CM2Sビデオ評
ガンダム関連
#リリース順に並べてあります
機動戦士ガンダム
(ジオン公国を名乗り独立宣言をしたスペースコロニーと地球連邦軍との戦い)
今見ると絵があまりにも汚いのにビックリするが(ヤマトやガッチャマン等を見ても感じることだ)、やはりこれはよくできている。これほどまでに影響力の強いアニメとなったのは、何よりも単なる勧善懲悪のドンパチマンガにとどめず、人間模様や愛憎陰謀等々をふんだんに盛り込んだことにあると、やはり思う。前半はともかく(聞いた話では敵メカは当初ザクしか出さない予定だったとか(!! さすが富野先生やることラディカルだ…))、中盤を過ぎるとゾロゾロ出て来る新メカのあれこれ(デザインがまたどれも魅力的だ。特に全シリーズ中でも異彩を放つモビルスーツであるギャン、足のない巨大なジオングにはシビれたものだったのを思い出す)、思わず覚えたくなるのも当然な決め台詞の数々(笑)と、盛り上げる要素も多い。複雑かつ切ないラブストーリーが盛り込まれているのも、ガキ時代には正直よく分からなかったが(特にアムロとララアのあれやこれやはおこさまには全く意味不明で、はっきり言ってジャマだった)、今となっては、深い……(特にランバ=ラルとハモンの大人の恋愛、カイとミハルの悲しい恋、マ=クベとキシリア様の屈折した(笑)関係等、すばらしすぎる!(笑) 誰一人思い通りにならないというのはちと意地悪すぎる気もするが…) 後の「おこさまガンダム」にはないものがここにはある(っていうか、ウルトラマンシリーズが陥った間違いをそのまんま再現しているじゃないか! 頭悪いなぁ……つくづく日本人には歴史感覚がない……「露骨に金金金でやるからこんなことになるのだよガンダム! うわっ!」(笑))。
ただ、欠点も感じなくはない。まずは、ガンダムシリーズ全体に通底する病理だと思うが、余計なサイドストーリー等を無計画に行き当たりばったりで盛り込みすぎてかなりごちゃごちゃと紆余曲折が多い。それとは裏腹に、ラスト付近になると慌てて結末を付け過ぎて何がなんだかよく分からないまま終わる。まるで三島由紀夫の小説を読んでいる気分だ(富野先生はひょっとして三島が好きなのかもしれない)。
絵もしょぼいが、音楽もかなりしょぼい。モノラルはともかく、同じ音楽が何度も使い回されたりいかにも安上がりで、いくら何でもこれはいただけない。それでも、主題歌(フルオケを使っているので音が豪華だ! DVDで速送りすると実感するが(苦笑)ものすごく短い)とエンディングはやはり名曲だな(笑)
欠点も含めてやはりこれは名作である。時代的に今見ると悲しいものがあるので、きちんとした形でリメイクしてほしいものだが、ウルトラマン、ガッチャマン等々と同様、やはり不様に失敗するのだろうか……(上の中)
機動戦士ガンダム(劇場版)I
(テレビシリーズの再編集による映画版:ガルマ=ザビ戦死あたりまで)
特にこれといって映画版ならではという要素は恐らくほとんどなく、全くのダイジェストと思ってよい。その代わり、余計なものが全部カットされているので、テレビシリーズのゴチャゴチャ具合が面倒臭いという向き(例えば評者もその一人)には丁度いいかもしれない。
絵が今見ると悲しいのは仕方ないにしても、モノラルの音はやはり物足りない。
特にこれと言って語ることはない。再編集版としては、よくできていると思う。(中の中)
機動戦士ガンダム(劇場版)II:哀戦士
(同じくテレビシリーズの再編集による映画版:ランバ=ラル戦からジャブロー戦あたりまで)
こちらはテレビシリーズにはないシーン等が幾らかあるようで、まぁ大したことはないが、多少は映画版ならではの雰囲気がある。
カイとミハルのエピソードをほぼ削らずに残したのは個人的には嬉しい。あれはこの作品の雰囲気を一段と深くしているエピソードだと思うからだ。
「声の出演」の「マ」はさすがに笑える(笑)
多少は映画版ならではの楽しみもあるが、まぁそう再編集版を超えるものではない。余計なものがない分まとまっているというのは第一作目と同じ。(中の中)
機動戦士ガンダム(劇場版)III:めぐり会い宇宙
(同じくテレビシリーズの再編集による映画版:ジャブロー発から最後まで)
この作品になると新作カットがかなりあり、テレビシリーズと印象はかなり違う。エピソードやシーンの取捨選択は、まぁまぁよくできているのではないだろうか。とはいえ、かなりの話数を二時間に縮めているので、妙に展開が早い感覚はやっぱり拭えない。
新作カットはさすがに美しく(テレビシリーズの荒い絵はアレはアレでいいとも思うが)見ごたえがあるが、個人的に許せないのはテキサスでの戦闘がまんまシャア+ゲルググに置き換えられてしまい、ギャンがまるっきり出てこないどころか、マ=クベが生き残るのはいいものの(とはいえ、生き残った所で何か別の所に出てくるわけでも恐らくなく(劇場版Zガンダムに出てきたら驚くが(笑))そのまんまなんでしょうに……)、単なるチョイ役に成り下がっていることだ。『週刊ガンダムファクトファイル』によると、基本的にあのエピソードはなかったことにしたいらしいので、マ=クベ及びギャンのファンとしては全く腹立たしい! 「気持ち悪さだけが売りのお前は既にキャラ負けしている!」「再編集の目的は、邪魔なキャラやメカの始末ではないはずだ!」「シャアをのさばらせて……しまったじゃないの!」(笑) 他にも「なかったこと」にされてしまった傑作モビルスーツ・モビルアーマーの数々には、合掌である……
とはいえ、もうちょっと何とかなったんじゃないか……という感覚は拭えないなぁ……(中の中)
機動戦士Zガンダム
(一年戦争・ファーストから七年後、軍閥化した地球連邦と反連邦組織エウーゴにネオジオンの三つ巴の争い)
ファーストから続けて見ると、突然絵がきれいになるのにびっくりする。キャラデザインは適度にファーストを引きずりつつもややアニメ絵に傾いているが、この程度なら問題ない。
メカデザインは初の変型モビルスーツといい、無線サイコミュ搭載モビルスーツといい、色々と新しいアイデアが盛り込まれていて中々魅力的だ。中盤まで肝心のZガンダムが登場せず、いきなり主役メカが変わるという当時としては画期的なアイデアも新鮮だ。ファーストの続編を作ろうという意気込みがよく分かる気がする。
