どこでこんな技を見につけたかってことだが、鞏家にもこんな手品みたいな奥義は残念ながらない。正統派の拳法だからな。そこでだ、大威震八連制覇でわしの相棒が誰だったか思い出してほしい。そう、男爵ディーノだ。鞏家兜指愧破の奥義には土錐龍があって、これはご存知の通り地中から基本的に手だけ出して攻撃するものだから、いつかこんなことをする機会もあろうかと、ディーノの「ヘルズ・マジック」を参考にさせてもらったんだ。いや、ああいう器用な奴が仲間にいて助かったぜ。ディーノは拳法の腕ではわしらに比べたら大したことはないが、こういう技があるので何かと重宝するのだよ。でなきゃ、こんな色物キャラ、あんなに取り立てないわなフフフ……ちなみに卍丸もディーノには一目置いているようなことを言っていたが、あいつの幻瞑十身剥もディーノのヘルズ・マジックを参考にしたものとか聞いたことがあるぜ。
ん? 「どう見ても本当に切断している」「あんなでかいものをどこに隠していた」だと? どこに目をつけている? 大威震八連制覇だとわしはほぼ上半身裸で戦っていたが、天挑五輪だとそうじゃないだろ? それはそのためもあってのことだな。八連制覇だと土錐龍を使う余地はなさそうだったしな。それに本当に切断したように見えなきゃ意味ないだろ。そこがディーノ流「ヘルズ・マジック」のすごいところだ。大体あんな小刀でわしの二の腕が切断できるわけないだろ。
巷じゃ「羅刹は実は巌娜亜羅で修行したことがある」だの「実は石仮面をかぶったことがある。だから暗いところで戦いたがる」「実は宇宙からの物体Xだ」だの言う輩がいるようだが、そんなことはない。そういう下らんことをいう連中は暗い夜道に気をつけろよフフフフ……」