しかし、その気合いが空回りしているのも否めない。まず、登場人物・メカとも無秩序にゾロゾロと出て来過ぎてのっけからかなりゴチャゴチャと分かりにくい。しかも、ただでさえ何と何が対立していて誰が何側だとかが分かりにくくなっているのに、そのままで裏切りだの陰謀だの恋愛模様だのを豪勢に盛り込んでしまうので、まるで収拾がつかなくなっている(最初から破綻しているので意識する暇がないだけ)。よく「ファーストは正義の連邦対悪のジオンという構図から抜けられなかったが…」とか言われるが、それがこれでそれほど改善されたとも思えない。エウーゴは善で、ティターンズは明らかに悪だし(笑)。ファーストではうますぎるくらいに機能していた決め台詞も、長くてごちゃごちゃしていて、今一つ覚える気がしない(笑)。
ファーストとつなげようという気持ちは分かるが、うまく生かせているのはブライトとシャア(どうでもいいけど、始めから声の出演が「シャア」になってるのは、いいのか?(笑))、精々でアムロくらいのもので、後は宝の持ち腐れもいい所(劇場版ではやや改善されていたが…)。
個人的にすごく気に入っているのが後半の主題歌(森口博子ちゃんの歌う「水の星へ愛をこめて」)で、おニャン子経由後だからか例によって一言もガンダムに関する言葉は入っていないものの、その代わり一切横文字が入っていない歌詞が美しく、アニメの主題歌史上に残る名曲だと思う(前半の主題歌及びエンディングはお約束をテキトーに作りましたって感じで何か今一つ)。どうでもいいことかもしれないが、主題歌冒頭の映像は間違いなくサブリミナル手法を使っているな(「Z」を暗示する線がやたらと出てくる)。
劇場版で多少緩和されはしたものの、何から何まで破綻しまくっているので、詰まる所何が言いたかった作品なのかは正直言って何が何だかよく分からない。もうちょっと整理した方がよかった、というよりもしかしたらこのめちゃくちゃさがガンダムなのかもしれないが……(上の下)
機動戦士ガンダムZZ
(『Z』直後、ハマーン=カーン率いるネオジオンとエウーゴ残党の戦いに巻き込まれるジャンク屋の少年達)
コミカルだとかお子さま向けだとか、何を見てもボロクソに言われているこのシリーズだが、個人的にはそんなに悪くないんじゃないの? と思う。もちろん評者も、「アニメじゃない」などという「いきなり何よ?!」な主題歌とか、シャアが冗談混じりにモビルスーツを紹介する予告編や、ギャグ満載の前半には面喰らったが(ガンダムにザクの頭をつけるという秀逸なギャグもあるが)、主人公たちの人間的成長という点を見ると非常によく描かれていて、結構「ガンダム」らしい作品なのではないかと思っている。いかにもお子さまチックなキャラクターや演出は気に入らないが、この程度なら我慢できる。Zの続編としては割とよく機能しているのではないだろうか。
しかし、やはり欠点も多い……まずごちゃごちゃと展開を紆余曲折させたり、余計なサイドストーリーをいれ過ぎだったり、ラスト付近は何がなんだか分らない展開になってしまったり、テレビシリーズの悪いクセは全然治ってない。反省しない人達か? セイラ再登場は驚いたが、シャァ登場を臭わせておいて肩透かし、カミーユ復活はいいとしても結局何だったのという顛末、ヤザン結局どうなった?、など、いかにも行き当たりばったりなのも従来通りどころかますます増幅されている……(「視聴率がいいのでもう一年やりましょう」という無茶苦茶な展開で引き延ばしつつもきちんとどころか見事な収束をつけたガッチャマンを見習いなさいっての! もっとも続編以降の不様さは見習ってもらっちゃ困るが……)
その一方でメカデザイン等は非常に魅力的だと思う。個人的にはマシュマーやキャラ=スーン(大好き!(苦笑))といった何とも人間的でトホホなキャラクターが出てきて、また悲しい最後を迎えるというのが、悲劇的かつ喜劇的で好きだ。
個人的にはこれも劇場版を作ってほしいなぁと思うのだが、ダメかもしれないなぁ……(中の上)
機動戦士ガンダム:逆襲のシャア
(「Z」のさらに七年後、再びジオンを名乗るシャアとアムロ・ブライトたちが率いるロンド=ベル隊との最後の決戦)
これは結局のところ一体何をしたかった作品なのだろうか? ファーストから延々とガンダムを引っ張ってきた(「ZZ」には両方ともほぼ全く登場しないし――これについては思う所があるので別の所で書きたいと思っている――、後から作られた「横道」にも出てはこないが)アムロとシャアに決着を付けさせたいというのは分かるのだが、その背後にあるものが、あるはずのものが、いやあってもらわねば困るものが、きちんと描かれているとは到底思えない。全体的にあらゆることが紙芝居のように「はい、はい」とタカタカと進んでいく。どうしてシャアが再びジオンを名乗り、再び地球人を憎み、アムロと決着を付けようとするのか、アムロの方でもシャアとの決着をつまるところ何と思っているのか、例によってこのダイジェストのような薄くて速いストーリーからどうやって読み取れというのか。にもかかわらず、やっぱり出てくる基地外女クエスだの、それと張り合う大人気ない年増ニュータイプ女ナナイだの、唐突に登場して唐突にトチ狂うハサウェイだの、余計なことばっかり、しかもどれもこれも中途半端に書いている。富野先生は小説と映像作品の脚本とは全く別の感覚で書くのだろうか。一言で言えば、要するに脚本がまるっきりなってない。この作品をそのまま忠実にノベライズしても恐ろしくつまらない作品にしかならないだろう。
ちっちゃいが重大な欠点として、クエスが生身のままで宇宙空間に出るシーンがあるが、これは非常にいけない。アニメの常として宇宙空間にまるで空気があり上下も初めから決まっているような演出というのは仕方がないが(本当にリアルを追求したら非常にシュールな映像になるか、まるでつまらなくなるかどちらかだろうし)、あのシーンで評者は無茶苦茶に白けた。何でこんなくだらない演出を許したのか、この点に関して富野先生は頭がおかしいとしか思えない。
そして最大の不満はもちろんラストだ。これは何回見ても全く納得いかない!(実はTMN絡みで映画館に見に行ったのだが、無理矢理エンディングになだれ込んだ途端に何人もが「えー!」と声を上げ、上映後はロビーで「納得いかん!」とガンダムファンが皆口々に言い合っていた……当時ガンダムマニアじゃないどころかどっちかというとアンチガンダムだった評者すら疑問に思ったくらいだ……)。宿命の対決の結末が、いやそれとすら言い得ないものが、こんな有様で、どう大団円としろいうのか。
と、けなしてばかりいるようだが、映像的には非常に美しい。キャラデザインは多少軽いが別に問題はなく、メカデザインはサザビーやνガンダムを始め非常によくできている(特に全方向モニターは個人的にも好きだ。これ以降のシリーズのメカが採用していないのが不思議なくらいだ)。戦闘シーンも非常に美しく、かつ迫力があると思う。どこかで「戦闘シーンが軽い」という評を聞いた覚えがあるが、その方は一体どうすれば「重く」なると思っていたのだろうか、理解に苦しむ(確かに最後の最後にモビルスーツが丸腰で殴り合いというのは、どうかとは思うが)。まぁその戦闘シーンもまるで時間切れに慌てるようにパッパパッパ進んで、主要キャラクターが無駄に、しかもどう考えても無秩序に死んでいくから、そういう意味では確かに軽いが……。要するに富野先生は劇場版の映画には向いてない人なんじゃなかろうか…… 「Z」から面々と音楽を担当してきた三枝先生はここでもいい仕事をしていて、この重くて暗い作品に華を添えている。重厚なオーケストラによる音楽とTMのエンディングとの対比もなかなかいい。
いわば「ガンダム第一期」がこういう結末を迎えるとは……迷走具合や表現のちぐはぐさまで全部含んである意味において富野ガンダムを象徴する作品だろう(中の下)
機動戦士ガンダム0080:ポケットの中の戦争
(試作ガンダム破壊(?強奪?情報収集?よく分からない…)作戦に携わるザクのパイロットとそのガンダムパイロットとの間のあれやこれやを両者の知り合いである少年の視点から描く)
「地味」だという前評判を聞いた上で見てみたからその通りに最初は「地味だなぁ……」とそのまんまのことを思ったが、何度か見てみると、これは実によくできた作品であることが分かる。ある意味では富野ガンダム以上かもしれない。非富野ガンダム最初の作品にして初の一年戦争外伝でありかつガンダム初のOVAと、中々難しい仕事をスタッフが見事にこなしていることに驚く。
まず原作というか脚本というかがよくできている。ストーリーの破綻がなく(もっとも、短い作品だからこのくらいで破綻するようでは最悪なのだが……ZやZZなんてしかしあっという間にメチャクチャになるからなぁ……)、書き足りない部分も目立たなければ(他のガンダムのように「何故……が?」と疑問を抱かねばならないことがあまりない)、余計な脱線もない。よく「ガンダムが登場するのが遅い」とか戦闘シーンが少なくて地味だとか言われるが、個人的にはこのくらいでちょうどいいと思う。ケンプファーの影が薄いのはもったいないとは思うが、無駄なく上手く書けていると思うし。
作画も非常に美しく、メカ・キャラデザインともおもねらず、しかし頑固すぎもせず、ちょうどいいバランスに留まっている。特に(シード以降は別として)唯一の女性ガンダムパイロットである(他の作品では臨時に乗ることはあったにしろ)クリスさんはとても魅力的なキャラクターだと思う(あまり評価がかんばしくないのが不思議だが)。一つだけケチを付けさせてもらえれば、主人公の少年たちの生活があまりにもレトロすぎて、いくらレトロフューチャー云々と言うにしても、ちとこれは無理がありすぎると思う。OVAということでか、富野ガンダム以上に残酷描写がこれでもかと描かれているのはやや悪趣味に過ぎるとは思うが、リアルさを追求するという点では上手く機能している。
かしぶち哲郎さんによる音楽は、情緒に流れまくった主題歌を初めとして、ガンダムには甘すぎる気がしないでもないが、この美しく悲しい物語には上手くマッチしている。
よく言われるように確かに地味だが、中々の名作だと思う。(上の上)
機動戦士ガンダムF91
(『逆シャア』の三十年後、コスモ貴族主義を唱えるクロスボーンバンガードと連邦軍との戦い)
「ファーストのスタッフが再集合して新しいガンダムを!」という意気込みがきれいに空回りしてしまった、というところだと思う。色々と不幸な悪条件はあったにしろ、テレビシリーズそして続編へと繋げられなかったのは、やはり失敗と言わねばなるまい。
作品そのものにその原因があるとすれば、恐らく今一つ低調な前半の雰囲気がそれではないだろうか。劇場版だけあってやたらにリアルで残酷な市街戦シーンとか、基地外兵器マニアジジイが博物館から(ザクが飾られている!)骨董のような兵器を持ってきて自滅するというトホホなエピソードとか(∀のハシリか?)、見所はあるにはあるが、どうも今一つのめりこめるものがない。コロニー内ミスコンってまるで「マクロスかよ!」だし、その彼女にまつわる人間模様のあれやこれやも今一つ書き足らず面白くない。鉄仮面をもっと前面に出してくれば大分変わったかもしれないが(あれは実はサイボーグ化したシャアなんですよ、シャアのデータを使って強化人間になっているんです、トカ(笑))。
ただ、物語が収束してくる後半になると俄然面白くなってくる。鉄仮面のトチ狂った暴走ぶりはえもいわれない不愉快さが面白いし(特にノコギリ型バーサーカーメカ「バグ」が大暴れするシーンは面白い)、とどめに出てくる「今作品のやられメカ」的なラフレシアの訳のわからなさ及びえげつなさもなかなかたまらない。エンドロールの最後ではないが、この映画を引っ張っているのは実は鉄仮面だろう。最後はやっぱり御託を並べながらの直接対決といういわゆる「富野ケンカ」になるが、それもなんか他の作品とはズレた感じで狂ってて面白い。しかし、それも何だか分からないうやむやな結末で一気に台無しにされてしまうのだが……
キャラデザインは今までの作品とはややちがった感じではあるが、これと言って違和感はない。ただ、個々のキャラクターが人物像まできちんと描けているかといえば、できてないと言わざるをえない。誰がどういう人間でどういうものを背負っているのか、そういう内容が今一つ薄い。メカデザインは、ガンダムこそそこそこいいかもしれないが、例によってその他、特に相手メカが不作(ラフレシアは出すのが遅すぎる)。これじゃプラモは売れんだろうな。戦闘シーンはコロニー内が中心だが、これはよくできている。
案外面白いとは思うのだが、今一つ低調な出来が悪い状況をさらに増幅してしまったという図式は否めないと思う。要するに不運な作品だが、それをひっくり返せる力がないのも事実だろう。(上の下の下)
機動戦士ガンダム0083:スターダストメモリー
(「一年戦争」から三年後、デラーズ・フリートを名乗るジオン残存部隊と暴走を始める地球連邦軍との戦い)
非常に評判のよい作品で、なるほど面白く、よくできている。今も昔も人気の高いファーストとZの間を描くというのは、この二作のファンにはたまらないはずだし、キャラクターも魅力的ならば、ストーリーも(作品中の時系列的には)初のガンダム強奪にして「悪のガンダム」そしてガンダム対ガンダムという見所たっぷりどころか見所だけでできているようなもので、これで面白くならないわけがない。メカデザインもよくできているし、作画も美しい。宇宙世紀絡みの作品中最高傑作に推す人々が多いのも納得である。評者もそれを認めるのにやぶさかではない。長さ的にもダレず、物足りないこともなく、ちょうどいい。
ただ、面白いだけに、また見やすいだけに(例えば∀をもう一度見直そうと思うと非常に体力が要る)、気楽に何度も見返すと、色々とアラが見えてくる……まず根本的な疑問として、「ファーストとZを繋ぐ」と言うが、本当に繋がっているのか、と思えてくる。アムロもシャアも一言も言及されず、ニュータイプについてはスタッフ自身「触れたくない」と言う始末だ。Zに関してはバスクやジャミトフ(ハマーンもチラッとだけ)が出てくるものの、ファーストとはせいぜいで胸像になった総帥くらいのもの。繋げているというよりも両方のプロットを利用して別のことをやったと言った方がいいんじゃないのか。繋ぎつつ、両作品に逆影響を及ぼしてはいけないという制約は分かるが、それにしても設定も無理すぎる。もちろんこの作品に登場した人物及びマシンは、引き継がれたものを除いて全て死亡か「これっきり」(特にガンダム「登録抹消」というのは無茶だ。どう考えても試作機よりマークIIの方が性能は劣るし)。「とりあえずガンダム出しとけば何とかなる」という安易な姿勢を固定させてしまった作品でもある気がしてならない……
ストーリーにも見れば見るほど疑問が沸いてくる。もちろんその最大のものは「今作品の基地外女」ニナの設定で、テレビシリーズならともかくOVAでこんな行き当たりばったりの後付設定をやるというのか!、とジョーダン=ベスのように叫びたくなる(笑)。他にも、脱走したコウがすんなり戻れたり、チョコチョコと傷はあってまたそれがすぐ見つかる。少なくとも「名作」と手放しで褒める能天気さは評者にはもうない。劇場版で大幅改善されたが、戦闘シーンはやや書き足りず、物足りなさを感じる。特に試作三号機とノイエ=ジールは折角の魅力が生きていない(ひょっとして最初は一号機対二号機までで終わらせるつもりだったのか? なるほどそう考えると色々辻褄が合う……)。
もう一つ文句を。ビデオ各巻末にはスタッフの裏話等が収録されているが、これが見るからに内輪ウケで、中には何を勘違いしているのか嬉々として騒いでいるだけの連中とかもあり、全く感心できない。こんなもので時間をつぶすくらいなら設定画とかを延々収録してもらった方が百倍いい。
時代がかった大袈裟な主題歌といい、フルオケ使用の重厚なバックといい、音楽が非常によくできている。
見るほど欠点が目に付いてくる作品ではあるが、それも含めて、いい作品であることは間違いない(上の上)
機動戦士ガンダム0083劇場版:ジオンの残光
(同名のOVAの再編集劇場版)
編集は非常によくできているとは思うが、時間上仕方ないとは言え、やはり必要なシーンが色々と省略されているのは残念だ(ケリイさんとの対決全カットは惜しい! ティターンズ化する連邦軍との相克が省略されているのも残念。色々と含みがあったラストシーンがカットされたのも物足りない)。しかしその代わりに、オリジナルのシーンが色々とあって単なるビデオ版の再編集に留まっていないのは嬉しい。特に、ビデオ版では今一つよく分からず醍醐味が感じられなかった試作三号機対ノイエ=ジール(ドイツ語のつもりならノイエ=「ツィール」どころか「ノイエス=ツィール」じゃないといかんだろ、という元インテリのツッコミはまぁおいといて……まぁ宇宙世紀になるとドイツ語も乱れてんだろう(笑))の動きは大幅に改善されている。特にOVAでは何がなんだかよく分からなかった試作三号機の機能が細かく分かるのはメカファンには面白かろう。
不満に思ったのは、ビデオ版には非常に勇ましい音楽や緊迫感を煽る音楽が多用されていたのに、後半に至るまではそれが多くカットされ、あるいは感傷的な挿入歌に変えられていることで、せっかくの劇場版なのに、そのせいでテンションが落ちていると思われる(しかし後半はどちらもテンションが高いので対比という点ではかえってよいかもしれない)。時代を感じさせながらも結構カッコいい主題歌もかなり気に入っていたのだが、やはり全面的に省略されていて残念。
ビデオ版も非常によくできていたが、これも再編集の劇場版としてはよくできている。ファンが多いのも納得だ(上の中)
機動戦士Vガンダム
(『F91』から再び三十年後、地球侵略を企むザンスカール帝国と抵抗組織リガ=ミリティアとの争いに巻き込まれるウッソ少年の活躍)
まず、急に絵がアニメチックで荒くなってるのに面喰らう。戦闘シーンはあまり違和感ないが、MSのデザインが斬新は斬新にしても、あまり魅力的ではないので、結果としてあまり面白みがないものになっている。ドラゴンの形をしたモビルアーマー、タイヤ型の乗り物、そしてバイク戦艦にとどめは何だかよく分からない「エンジェル=ハイロウ」と訳の分からないアイデアは爆発しているが、はっきり言って生かし切れていない(何となく「G」につながる予感がする……)。お子さま心をくすぐる演出(ウッソがお姉さんに抱かれたりおもちゃにされるシーンがやたらに多い;若い女性がやたらに出てきてしかも無意味に露出度高い;「お○ん○ん」「う○ち」等まるっきり小学生レベルの下品なセリフ;等々)は正直気に入らないものの笑って済ませられる程度に止まっているが、個人的に我慢できないのは赤ん坊がギャーギャー泣くシーンが多いことで、イライラすることこの上ない。子供だらけにすることで、今までのテレビシリーズにあった「軍隊に何故子供?」という拭い去れない違和感は逆になくなっているが、その代わり人間模様を深く書き込めないようになってしまい、どうも薄っぺらだ。ストーリーを、特にラスト付近でごちゃごちゃさせてしまう悪い癖はやっぱり治っておらず、「何がなんだか分からないまま無理矢理終わってしまった」感はやっぱりある。
と、けなしてばかりいるようだが、全体に漂う悲しーい雰囲気は宇宙世紀ものの(時系列順に言えば今の所)最後の作品としては悪くないと思う。特に序盤で女性兵士が次々と戦死するのが何とも悲しい。そして妙に美しいクラシカルな音楽が付けられているのも情緒を煽ってよい。「0083」のニナに続く基地外女(元祖はZのレコアか? あるいはロザミアか?)カテジナさんのまるで支離滅裂な言動は作品の不快感を煽ってなかなかえも言われない雰囲気を出している……
もうちょっと整理できたらもっとよくなったのではないかと思う……でも絵はやっぱり気に入らないなぁ……(中の中)
機動武闘伝Gガンダム
(時代は変わって未来世紀、「ガンダム=ファイト」なる擬似戦争を繰り広げるコロニー代表達のあれやこれや)
非宇宙世紀シリーズを見るのは初めてだが、ここまで突拍子もない展開をされると、もはや善くも悪くも何も言えない……ガンダム、というかガンダム「みたいな」ロボット、が出てくるというだけで、これまでのガンダムとは全く別物、つまりはSDガンダムとかと同じものと考えた方がいい。って言うより、そう考えないと見てられない……テイストとしては戦隊ものの特撮とかに近いと思う(って言うか、世界各国からやってきた怪しいゲテモノファイターが覇権を目指して戦うって、まるっきり『世界忍者戦ジライヤ』じゃないのよ!)。
「ガンダム」という看板はやっぱりどこまでも気にはなるが、しかしそれを無視すれば、割と単純に楽しめる作品とは言えるかもしれない。ストーリー的には割に分かりやすいものではあるし、はっきり言って無闇にテンション高いだけのバカドラマとすらみなしうるので、着いていければこれはこれで面白い(ただ、どこまでも「ガンダム」を意識せざるをえないので、それが逆にジャマになるといえばジャマ……例えば「アイアンリーガー」みたいに完全な別物とすれば、もっと素直に楽しめたかもしれない。もっともそうなっていたらそもそも見なかったかも……)。
しかし、東方不敗マスター=アジアという強烈なキャラクターを生み出せなかったら、一体どうなっていたろうと考えたら、中々頭が痛い(ジャイアントロボ程度のマイナー作品に終わっていたかもしれない)。ストーリーや脚本はそんなこんなで割と安直というか、はっきり言って練れていない……こんなところでガンダムの伝統を踏襲してどうする! 逆にそれを徹底的に支離滅裂にすることで一種東海テレビイカレポンチ昼メロドラマ的な面白さが出ているのは確かではあるが……
車田正美並みの超ステレオタイプな各国の捉え方にはクラクラするが(スウェーデンがなぜセーラー服なのかは謎だが……)、ご当地ガンダムは割と面白く、デザイン的にも中々楽しませてもらえる。ここまでやるのであればもっとメチャクチャにしてもよかったのではと思うくらいだ。キャラ設定やデザインもそんな雰囲気ではあるが、分かりやすさという点では悪くないと思う。DG細胞やモビルトレースシステムといったアイデアは特に新しいものではないが、うまく生かされている(生身の人間が巨大ロボットを倒すというのはやりすぎだと思うが……)。絵的にも「V」よりも線が細かく、見ごたえがある。
一つケチを付けさせてもらえば、島本和彦なんて異物をガンダムに持ち込んだのは、個人的には誤算だと思う。要するに評者は島本和彦というか、熱けりゃいいみたいなあの作品の世界観が嫌いである。今までゴテゴテと塗り重ねられてきたガンダムを崩すにはこのくらいやらないといけなかったのかもしれないが、それにしても……という気はする。
もう一つ文句を言えば、音楽がよくない。特に主題歌はどうしようもなくつまらない。
慣れれば結構面白いが……結局東方不敗一人で持ってるわな(笑)(中の下)
新機動戦記ガンダムW
(時は流れた(のか何だかよく分からないが……)アフター=コロニー195年、独裁軍と化した地球連邦とコロニー反乱軍との戦い)
これはダメだ……絵はいわゆるアニメ絵で、いわゆる「やおい」御用達の美形キャラ満載にいわゆる「萌え」キャラまであって(エンディングにでてくる人間は何と彼女だけ……)、声優も「いかにも」という感じの「作られた」声と台詞回し(ランキング投票とかでアホみたいにキャーキャー言われてる類いのアレ)にカッコつけしかしてないような台詞(バブル期以降のアニメに妙に多いタイプ)、おまけに主題歌は小室エピゴーネンがお約束のアニメ主題歌を作ったって感じのもの……おいおい……ガンダムがこんなになっちゃったよ……という気分でファースト世代には脱力〜である……しかもキャラの作り方が恐ろしく安直……スーパーマン出せばいいってもんじゃないだろ(こんな薄っぺらなヒーローに感情移入できるの? 分かんないなぁ……)……それに明らかにシャアな「こいつ」は一体何なんだ?(というかファーストをパクリ過ぎだ。ファーストその他をパクりまくった『Seed』以降の先駆けがこれかい……) こんな敷居の高いガンダムは初めてだなぁ……というかガンダムじゃなくていいだろこれじゃ……『新機動戦記G5』とかでいいだろうに……こういう「ハマれる人限定」「入れない人は結構です」みたいな自閉的オタクアニメは大嫌いなので、我慢して何とか見始めた。
という軽薄さが薄れてくるというか、いい感じに麻痺してくる(許容範囲広いなぁ俺…)中盤くらいになるとやっと面白くなっては来るが、今度はガンダム全般の病理である「ごちゃごちゃ病」が発症して、展開がよく分からなくなってくる。つくづく学習しない人々だなぁ……「何だよその全部説明するセリフは!?」ってことは多いのに、肝心な所が説明不足でビュンビュン進むって悪いクセも同じ……「無理矢理結末病」まで同じだよ……正直どうなのよこれは……
メカデザインは明らかにGガンダムのそれを引き継いでおり、個人的にはあまり好きではない(片腕が機関銃になってるガンダムはライダーマンみたいで面白いが(笑))。ガンダムのライバル機になるはずのトールギスも何か今一つ弱い……宇宙世紀シリーズが尻すぼみになり、それ以降も今一つパッとしないのは、ガンダムに対する敵メカでいいものを作れなかったのが原因だと改めて実感する(まぁ最初のザクが偉大すぎるのだが……それにいくつか「傑作」はあるにしてもねぇ……) 戦闘シーンの音楽がジュリアナってのはいい!(笑)
あと何だ、いつからガンダムシリーズにはトチ狂ったイカレ女を出さなきゃいけない決まりができたんだ?(笑) 多重人格や戦争マニアの基地外女といい、やたらに自爆するガンダムといい、しょっちゅう「殺す」「死ね」って言われることといい、怪我や暴力の描写がやたらに多くしかも皆それをそれほど嫌がっていないことといい、で結局邪魔者排除の短絡思考VS善意に頼る現状維持という単純な図式といい(戦う動機が薄っぺらすぎるんだよな…どこまでもポーズだけって感じだな)、来るメンヘル時代を先取りしてもいたのか? やはりこれは相当「進んだ」作品と言っていいのかもしれない(苦笑)。かなり歪んでるけど……
我ながら自分の順応力の強さに驚いている。こんな作品にすら馴れられたのだからエヴァンゲリオンやパトレイバーも楽しめるかも……嫌だ嫌だ……(中の下)
新機動戦記ガンダムW Endless Waltz
(「W」本編の翌年AC196年、再び戦いを引き起こすOZ残党と地球軍との、ガンダムチームによる代理戦争を交えた戦い)
本編は「うわー……」と思いつつも案外楽しめてしまったので、ちょっと期待したが、全くの期待外れだった。結局これは人気が出た「ガンダム戦隊」を互いに戦わせたいがための茶番に過ぎないんじゃないのか? まず原作と言うか脚本と言うかが弱すぎる。本編の上澄みだけとったって感じで深みも何もないペラペラの同人誌レベルのストーリーに、結局ちょこちょこ出てくるだけで終わる本編の登場人物(ゼクスをこんな扱いにするなんて頭がおかしいとしか言い様がない)。決め台詞だけでできてるような台本も軽薄すぎてやってられない。絵はきれいかもしれないが、肝心のウイングガンダムは最終話になってやっと出てくるというお粗末さで、これじゃメカマニアにも食い足りないだろう。メカは最強かもしれないが、ストーリーは最弱だぁ! 最初から逃げてるのは制作者側だ! せめて任務不遂行の責任をとって自爆しろ!(笑)
とどめに何なんだこの御人形お子さま指導者は? 当時これを見ていたアニメファンはこれに「萌え」とやらしてたんですか? 信じられない……キャラクターにも何もなってないよ。絵と声さえありゃいいわけ? それは単なるフェチですよ……「質」を求めない受け手がジャンルを地盤沈下させるってことが、これが、何故分からん!(笑) これじゃ「質」を求めるファンは世捨て人になるよ(笑)
実質的に最終話だけで消えてしまう新ガンダムはさすがに美しいが、まぁただそれだけ。一応例によって問答交わしながら戦ったりはするけど結局大して何も考えずカッコつけだけで成り立ってるキャラの数々といい、まるで何か騒げばいい的な愉快犯程度の薄弱な動機で戦争起こしちゃう迷惑な大人といい、トロワが「2ちゃんねる」よろしく「名無し」になってしまうことといい、やっぱりこれは現代の病理を先取りしてしまっているのかもしれない。やっぱり歪んでるけど……
一体何がやりたかったのかさっぱり分からない大駄作。これは間違いなくダメだ。せめて「0083」くらいの長さがあればもうちょっと何とかなったのかもしれないが…(下の下)
機動戦士ガンダム第08MS小隊
(宇宙世紀0079年一年戦争時、地球地上戦に投入されたガンダム部隊とジオン軍との戦い)
まぁいくらかの予備知識はあった上で見たのではあるが、いきなりガンダムがゾロゾロ歩いてる場面から始まるのは、ファースト世代にはちとショックである…
まず、技術や機材の進歩からかシリーズを追うごとにメカデザインはどんどん緻密になっているのに、それに反比例するかのようにますます人物デザインがテキトーになっているのがどうにも気に入らない。これじゃファースト世代にはどうにも感情移入できないよ(「YAMATO 2520」やリメイクされたガッチャマン、キャシャーンなどを受け入れろと言われてもどだい無理だったのと同じだ…)。Vガンダム(「V」は全体的に線がぼやけていたのでデザインはまとまっていたがこいつはチグハグだ。まるでアイコラ)とかとは違い、一応ファーストと重なる時代設定なのだから、「Z」「ZZ」とまでは言わないまでも、「0083」せめてF91くらいにはファーストと連続性のあるキャラデザインにしてほしかったものだ…… しかもこの線の少ない単純なアニメ顔が隊長かよ……ついにガンダムが深夜のオタクアニメと同レベルになってしまった……
他の点もどうもなんか軽い。よく戦争ドラマとして上質とか言われているが、この程度で上質なのか、という疑問も感じる……ガンダムが地上戦をしていても、正直それが何?って感想しかない(そんな風に絶賛している人はきっとアニメでしか戦闘シーンを見ていないんだろう、と思いたくなる。『地獄の黙示録』とかすら見たことないんじゃないの?)。その背後の人間模様とかも、デザインの影響でそう思うのか、とにかく薄っぺら。ペラペラ具合は「W」を踏襲してしまっている。雰囲気はあのまんまで舞台だけ一年戦争にした、という雰囲気だ。おまけにどういう意味があるのかロリコン紛いの露出とか、どう考えても唐突なお色気とかもあって正直何なの? 「G」「W」にうんざりしたファースト世代の溜飲は下がったのか、これで? ラスト付近の戦闘は、丹下左全状態のガンダムといい(笑)、中々見ごたえはあるが…
メカ絵はさすがにきれいだし、デザインもよくできていると思うが、ファーストと同じ時代設定ということを考えるとどうしても無理がある。あり過ぎる。このままじゃ、この水準でファーストをリメイクせねばならないと思うが、どうか?! 冗談はよせ…(笑) 目玉のはずの巨大モビルアーマー「アプサラス」は、時代設定上始めからこれ一作で消えねばならない運命とはいえ(「ノイエ=ジール」と同じ)、「ビクザム」「αアジール」「ラフレシア」等々「超大型モビルアーマー」はコケるジンクスを崩せなかった…(もうやめたら? それともヤラれメカ的な位置付け?)
けなしてばかりいるが、音楽が結構いい。フルオケの豪勢なものもよいが、個人的には戦闘シーンのフュージョンっぽいフレットレスベースが気に入っている。
ビデオシリーズにはおまけの特典映像がついているが、これが思いの他面白い。こっちの方を膨らませて本編にした方がいいんじゃないかと思うくらい。
どうも一回見た限りではチグハグな作品にしか思えないのだが……(下の上)
起動戦士ガンダム第08MS小隊:ラストリゾート
(本編の後日談;キキとミゲルが、行方不明のシローを探しに行ってみると……)
まぁこれは完全なおまけみたいなものだし……とにかくずっと自然紀行みたいなノホホンシーンが延々と続く。多少それなりに何かあるが、別に緊張感も何もない。そして、「ああやっと…」と思ったら無理矢理終わる。何なの?
DVDの特典映像クラス、あるいは同人誌なみのどっちらけ作品。いくらなんでももうちょっと何かあってもよかったんじゃないの? 例によって特典の一年戦争裏話の方がはるかに面白い(下の下)
起動戦士ガンダム第08MS小隊:ミラーズリポート
(本編を、主人公のスパイ容疑を追及する諜報官の観点から描く再編集)
再編集のやり方としては面白いかもしれないが、どうもつまみ食い的な印象しかない。それに再編集されて濃縮されたためか、主人公の心情がらみのお説教臭さがより引き立てられていてどうもついていけない。本編の主題は一体そういうことだったのかと疑問を持ちたくなってしまう。しかも、最期に思い切りお説教をぶった上で無理矢理終結という置いてけぼり感に叩き込まれるので見終わったあとの感覚は非常に悪い(おまけにエンディングの曲も大したことないし)。「ラストリゾート」ほどではないが、期待外れもいいところ。
これももうちょっとどうにかなったんじゃないのか?(下の中)
機動新世紀ガンダムX
(地球連邦とコロニー独立革命軍との全面戦争から十五年後、残されたガンダムをめぐるあれやこれや)
何を見聞きしてもロクな評判を聞かないこのシリーズではあるが、正直「え? 面白いじゃない」「俺は好きだけどな」と思いながら見た。本放送は「ガンダムW」直後で、人気だったこのシリーズを引きずりたいという意図が見え見えであり、色々な所にその残滓を見ることができるが、どうもそれにことごとく失敗してしまったというのが不人気の原因らしい、という気がする。まず、主人公の声がどう聞いても芸人だし、「801」方面の人気を狙ったキャラは狙いすぎて外してしまい(年齢が高すぎる。これじゃ「そっち」方面に人気が出るとしてもマニア向きすぎる)、今で言うところの「萌え」キャラは不作、メカデザインは特に新味なし(サテライトキャノンという目玉はあるにしても、生かせてない。例によってガンダム以外のメカも弱い)、と確かにけなそうと思えばいくらでもけなせる作品である。おまけにストーリーは重くて暗すぎるわ、英語歌詞に翻訳字幕付きのエンディングやそれにかぶせられる次回予告といい、その他にも色々ある全く意味不明な数々の演出といい(次回予告で「私の愛馬は凶暴です」「巷に雨の降るごとく」とか言われてもねぇ……(笑))、確かに……と言わざるをえない……
しかし個人的には好きなシリーズだ。ストーリーや演出が重いのもいいし、明らかに映画を意識した様々な仕掛けも面白いし(劇場版が作られなかったのは惜しい)、よく分からないサブタイトルも訳が分からなくて何かいい(笑)。ニュータイプ論に終止符を打とうという姿勢も潔くていい(それにしても身を窶した元ニュータイプの名前が「ニート」というのは、やっぱりガンダムのスタッフは屈折した予知能力があるのかもしれない(笑))。メカデザインにはそれほどピンとこないが、キャラデザインは「08」は無論、「W」よりもずっと好きだ。エンジニアがきちんと仕事をしていたりと苦労話がきっちり書き込まれているのは、カッコつけばかりのアニメが溢れる中ではずっと好感が持てる。
ガンダム名物「ごちゃごちゃ病」はそれほどでもなく(それでもかなり無駄な紆余曲折が見られるが……中盤の基地外図鑑みたいなストーリーは中々脱線としては面白いが)、終盤の急いた結末も放送期間短縮という不運を鑑みればまぁ仕方ないかなという程度である。つくづく不運な作品だなと言うしかない……それでは、「残念で御座います」(笑)
個人的には面白いと思うけどなぁ……見てないガンダムファンは「何も考えずに観ろ!」そして「評価はお前が下せ」(笑) まさに「不愉快だわ……」「巷に打ち切りアニメがあるごとく……」(上の下)
∀ガンダム
(さらに時は流れ、一旦文明が滅び復興しつつある地球に帰還しようとする月種族と地球人との間のあれやこれや)
何はともあれいきなりホーメイ(実は評者はホーメイができる)に西城秀樹という主題歌が、黒歴史などよりもよほど衝撃的である(笑)(終盤の主題歌は今一つ。「黒夢か?」と一瞬思った……)。
初めてフジに舞台を移してのガンダムということで、今までとは全く異なるキャラデザインに面食らうが、それは初めから分かっていることだし、別にこれはこういうものかと思えばどういうこともない(ジブリがガンダムを作ればこうなるかな? という気もする)。確かに日曜夜のカルピス劇場を思わせる絵とストーリーで、ガンダムとしては違和感がやはりあるものの、デザイン的には歴史があるものなのでさすがに美しく、ガンダムに対する固定観念が強くなければそう抵抗なく入り込めるんじゃないかと思う。その割には結構「お色気」な演出が多いのが気になると言えば気になるが……
ヤマト世代には悪夢でしかない『YAMATO2520』と一緒になって思い起こされるシド=ミード氏によるデザインだが、これに関して評者はどちらかといえば肯定派に属する(もちろん『YAMATO2520』はデザイン以外の部分で大嫌いです! あれはいけません(苦笑))。いかにもエンジニア出身という感じの工業デザイン的なメカの数々は明らかにガンダム史上なかったもので、非常に魅力的で美しいと思う(ザクじゃなかったボルジャーノン(笑)やカプルと齟齬を起こしている気もするが)。「ヒゲガンダム」も、正直あそこまで思い切ったデザインにしないといけなかったのかなとは思うが、これはこれで面白いと思う(特にコクピットのデザインはすばらしいと思う)。
ただ、設定という点では元々無理がありすぎる上に(文明崩壊後の世界とハイテクメカとじゃ、うまく合わせろという方がどだい無茶である。そのせいで無駄にファンタジックな雰囲気が増幅されている。ファンタジーが嫌いな評者には我慢の限界だ)、脚本が弱く、物語が進むにしたがってどんどんストーリーが退屈になってしまい、通して観るのがかなりきつい。ごちゃごちゃしているだけにしか思えなかったこれまでのガンダムの脚本も、このダレまくった展開に比べたら実は案外アレはアレでよかったのかもしれないという気もする。このかなりひどい中だるみを過ぎて、物語が収束し始め戦闘シーンも多くなってくるとようやく面白くなるが、もう遅い! しかもやっぱり御託をべらべら述べながらの戦闘……これが退屈だと、これがなぜ分からん!? そんなプロデューサー、修正してやる! おかしいですよ!(笑)
分散傾向にあったシリーズを無理矢理収束させたのは面白い、っていうか、これって仮面ライダーの最終回で初代から全部出てくるのと同じノリなんじゃないのか案外?(まぁこういうの好きだけどね……ウルトラマン全員集合とかね) こういうことになるというのは最初から予備知識として分かっていたので「X」「W」が出てきても別に驚かなかったが、「G」の片付け方は面白い(ネタバレも何なのでこれ以上は言いません)。「そう来たか!」と(しかし中々ずっこけるが……)。富野ガンダムの締めくくりとしては、まぁまぁではなかろうか(しかし、これ以降富野ガンダムは誕生するのだろうか?)
中途半端なファンタジー風味に耐えられればそれなりに面白いとは思うが、中盤の退屈さはどうにかならないのか?……(中の下)
機動戦士ガンダムSEED
(地球を牛耳る自然種族「ナチュラル」と遺伝子操作種族「コオーディネーター」との骨肉の争いに巻き込まれる少年少女たちのあれやこれや)
巷ではさんざん「パクリ」と揶揄され、従来のガンダムファンにはボロクソの「カスであると」言われているこの新世紀ガンダム第一作であるが、露骨なパクリには確かにしょっちゅう失笑させられるものの(パクリについては予備知識があったので全く驚かなかったが、ファースト以外にも明らかに「Z」「0083」「V」などからのパクリがあるのには驚いた。それにガンダム以外からも平気でパクってるとは正直全く思っていなかった。明らかにエヴァンゲリオンな所もやたらに多い…… 時代的にエヴァンゲリオンはまぁ仕方ないかもしれないが、まさかマクロスやイデオンまでパクっているとは思わなかった。いや、筆者も気付かない「ネタ」がもっとあるのかもしれない)、それを差っ引いても案外面白いんじゃないのかとは思う。巷でボロカスに言われるほどオリジナリティーに乏しいとは思わないが、パクリの山を全部なくしたら何が残るかと考えたら何か悲しい。というか、製作者はプライドってものがないのか? まぁ今時のエンタテイメント産業的だと言ってしまえばそれまでなのだが(やり口がいかにも@VEX的というか……)…… 単純に割と楽しんでしまったが、何か脱力である……
悪名高い「クジラ石」放置を初めとして、ストーリーにはイイカゲンさが目立つ。例えば後半に出てくるジャンキー強化人間キ○○イ部隊なんて案外面白いが、彼らが操るメカ共々掘り下げが明らかに足りない。クローンや遺伝子操作の是非等々、追及すれば深くなるはずのテーマもいくつもあるが、みんな浅い浅い…… そんなこんなで印象的なセリフとか色々盛り込んでるつもりなんだろうが、何かどうもみんな上っ面だけなぞってる感じしかしなくて、その辺もいかにも二十一世紀のエンタテイメントという雰囲気に終っている。まぁとりあえずテキトーに爆乳の少女キャラ出しといて「いかにも」な声優当てがっとけば「萌えー!」になってそれでOKみたいなクズオタクアニメの氾濫の中で見てみれば「まとも」な方なのかもしれないが、それにしたってこれだ……(誰かイデオンオタクがひれ伏すくらいの激重(「ゲキオモ」と読んで(笑))な作品作ってよ。売れないか……)
意外にも残酷描写が多いのに驚いたが、イデオン信者にはこれでちょうど心地よいくらいである(苦笑)。「好戦的な評者だ!」(笑)
メカデザインは大河原先生が相変わらず関わっていることもあってか非常に魅力的だと思う。おもちゃ屋さんはさぞかし喜んだことだろう(苦笑)。ただ、主力メカがどれもこれも全部ガンダムなので、正直どれがどれだかさっぱり分からん…… 戦闘シーンは技術革新の恩恵を十二分に受けまくっていて非常に面白い。この点だけ取れば歴代のガンダム中最高ではなかろうか(少なくとも宇宙空間の戦闘に関しては、この意見がそう変態的なものではないと思う)。このレベルで今までのガンダムを(いや、イデオンを(苦笑))作り直してほしいくらいだ。
でもやっぱりキャラクターデザインは気に入らない……(それどころか、劇場版Zが逆にこの作品の影響を受けているように思えて何とも言えない……)。目がやたらにでかく、頭でっかちで、「まばたきしないで口だけパクパク」「目を見開いて叫び口」といった評者に気に入らない描き方もやたらに多い。あと、女性キャラは割りとグラマラスなデザインのキャラが多いが、胸の揺れがやたらと念入りに描かれているのも露骨で何か嫌だ…… せめてエヴァンゲリオンくらいのデザインに留まっていてくれたらなぁ……と思わずにはいられない
TM等の主題歌は別に何とも思わないが、クライマックスでうまくエンディングがかぶさってくるのは雰囲気的に実にいい(演歌的だと言われればそうだが……)。これほど何度も主題歌・エンディングを変える必要があったのかというのは疑問だが(まぁどれも大したこともない曲だし。やっぱり「お金」的な事情かい……嗚呼)
思ったよりも面白かったので正直驚いているが、ここまで金まみれガンダムってのもねぇ……(上の下)
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